ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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俺、死んだ!?

 唐突な話だが、俺は読書が趣味な高校三年生だ。

 

 読んでいる本はミステリーに、後は神話関係の物などが多い。

 

 神話に関してはそこそこの知識を持っており、色んな伝説を知っている。

 

 そんな中で、堕天使というのは結構有名な存在だ。

 

 堕ちた天使。神に反逆した存在。名のある悪魔も堕天使という観点を持つ。

 

 つまりは、俺が何が言いたいかというと――

 

「堕天使は堕天使で厄介な強さを持っているんだよ……」

 

 俺の目の前で漆黒の翼を広げている黒コートの男を見ながら俺はそう呟いた。

 

***

 

 何か堕天使っぽい何かと追われている一誠と遭遇した俺こと、兵藤夏蓮。何故堕天使かと分かったのは、羽が堕天使っぽいからだ。

 

 まあ、今はそんな事は置いておこう。それよりもこの状況をどうするかだ。

 

「おい、一誠どういう事だ。何で堕天使っぽい何かに追われてんだ?」

 

「俺だって分からねえよ!! いきなり追っかけてきて。てか堕天使?」

 

「ん? 何か似ているしさ」

 

 それまで黙って話を聞いていたのであろう黒コートの男が、俺の方を興味深そうに見た。

 

「ほう……私が堕天使だと見抜いたか。一般人とは見えんな? となると、貴様もこちら側の者か? その紅髪、まさかグレモリーか?」

 

 おいおい……マジで堕天使だと言うのかよ。つうかグレモリー? 何でそこでリアス嬢の名字が出てくるんだよ?

 

「ふむ、その様子だとそちらの”はぐれ”同様何も知らんようだな……ならば、殺しても問題無い」

 

 ――ぞくっ……。

 

「……っ」

 

 やばい、やばいぞコレは。お師匠様の時とも、美咲達との時とも違う。

 

 こいつは、本気で俺たちを殺す気だ。

 

 道場で修行していた頃、お師匠様や美咲達からも殺気を受けたことはあった。だが、それは真剣勝負でヒートアップした所為で、本気で殺そうとしたことは一度も無かった。

 

 だが、この黒コートの男は間違い無く、俺たちを殺そうとしている。何の躊躇いもなく、躊躇する事もなく、一切の慈悲も無く。

 

 ……どうする、考えろ。思考を止めるな。

 

 戦うことは不可能。となると逃げる一択となる。だが、あれだけ早く走っていた一誠が追いつかれたのだ。どこかで巻く必要がある。

 

 其処まで考えて、俺はある自分の異常性に気がついた。

 

 ――俺、何でこんなに冷静なんだ?――

 

 普通、こんな状況と遭遇すれば、間違い無く取り乱したり、直ぐに逃げだそうとするだろう。

 

 だと言うのに、何だ俺は? ()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()

 

 ……考えるのは後にした方が良いな。どうせ、答えなんて直ぐに出るはずが無いんだから。

 

 さて、どうするか。

 

「なあ、堕天使さん」

 

「ん? 何かね?」

 

「とりあえずさ、何でこの愚弟を殺そうとしているのか、教えてくんない? 訳が分からないまま死ぬのは流石に目覚めが悪いし」

 

「ふむ。それもそうだな。いや何、彼が”はぐれ”だからだよ。このまま放置していると私達の計画の邪魔になりそうだからね。前もって殺しておこうと思ってね」

 

 ”はぐれ”? はぐれって事は群れていないって事だよな。一誠がそれだと?

 

「もう良いかね? 流石にネズミ狩りはそろそろ終わらせたいのでね」

 

 黒コートの男は手を上げると、掌に光の槍を出現させた。

 

 ……仕方ない。こうするしか無いか。

 

(一誠、俺が隙を作る。その隙を突いて逃げろ。ついでに誰かに助けを求めろ。変質者に兄が襲われているとでも言っておけ)

 

(あ、兄貴!)

