ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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どうも、先週は風邪をひき、見事にダウンしていました。

いやあ、久しぶりにひきましたが辛いですね。皆様もどうかお気を付けて。


いや、ないわ

「で、何か言い訳はあるかしら夏蓮?」

 

「俺は無実だ。無実を主張する」

 

「残念ね、あなたに無罪主張の権利は無いわ」

 

 ちくしょう。

 

 現在俺は正座をしている。リアスの目に前で。隣には朱乃が困ったような顔で笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「夏蓮、私はもっと貴方を大人だと思っていたわ。だと言うのに……ああ、私は悲しいわ」

 

 嘆くように顔をわざとらしく振るリアス。

 

 いやあ、だってしょうがないじゃん? あの場はアレが正しいんだよ。一言言わないといけない空気だったよ、うん。

 

「かーれーん?」

 

「うを!」

 

 そっぽを向いていると、腹の底から響くような声。

 

 慌ててリアスの方に向き直ると、そこには笑みを浮かべたリアスが。

 

 だが、俺には分かる。怒っている。リアスは間違いなく怒っている。

 

「あなた、自分が怒られているって自覚が無いようね……お仕置きが必要かしら」

 

 ゆらりと立ち上がるリアス。その手には物騒極まりない魔力が込められ始めていた。

 

 いや、ちょっと待て。あれは不味い。不味すぎる!

 

「まて、リアス。落ち着け、落ち着いて話し合おう。な、話せば分かる」

 

「あら、その話を最初に放棄したのは誰だったかしら」

 

 俺です。はい。

 

「くっ! 朱乃!」

 

 ヘルプ! 俺は目で訴えかける。

 

「あらあら……」

 

 しかし、朱乃は助けず!

 

 ちくしょう!

 

「さあ、覚悟は良いかしら夏蓮?」

 

 あ、終わった。

 

******

 

「うぐ……まだ痛い」

 

 未だに痛みが引かない尻を撫でながら俺は町を探索していた。

 

 何故俺がこんな事をしているのか? そいつはまあ、色々と会った訳だ。

 

 あの時、祐斗が喧嘩に入り込み、収集が付かなくなり、一度模擬戦という形で収まり、一誠と祐斗が相手をする事になった。

 

 何故俺じゃ無いかというと、実に単純明快。一誠に押し付けたやった。

 

 ぎゃーぎゃー文句を言っていたが、そこは兄の特権。黙らせてやった。

 

 栗髪は俺と戦いたがっていたが、無視だ無視。

 

 で、始まったわけだが……最悪の一言で尽きる。

 

 一誠はもともと、聖剣何かと戦うのは初めて。上手く対処できずにやられてしまった。

 

 ……戦いの途中でイリナに洋服崩壊(ドレス・ブレイク)を仕掛けようとして、間違えてアーシアと小猫に当てたわけだが。

 

 祐斗に至ってはもっとダメダメ。

 

 

 聖剣に対する憎しみが強すぎるせいで、普段の戦い方が全くできず、力に任せた単調な攻撃しか出来なかった。そこを突かれて、攻撃全てはじき返されてしまった。

 

 けどまあ、収穫が無かったわけでもない。

 

 ゼノヴィアが持っている聖剣『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』はその名の通り、破壊力重視の聖剣だ。

 

 威力は振るっただけで地面にクレーターが出来る程で威力だ。正直、背筋が寒くなってくるね。

 

 ゼノヴィアはその聖剣を活かしたパワーファイターで、祐斗の魔剣を悉く打ち壊していった。

 

 栗髪――紫藤イリナが使う聖剣『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』は、その形状をあらゆるものに変えることが出来ると言う。

 

 普段彼女は、その特性を使い、ひも状の状態にして腕に巻きつけていると言う。

 

 色んな形状に変えることが出来ると言う事はかなり戦闘の幅が広がるな。あいつもそれを使ったトリッキーな戦法を得意とし、一誠はそれに翻弄されてしまった。

 

 しっかし、本当にエクスカリバーは七本中二本があれ程の力を発揮するんだ。他の聖剣も厄介な能力を持っているんだろうなー。

 

 つか、七本に分かれてもなおそれだけの力を持っていると言う事は、本来の状態ならばどんだけの力を有しているのだか……しかも、その最強クラスの聖剣を折ったヤツがいるってことだよな……こわ。

 

 さてさて、このように見事に惨敗した訳だが、祐斗はその後どこかに行ってしまい、失踪してしまった。

 

