「はーははははは! どうした小僧! 全然攻めてこないではないか!」
「っ!」
哄笑しながら極太の光の槍を何本も打ち出してくるコカビエル。
俺は翼をはためかせながら何とか躱していく。
ええい! 面倒な。おいリンド本当にこの光の槍は吸収出来ねえのか!
『難しいですね。あれくらいになると今の貴方ではエネルギーを吸収しきれなくてダメージを負いかねません。悪魔にとって光は天敵。それは分かっているでしょ?』
そりゃあな! ああもう、悪魔にとって光はダメージが大きいけど、堕天使には弱点らしい弱点が無いんだよな。
悪魔には弱点があって、堕天使には無いって何か不公平だ。ずるい。
『ずるいって……子供ですか貴方は』
呆れたように言うリンド。
だってよー。そうじゃん? 俺はそう思う。
「おわっ、と」
リンドと話していると、再び目の前を光の槍が飛び去って行った。
「ふはははははははは!! どうしたどうした!」
うぜえなあの堕天使。リアスたちは……。
「まだ戦っている最中か……」
見ればケルベロスに少し苦戦しているようだ。
流石は地獄の番犬。俺のペットに一匹欲しいかな……いや、やっぱ欲しくねえ。あんなにデカいと飼うのが無理っぽいし。エサ代だって馬鹿にならないだろう。
まあ、あの面子なら大丈夫だろう。それに、こちらに近づいてくる気配が二つある。あいつらが来るなら何にも心配いらないだろう。
というか、今更だけど何で俺ってコカビエルと一人で戦っているんだろう。
確か、校庭に辿り着いたらバルパーのヤツがエクスカリバーを使ってこの町一帯を吹き飛ばす術式を作っていたんだよな。
で、それを止めるにはコカビエルを倒さないといけないという何とも無理ゲーに近い状況で、それでもやるしかないと言う事で、いざ戦おうとしたら、コカビエルがある提案をしたのだった。
『俺と戦ってみるか?』
突然の俺指名での戦いの申し出。
これにはリアスも驚いていた。
普通なら断るべきだが時間が無かった。あの術式が完成するまでにあと一時間程度しか無いらしい。
丁度サーゼクス様が来る時間帯だ。かなりギリギリである。
俺は、勝負に乗ることにした。
つーか、コカビエルは間違いなく俺を知っている。これではっきりとした。
普通自分より格下の奴に戦いを挑むなんてそう無い。奴は俺に興味を持っている。かなり強いな。
この戦いでそれを聞き出せるかどうかがカギだな。
「はああああ!」
剣に魔力を乗せてそのまま斬撃として飛ばす!
「ほう! 面白い方法だ。だが、甘い!」
そう言ってコカビエルは手で軽々と弾き飛ばす。
それなりの魔力を込めたと思ったんだがな! やっぱそう上手くはいかないか。
俺は高速でジグザグに飛びながらコカビエルに詰め寄る。
光の槍を躱しながら俺は奴の懐に入ると、そのまま剣で斬りつける!
しかし、コカビエルも素早く反応し、光の剣を作り出し、俺の剣を受け止める!
「ちいっ!」
「クハハハハ! どうした、その程度の実力か!」
「誰が!」
鍔迫り合いながら俺は左手を奴の腹部に打ち込む。
コカビエルも直ぐ様片手で受け止める。
――かかった。
「展開!」
俺の掛け声と同時に、左手のギミックが発動し、龍の口がコカビエルに噛み付く!
「ぐあっ!」
これには流石にコカビエルも苦痛の声を上げた。
「まずはその腕を貰うぞ!」
俺は直ぐに砲撃のチャージを始める。
しかし。
「馬鹿め。そんな物待つはず無いだろう」
その言葉と同時に、噛み付いているコカビエルの腕に光が集まる。
っ! しまった!
リンド! 口を外して――!
「遅い!」
刹那、龍の口から眩い光が溢れると同時に左手に物凄い激痛が走る!
「く、そ!」
腕を外して距離を取る。
痛む腕を右手で押さえる。
やばいな……流石に不味い。
見ると、左腕の鎧も解除されて爛れた皮膚が露わになっている。
うは、やば。鎧が無かったら左腕無くなっていたんじゃねえ? ほんと、ゾッとしないな。
「っ!……マジかよ」
左腕を見ると、少しだが、煙を出して傷が広がりつつある。
マジかよ。これはヤバいか……?
「夏蓮、一旦戻りなさい! アーシア、夏蓮の治療を!」
俺の状況を見てやばいと判断したのか、リアスは大きな声を上げる。
だな。これはさっさとアーシアの治療を受けたほうが早い。
俺は素早くアーシアの元に降りる。
途中、コカビエルの追撃があるかと思ったが、奴はニヤニヤと気味悪く笑っているだけだった。
ハッ! 成程、追撃する必要も無いってか。良いだろう。その自慢、圧し折ってやる。
「夏蓮さん! 早く!」
アーシアの元に降りた次の瞬間だ。
『グアアアアアアア!!』
咆哮と共にケルベロスの一体がこっちに向かってきた!
「いぃ!?」
「きゃあ!」
やば! 油断した。くそ、間に合うか!?
俺は魔力の弾を撃ちだそうと右手を突き出す。
しかし、突如、左腕が再び痛み出す!
おいおい、ここに来て!
一瞬、魔力の生成がぶれて、気が付けば既にケルベロスは俺たちの目の前まで来ていた。
くそ、ミスった。ええい! せめてアーシアだけでも!
アーシアの盾になるべく前に出る。
「兄貴! アーシア!」
一誠の声が響く。だが、この距離じゃ――!
