三人称が書けないから一人称視点で書いていたのに、意外と筆が進みました。
辺りは沈黙に包まれていた。
一誠たちグレモリー眷属は固唾を飲んでその場を見守っていた。
彼らの視線の先にいるのは、二人の龍。
片方は銀色の龍。メタリックシルバーの鎧を全身に身に纏い、体の各所に宝玉が埋め込まれている。
背中に生えている一対の翼は結晶の様に光の反射で様々な輝きを幻想的に映し出していた。
もう片方は白の龍。穢れ無き純白の鎧と、銀の龍と同じ宝玉を各所に埋めている。
背中に生える光の翼は銀の龍の翼とは違った美しさを醸し出している。
銀星輝龍と白龍皇。伝説のドラゴンが相まみえている。
「…………」
「…………」
両者共に沈黙したまま動かない。
一秒がまるで十分、一時間にも感じるような状況下。
かくして、先に動いたのは白龍皇だった。
光翼をはためかせながら銀の龍――夏蓮に近づく。
その速度は一誠の目には移らないほどの高速だった。
だが、夏蓮は反応するように右手の剣を前に振りかぶる。
衝撃と共に、魔力が乗った斬撃を夏蓮は前方に飛ばす。
「ふっ……」
白龍皇はそれを腕で弾く。
そのままの勢いで一気に夏蓮との距離を詰める白龍皇。
そして、夏蓮の目の前に来た白龍皇は右手で夏蓮を殴りつける。
「ぐう……!」
顔面にクリーンヒットした夏蓮。鎧こそ破損しなかったが、うめき声をあげる。
「……触れられたな」
白龍皇は小さく言う。
『Divid!』
白龍皇の鎧の宝玉から音声が流れる。
次の瞬間、夏蓮が身にまとうオーラが一気に減少した。
「兄貴!?」
一誠が驚きの声を上げる。
「我が
白龍皇の言葉に、一誠は思わず戦慄する。
つまり、これによって白龍皇は十秒毎に兄の力を半分ずつ奪っていく事になるのだ。戦いが長引けば長引く程、夏蓮にとっては不利となるのだ。
だが。
白龍皇が夏蓮から手を戻そうとした時だ。
「なっ!」
夏蓮は戻されようとしていた白龍皇の腕を剣を持っていない左手でしっかりと掴む。
そして、
『Absorb!』
今度は夏蓮の鎧の宝玉から音声が流れる。
そして、次の瞬間、白龍皇が身にまとっているオーラが夏蓮に吸い取られるように離れていく。
「これは……!?」
この現象に直ぐに気づいた白龍皇は右足を、夏蓮の腰辺りに打ち込む。
「ぐう……!」
痛みで、夏蓮は思わず左手を離す。
その隙に白龍皇は大きく距離を取る。
「……驚いたな。こっちが半減して力を奪ったと思えば、逆に俺の力を吸収してきた。……あの
『その筈だが。……どうやら、力が私が知るのと違うものになっているようだ』
自身に宿るドラゴン――アルビオンの言葉に、白龍皇は成程、と思う。
「……ふふ」
思わず笑ってしまう。
最初こそ、つまらない任務かと思っていた。相手がいくら堕天使幹部のコカビエルとはいえ、白龍皇である自分には相手になるとは到底思えなかった。
後は精々自分の未来のライバルである赤龍帝を見に来ただけだったのだが。……人生とは何が起きるのか分からないとは本当だなと思った。
「面白い。さあ、もっと力を見せて見ろ!」
心底楽しそうな声を上げる白龍皇。
「ううぅぅぅ……!」
呻く夏蓮。
夏蓮の鎧に変化が起きる。
背中の翼が一瞬光ると、翼から非常に薄い結晶板が続々と展開し始めた。
結晶板は夏蓮の意思に従い、白龍皇の体を包囲する。
「これは……」
夏蓮は左手の砲口を展開し、エネルギーを充填する。
「がああああああ!」
そして、チャージした魔力を一気に放つ。
魔力の波動は真っ直ぐ白龍皇に迫る。
「そんな単調な攻撃……!」
白龍皇は魔力の波動を難なく躱す。
躱された魔力の波動は、そのまま直進し、白龍皇の背後に展開していた結晶板にぶつかる。
次の瞬間、魔力の波動は小さな弾に分裂した。
「何!?」
驚く白龍皇を他所に、分裂した魔力弾は結晶板に当たり、反射を繰り返す。
徐々に速度を増し、無数の魔力弾が白龍皇に襲い掛かる。
しかし白龍皇は冷静に対処していく。
