「全く持って面倒なものだね」
夜の散歩をしながら俺は思わず呟く。
普段ならば気分よく歩き回れるが、残念ながら今回はそうもいかない。
理由は言わずもがな、祐斗の事だ。
球技大会中――種目は多々あり、俺は全敗――のあいつの集中力の無さには、普段温厚なリアスも流石に怒り、祐斗に平手打ちを食らわせたくらいだ。
祐斗はそれをも受け流すのだった。
正直、普段の祐斗とは大違いだった。ホントにあれは祐斗かと思ったほどだ。
リアスの言葉に耳も貸さずにそのまま部室を出てしまった。一誠は慌てて追いかけていったが、直ぐに一人で戻ってきたところを見ると、どうやら、祐斗は一人で出ていったようだ。
――聖剣計画。
リアスから聞いた、祐斗が関わっていた計画だ。
聖剣、文字通り聖なる剣。俺たち悪魔にとっては光の剣以上の天敵中の天敵だ。刺さったら体が消滅するらしい。マジ怖いなおい・
有名どころならエクスカリバーとか、デュランダル。日本で言うならば天叢雲剣とかだな。
聖剣は誰もが簡単に扱えるものでは無い。特別な因子を持ったのでは無いと使えないそうだ。
だが、そう簡単に因子を持った人間は中々現れない。
そこで、教会あることを思いついた。
人為的に聖剣使いを作ろうとしたのだ。
それが聖剣計画。祐斗はその被験者だったそうだ。
因子を持つ子供達をたくさん集めて、聖剣の一本、エクスカリバーに適合させようとしたのだ。
しかし、そう簡単にいくものでは無かった。
裕斗と、その同期全員がエクスカリバーに適合できなかったそうだ。
結果、祐斗たちは不良品扱い。同期を含めて全員が処分されたらしい。
裕斗だけが瀕死の状態で逃げて、死にかけていたところをリアスに拾われたらしい。
出会った当初は祐斗は聖剣とその関係者、教会の者達に深い憎悪を抱いていたらしい。恐らく、今でも復讐したいのだろう。
……何とも胸糞悪い話だ。吐き気がしてくる。
俺は宗教とかあまり好きではない。神の名のもとにと、免罪符を得て好き勝手やる人間は歴史を紐解けば大勢いる。
勿論、信仰深い敬虐な信者だっているだろうが、この場合は前者だ。
俺は、復讐は正直ありな方だと思っている。
ドラマとかで復讐なんて死んだ人は望んでいないとか良く言っているが、死者の言葉なんて誰が分かるんだよ。
それに、誰かの為とか良く言うが、結局は自分の為だ。
復讐することで前に進める事だってある。それによって、過去と決別出来る事だってあるのだから。
俺は……どうなんだろうか。
もし、俺が祐斗と同じ状況になったら、俺も復讐を望むようになるのだろうか。
――会い、たい。会いたい――
「…………」
考えを振り切るように頭を振る。
やめておこう。今考えても意味のない事だ。
そろそろ帰ろうか。一誠達もそろそろ家に戻っているころだろ。つか、帰らないとリアスに何か言われそうだな。
散歩を切り上げて、帰路に付く俺。
だが、これがいけなかった。もう少し散歩していればあいつらと鉢合わせする事は無かった。
ただまあ、こうなってしまうのは結局は俺の運と言うやつだろう。
******
家の前まで着いた俺はあることに気づく。
全身を覆う嫌な感じだ。体全体から嫌悪感が出るようなそんな感じ。
……教会関係者か。
何で家から反応が出るのかは分からないが、ちょいとやばい感じかな。
俺はいつでも
左手でドアの取っ手を掴み、一気に開ける。
「それじゃあ、失礼……え?」
「ん?」
まず最初に、俺の目に映ったのは二人の少女だった。
一人は青い髪に一房だけメッシュを入れた外人。なかなかに顔立ちは整っている。
もう一人は栗色の髪をツインテールにしている日本人らしき少女だ。こちらも中々の美人だ。なんか俺の事を目を見開いて見つめている。
で、二人の服装は白いローブに身を包でいる。正直この時点で怪しい。街中を歩けば不審者呼ばわりだな。
とはいえ、一番注目するべきは胸元に下げた十字架だ。
エクソシストか? こんな女の子たちもあんなフリードみたいな悪魔にはサーチアンドデストロイ! 的なあれか。世も末だね。
さて、玄関という実に動きづらいこの状況どう打開するか。
俺が次の一手をどうするか悩んでいると、栗色の髪の少女がわなわなと震えながら俺を指差して叫んだ。
「――何で”赤鬼”ここにいるのよ!」
…………。
「おいイリナ、いきなりどうした?」
