ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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えー三章はまだです。前々からやりたかった使い魔編をやりたいと思います。今回は前編で、後篇で終わりですね。ただ、今回も出来は正直半々ですね……。


第二.五章
前編


 使い魔。主たる悪魔の仕事を多岐にわたってサポートしてくれる存在。多くの悪魔が契約を結んでおり、使い魔の種類も膨大になる。

 

 俺の主に当たるリアスは紅い蝙蝠を使役しているし、朱乃は小鬼。朱乃の方は結構付き合いが長いようだ。

 

 祐斗は小鳥。小猫ちゃんはシロと名付けた白い小猫。自分の髪の色と一緒だから決めたのかと、見た当初は思った。

 

 さて、元からのメンバーは全員持っているが、勿論、新人の俺や一誠、アーシアは持っていない。

 

 他の二人はどうかは知らないが、俺はすっごく欲しい。

 

 本来ならば、あのチラシ配りも使い魔がやるべき仕事なのだ。体を鍛える分には良いが、正直に言えば、モノすんごくメンドイ。

 

 だから、使い魔との契約と言われたときは内心ガッツポーズをしたものだ。

 

 そう、その時は……。

 

 ******

 

「待てやごらあああああああああ!!」

 

 俺、兵藤夏蓮は走っていた。

 

 見ず知らずの森。今まで見たことのない幻獣の数々。

 

 普段なら心躍り、色んな物を見学していたであろう。

 

 だが、今の俺にはそんな余裕は全くない。

 

 そう、俺はヤツを追わなければならない。これは、俺のプライドを掛けた真剣勝負。決して負けることは許されないのだ。

 

 そう、あいつだけは。あいつだけは……!

 

 

 

 

 ――あのリスもどきだけは絶対に許さん!

 

 

 

 

 そう心に新たな決意をした瞬間だった。

 

 突如、俺の額に衝撃が走る。怪我を負うほどでは無かったが、それなりの衝撃で、全力で走っていた俺は態勢を崩し、後ろに倒れこんでしまう。

 

「うおっ!」

 

 咄嗟の事で回避も防御も出来なかった俺は、そのまま倒れてしまう。

 

 そして、更に俺に悲劇が襲う。

 

 倒れると同時に後頭部に衝撃が走った。

 

 転がっていた石に頭をぶつけたと直ぐに分かった。

 

 そして、馬鹿みたいに痛い事も。

 

「っ~~~~~~!?」

 

 普通、この勢いで後頭部をぶつけたら下手したら即死だが、そこは悪魔。頑丈だ。

 

 でも、痛いものは痛い……!

 

「ぐおおおおおお」

 

 前と後ろでダブルペインに俺は呻くしかない。

 

 くそおお、一体何が。

 

 痛みに堪えながら前を見てみると、そこには小さな物体が落ちていた。

 

 恐る恐るそれを拾ってみると、木の実だった。

 

 見たことない種だが、結構固い。投げつけられたら結構痛いだろうなー……投げられた、ら?

 

「まさか……!」

 

 俺がある考えに達したとき、上から笑い声が聞こえた。

 

 痛む頭を上に向けると、そこには腹抱えてこちらを笑ってやがる怨敵(リスもどき)がいた。

 

 ……あの野郎!

 

「何笑ってやがるこの野郎!」

 

 イラッとした俺は手に持った木の実をヤツに投げ返してやる。

 

 だが、現実は悲しい。

 

 俺が投げた木の実はそのまま明後日の方向に飛んでいく。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「………………」

 

 無言が、辛い。

 

 いや、待ってほしい。これは仕方ないんだ。俺は残念ながら投球センスが皆無と言っていいんだ。体育の授業でソフトボール何かをやると、いっつもあらぬ方向に行ってしまうんだ。だが、一応弁解させてほしい。努力はしているんだ。毎回毎回、ちゃんと相手の方向を見て確認してから投げているんだ。なのに、何故かボールが上行ったり横行ったりしちまうんだ。

 

『きゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!』

 

「うるせえ! 笑ってんじゃねえよ!」

 

 何あいつ、本当にムカつくんですけど! やべえよ。殴りたくてしょうがないよ。

 

 

