ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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使い魔編は前後編で終わると言った話。嘘です。

いやー話を膨らませたらどんどん筆が乗って。気が付いたらこんな感じに。

では、今回もどうぞ。


中編

「くそ、あの野郎どこに行きやがった!」

 

 辺りの木々を見渡しながら俺は思わず毒づく――割とボロボロな姿で。

 

 目を凝らせども怨敵の姿は見る事は出来ない。その事が余計に俺の心を苛立たせていく。

 

 あーやべ。マジで殺意が芽生えてくるぜ。あの野郎ヒトを馬鹿にしやがって。

 

 あの後、俺とカーバンクルは血で血を争う『鬼ごっこ』を開始した。

 

 俺が地面を走るのに対し奴は木を利用した縦横無尽な方法で俺から逃げた。

 

 最初は俺も木を利用し等も考えたが、生憎と俺にそんな忍顔負けの移動は出来ない。仕方なく地面を走ったわけだが……。

 

 

 

 あいつ本当に幸運を司っているんだろうなあ。

 

 

 俺があと一歩という所まで追い詰めても俺が転んだり。

 

 木の枝が顔にぶつかったり。

 

 何故か俺がちょうどすっぽりと入れそうな穴に俺が落ちたり。

 

 兎に角、俺にとっては完全に運が無いような状況だ。

 

 おかげでもう体はボロボロ。制服も所々切れてしまっている。

 

 あーもう。俺も魔力一つで服を替えたい。リアスに今度教えてもらう。

 

 

 というか、どうもあの野郎、俺との『鬼ごっこ』を楽しんでいるな。こっちがムキになればなるほどあいつを喜ばせるような感じだよな。

 

 あーくそ! どうも感情がうまく制御できん。あいつをブッ飛ばさないと腹の虫が収まらん。

 

「つーかここ何処だ」

 

 周りを見渡してもさっきから森の風景は全然変わらない。

 

 だが、何となくだが雰囲気で分かる。どうも随分と奥にまで入り込んでしまったようだ。

 

 そういや、ザトゥージが最近森の奥地で物騒な魔物が出るとか言っていたな。あいつが薦めていたティアマットやヒュドラとはまた違った奴らしいが……。

 

「……あれ、もしかして俺やばい?」

 

 ライザーを打ち破ったとはいえ、今の俺の強さは酷く中途半端だ。禁手化(バランス・ブレイク)もまだ調整を繰り返している途中だ。

 

 流石にあいつを超えるやつが出てくる俺も少しやばいな。この未踏の地で戦うとなると、流石に……。

 

 仕方ない、ここは帰るか。っても、元来た場所も分からないんだけどな! はっはっはっはっはっはっはっは!

 

 はっはっはっはっは…………。

 

「……迷子だな俺」

 

 やっべえええええええええ!? ついつい熱くなりすぎたあああああぁぁぁぁ!!

 

 うわーどうしよう。後先考えずに行動したらとんでもない事になっちまった。この年で迷子とか笑えねえよ!

 

 んー。迷子になったら基本的にその場から動かない方が良いんだけど。例の危険な魔獣何かが出てきたら不味いよなあ。

 

「しゃあーない。戻るか」

 

 取り敢えずあのカーバンクルは置いておこう。

 

 しっかし、今更だが、俺らしくも無かったな。高々あの程度であそこまでキレるとは。

 

 お師匠様も言っていたじゃないか『心は常に冷静に』と。駄目だな俺は。帰ったら修行を再開するか。

 

 俺が決意を新たにした瞬間だった。

 

 突如、俺の頭に鈍い痛みが襲う。続けざまに二度。

 

「……………」

 

 無言で下を見下ろすと、同じような大きさの石が二つ転がっていた。

 

 俺はその一つを拾う。

 

『キャアキャキャアアキャア!!』

 

 首をぐるり、と回すと、クソリスが腹抱えてゲラゲラ笑っていた。

 

「……オーケー」

 