「油断しちゃ駄目よゼノヴィア! この男、子供のころから目に付くもの全てを破壊しつくす正に悪鬼な如く男なんだから!」
「な、そうなのか!」
栗色の髪の――イリナとか言ったか? の言葉を真に受ける少女ゼノヴィア。
…………あははは、ぶっ殺す。
「おい、嬢ちゃん。俺は基本的に俺の事を”赤鬼”呼ばわりしたやつは二度と呼ばないように
「黙り無さい! まだこの町にいたなんて……ゼノヴィア! 主の名の下にこの男を成敗するわよ!」
「いや、イリナ……この男から人じゃな気配が……」
「問答無用! さあ、行くわよ」
「来いやおらあ!」
その後、突然の事に呆然としていた義母さんが再起動するまで俺たちは取っ組み合いの喧嘩を続けるのであった。
******
「幼馴染~~?」
「そうだよ……」
じゃあ何か一誠は教会のあの失礼極まりないあいつと昔からの知り合いって訳かよ。
「ほら、あれだよ。写真に写っていた俺と一緒にいた子。あの子だよ」
「ん? お前、あの子の事、男子だって言っていたじゃないか」
写真とは、幼い一誠と例の聖剣と栗色の子供が写った写真だ。祐斗の豹変もその写真が関係している。
俺が言うと、一誠はバツ悪そうにする。
「その子……女の子だったんだ。名前は紫藤イリナ」
ふむ、つまりは、
「お前、女の子を男勘違いしていたのか。とんでもなく失礼な奴だな」
「うぐっ」
こいつの勘違いってやつだな。
「し、仕方ないだろ。イリナは昔はボーイッシュみたいな感じだったから、俺も男と遊んでいる感じがしていたんだ」
「あっそ……」
ま、あの写真じゃ、中性的な容姿だから一見しただけじゃ無理かな。それでも結構な時間遊んでいたんだからそれも考え物だけど……。
「で、久しぶりの再会。喜びもつかの間、お前は悪魔、あの性悪女は天の手先になったと言うわけか」
「……え、何どうしたんだよ兄貴? イリナと何かあったのか?」
「べっつにー。ほら、よくあるだろ。会った瞬間に「あ、こいつの事嫌いだ」とかいうヤツが。それだよ、それ」
「まあ、無いとは言わないけどさ」
「とにかく!」
話を纏めるように、さっきまで黙って聞いていたリアスがパン! と手を叩く。
「無事で本当によかったわ。本来ならば問答無用で殺されていても可笑しくなかったのだもの」
まあ、フリードという前例があるからな。ふん、どうせあの女たちもあれと一緒なんだろうよ。
「それで、明日、彼女たちから会談を申し込まれたわ」
「会談……?」
悪魔たちを毛嫌いしている教会が? 何かあるって事か。
「どうも、エクソシストたちがこの町に随分と入ってきているのと関係しているようなのよ。……恐らく、何か彼らにとって緊急の事態が起きているようね」
緊急、ねえ。そういや、まだ天使サイドの奴とはまともに会ったことは無かったな。
アーシアとは彼女が悪魔になった後に会ったから、原則としては教会の人間とは言えないし、フリードは教会を追放された『はぐれ』。
堕天使と悪魔には会ったことになるが、天使とは会ったことが無いな。その内会う事があるかな? まあ、悪魔の俺と会うと言う事は戦闘の一歩手前だと思うけど。
はてさて、どうなる事やら……。
******
さて、次の日の放課後。
予定通り、あのいけ好かない紫藤イリナとメッシュ入りの少女、ゼノヴィアが現れた。
内容は、今の俺たちにとってある意味鬼門だった。
教会からエクスカリバーが盗み出されたのだ。
本来の本物というべきエクスカリバーは昔の戦争で、折れてしまったそうだ。
その後、残った破片を使い、エクスカリバーは七本に新生したという。
その内の三本が盗まれたそうだ。
聖剣くらいちゃんと管理しとけと文句を言いたくなるが、既に盗まれてしまった訳なのだからしょうがない。
そして、盗んだ奴は日本のこの町に潜伏しているそうだ。
来んなよ。盗んだそいつに対しても文句を言いたい。残念な事に来てしまった訳だが。
で、そのエクスカリバー奪還の為に教会は聖剣使い二人を派遣した。
その二人が俺たちの目の前に座る女二人。
ゼノヴィアが持つエクスカリバーは『
で、栗髪が持つのは『
んでもって、三本のエクスカリバーを盗んだのは堕天使幹部のコカビエル。聖書にも名前を残す堕天使の幹部だと言う。
いやもう、堕天使も天使もここに何か惹かれるものがあるの? ここはリアスが縄張りにしている悪魔の場所だぜ? あれか、また戦争がしたのか、あんたたちは!