 このままでは最悪「はぐれ」になり兼ねない。そこで、今回の原因の一端である俺が探すことになったのだ。

 

 ま、少しやり過ぎたのは否めないかな。祐斗にも少し悪いことしちまったな。

 

 けど、あそこまで復讐に囚われていると、連れ戻すのには難しいかな。最悪、戦う事になっちまう。

 

 ……理想的なのは祐斗に奪われた聖剣の一本でも破壊させて気を落ち着かせてもらう事なんだろうけど、リアスが許可するとは思えないしなー。

 

 それにあの教会の戦士たちがそんな事をしたら邪魔をするのか! てな感じで、こっちにまで攻めてきそうな感じがする。

 

 ああ、ホント面倒だ。つうか、あの聖剣使い達、今頃何をしているのやら……。

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

 ドン引きだ。マジでドン引きする。

 

 白いローブに身を包んだ怪しさむんむんの二人組が何やら祈りを捧げている。

 

「は、貴様、グレモリー眷属の!」

 

「あー! 赤鬼!」

 

 こちらに気づいた二人が俺に話しかける。

 

 が、俺は無視する。そのまま横を通り過ぎ去ろうとする。

 

 一部、聞き捨てならない言葉が聞こえたが、無視だ無視。こんな奴らの知り合いとは思われたくない。

 

 さあ行こう。絶対に振り向くな! 振り向いたら負けだ!

 

 何で一番会いたくないやつらがいるんだよ! 祐斗出せ! 祐斗を!

 

 くそ、まあいいさっさと行くぜ。

 

「あ、ちょ、待ちなさい――」

 

 ぐううううううう……。

 

「…………」

 

 足が止まる。

 

「………………」

 

「…………」

 

「……………………」

 

 沈黙だな。

 

 見れば、二人の顔は恥ずかしそうに赤く染まっている。

 

 そして、気まずそうにそっぽを向いている。

 

 どうするか。このまま放置するのも何か気が引けるし、かと言って、なあ……?

 

 けどまあ、このまま立ち去るのも後々面倒事になるだろうし。

 

 しゃーない。

 

 諦めて俺は二人に話しかける。

 

「…………腹、減っているのか?」

 

『…………』

 

 二人そろって頷く。

 

「…………金、無いの?」

 

『…………』

 

 再び頷く。

 

 俺はため息を付いて、提案する。

 

「…………奢ろうか?」

 

 二人の返事は言うまでもない。

 

******

 

 甘く見ていた。この二人を。

 

 どうやら俺はこいつらの事を過小評価し過ぎたのかもしれない。

 

「上手い! 上手いぞ!」

 

「これぞ日本の味ってやつよね」

 

 ――この二人の食欲を……!

 

 二人の前に次々と積み重なっていく空の皿を見ながら、俺は財布の中身を計算し始めた。

 

 二人を連れて取り敢えずファミレスに入ったは良いが、二人は余程腹を空かしていたんだろう、店員さんが営業スマイルが崩れそうになるほど注文し始めたのだ。

 

 ……俺、マジで大丈夫かなあ。

 

 取り敢えず、注文したオレンジジュースを飲みながら俺は二人を見る。

 

「お前ら、どんだけ腹空かしていたんだよ」

 

 食べていたモノを飲み込んで、ゼノヴィアが言う。

 

「仕方ないだろう。イリナが路銀を全部使い果たしてしまったのだから」

 

「はあ?」

 

 首を傾げながら俺は栗髪の方を見る。

 

「な、ゼノヴィア、これは良い絵よ。聖人への愛が詰まった渾身の一品なんだから。

 

 そう言って栗髪が取り出したのは、一枚の絵画だった。

 

 その絵にはまあ、何とも奇妙奇天烈な人が描かれていた。

 

 つか、これはどう考えても。

 

「詐欺られたんだろうがどう見ても」

 

「キミもそう思うか。やはりそうだろう」

 

「うぐ……」

 

 賛同者を得たゼノヴィアは納得するように頷き、対照的に栗髪は言葉に詰まっているようだ。

 

「お前ら……実は阿保だろ。そんな事に仕事の金を使うなんて。これぞまさしく公私混同ってヤツだな」

 

 俺がそう言うと同時に、二人がテーブルを叩いて立ち上がる。

 

「訂正しろ! 私は違う。買ったのはイリナだ。つまりイリナが阿呆だ」

 

「何言ってるのよ! この絵の良さが分からないゼノヴィアの方が阿保に決まっているでしょ!」

 

「何だよ!」

 

「何よ!」

 

 ガルルルル、とまるで唸り声を上げるかのごとくにらみ合う二人。

 

 火に油を注いだのは俺だけど、こいつ等空腹の所為で苛立っているんじゃなくて、単純にお互いが嫌いなだけなんじゃねえの?