 手に持った石を思いっきり握りしめる。力を入れ過ぎたのか、小石が粉々に砕け散った。少し、手のひらを傷つけてしまった。

 

 だが、今の俺にとってこの痛みもむしろ現在抱いている怒りを増幅させるいい薬になる。

 

「そんなに鬼ごっこをやりたいのか? 安心しろ。かつては『鬼』なんて呼ばれたこともある俺だ」

 

 ――必ず捕まえてやるよ。

 

 ギロリ、と睨み付けてやる。すると、カーバンクルは再びこちらに背を向けて木々を跳んでいった。

 

 ……ふっ。

 

「待てやおらあああああああああ!!」

 

 鬼ごっこの再開じゃああああああああ!!

 

******

 

「もう、夏蓮ったらどこまでに行ったのよ」

 

 森に生い茂る木々に足を取られそうになりながら、私、リアス・グレモリーは自身の眷属の行方に頭を悩ませていた。

 

 今日はいまだに使い魔を持っていない眷属たちに契約をさせようとしていたのだが、結局成功したのはアーシアだけだった。

 

 まあ、それ自体は仕方のない事だ。寧ろ一回目でそれもかなり希少な子供ドラゴンと契約が出来たアーシアが例外なくらいだ。

 

 イッセーはもういつも通りとして。夏蓮は今回はあまり乗り気では無かったようだが。

 

 しかし、何が駄目だったのだろうか。最初のティアマットやヒュドラなんて夏蓮にはお似合いだと私は最初思ったのだが……どうやら、夏蓮には駄目だったらしい。

 

 まあ、あの巨体だと、飼うのに不便かしら。流石に旧校舎を使うにしても無理あるものね。

 

 ――いや、そういう問題じゃ無いからね!?

 

 ん? 何だろう、今夏蓮の声が聞こえたような……。

 

 そうそう、夏蓮よ。

 

 いくらあのカーバンクルに木の実を大量にぶつけられてちょっかい出されたとしても、あそこまでムキになる必要あったかしら?

 

 まあ、今更そんな事言っても仕様が無いでしょうけど。

 

 カーバンクルか。私も実物を見るのは初めてだったわね。

 

 巨万の富を呼ぶと言う幸運を持っているせいか、多くの人間達がカーバンクルを求めた。

 

 しかし、そんな人間達の邪な感情を察知したのか、カーバンクルたちは殆ど人間達の前に姿を現さなかった。

 

 数が少ないせいもあるだろう。兎に角、カーバンクルは私たち悪魔にとっても殆ど幻のような存在だ。

 

 だからさっき見たときは本当に驚いたのだが……。

 

 まさかあそこまでカーバンクルが悪戯好きだったとは。まあ、あれは夏蓮にだけに対してなのかもしれないが……。

 

「それにしても随分と奥まで張り込みましたわね。夏蓮君も少し心配ですわ」

 

 私の隣を歩いていた朱乃が困ったように手を頬に当てながら呟いた。

 

「確かに。日も傾いてきましたし。少し不味いかもしれませんね」

 

「……迷子になったら大変」

 

 祐斗と小猫も同様に心配そうにしている。

 

「確かにそうね。夏蓮は今日初めてここに来たのだし、迷子になってそうね」

 

 自分で言っておいてあれだが、夏蓮はそこまで抜けて……いるかも。

 

 イッセーの前だと大人ぶっているが、同じクラス、隣の席の私からしてみれば、夏蓮も十分子供だ。

 

 男子の友人が出来ないからと落ち込んでいたり、勉強で授業を聞いているふりをしているだけだとか。その後に私が勉強を教えているのもそうだ。

 

 まあ、最近は朱乃も一緒になってやろうとしているのだが……あとソーナも。

 

「ザトゥージ、あんたさっき最近この森で危険な魔物が出るって言ってなかったか?」

 

 イッセーがふと思い出したように言う。

 

 そういえば、そんな事も言っていたわね。

 

 イッセーの言葉にザトゥージが神妙そうな顔をして頷く。

 

「ああ。本当に森の奥深くでな。ここいらに住んでいる魔物たちが次々と殺されているんだ」

 

「随分と物騒な話ね」

 

 頷いたザトゥージが話を続ける。

 

「そいつはマンティコアって言ってな。ライオンの体に蝙蝠の羽。尻尾が蠍の尾というキマイラの一種でな。こいつが中々に厄介な奴でな。非常に狂暴なんだ」

 

 ちょ、マンティコアですって!?