自身に迫る魔力弾を一つ一つ弾いていく。しかも、弾いていく中で、結晶板の隙間を通る等に絶妙な角度でだ。
やがて、魔力弾全てを結晶板の外にはじき出す白龍皇。
「ううぅぅ……」
夏蓮は、結晶板を翼に戻す。
「どうした? もう終わりか?」
挑発するように手を振る白龍皇。
それに応える様に更にオーラを高めていく夏蓮。
「があああああああああ!」
獣の如く叫ぶ夏蓮。
「良いぞ。アルビオン、今のこの男になら『覇龍』を見せても良いと思うんだが」
『それは得策では無い。こんな所でやったら自滅以外の何でもないぞ』
白龍皇の言葉に、アルビオンが窘めるように言う。
そして、それらの光景をただ黙ってみる事しか出来ないグレモリー眷属。
そんな中、一誠に声を掛ける者がいた。
『相棒』
彼に宿るドラゴン、ドライグであった。
「何だよドライグ!」
『リンドヴルムからの悪い知らせだ。このままだと、お前の兄は死ぬ』
「は……?」
ドライグのあっさりとした言葉に、一瞬呆ける一誠だったが、直ぐに我に返るとドライグに言う。
「ど、どういう事だよ! 兄貴が死ぬって!」
『言葉通りの意味だ。現在のお前の兄の状態は十数年貯めこまれていた魔力が一気に噴き出ている暴走状態。今はリンドヴルムが吸収しては解放することで何とかなっているが、このまま魔力が出続けたら、お前の兄の体が保たないそうだ』
「っ!」
魔力が溜め込まれているとか何で自分の義兄に封印の術式が施されているとか、聞きたいことは山ほどあるが、今はそれどころでは無い。
ドライグの言葉が本当なら、夏蓮はこのままでは危険という事なのだろう。何とかして止めねばならない。
とはいえ、今のあの戦いに混ざるのだって至難の技なのに、止めろと言う。
正直、今の義兄に自分の声が届くとも思えない。掛けたところで無視されるのが落ちだろう。
ならば、どうすれば良いか。
「あ……」
そして、唐突に閃く。考えても見れば当たり前だった。当然と言ったら、当然と言えた。
「部長」
気づけば、一誠はリアスに声を掛けていた。
リアスは相変わらず体を丸めて俯いてた。
良心が痛むも、一誠は言う。
「部長、兄貴を止めてやってください」
「イッセー君?」
朱乃が声を上げるが、一誠は構わずリアスに話しかける。
「今、兄貴は死ぬ痛い思いして戦ってます。それ、全部部長の為なんです」
ピクリと、リアスが動く。
一誠は続ける。
「卑怯な言い方かもしんないすっけど、兄貴は部長が泣いていたから戦っているんです! 部長が傷つけられたと思ってるから戦っているんです!」
そう、何時だって、夏蓮はリアスの為に戦っている。
ライザーの時も、今だって、リアスを守るために戦っているのだ。
だから。
「だから、兄貴助けたやってください! お願いします!」
心からの叫びだった。他のメンバーも固唾を呑んで見守っていた。
「…………」
そして――。
******
イッセーの言葉に、私、リアス・グレモリーはノロノロと立ち上がった。
途中、よろけそうになったが、誰かが支えてくれた。
恐らく、朱乃だと思うが、今の私には判断がうまく出来ない。
視界がぼやけて見えにくい。
それでも、目指すところは分かる。私はふらつきながらも一歩、また一歩と近づいていく。
そして、私は漸く、見る事が出来た。
「ああああぁぁぁ!!」
咆哮――どこか苦しげな声を上げながら、『彼』はそこにいた。
「――ぁ」
声を出そうとするも、上手く出ない。まるで、自分から声を出すのを拒否しているようだ。
違う。私は、『彼』に傷ついて欲しくない。『彼』が倒れてほしくない。
出すのだ。出さなければ、『彼』は、『彼』は。
「……レン」
何とか出るも、小さなもの。自分でも出しているのか分からない。
「カ……レン」
また出してみるも、全然だ。
そうして、私がまごついている間にも、『彼』は再び戦おうとする。
ダメだダメだダメだ! これ以上、『彼』を傷つけては――!
