ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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はい、漸く第三章の始まりです! この章はオリ主の過去は大体四分の一は明かされる予定ですね! ちゃんと書けるか不安ですが……。


第三章
昔は……


 ――人は自分たちとは違うモノを極端にまで嫌う。それは最早ある種の本能みたいなものなんだろう。

 

『赤鬼だー! 赤鬼が出たぞ!』

 

『あっち行け化け物!』

 

『お前なんてこっから出ていけ!』

 

 それは特に子供がやることだ。子供は忌避感が無いとか言うがそれは大きな間違いだと俺は思っている。

 

 子供ほど残酷な存在はいない。子供の言葉ほど胸に突き刺さるものは無い。

 

 何度絶望しかけたか。何度世の中を恨みに恨んだか。

 

 だけど、その度にあの人の言葉を思い出していた。

 

『良い夏蓮? 他人と違う事の何がいけないと言うのよ。そもそも、違いなんて言っている時点で、それはもう自分が相手より劣っていると認めているようなものよ。つまり最初から負けを認めている。そんなヤツをどうして恐れる必要があるのよ?』

 

 あの人――母様は不思議な人だった。

 

 あの人と相対すると、常に俺のすべてを見透かされているようなそんな感じがしてきた。

 

 俺が大ゲンカをして帰ってきたときも直ぐにバレてこっぴどく叱れられた。

 

 そしてその度に先ほど言葉を言われ続けた。

 

 当時の俺は分からなかったが、恐らくあの人なりの慰めだったんだろう。少なくとも俺はそう感じている。

 

 母様は当時の俺にとっての全てだった。だから、だからこそ、俺は――。

 

 

******

 

「夢見心地最悪だな……」

 

 自室の天井を見上げながら俺は思わず呟く。

 

 嫌なものを見てしまった。悪魔になってから変な夢ばかりを見ている気がするな。

 

「…………」

 

 無言で横を見ると、そこにはリアスがいた。

 

 ――全裸で。

 

「……はあ」

 

 思わずため息を付いてしまう。

 

 ライザー戦の後リアスがこの家に住むようになり、別段それはもう構わないのだが、悩み事は多い。

 

 何故か俺と一緒に寝たがるのだ。それも毎回の如く。

 

 俺だって健全な高校生男子だ。そりゃあ可愛い子は好きさ。

 

 けどな、考えても見てほしい。全裸の美少女は毎晩同じベットで寝ていたらどうよ?

 

 リアスからしてみれば主と下僕のスキンシップかもしれないけどさ! 俺にとってある意味苦行の一つでしかない!

 

 ……まあ、そんな事言えないんだが。

 

 俺がじっとリアスの方を見ていると、リアスの瞼がゆっくりと開いていく。

 

「…………」

 

「…………」

 

「………………」

 

「……」

 

 …………なんで俺たち無言で見つめあっているんだ?

 

「……おはよう夏蓮」

 

「……おはようリアス」

 

 漸く挨拶する俺たち。

 

 おいおい。いやまあ、確かにこの漫画やら小説やらのシチュエーションみたいな状況だけどよ。何で俺はこんなに気まずいんだ。別に今日が初めてって訳でも無いんだぜ? なのに何故かいつも気まずいんだよなー。

 

 全く何を動揺してんだか……。ほんと……

 

「……えい」

 

「っ!?」

 

 うん? うん? うん?

 

 何か柔らかいモノが俺の口を塞ぐ。

 

 それがリアスの唇なのは、直ぐに分かる。

 

 数秒後、唇が離れる。

 

 恐らく、俺の顔は相も変わらず真っ赤に染まっているだろう。

 

「改めて、おはよう夏蓮」

 

「……おはようだよこんちくしょー」

 

 

******

 

 放課後、俺たちオカルト研究部は俺の部屋に集まっていた。

 

 ……うん、俺の部屋だ。旧校舎にある部室では無く。

 

 今日は旧校舎が使えないので俺たちの家で部活をする事になったのだが、そこに義母さんがアルバムを持って現れた。

 

 どうやら、義母さんは一誠が女の子を連れてきたら昔の写真なんかを見せたがっていたようだ。

 

 まあ、あいつは昔から少し面白、もとい、行動していたからな。写真を見るだけで面白いかもな。

 

「で、これが一誠の海に全裸で入った時の写真よ」

 

「うわああああああああ母さん見せんな!」

 

 母さんが出す写真を一誠が必死になって止めていた。

 

 ……流石にそこまでは知らなかったが、お前どんだけぶっ飛んでいたんだよ。

 

「あらあら、この頃から元気が良かったんですね」

 

 朱乃はそう笑って言うが、元気が良いで済まされるのかこれ?