 

(良いか? 迷わず走れ)

 

(っ、分かった)

 

 会話を終えて、黒コートの男に視線を戻すと、男はそのままの体制でいた。

 

「別れの挨拶は済んだかね? まあ安心するが良い。仲良く消滅させてあげよう」

 

「言ってくれるね。俺たちが逃げられると思っていないのか?」

 

「ふっ、”はぐれ”一匹に人間。逃がさない方がおかしいよ」

 

「けっ……そうかい!」

 

 叫ぶと同時に、俺は堕天使に向かって走り出した。

 

 対して黒コートの男は特に動じることも無く、こちらを見て笑っていた。

 

 ……完全に舐めているな。俺ってこういうヤツ見ると、ぶっ飛ばしたくなるんだよな!

 

 だが、熱くなるな。心は冷静に。体は熱く。お師匠様の教え通りにだ。

 

 黒コートの男は、手に生み出した光の槍を投擲するように俺に投げつけたっ!

 

 ――速い!――

 

 俺の事舐めている割に速いなおい!! もう少し見えるようにしろっての!

 

 そう毒づくも、光の槍が速度を遅くするわけでも無く、真っ直ぐ俺に向かってきている。

 

 ……落ち着け。ギリギリまで引きつけろ。そして、

 

「――此処だ!」

 

 見事、俺の心臓を一突きしようとしていた光の槍を、俺はすんでの所で躱そうとするが、完全に避けきれず、脇腹を大きくえぐってしまう。

 

「ぐうっ……!!」

 

 痛いなんてもんじゃねえ……! お師匠様の蹴り以上じゃねえか!!

 

 けど、此処で止まる訳にはいかん! 俺一人なら良いが、後ろには一誠がいる。あいつはまず逃がす!

 

 槍を躱すとは思っていなかったのであろう。驚いている男との間合いを詰めた。

 

「っ!」

 

 俺との距離が殆ど無くなっていることに気がついた男は、再び光の槍を出そうとしているのか、手を再び掲げるが、

 

「甘いっ!」

 

 その前に動く! 

 

 俺は前もって緩くしておいたペットボトルの蓋を開けて、中身を男の顔面目掛けてぶちまけたっ!

 

「うおっ!?」

 

 さすがに堕天使でも顔面にいきなり水をぶっかけられたら驚くか。

 

 そして、此処に――!!

 

 俺は左足を踏み込み、そのまま右手の拳を男に思いっきりぶち込む!!

 

「ぐふっ!?」

 

 男は信じられないと言った表情で若干悶絶していた。

 

 ……今ので大抵の人間なら内蔵にダメージが来るくらいの力で殴ったんだが、堅すぎる。こいつマジでヒトじゃ無いんじゃねえの?

 

 って、そんな事考えている場合じゃない。急いで一誠を――!!

 

「今だ一誠! 逃げろ!!」

 

「っ!」

 

 一瞬迷いを見せたが、直ぐに俺の言う事に従い、踵を返して走り出す一誠。だが、

 

 ――ヒュン!――

 

「ぐあっ……!」

 

「っ! 一誠!?」

 

 少し走った一誠の両足に、光の槍が突き刺さった!! おいおい!

 

 ――ザシュッ!――

 

「な……」

 

 俺の腹辺りだろうか……? 何かが突き刺さったのか……?

 

 俺はゆっくりと、腹の辺りを見ると、

 

「……やべぇ」

 

 巨大な光の槍が突き刺さっていた。

 

「ぐうっう!!」

 

 マズイ! さっきの光の槍がかすったレベルじゃ無い!! 痛いなんてレベルじゃ無い。

 

 あまりの痛さに、俺はその場で倒れ込んでしまった。

 

「……いやはや、確かこの国の諺に”窮鼠猫を噛む”というのがあったかな? まさしくその通りだと思ってしまったよ。今度からこういう場面になるときは、油断せずにちゃんと仕留めることにしよう」

 

 その言葉と共に、落ちていた帽子を取りながら男は立ち上がった。

 

「おいおい……結構……本気で……殴ったつもり……なんだが」

 