……一旦落ち着こう。
で、こいつらの要求は堕天使コカビエルが奪った聖剣を取り返すまで俺たちに一切の手出しを禁じというやつだ。
要するに俺たちが堕天使と手を組まないかと心配しているのだ。
……生憎と俺たちは堕天使とそれなりの因縁も持っているから手を組むことも無い。リアスも肩を震わせながら言っていた。
最も、彼女らはその事を知らないが。
話が終わり、そのまま終わりになればそれで良かったのだが、ここでこいつらは余計な事をしてくれた。
アーシアを『魔女』として詰ってきたのだ。
彼女たちからしてみれば未だに信仰を捨てきれない彼女は目障りな存在ともいえるだろう。
彼女たちの不遜な物言いに、遂に一誠がキレた。
「お前たちがアーシアに手を出すなら俺は教会の全てを敵に回しても構わない!」
おう……相変わらず、後先考えないヤツ。そんな物言いじゃ、宣戦布告と取られかねないぞ。
「グレモリー、眷属の教育はどうなっている。今の発現は我々教会に対する宣戦布告と見ていいのかな?」
案の定、ゼノヴィアはその事を言ってきた。
こいつは……全く。
ま、そこが一誠の良い所もの一つでもあるんだが。
「それはこっちのセリフだぜ」
取り敢えず、一誠に乗ろう俺も。さっきのこいつ等の発言に思う所が無いわけでは無い。
「……それはどういう意味かな」
「言葉通りだ。そっちこそ、こちらに喧嘩を売るような数々の発言、教会は下っ端戦士には言葉を使い方も教えていないのか? だとすると、程度が知れているな」
俺の発言に、二人は殺気を募らせる。
「我らの主を侮辱するか……!」
「おっと、事実を言われて怒ったかな? 何だ、案外教会も大したことないな」
嘲笑う様に言う俺。
「夏蓮、やめなさい――!」
流石に不味いと判断したのか、リアスが止めに入ろうとする。
「……君もそこの彼と同様に我々との戦争を望んでいるのかな? それに私たちの事を下っ端と呼んでいたが、仮にも我々は聖剣を授かった身。君程度なら相手するのに問題は無いぞ」
「くっ……お前たち程度が俺とやり合う?」
――やってみるか?
俺は体からオーラを迸る。
それを見たゼノヴィアと栗髪が戦闘態勢に入る。
「ちょっとゼノヴィア、これって……!」
「ああ、どう見ても上級悪魔クラスだ。本当にこいつ眷属か……?」
ふん、今更遅い。後悔しながらぶっ倒れろ。
……なんてな。ここでこいつ等とやるなんて面倒な事でしかない。リスクが大きい。
聖剣がどれ程のモノなのかも分からない以上はな。
オーラを引っ込め、「冗談だよ。本気にするなよ」と言おうとしたその時だった。
「――良いですね。先輩、僕も混ぜてくださいよ」
…………やべ。
しまったあ。こいつの事をすっかり忘れていたよこんちくしょうめ。
顔を手で覆い隠しながら声の主を見る。
「――今度は何だ?」
どこから疲れた様に言うゼノヴィア。
「キミたちの先輩だよ。――失敗だったけどね」
******
「計画はどうかね、コカビエル」
「ああ、順調だ。バルパーの実験も最終調整に入った」
「それは良かった。私も協力をした甲斐があったというもの」
「……一つ聞きたい。何故俺に協力する?」
「どういう事かな」
「惚けるな。貴様、何百年も雲隠れしていたくせに、何故今頃になって姿を現す。しかも堕天使の俺に協力するとは」
「くっふふふふ。なに、私は私であの町に少し興味があるんだよ」
「なに?」
「安心したまえ。私は君の邪魔をする気はない。寧ろ、キミには成功してほしいと思っているのだから」
「……まあ、良い。俺の邪魔だけはするなよフォカルス」
「ああ、勿論だとも」
いかがでしょうか? 感想、意見待っています。
この話が投稿される頃はFateの第二話。テレビアニメ初の二話連続の一時間スペシャル。楽しみです!