ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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後数話で終わると言いましたが……あれ、嘘っぽいです。もう少し続きます。何とか年末には終わらせたいですけど……。


……壊す

 コカビエルは何を言っているのだろうか。

 

 私、リアス・グレモリーはそう思わずにはいられない。

 

 レオン・グレモリー? 誰だそれは。グレモリー家の次期当主たる私が知らないグレモリー一族がいるはずが無い。

 

 少なくとも、私が知る限りではレオンなどと言う悪魔は知らない。知ら……無い。

 

 だって――燃えている――私が知るわけ――何もかもが燃えている――無い――どこ?――。

 

 私が――どこに行ったの?――知っているわけ――どうしていないの?――。

 

 私は――約束したのに――グレモリーの――また会うって――次期当主――どうして――だから私が知らないわけ――どうして――。

 

「あ、あれ?」

 

 気づけば涙が出ていた。

 

 頭がぐちゃぐちゃだ。まるで知らない自分が頭の中に居るようだ。

 

 どうして? どうしてこんなに涙が沢山出ているの?

 

 何で、こんなにも悲しいの?

 

 夏蓮、夏蓮、カレン、夏蓮、カレン、夏蓮、カレン。

 

 頭の中で夏蓮の名前がグルグルと回っている。

 

 そして、同時に浮かび上がるのは小さい紅髪をした少年だ。

 

 誰なのこの子は。どうして私にこんな記憶があるの?

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 呼吸が荒くなっているのが自分でも分かる。

 

 私は、何かを忘れている? それが何なの? どうして私は……。

 

『約束だ。もう一度、この場所に――』

 

「あ、ああああああああ!?」

 

 瞬間、私の中で何かが弾け飛んだ。

 

 

 

 ******

 

 何も、聞こえない。

 

 変だな。さっきまではちゃんと聞こえていたのに、今は何も聞こえない。

 

 コカビエルの言葉を聞いた瞬間からだ。あの時、あいつは何て言った?

 

『お前はレオン・グレモリーの息子では無いのか?』

 

 息子。あの時、確かにコカビエルはそう言った。

 

 レオン、グレモリー。

 

 グレモリー。上級悪魔の一族の一つ。リアスの家。

 

 どうして、俺の父親の名前がグレモリーなんだよ。そんな訳、あるはずが……。

 

 だって、俺は人間から悪魔になって。神 器(セイクリッド・ギア)だって、人間に宿るものだって――!

 

 次の瞬間、唐突に脳裏に過ぎ去る映像。

 

 辺り一面を燃やし尽くす炎。

 

 誰かの怒声。

 

 そして、俺を抱きかかえる人。

 

 俺の抱きかかえる人の腕の中から見えるのは、俺と同じ紅髪をした男性。背中をこちらに向けているから顔は分からない。

 

 そして、その紅髪の男性と対峙しているのは、圧倒的なオーラを放つ剣を持った――。

 

「うぐっ!」

 

 突如として俺の頭に鋭い痛みが走る。

 

 何だこれ……? 頭が割れるみたいだ……。

 

 頭を抱えて膝を付く。

 

 痛い。痛い。痛い。

 

 今までに経験したことのないような激痛だ。

 

「あ、ああああ!?」

 

 何がどうなっている……!? ああもう、くそ、くそ! 

 

「いやああああああぁああああ!?」

 

 辺りに響き渡る様な悲鳴。

 

 何も聞こえ無かった筈なのに、この悲鳴だけは聞こえた。

 

 誰のだ? 決まっている。俺が、あいつの声を聞き間違えるはずが無い。

 

 痛む頭に顔を顰めながら、俺は後ろを振り向く。

 

 見れば、俺の同じ紅色の髪を乱しながら、うずくまっている人影が見えた。

 

 リアス。

 

 リアスが震えている。

 

 リアスが怯えている。

 

 リアスが泣いている。

 

 誰だ。

 

 誰がリアスを泣かした。

 

 誰だ、誰だ、誰だ! 誰だ!

 

 気づけば、頭の痛みなんて無くなっていた。

 

 それよりも、リアスの泣かしたヤツへの怒りの方が俺にとっては重要だった。

 

 ふらりと立ち上がる。

 

 前を見ると、男が立っていた。

 

 訝しげにこちらを見る男。

 

 ……あいつか。他にはいない。

 

 間違いない。あいつが、リアスを泣かした――!

 

 許さん。リアスを泣かす奴は、誰であろうと許さん!

 

「――殺して殺して殺しつくす」

 

 俺の中にあったのは、殺意と呼ぶにも生易しいと思えるような感情だった。

 

******

 

 ゾクリと、背筋が凍えるような寒気が襲う。

 

 俺、兵藤一誠は、思わず後ろを振り向く。

 

「兄貴……?」

 

 そこにいたのはこちらに背中を見せている俺の義兄、兵藤夏蓮だった。

 

 普段から俺の事を小馬鹿にしてくる若干嫌味なくせして、妙なところで頼りになる兄貴だ。

 

 けど、本当にあれ……兄貴、なのか?