 

「どいうことザトゥージ、そんな事聞いていないわよ!」

 

 私は慌ててザトゥージに詰め寄る。

 

「い、いや。まさかここまで奥地に入り込むとは思ってもいなかったんだ!」

 

 ザトゥージが慌てて弁解するが、今の私にはその弁解も余裕を無くす一因になってしまう。

 

 どうしよう。寄りにもよってマンティコアなんて……夏蓮。

 

「落ち着きなさいなリアス」

 

 私がこの後の状況に考慮していると、朱乃がそう言ってくる。

 

「朱乃、何を悠長なことを……! 貴方だってマンティコアの脅威は分かっているでしょ……」

 

「だからこそ、です」

 

 詰め寄る私に、朱乃は窘めるように言う。

 

「いま貴方が取り乱したら、眷属全員が何も出来なくなってしまいます。(キング)がしっかりしなくてどうするんですか」

 

 いつもの笑顔を潜め、真剣そうな表情で言う朱乃。

 

 朱乃の言葉に、私の頭は少しだが冷静になれた。

 

 更に気持ちを落ち着かせるために息を深く吐く。

 

「……ありがとう朱乃。おかげで少し頭が冷えたわ」

 

「いえいえ。気にしないでください」

 

 私の礼に朱乃はいつもの笑みを浮かべて応える。

 

 そうね、私が混乱してどうするのよ。今は夏蓮の安全第一を一番にしないと……」

 

「あの、マンティコアって魔物、そんなに危険なんですか?」

 

 私たちの会話を黙って聞いていたイッセーが遠慮がちに聞いてくる。

 

 その質問に私は答える。

 

「そうね……マンティコアという魔物自体はそう珍しくは無いのだけれど、一番に獰猛さがあげられるわ。個体差によって様々だけど、場合によっては、目につく生き物全てに襲い掛かるかもしれない」

 

「目につくもの全て……!?」

 

「もしそれで弱かったらまだ対処のしようもあるのだけど、その獰猛な奴ほど力が強いのよね。本当に厄介なものだわ」

 

「そして、奴らの大きな特徴として、蠍の尾の先に付いている毒があげられる」

 

 ザトゥージが私の説明を引き継ぐように言う。

 

「奴らは獰猛さと更にそれを補助する知能を併せ持つ。相手の強さによって毒を使い分けてくるんだ」

 

 そう、マンティコアの単体での強さで言うならば、私たち上級悪魔でも対処は出来る。問題は毒だ。これを喰らったら相当厄介な事になってしまう。

 

「夏蓮……どうか無事でいて」

 

 祈るように私は空を見上げる。

 

******

 

 森の中を疾走しながら、カーバンクルは内心ほくそ笑んでいた。

 

 久しぶりに良い遊び相手が出来た。こちらが少し挑発するだけで面白いほど乗ってくるのだ。

 

 ここ最近は森に入ってきた魔物が原因であまり他の魔物たちを見なくなってしまった。

 

 おかげで退屈した日々を送っていたが、つい先ほど、面白い者を見つけた。

 

 初めは森によく来ている使い魔インストラクターの悪魔が見慣れぬ悪魔たちを連れてきたことから興味を持った。そういう事は良くあったのだが、今回はその悪魔たちのオーラが他の者たちより数段上だったのが気になった。

 

 そして、その中でも一際カーバンクルの目を奪ったのが悪魔たちから夏蓮と呼ばれていた男悪魔だ。

 

 一目見て気に入った。理由などない。強いて言うならば、勘。ただ気に入ったから手を出した。

 