「人間にしてはなかなかの威力だったよ。思わず一瞬悶絶してしまったよ」

 

 一瞬かよ。思わず口で毒づきそうになってしまった。

 

 くそ……こうなるなら、”アレ”を使った方が良かったか? ヒトに向けるには思わず気が引けたから使わなかったが……。

 

「さて、コレから死んで貰うわけだが、中々奮闘した褒美だ。我が名を教えよう。

 我が名はドーナシーク。至高なる堕天使の一人だ」

 

 マジで堕天使かよ……。ああ、くそっ。せめて一誠は逃がしたかったな……。つうか、その前に俺、このままじゃ死ぬな。

 

 どうするかな……。一誠の幻の彼女を追っていたらこうなるとは……。ああ、まだ読み終えていない本とか有ったな……。あと、帰ったら食べるつもりだったアイスも有るし……。

 

 考えると、俺って未練タラタラだな……。

 

 くそ……満足して死ねる事なんて滅多にないが、それでもこんな若い時に死ぬとは。

 

「痛いかね? 悪魔程では無いが、人間にも光はかなりのダメージだしな。このままにしておくのも気の毒だな。先ずは君から楽にしてあげよう」

 

 そう言うと男、ドーナシークは再びその手に光の槍を作り出した。

 

「あ、兄貴っ!!」

 

 後ろから一誠の悲痛そうな叫びが聞こえる。

 

 済まんな一誠。恰好いい言葉言っておいてこのザマとは……。情けなくて涙が出るよ。

 

「では、さらばだ」

 

 そう言って、ドーナシークは光の槍を俺に突き刺そうとしたが、

 

「――彼に触れないでちょうだい」

 

 突然響いた声に、ドーナシークは手を止めた。

 

 正直なところ、俺はこの声の主に完全に覚えがあった。だが、心のどこかで彼女では無いのではと、思っている部分もある。何せ、普段の彼女からは想像も付かないほど冷たい声だからだ。

 

「紅い髪……グレモリーか」

 

「ええ、リアス・グレモリーよ。こんばんは堕ちた天使さん」

 

 俺はノロノロと顔を上げる。すると、直ぐ側に俺のクラスメイトにして友人、リアス・グレモリーが立っていた。

 

「成る程、あちらの彼は君の所の者か。こちらはやはり君の縁者かね?」

 

「まあ、そんな所よ。彼らにこれ以上手を出すならば容赦はしないわよ?」

 

 ……殺気しか感じられねえよ。やばいよコレ。リアス嬢怖いなおい。

 

「そちらの者か……今回のことは詫びよう。だが、下僕は放し飼いにしないことだ。私のよ

うなものが散歩がてら狩ってしまうこともあるやもしれんぞ…?」

 

「ご忠告痛み入るわ。この町は私の管轄なの…私の邪魔をしたらその時は容赦なくやらせてもらうわ」

 

「今日の所は引かせて貰おう。我が名はドーナシーク。二度と会わないことを期待するよ」

 

 そう言うと、ドーナシークは黒い翼を広げて、どこかに飛び去って行った。

 

 突然の事に、俺は思わず呆然とするが、

 

「ぐはっ!!」

 

 思いっきり血反吐を吐いちまった……。やばい、腹刺された事忘れてた――!

 

「夏蓮君、大丈夫!?」

 

 リアス嬢が俺の方に駆け寄ってくる。

 

「一誠の……方は……」

 

「彼も怪我を負っているけど、それよりも貴方が一番危ないわ!」

 

 あーやっぱり死ぬかな俺。

 

 あれ、意識がだんだん薄れて……きた。やばい……。

 

 此処で俺の意識は途切れた。

 

 だが、俺はこの時もう少し意識を保っているべきだった。そうすれば、リアス嬢の悪魔のような笑みを見ることが出来たのだから……。




いかがでしょう? 戦闘描写については未だに上手く書けません。今度からはもう少しクオリティの高い物書いていきたいと思います。

いくら武道の心得が有っても、人間と堕天使の間では大きな差が有ると思います。
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