 

 背中しか見えないが、いつもと雰囲気が全然違う様に見える。

 

 何なんだよ、あれ……? 正直、寒気が湧いてくる。

 

 兄貴が一歩、前に歩く。

 

「あ、兄貴!」

 

 思わず、声を掛ける。

 

 ゆらりと、まるで幽鬼の様な動作でこちらを向く兄貴。

 

「…………」

 

 そして、その眼差しに映る()()に、俺は体が震えあがる。

 

 な、何だよあれ。怒っているとか、そんなレベルかあれ?

 

 思わず、一歩引いてしまう。

 

「……」

 

 それを無感動に見ていた兄貴は、踵を返すと、そのままコカビエルの方に向かう。

 

 そして、コカビエルの近くまで来た瞬間、異変が起きた。

 

 突如、兄貴の周りに無数の魔方陣が出現した!

 

 兄貴を囲むように魔方陣はどんどん展開していく。

 

 何だよあれ! あれ一体どっから……。

 

 兄貴を囲む魔方陣を見てコカビエルが仰天する。

 

「まさか! 封印術式!? それほどの高位の魔方陣を一体誰が!」

 

 封印? 兄貴に? 何でそんなもんが兄貴に施されたんだよ! 

 

 突発的に起きる出来事の所為で、俺の頭の中はパニック寸前だった。

 

 兄貴は、無数の魔方陣を煩わしそうに見ると、呟く。

 

「……邪魔だ」

 

 兄貴が右手を横に思いっきり振ると、魔方陣に異変が起きた。

 

 突如として魔方陣すべてに罅が入る。

 

「まさか!」

 

 そして、そのまま魔方陣が音を立てて崩れていく。

 

「馬鹿な! あれ程の術式を一瞬で!?」

 

 コカビエルがあり得ないと言った感じで言う。

 

 そんなにすげえものなのか。

 

『封印系の術式の中ではトップクラスだろう。それを一瞬で破壊したのだから、コカビエルが驚くのも無理はない』

 

 俺が驚いていると内側から俺に宿るドラゴン――赤龍帝ドライグが話す。

 

 というか、何で兄貴にそんな封印術式が入っているんだよ!

 

『さあな。俺が知るわけないだろう』

 

 ドライグが素っ気なく言う。

 

 罅が入った術式が音を立てて崩れていく。

 

 刹那、兄貴の体から強大なオーラが噴き出始めた。

 

 兄貴の周りの地面がオーラに煽られて抉れていく。

 

 どんどん魔力が溢れていっている。既に部長の魔力を超えている。

 

 な、何だよあれ……。

 

 魔力が次から次へと溢れていく中で兄貴の体を鎧が装着されていった。

 

 ありゃあ、兄貴の禁手(バランス・ブレイカー)じゃねえか。確か、あれって一度制限時間を過ぎるとしばらく使えないんじゃないのか……。

 

「ううぅ……」

 

 呻きながら一歩コカビエルに近づく兄貴。

 

「っ!」

 

 それに対して怯むように一歩下がるコカビエル。

 

 だが、それがコカビエルには屈辱に感じただろう。憤怒の表情を浮かべていた。

 

「この、俺が、高々半悪魔(ハーフ)風情に怯えている……? ふざけるなああああああ!」

 

 コカビエルが激昂すると同時に、兄貴の姿が消える。

 

 次の瞬間、俺が確認できたのは兄貴が横からコカビエルの顔面を思いっきり殴っているところだった。

 

 あまりの威力に、コカビエルは一気に吹っ飛んでいく!

 

 ウソだろ、俺たちが手も足も出なかったコカビエルを!

 

「ぐ、お」

 

 俺が驚ている中、十枚の羽を使って何とか態勢を整えるコカビエル。

 

 だが、既に兄貴は追撃を開始していた。

 

 兄貴が無数に残像を生み出しながら高速でコカビエルに迫る!

 

 そして、そのまま右手に握られている剣をコカビエルに振りかざす!

 

 コカビエルも光の剣を出して、兄貴に対抗する。

 

 そのまま二人とも、凄まじい勢いで斬り合っていく!

 

 すげえ……さっきの兄貴の剣戟も凄かったけど、今の方がもっとすげえ!

 

 あまりの速さに、俺たちは言葉を失ってしまう。

 

 最初は拮抗しているように見えたけど、直ぐに押されている方が分かった。

 

「おのれ……!」

 

 コカビエルだった。コカビエルは両手でさばいているのに、兄貴の方がどんどん押していく!

 

 あのコカビエルが、防戦一方の状態になっていく!

 

 マジかよ! 兄貴って、あんなに凄いのか!