 さて、何故俺があのリスもどき――カーバンクルと鬼ごっこをしているのか? それは、少し前にさかのぼる。

 

 ******

 

 丁度、部室に全員がそろっている時だった。リアスがこう言ったのだ。

 

 ――使い魔をそろそろ持たないか?、と。

 

 そういうのに憧れんわけでも無かったし、色々と雑事も任せたかったから、俺は賛成だった。一誠もアーシアも特に反対は無かったので、早速行くことになったのだ。

 

 

 俺たちが向かった先は、悪魔たちが使い魔等を選ぶのによく利用するという森だった。俺の第一印象は見るからに怪しい場所だ。迷ったら絶対に抜け出せそうにないような場所だ。

 

 どうやって使い魔を手に入れるかは分からなかったが、どうやらちゃんとした専門家であるインストラクターがいるようだ。

 

 ザトゥージという良い年したおっさんっぽい外見の癖に半そで短パンに帽子と、どこからどう見ても精神年齢と肉体年齢がかみ合っていないヒトだった。

 

 こんなんで大丈夫かと思ったが、リアスが言うには使い魔インストラクターとしては非常に優秀らしい……薦めてくるのにに、魔王をも殺せる毒を持つヒュドラや、五大龍王の一匹ティアマット等がいなければの話だが。

 

 流石にこいつらは無理だと、という事になって一誠が持ち前のスケベ心を持ち出し、可愛い使い魔などを所望し、じゃあこれはどうよと、水の精霊、ウンディーネが紹介された。

 

 ウンディーネと言えば、四元素の水を司る精霊だ。よく書物何かのイラストには清らかな乙女がイメージして書かれているから、実際はどんな奴なのだろうかと、俺も思わずワクワクしてしまった。

 

 ……何故かリアスに思いっきり耳をつねられたが。

 

 そして、ウンディーネが出るという湖で待つこと数分、遂にその姿を現した。

 

 ――筋肉ムキムキの漢女(おとめ)とも言うべき存在が。

 

 流石に俺も唖然とした。いや、せざるを得なかった。

 

 想像してみてくれ。清らかな乙女とイメージしてみて見れば、筋肉しかないような体をしたヤツが目の前に出てきたんだぜ? 正直吐き気がしてくるね。

 

 ザトゥージが言うには、ウンディーネは常に住処の湖の縄張り争いをしており、生き残るには体を鍛えないといけないそうだ。

 

 ……いや、だったら普通に能力とかあるんだろうから、そっち鍛えれば?

 

 まあ、今更何を言ってもしょうがない。一誠も流石にこいつは嫌だと言う。俺もそうだよ。

 

 何故かザトゥージはわがままとか言うが、これって俺たちが悪いのか……?

 

 とまあ、ウンディーネも駄目となると、どうするかとなり、ザトゥージは次なるお薦めを提案してきた。

 

 蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)というレアなドラゴンだ。

 

 普段は滅多に姿を現さないそうだが、ここ最近、森の中を幼体がうろついているそうだ。成体になるとゲットは無理らしいから、今がチャンスらしい。

 

 で、そいつを見つけたは良いが面倒事が起きた。

 

 突如、木の上からスライムが降ってきたのだ。

 

 どうやらそいつは女性の服を溶かすだけのヤツで女性のまさに天敵と言える奴だった。

 

 なんつーか、漫画の中に出てきそうな奴だったね。そして、女性の服を溶かすと言えば、当然――。

 

「俺、こいつら使い魔にする!」

 

 一誠が興奮するわけで。

 

 いや、考えてもみろよって話だよな。女性の服しか溶かすしか使えないやつをどう使うんだよ。つか、お前、女の服を消し飛ばす洋服崩壊(ドレス・ブレイク)なんて技持ってるじゃねえか。殆ど変らないだろうが。

 

 とまあ、そんな事を考えた居たわけだが、結局、リアスたちによってあっさりと退治された。

 

 その際、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)が助けるようにして、俺たちを巻き込んでスライムを雷撃で消滅させた。

 

 そう、俺たちごとだ。ザトゥージが言うには、幼体は女性は近づけるが、男は近づくだけで攻撃してくるという。どんな助平野郎だよ。

 

 で、スライムを消滅させられた一誠は号泣するわけだが……スラ太郎とか、変な名前付けんなよ。

 