 自分の勘はどうやら正解だったようだ。彼は今まで遊んできた中で一番の相手だ。一番楽しかった。

 

 さて、次はどんな悪戯をしてやろうか。石や木の実を投げるのは少し飽きてきた。落とし穴にもう一回はめるのも悪くないだろう。いや、次は木を倒してやろうか。

 

 ワクワクしてきた。もうしばらくは遊んでもらいたい。その為には――。

 

『……?』

 

 そこでふと、気づいた。悪魔にどんな仕掛けをしてやろうかと、深く考えていたせいか、周りが全然見えていなかった。

 

 だが、今確実に気が付いた。決して間違いではない。

 

 ――辺り一帯に漂う濃密な血の匂いに。

 

『…………』

 

 知らず、息を呑みこむ。全身の毛を逆立て、辺りを警戒する。

 

 これは、不味い。もしかしなくても、命の危険に晒されている。

 

 間違いない。これは恐らくヤツの……。

 

『何だぁ? 面白そうな奴がいるなあ』

 

 ぞっとするような声音。

 

 ポタリ、ポタリ、と後ろから何かがたれ落ちる音。

 

 振り向きたくない。振り向いたら終わりだ。だが、振り向かないとやられる。

 

 恐る恐るカーバンクルは後ろを振り向く。

 

 そして、そいつはいた。

 

 まだ時間が経っていないのだろう。口から零れ落ちている血は湯気を立てている。そしてその量は尋常ではない。

 

 大地を踏みしめる四肢も同じく血に染まっている。体全体を使って相手に喰らいついたのだろう。

 

 蝙蝠の羽を畳み、蠍の尻尾をこちらに向けながら魔物――マンティコアは血に濡れた口をニタァと笑みの形にする。

 

『ほう、カーバンクルか。見るのは初めてだな。この森に棲んでいるとは聞いていたが、こんな所で出会うとは』

 

 やばいやばいやばいやばい! どうする? どうすれば……!

 

『くふふふふふ……俺も運が良い。幸運を司るカーバンクルはさぞ美味であろう』

 

 その言葉を聞いた瞬間、カーバンクルは走る。

 

『お?』

 

 呆けたような声をマンティコアは出すが、そんなものは無視だ。兎に角この場を離れなければ。

 

 自分のこの小さな体を使えば何とか逃げられる。

 

『逃がさないぜぇ~?』

 

 刹那、自分の首筋に何か鋭い痛みを感じる。

 

 気が付いたときには体が痙攣し、横たわっていた。

 

 何が起きた? どうして自分の体は……。

 

『くふふふふ、俺の毒の味の感想はどうよぉ? お前に入れたのは麻痺のヤツだ。なーに直ぐには殺さないさ。お前みたいなのは足から順番に喰いちぎってやるよぉ』

 

 気味悪い笑みを浮かべながらマンティコアがこちらに歩み寄ってくる。

 

 何とか体を動かそうとするも、痙攣するだけで何も出来ない。

 

 このまま終わるのか? こんな誰もいないような寂しい場所で一人惨めにこんな薄汚いやつに。

 

 くそ、くそ。

 

 せめて。せめて、あの悪魔をもう一度からかいたかった……。

 

『じゃあいただきまーす』

 

 こんな所で……!

 

 自分の終わりに、目を瞑ってしまうカーバンクル。

 

『ぐおっ!?』

 

 だが、終わりは来なかった。

 

 恐る恐る、目を開けると、自分を食べようとしていたマンティコアが横に吹き飛ばされていた。

 

 一体何がどうなって……。

 

 混乱しているカーバンクルの体がひょいっと持ち上げられた。

 

「――よお、捕まえたぜ、リスもどき」

 

 そう言って不敵に笑うのは、今まで自分がからかい続けた。紅髪の悪魔だった。




いかがでしょうか? 感想、意見待っています。

日曜は母校の文化祭。友人と行きたかったけど、時間がかみ合わなかった……。

ちくしょう、もう少し休みくれ大学!
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