 

「ふふ、イッセーは昔からイッセーだったのね」

 

 リアスもそう言うが、まあ何となくそれは分かる。

 

 しっかし、これは面白い。俺が一誠と交流が出来たのは小学校からだから、こういうのは割と俺も知らないんだよね。だから俺もある意味新鮮だ。

 

 さてさて、何かあるかなー。

 

 俺が次のアルバムを取ろとした時だ。

 

 じいっと視線を感じた。

 

 何だ? 俺は視線の方向を向く。

 

 そこには小猫ちゃんがいた。床に座っており、ひざ上にはアルバムの一つが置いてある。

 

 そのアルバムと俺に視線を交互にしていた。

 

「……何かな小猫ちゃん」

 

 流石に気になって聞いてみる。

 

「っ!…………何でもありません」

 

 ウソ付け。じゃなきゃそんな目が泳ぐことなんて無いだろうが。

 

 しかし、アルバムを見て俺を見る。まるで信じられないものを見るように。

 

 はて、何かあったかな……あ。

 

「やべ」

 

 漸く気づく。小猫ちゃんが何を見ていたのかを。そしてそれがどれだけ俺にとっての黒歴史なのかを。

 

「小猫ちゃーん。そのアルバム俺に渡しなさい」

 

 小猫ちゃんに近づくながら俺は言う。

 

 不味い不味い。あれだけは絶対に見られるわけにはいかんのだ。

 

「あら、どうかしたの?」

 

 リアスが俺たちの様子を見て聞いてくる。

 

「……これ」

 

 小猫ちゃんがアルバムをリアスに手渡そうとする。

 

「待て小猫ちゃん! それを渡してくれたら好きな物奢ってやる!」

 

「!」

 

 一瞬、迷う様に肩を震わす小猫。

 

 行けるか!? 俺がそう思った矢先。

 

「夏蓮、貴方が本棚の裏に隠してカバーを表裏逆にしたヤツ……」

 

「どうぞ見てくださいこんちくしょーが!」

 

 諦める。諦めざるを得なかった。

 

 馬鹿な、何でリアスがあれの存在を知っている!? あれはリアスが家に来たと同時にさっきリアスが言っていた場所に厳重に保管しておいた筈だ! 隠すときもリアスが風呂に入っているときを見計らったのに!

 

 がっくりと項垂れていると、リアスや、他の奴らも興味津々な様子で件のアルバムを見る。

 

「え……」

 

「あらあら、これは……」

 

「もしかして……」

 

「こ、これって」

 

「あーこれか」

 

 三者三様の反応を見せるオカルト研究部。

 

「ねえ、夏蓮……この子、貴方?」

 

 物凄く気まずそうにアルバムから写真を取り出して俺に見せてくるリアス。

 

 写真に写っていたのは一人の男の子だった。

 

 但し、とんでもない、が付くが。

 

 兎に角、目つきがやばい。もうその視線だけで相手を殺せるんじゃないかっていうぐらい目つきが鋭い。

 

 まるで目に映るもの全てが敵だと思っているような目だ。

 

 そして、この子のもう一つ目を引くのが紅色の髪だ。

 

 ぼさぼさな状態だが、それでも写真からは髪そのものの質は失われている気がしない。

 

「うん、俺だよ」

 

 まあ、俺の小さいころの写真なわけだが。

 

「す、すごい目つきね。そんなに写真が嫌いだったの?」

 

 俺と写真を交互に見ながら言うリアス。

 

「別に。当時の俺はそんなもんだよ」

 

「そうなんですか? ちょっと意外です」

 

「……予想外の事実にびっくり」

 

 祐斗と小猫ちゃんも驚きの声を上げる。

 

 まあ、そんな表情してたら誰だって驚くよな。だから見せたくなかったんだよ。

 

「今とは想像が付きませんわね。何かあったんですか?」

 

 朱乃が聞いてくる。

 

 うーん、あんまし言いたくないんだよなー。けどまあ、言うしかないかな。

 

「俺って昔は結構な悪ガキだったんだよ」

 

「悪ガキ? 夏蓮が?」

 

 信じられないようような目で俺を見るリアス。

 

 

「あー確かにそうだったな。兄貴この辺りでもめっちゃ有名だったもんな」

 

 昔を懐かしむように一誠は天井を見上げる。

 

 そういや、一誠は知ってるか?