 当初の目的の蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)だが、こいつはアーシア嬢と契約した。

 

 まあ、近づく男を雷撃で攻撃してくるような奴だからな。当然と言えば当然かな……。

 

******

 

「さて、アーシアの契約が終わったわけだけど、夏蓮はどうするの?」

 

 アーシア嬢の契約が無事に終わり、一息ついたとき、服を着替えたリアスが聞いてきた。

 

「ん?」

 

「イッセーは今回は残念ながら諦めるしかないとして、貴方は何か要望は無いの?」

 

「そうさなあ……何かイメージが色々と崩れてきてなあ。正直、今回はちょっとなあ~」

 

 特にウンディーネが一番に大きい。あれはもう長年の俺のイメージが簡単に崩した。以前一誠から聞いたミルたんなる人を思い出させた。

 

 おかげでやる気が半分無くなちまったよ。というか、このインストラクターに任せるのが割と不安になってくるのもある。

 

 何せ使い魔を紹介する割にラスボスクラスを紹介するヤツだぞ? 本当にこいつプロ?

 

 ま、というわけで今回は俺と一誠は見送りという事で……。

 

 そこでふと俺の頭に小さな衝撃が走る。

 

「痛っ!」

 

 決して無視できないくらい痛みで思わず、頭を抱える。

 

「夏蓮、どうしたの!?」

 

 突然の出来事にリアスは驚きの声を上げる。

 

「いや、何か……頭に衝撃が……」

 

「ど、どこですか? 私が回復させます」

 

 そう言ってアーシア嬢が手に緑色のオーラを纏わせながら聞いてくる。

 

「いや、そこまで必要は無いよ。ていうか、一体何が……」

 

 

 辺りを見渡しても、何も見当たらない。

 

「祐斗、何か見えたか?」

 

 この中で一番目がいい祐斗に聞いてみる。

 

「いえ、殺気が感じられませんでしたし、僕には……」

 

 困惑しながら言う祐斗。

 

 朱乃や小猫に聞いてみても、同様の回答だ。

 

 おいおい、一体何が起きた? 見えない攻撃か何かか?

 

 俺たちが困惑している中、ざめざめと泣いていた一誠が声を上げる。

 

「あれ、これ……」

 

「どうした一誠?」

 

 一誠が何かを手にして、俺に見せてくる。

 

 それは……

 

「……木の実?」

 

 見たことも無いようなヤツだが、間違いなく木の実だ。

 

「何で木の実なんか拾ったんだ? 腹が減ったからそれで空腹を満たそうってか? やめとけやめとけ。腹壊すだけだぞ」

 

「俺はそんなに食い意地は張ってねえよ! そうじゃなくて、これじゃねえのか、兄貴の頭にぶつかったのは?」

 

「はあ? なんでそんな事分かるんだよ?」

 

「いや、ほら、この木の実に紅い髪が引っかかっているんだよ。これ兄貴の髪だろ?」

 

「何?」

 

 言われて、木の実をよく見てみる。

 

「……確かに、俺の髪の毛だな」

 

 一誠の手のひらに乗っている木の実には、紅色の髪の毛が一本絡まっていた。

 

 リアスのかと最初は思ったが、絡まっていた紅髪は微妙に黒っぽい……要は臙脂色をしていた。

 

 こいつは俺の髪の色だから、間違いなく俺だろう。

 

「これが俺の頭に飛んできたのか?」

 

「そうみたいね……」

 

「けど、一体誰が……? 僕は殺気なんかは感じませんでしたけど」

 

「……私もです」

 

「あらあら……」

 

 全員が頭を悩ませているその時だった。

 

 頭上から笑い声が聞こえてきたのだ。

 

「あン?」

 

 何だ? 人の笑い声じゃ無いよな……。

 

 俺は辺りを見渡す。すると、

 

「あだっ!」

 

「夏蓮!?」

 

 再び走る衝撃!

 

 こ、今度は額か……いったあ。

 

「誰だぁ!」

 

 今の一撃で大体方向は分かった。後は木の上を見れば……!