そして私は、
「――カレンっっ!!」
『彼』の名を呼んだ。
******
悲痛な叫びが響き渡った。
思わず、敵である白龍皇も何事かと行動を止めてしまう。
そして、夏蓮は……。
「……ぁ」
先ほどまでの有り余る程のオーラが一瞬で霧散した。
そして、鎧もあっさり解けた。
「…………」
呆然する夏蓮。ノロノロと顔を動かす。
その視線の先に、彼女がいた。
「……リアス」
ポツリと呟かれる言葉。
次の瞬間、ぐらりと夏蓮の体がよろめく。
そのまま膝を付いて、倒れこむ。
「カレン!」
ふらつきながらも夏蓮の元に駆け寄るリアス。
夏蓮の元に辿り着いた彼女は、直ぐに夏蓮を抱きしめる。
もう離すまい、と鬼気迫る部分があった。
「…………」
その光景を、白龍皇は黙ってみていた。
軽くため息を付くと、一歩、踏み込む。
「……ん?」
しかし、その一歩で止まる。
彼の目の前に、一誠たちグレモリー眷属が立っていたからだ。
全員、ここは通すまいと、覚悟を決めた表情をしている。
白龍皇からすれば、彼ら等、直ぐに片付けられるが……。
「安心しろ。興が覚めた。もうやる気は無い」
肩を竦めて言う。
それを訝しげに見る一誠たち。
「本当さ。こうなっては戦っても詰まらんだけだろう。後は本来の任務を果たすだけだ」
そういって白龍皇は地面に転がっているコカビエルと、フリードを回収する。
そして、そのまま飛び立とうとしたその時、
『無視か、白いの』
一誠の籠手の宝玉が光りだした。
『起きていたのか、赤いの』
対して、白龍皇の鎧の宝玉も光りだした。
『折角出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれ闘う運命だからな』
『しかし、白いの、以前のような敵意は伝わってこないが?』
『赤いの、そちらも段違いに敵意が少ないじゃないか』
『お互い戦い以外の興味対象があるということか』
『そういうことだ、こちらは独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう? また会おうドライグ』
『それもまた一興か、じゃあなアルビオン』
天を称された二天龍。再び会う約束を交わし、この場を終わらせようとするも――。
『……待ちなさい。何をいい感じで終わらせようとしているんですか』
『『うぐっ!?』
同時に詰まる。
新たな声を発信源は夏蓮の剣からだった。
『いい度胸ですね、私への挨拶も何にも無いなんて……』
『いや、待てリンドヴルム。この場は仕方ないだろう?』
『ドライグの言う通りだ。この状況下で挨拶とか……』
『……あ?』
『『すみませんでした』』
二天龍が謝る。そのあまりの光景に、宿主たちは目を丸くする。
「おい、ドライグ……」
『すまん、相棒。だが、俺はリンドヴルムにどうしても……!』
『そうですよね。貴方、私が近くにいるって分かっていながら無視していましたよね』
『っ! い、いや、そういうつもりじゃ』
『アルビオンも。出会ったら、まず私への挨拶が先でしょうに』
『し、しかしだな』
二天龍がしもどろしながら話す。
このままではずっと続くと思ったのか、白龍皇が口を挟む。
「リンドヴルムよ。話も良いが、貴様の宿主を放っておいて良いのか?」
『む……』
白龍皇の言葉に、リンドヴルムが一旦口を閉ざす。
これは幸いと、二天龍が次々に言葉を並べる。
『そ、そうだリンドヴルム。お前の宿主をこのまま放っておいてもいかんだろう! 今はそっちを優先したほうが良い!』
『う、うむ! ドライグの言う通りだ。ここでお前の宿主に死なれても困るだろう?』
ドライグたちの言葉にため息を付くリンドヴルム。
『……まあ、良いでしょう。どうせまた会う機会があるでしょうし。今回はこれまでにしておきましょう』
同時に安堵の息を付く二天龍。
何ともいえない空気になるが、白龍皇は気にせず言う。
「ではな。また会おう。俺の未来のライバル君」
そうして、白龍皇は去っていった。
後に残ったのは、グレモリー眷属と、夏蓮を抱きしめているリアスだけだった。
いかがでしょうか? 感想、意見待ってます。
第三章も次でラスト。その後の展開も色々と考えています(出来るか分からないけど……)。