 

 とはいえ、このままにしておくのもあれだな。

 

「ほら二人とも落ち着け。こんな所で騒いでいたら他のお客さんに迷惑だろうが」

 

 いがみ合う二人の前に手を出して落ち着かせる。

 

 取り敢えず納得したのか、二人とも席に座りなおした。

 

「しっかし、お前らも凄いねえ」

 

 一先ず話題を絵から逸らそう。

 

「む、何がだ?」

 

「任務の事だよ。聖剣を奪還するので、お前ら二人だけなんだろ? 俺は堕天使には中級クラスしか会ったことは無いが、コカビエルってやつは相当な手練れだろ?」

 

 中級クラスならこいつ等のどちらかが出向けば瞬殺だ。ただ、上級クラスとなると、随分と違ってくる。

 

 他がどうなのかは分からないが、ライザーより上だろうし、こいつ等二人では厳しいとかそういうレベルじゃないと思うけど。

 

 しかも――。

 

「しかも、教会の裏切り者も始末しないといけないから大変だよなー」

 

 俺が軽く言うと、二人は目を細める。

 

「……何故、その事を知っている?」

 

 いらぬ警戒を与えたのか、二人とも臨戦態勢一歩手前まで来ている。

 

 イリナは擬態させた聖剣に手を当てている。

 

 ありゃりゃ、もしかして俺が堕天使と繋がっていると思われた? そりゃあ不味いねえ。誤解は解いておかないと。

 

「いや、考えれば分かる事だろ? 聖剣ってのは教会側にとっては切り札の一つ。そう簡単に盗られるほど警備を緩くは無い。であるならば、誰か堕天使と通じているヤツがいるはずだ」

 

 いくら堕天使でも保管場所を細かくは知らないだろう。なら教会に裏切り者がいて、そいつがコカビエルに情報を与えたんだろう。

 

 堕ちた天使に寝返るとは。そいつは、こいつらと違って神様に対する信仰が無かったんだな。

 

 俺の言葉に納得してくれたのか、二人は落ち着いてくれた。

 

「君のところの下僕、私が戦った彼、聖剣計画の生き残りなのだろ?」

 

「ああ」

 

 別にここで隠すことでもないし、恐らくこいつらはもう確信を持っているんだろう。

 

「あの計画は我々の中でも特に異端とされている。当時、計画の首謀者となっていたモノは異端の烙印を押されて教会を追放された。現在は堕天使側の人間だ」

 

「首謀者……」

 

「名はバルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

「……嫌な異名だな」

 

 少なくとも信仰深い信者が付けられる異名じゃあ無いな。

 

「そいつがエクスカリバーの事をコカビエルに伝えたのか」

 

「恐らくは」

 

「今更だが、エクスカリバーを盗んでどうする気なんだコカビエルは? 堕天使にとって聖剣は使えるのか?」

 

「使うには使えるが、恐らく君たちと同じで興味は無いはずだ」

 

「ただ、盗んだコカビエルは堕天使の中でも非常に好戦的な性格だと聞いているわ。それも原因していると思う」

 

 成程、ね。多分、コカビエルは戦争をやりたいんじゃないかな。昔の三大勢力による戦争。

 

 けど、そうなると一番困るのは俺たちだよな。四大魔王は新しいヒト達――つまりサーゼクス様たちが継いだが、その下の上級悪魔七十二柱はその半数が断絶し、配下の軍団もほぼ全滅。攻められたら一番に滅びそうだな。

 

 とはいえ、今回は教会と堕天使の問題。俺たちが首を突っ込めん。というか、リアスが突っ込ませてくれないだろう。

 

 ふと、時間を確認すると、もう一時間以上ここにいた。

 

 そろそろ出るか。いい加減祐斗も探さないといけないし。

 

「じゃあな。俺はここいらで失礼するよ。ま、成功を祈っているよ。住んでいる町で何かやられても困るし」

 

「悪魔の君に祈られても正直困るね」

 

「違いない」

 

 俺は笑いながら伝票を手にレジへと向かった。

 

 

 

 …………会計がギリギリセーフだったのは本当に運が良かったとしか言いようが無い。




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