 

 そして、そこには少し濃い目の青い体皮。サイズはリスより少し大きめだろうか? 何より一番目を引くのは額に埋まっている赤い宝玉だ。

 

 あのリスもどきが俺の事を見てけらけら笑ってやがる。

 

 そうか、あの野郎が犯人か……。

 

「こりゃ驚いた! ありゃカーバンクルじゃねえか!」

 

 ザトゥージが驚きの声を上げる。

 

「カーバンクル?」

 

「ああ。あの赤い宝玉を手にしたものは巨万の富を得ることが出来るという、幸運を司るヤツだよ。俺も生で見るのは初めてだなあ」

 

「ふーん」

 

 巨万の富ねえ。正直、興味があんまり湧いてこない。

 

「で、あいつはなんで俺に木の実なんてぶつけてきているんだ?」

 

 そこが分からん。俺はあのカーバンクルという奴を今日初めて見た。そして、この森に入ってからも何かした訳でもない筈なのだが……。

 

 つーか、

 

「あいつ、単純に俺に悪戯したいだけじゃね?」

 

「それは流石に無いと思いますけど……」

 

 裕斗が苦笑する。

 

 いや、あれはどう見ても俺をやる気満々だったと思うね。

 

「……確かに笑っていますね」

 

 小猫が上を見上げながら言う。

 

 俺にちょっかい出して何が楽しいんだろうか、あのリスもどきは。

 

「きっと、夏蓮の髪に惹かれたのではないですか?」

 

「髪ぃ~?」

 

 朱乃の言葉に俺は疑問を覚えてしまう。

 

 そりゃあ、俺は紅髪だし、あのカーバンクルの額に付いているのは赤い宝玉だ。まあ、分からないのでもないが……。

 

「だけどよお、綺麗さで言えばリアスの方が上だろう? 髪だってさらさらだし……」

 

「え、そ、そうかしら……?」

 

 リアスが少ししもどろしながら髪をいじっている。

 

「で、どうするよ? あのカーバンクル、お前さんの事が気になっているみたいだぜ?」

 

 ザトゥージはそう言ってくるが、気乗りはしてこないな。

 

 そう、それは勿論、

 

「人の頭に木の実ぶつけてくるやつなんてこっちから願い下げだね。帰ろうぜお前ら」

 

 くるり、とカーバンクルから背を向けて歩き出す俺。

 

 しかし、そんな俺の後頭部にまた衝撃が走る。

 

「っ!」

 

「あ、兄貴……」

 

 む、無視だ。こんなのに一々構っていたら体が持たん。ここは……。

 

 そして再び来る衝撃。今度は二発だ。

 

 この野郎……。

 

 思わず、オーラを体に身に纏わせてしまう。

 

「兄貴落ち着け。相手は高々、リスみたいなヤツだ! 相手にする事……って!?」

 

 俺を落ち着かせようとした一誠が頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 

 見れば、今度は石が落ちていた。どうやらこれらしいな。全く持って面倒な。

 

「はあ……! もう付き合ってられるか! 帰ろうぜお前ら」

 

 いい加減、バカバカらしくなってくる。あんなちみっこいやつに何を苛立つ必要があるっていうだよ全く。ああさっさと帰ってベットにでも入ろうか。うんそうしよう。寝ればこのイライラも収まってくるだろうしな。ほんと……。

 

 そこまで考えた俺に、最大のダメージが襲う。

 

 ――頭の頂上に。

 

 俺の頭を超える面積を誇る巨大な石が降ってきたのだ。

 

 腹を抱えてゲラゲラ笑っているあの怨敵(カーバンクル)を見るに、あいつがやったのだろう。

 

 どうやってあの小さな体でやったのかとか、俺の頭の上に持ってこれたのか、んなもん関係ねえ。

 

 ……あのクソリス。ぶっ殺してやる。

 

 ギロリ、と睨み付ける。しかし、俺のオーラに気づいたのか、カーバンクルは直ぐに別の木の上に移動し始めてしまった。

 

 ふっ、良いだろう。鬼ごっこか。この『鬼』に挑もうとはいい度胸だ。

 

「お前ら、少し待っててくれ。ちょいと用事が出来た」

 

「夏蓮……?」

 

「なあに。直ぐに終わる。取り敢えずは」

 

 ――あいつは確実に絞めてやる。

 

 




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