 

 確かに、兄貴は俺たちグレモリー眷属の中でも頭一つ抜けている状況だった。

 

 何せ、あのライザーをブッ飛ばしったんだからな。それだけで、多分上級悪魔クラスはいっているんだろう。

 

 兄貴は笑いながら「俺はまだまだ」って言っていたけど、実際、木場とかもそんな事言ってたし……。

 

 けど、何だろうな。

 

 俺はある疑問が拭いきれなかった。

 

 今の兄貴……大丈夫か?

 

 あれ、普段の兄貴には全然見えねえ。普段は、もっと冷静で、頼りになる。そんな感じしてくるのに。

 

 今の兄貴は……まるで、手負いの獣みたいだ。

 

 不味いんじゃないか。部長も何か急に倒れちまったし。

 

 リアス部長の方を見る。

 

 しゃがみ込み、顔は俯いて、髪によって隠されていてその表情が分からない。

 

 朱乃さんがしきりに声を掛けているが、全然反応が無い。

 

 部長も一体何がどうなっているんだ。兄貴もそうだけど、普段と全然感じが違いすぎる。

 

 やっぱり、あれだよな。さっきのコカビエルの言葉。

 

 「お前はレオン・グレモリーの息子じゃないのか?」、と。

 

 グレモリー。それって部長の家の名前だよな。って事は、兄貴は部長の……?

 

 あ、いや、でも兄貴って、出自が全然分かんないんだよな。

 

 あんまり会ったことないけど、兄貴の本当のお母さんと二人で暮らしていたことぐらいしか、兄貴が俺んちに来るまでの事知らないし。

 

 それ以前、兄貴の生まれについて。それが兄貴の今の状態と関係があるのかな……?

 

 ……無いとは思えない。思えば、兄貴の紅髪だって、結構珍しいもんだ。子供頃からずっと一緒に居るから珍しく思わなかったけど、考えてみれば、そうそうにいるはずが無いんだ。

 

「兄貴……」

 

 見れば、戦況は、兄貴有利の状態になっていた。

 

 いや、もう決着は付いていた。

 

「が、あ……」

 

 体中、ボロボロのコカビエルの首を持ち上げている兄貴。

 

 すると、左手のギミックが動き、龍の口――砲口が生み出される。

 

 凄まじい勢いでチャージされていくエネルギー。

 

 おいおい、やばくないかあれ!? さっきの俺の譲渡と、部長の魔力を合わせたのよりも溜まってるぞ!

 

 ある程度溜まった瞬間、兄貴がコカビエルを頭上に思いっきり投げつける。

 

 高く浮かんだコカビエル目掛けて砲口を向ける。

 

「……死ネ」

 

 短く呟くと同時に、コカビエル目掛けて兄貴は魔力の塊を撃ちだした!

 

 その大きさはコカビエルを優に包み込むほどの大きさを持つ程だ!

 

 でけえ! なんて大きさだ!

 

 これを喰らったら、大抵のヤツが吹き飛んでしまうんじゃないかと思えるほどの大きさだった。

 

 そして、コカビエルに当たろうとした瞬間だった。

 

『Divid!』

 

 どこからか、音声が鳴り響く。

 

 刹那、兄貴の魔力弾がコカビエルに当たる!

 

 轟音と共に辺りに爆炎が撒き散らされる。

 

「うわ!」

 

 爆炎がこっちにまで来た! 思わず籠手で顔を覆う。

 

 なんつー破壊力だよ!

 

 けど、何だろう、コカビエルに当たった瞬間、魔力の塊が小さくなったような……。

 

 俺はコカビエルがいた辺りを注視する。

 

 そして、煙が晴れてくると、そこには……。

 

「――やれやれ、当たる瞬間に『半減』したと言うのに、これほどの威力とはな。流石に驚いた」

 

 コカビエルを抱えて浮かんでいるヤツがいた。

 

 兄貴と同じような鎧。宝玉をが鎧の至る部分に装備されている。

 

 兄貴の鎧が銀色なら、あれは白。穢れが無い、どこか神々しさも持っている白だ。

 

 背中には八枚もある光の翼。

 

 ……体が震えあがってくる。俺の中に居るドライグが反応しているのか!?

 

 ま、まさか、あいつが……?

 

『ああ、あれが「白い龍(バニシング・ドラゴン)」。お前のライバルとなるやつだよ』

 

 ドライグが答える。

 

 白い龍(バニシング・ドラゴン)! あれが!

 

 コカビエルが呻きながら白い龍(バニシング・ドラゴン)に言う。

 

「貴様……何の真似だ。余計な邪魔は――!?」

 

 コカビエルの言葉を遮るように白い龍(バニシング・ドラゴン)はコカビエルに拳を打ち込む。

 

「き、貴様……!」

 

「少し黙ってろ。あんたを連れて帰るのがアザゼルから頼まれたものだが……気が変わった」

 

 鎧の下から笑っているような雰囲気を出す白い龍(バニシング・ドラゴン)。地面にゆっくりと降り、コカビエルを無造作に地面に落とす。

 

「少し、相手をしよう。銀の龍」

 

 こうして、白対銀の龍の対決が始まった。




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