 

「いやー昔はさ、この髪で色々と言われてさ。何やかんやでそいつらボコボコにしてやったわけよ」

 

「ボコボコ……?」

 

 アーシアが不思議そうに首を傾げる。

 

 アーシアには分からないか。うんまあ、分かってほしくないけど。

 

 さてさて、何故過去の俺があんな親の仇を見るかのような目つきでいるのか。一応理由はある。

 

 子供というのは酷く残酷なものだと俺は考えている。というのも、子供は親には嘘を付くかもしれないが、同年代には全くと言っていいほど嘘を付かない。

 

 今でこそ俺は自分の髪に誇りみたいなものを抱いている。が、ガキの頃はホントこの髪の色が嫌いだった。

 

 金髪や茶髪はまだしも紅髪というのは全くおらず、俺の同年代の奴らにとっては格好のからかいの的だったわけだ。

 

 当時は毎日が俺にとっては地獄だった。まるで珍獣を見るかのように俺を指さして笑ったりし、髪の事を紅ショウガなんかで染めてんじゃねえの? とか言われたときはそいつを思わず半殺しに仕掛けた。

 

 というか、当時の俺は何故か酷くグレており、もうムカつく対象は全部に対して殴り掛かっていたな。

 

 流石に女子には手を出さなかったけど、クラスの男子大半はもう完全に喧嘩して勝利したな。

 

 それからはもう何も言われなくなったけど、陰で「赤鬼」なんて言われるようになったなあ。

 

 時たま他の学校の奴が俺の「赤鬼」の噂を聞いて決闘だ! 何て勝負を挑んできたこともあったけど、全部返り討ちにしてやった。

 

「とまあ、こんな感じで泣く子も黙る赤鬼の誕生ってわけ」

 

 写真の経緯を話し終える俺。

 

 で、他の連中の反応は……。

 

『………………』

 

 

 無言。一切の音の無い無言だった。

 

「いやあ、まあ小学生の頃は色々とやんちゃもしたけど、中学の頃は収まったんだぜ?」

 

「ああ、そういや、兄貴、中学入った当初はこんな感じだったけど、ある時からぷつりと変わったよな」

 

「そうだったわね。貴方を引き取った時はどうしよかとも思ったけど、日月さんにも顔向けができたわ」

 

 安心したように頬に手を当てて言う義母さん。

 

「日月さん?」

 

 アーシアが首を傾げる。

 

「確かに、そのアルバムに一緒に……あったわ、この人よ」

 

 リアスから受け取ったアルバムから一枚の写真を見つけると皆に見せる。

 

 そこには濡れ羽色の髪を背中まで伸ばした女性が写っていた。

 

 つか、俺の母だ。

 

「この人が……」

 

「俺の母様。朝凪日月だ」

 

 子供の贔屓目を抜いても結構な美人だったと思う。覚えている限りは別段特別な事はしておらず、化粧もあまり好んでいなかった。それでいてこの綺麗さだからある意味では反則だな。

 

「うわー綺麗な方ですね」

 

「……美人」

 

 アーシアと小猫ちゃんが感嘆の息を漏らす。

 

「見かけに騙されるなよ。破天荒な人だったからな」

 

「破天荒?」

 

「ああ、家に帰ったと同時に『魚食べに行くわよ!』と言って山連れてかれた」

 

「……え?」

 

「そのまま山にある川に連れていかれて二人で魚捕っていたよ」

 

 あれは驚いた。訳の分からない内に連れられて気が付けば山に連れていかれて、山の中の川で魚を捕っていた。

 

 夏が近かったから寧ろ涼しかった。

 

 が、釣りの道具も無く、素手取るなど、素人には普通は無理だ。当然一匹も捕れん。

 

 ……何故か母様は大量に捕っていたが。

 

「何でそんな急に魚を?」

 

「うち貧乏だったんだよ。だから基本的に食料はほぼ自給自足」

 

「あらあら……」

 

 みな、何とも言えない微妙な表情をしている。

 

「日月さんは本当に豪快な人だったわよねー。私も以前助けてもらったことがあったのよ」

 

「そうなのですかお母様?」

 

「ええ、その時の縁から仲良くさせてもらったわあ」

 

 義母さんが懐かしむように言う。

 

 その後、俺の昔の話をリアスや朱乃が妙に聞きたがったり、一誠の恥ずかしい過去が赤裸々に暴露されたりと、中々に楽しい時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 しかし、俺はその時気づくべきだった。一枚の写真を見る祐斗の表情を。

 

 写真――その中に映る一本の剣を見るあいつの顔はどこか見覚えのあるような顔をしていた。

 

 今思えばこの時から今回の件はもう始まっていたんだろう。

 

 

 

 

 あいつの過去の決着も。

 

 

 

 

 

 そして、俺とリアスの過去も。

 

 

 

 

 もう止まらない。ここから先は一本道。寄り道することも止まることも許されない。

 

 




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