もう駄目かと思ったその時だ。
突如、ケルベロスの下の地面から無数の剣が突き出た!
『ギャアアアアン!?』
突然の事に対応できなかったケルベロスは為すすべ無く剣の山の餌食となる!
これは、魔剣群か? なら……!
「――お待たせしました夏蓮先輩」
言葉と共に俺たちの前に降り立つ奴。
たく、おせえよ!
「祐斗! 遅刻は厳禁だぜ!」
俺の言葉に奴――祐斗は振り向いて苦笑いを浮かべながら言う。
「ははは、そこは先輩としての懐の広さをお願いします」
「調子の良い事言いやがって」
全く、この後輩は……。
「祐斗さん! 無事だったんですね!」
アーシアも感激極まって目じりに涙を貯めていた。
「あー、アーシアちゃん? 取り敢えず俺の怪我の治療してくれない?」
「は! そうでした! すみません直ぐにやります!」
忘れていたんかい! 思わず突っ込みを入れたくなるが、まあアーシアには勘弁しておいてやるか。
さて、状況は少し好転してきたかな?
見れば、あちらにはゼノヴィアも合流してケルベロスの頭の一つを切り落としていた。
リアスたちも残りのケルベロスを順序良く倒していっている。
行けるか? そう思った矢先だ。
「――完成だ」
ケルベロスを全て倒した直後、バルパーの声が校庭に響き渡る。
野郎の方を見ると、奴らが奪った四本のエクスカリバーが徐々に一つに重なろうとしていた。
融合するってか? 七本中四本のエクスカリバーが元に戻るって事か。
眩い光が辺り一帯を覆い尽くすなか、遂にエクスカリバーが一本の聖剣になった。
聖なるオーラの質が一本一本の時より圧倒的だ。四本でこれなんだから七本全て集まった時は一体どうなるのやら。
「エクスカリバーが一本になったことで術式が早まった。後二十分でこの町は崩壊するだろう」
っ、なっ!? 馬鹿な! 早すぎる!
おいおいおいおい、マジか! 流石に本気で不味くなってきたぞ!
後二十分!? 短いよ!
「しかも、協力者のお蔭で面白い仕掛けがあるからな。フリード!」
「はいな!」
バルパーの呼びかけに応えるフリード。
てか、協力者? 他にもコカビエルに協力しているヤツがいるってか。
「最後の余興だ。一つになったエクスカリバーで、こいつらと遊んでやれ」
「りょーかーいだぜえ爺さん! 四本が一つって事は俺っちが持つエクスカリバーって最強じゃね!? もしかして俺最強の聖剣使い!?」
……相変わらずテンション高いなこいつ。
そして、俺たちがフリードに警戒する中、祐斗が一歩前に出る。
「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残りだ。いや正確には貴方に殺された身。そして今は悪魔となって生きながらえている」
殺意を瞳に乗せながらバルパーを睨み付ける祐斗。
それを面白そうに受け止めるバルパー。
そして奴は語りだした。自分が如何に聖剣が好きなのかを。そして、それを扱えないと分かって絶望したかを。
故に自分は聖剣を使える者達を作ろうとしたと。
だが、バルパーが集めた多くの被験者は聖剣を使えるだけの因子を持っていなかった。
そこで、ある計画を考えた。
因子だけを抜き取って、集めた因子を他の者に移すと言うヤツだ。
そう、祐斗たちも因子を抜き取る為だけに殺されたのだった。
「悪魔の俺が言うのも何だが……お前、下種だな」
吐き捨てるように俺は言う。
「ふん、本当にそうだな。悪魔の貴様に言われたくは無いな。だがな、教会の奴らは私だけのを異端扱いして、私の研究成果を根こそぎ奪いおった! まあ、ミカエルの事だから被験者を殺してはいないだろうが、結局私とやっていることは変わらんよ!」
まあ、殺すか殺さないの違いだけどな。とはいえ、その一線が大きな境目だとも思うが。
「因子を欲しくばくれてやる。どうせ今の私にはもう必要ない」
そういってバルパーは結晶体らしきもの――恐らくその聖剣使いの因子と言うヤツだろう――を祐斗の方に放り投げる。
「……みんな」
祐斗が涙を流しながらそれを拾う。
やがて、祐斗の周りに光が集まり始める。
それはやがて人の形を取り始めた。
光が人の姿になる。その多くは小さな子供達だ。
「――聖剣計画の被験者。祐斗の、同胞か」
何故死人である彼らがこの場にいるのか。そもそも彼ら本人なのか。それは俺自身は分からない。
だけど、一つだけ分かる事と言えば、彼らは祐斗の為にここにいる。
そして祐斗は懺悔する。
自分だけ助かってよかったのか? 自分だけ幸せな日々を送っても良いのか。
それは、ずっと祐斗が心の中で思っていた事なんだろう。
別段、不思議な事では無い。そう思ってしまう奴の方が多いだろう。その気持ちはほんの少しだが、俺にも分かる。
そして、彼らは本当に分かっていた。
祐斗の同胞たちは次々と祐斗に声を掛けていった。
どれもが暖かく、胸に染みるようだった。
全く、悪魔になってから頭がこんがらがってくるような事が多いぜ。
けど、不思議だな。それを嫌だとは思っていない。
『夏蓮』
リンドが語り掛けてくる。
『貴方の周りは面白いですね』
ん? どいうことだ。
『
……ああ。そうか、そういう事か。
漸くリンドが言いたかったことが分かった。確かに、今の祐斗なら出来るだろう。
『世界のバランスを崩壊させるほどの力すら発揮する事がある。そう――』
リンドが穏やかな声音で続ける。
『それが、
いかがでしょうか? 感想、意見待っています。