色々と試行錯誤していたけど、やっぱ上手くいかないものです。
「もう三日。兄貴たち帰って来ませんね……」
オカルト研究部部室。そこにグレモリー眷属たちは集まっていた。
と言ってもいつものメンバーのうち、夏蓮とリアスがその場にはいない。二人は冥界に行っており、三日ほど帰ってきていないのだ。
「そうですね。連絡もありませんし。もっと長くなるかもしれませんわ」
紅茶を淹れながら朱乃がそう答える。
その言葉に、部室内は再び暗くなる。
「しかし、一体リアス・グレモリーには何があったんだ? あれはいくらなんでも尋常では無かったぞ」
そう言うのは、駒王学園の制服に身を包んだゼノヴィアだった。
神がいないことを知った彼女は半ばやけくそ気味に悪魔へと転生した。祐斗と同じ
「あの時の私は主の不在を知って半ば自暴自棄になっていたから気づいていなかったが、今考えてみると、私をあんなにもあっさりと悪魔に転生させたのだから、逆に不気味に感じるな」
確かに、と一誠は考える。
コカビエルとの戦闘の最中、突如として悲鳴を上げて取り乱したリアス。その状態は普段の彼女を知るものならば、目を疑っているだろう。それほどのものだった。
そして、もう一つは夏蓮。これもコカビエルとの戦闘の際、膨大な魔力を放出してコカビエルを圧倒した。
その後乱入してきた白龍皇とも互角の戦いを繰り広げた。
最も、白龍皇との戦いはリアスが止めて、有耶無耶になったが。
あの後、夏蓮は意識を戻さず、やってきた魔王サーゼクスとの話し合いの末、冥界で暫く静養することになった。
リアスだけが付き添い、後のグレモリー眷属は人間界に残ることになった。
「あの、朱乃さん。リアス部長のあれ、何か心当たりありますか?」
一誠が今、誰もが知りたがっていた疑問を朱乃にぶつけた。
「…………」
「木場や、小猫ちゃんに話を聞いても分からないっていうし、リアス部長と一番この中で付き合いが長いのは朱乃さんだって聞きました。何か知っていませんか?」
その場にいる者全員の視線を感じながら、朱乃は静かに口を開く。
「……私が知っているのは、あくまで一部だけです。それでも良いですか?」
朱乃の言葉に全員が頷く。
それを見た朱乃が言葉を紡ぐ。
「私が知っているのは、まだ私がリアスと会った頃の話です。あの時、リアスの部屋で本を読んでいた時の事です」
ベットに腰かけて読んでいた時、ふと、本のページの間に何かが挟まっていたのに朱乃が気付いたのだ。
何だろうかとそれを取り出してみた。
それは、写真だった。完全な状態では無く、半分破かれた状態のものだった。
写っていたのはその当時よりも更に幼いリアスだった。満面の笑みを浮かべており、その表情は誰もが見ても幸せそのものを感じ取れるだろう。
写真に写っている彼女の右手は誰かの手と繋がれていた。その人は破かれた方にいる為、誰かは分からない。
そして、朱乃がこの写真の事をリアスに問うた。
「すると、リアスはコカビエルの戦闘の時と同じような状況に陥りました。取り乱し、私の言葉も全く反応を示しませんでした」
直ぐにリアスの母が数人の使用人とやってきて、魔力で眠らせた。そして、そのまま使用人に運ばせていった。
その後、朱乃から事情を聴くと、朱乃にこう言った。
――この件は誰にも話してはいけない。たとえ主であるリアスに対しても――
有無言わせない態度に、朱乃は頷くほか無かった。
「正直、普段は温和な表情を崩すことの無かった奥方様があれ程真剣になっていたのは驚きでした。結局、あの写真も奥方様に回収されてそれっきりですし」
その際の「まだ残っていたなんて……」というリアスの母の言葉は今でも覚えている。
次の日、帰ってきたリアスは何も覚えている様子も無く、朱乃も敢えて触れまいと、何も言わなかった。
「私が知っているのはそれだけです。あまり詮索するのは良くないと思いましたので」
「そんな事が……」
祐斗や小猫、古参のメンバーも全然知らなかったらしい。基本的に無表情な小猫も驚いた顔をしている。
「ふむ。だが、私を悪魔にした時は随分と落ち着ていたぞ? あの時は主の不在で回りがあまり見えていなかったが、今思えば奇妙に思えてくるな」
「確かに。朱乃さんの話では、部長は何らかの処置を施されているんだと思う。あまり危険は無いと思うけど。そう考えると今回の件は自力で戻ったのかな?」
ゼノヴィアと祐斗の会話に一誠はあの時の事を思い出す。
あんなに取り乱していたリアスだが、夏蓮を抱きしめてしばらくして直ぐにいつもの状態に戻った。
いや。元に、とは少し語弊があるだろうか。
何と表現すればいいか。いつものリアスとは少し雰囲気が変わっていた。
何が変わっていたのか。それは分からない。リアス本人がそれを拒否するようにしていたからだ。それだけで一誠は何も言えなかった。
「兄貴、部長……」
冥界でも同じ様な空なのかな。と、冥界に行ったことのない一誠は、部室の窓から空を見ながらそう思った。
******
冥界、グレモリー本城。
その一室で、私、リアス・グレモリーは静かにカレンの寝顔を見ていた。
穏やかな表情。息をしていなかったら死んでいるとでも言えるだろう。不謹慎だが。
「…………」
そっとカレンの頭を撫でる。サラサラした私と同じ紅色の髪が少し乱れる。
不思議なものだ。もっと取り乱すと思ったのに、自分でも驚くほど冷静だ。
しばらくカレンの髪で少し遊んでいると、
「…………ぁ」
カレンの目がゆっくりと開いていく。
ぼんやりと眼差しを揺らす。
その眼差しがやがて私の方に映る。
「……リアス?」
ポツリと呟かれた言葉。彼にとっては無意識の内に呟かれた言葉だろうが、私にとっては、どれだけの意味が込められているか。
「ええ」
私も言葉を返す。
そして、言う。
「――久しぶり、カレン」
「――ああ、久しぶりだな、リアス」
「ほんと、酷いわね。私だって気づかなかったの?」
「そっちこそ。俺だって気づかなかっただろう?」
「そうね。お互い様ね」
「ああ、お互い様だ」
本当に、不思議だ。もっと変な雰囲気を予想していたが、こんなにも穏やかな気持ちで接することになるとは。
「色々あったわね」
「ああ、色々あった。あり過ぎて何を話せば良いか分からん」
「奇遇ね。私もよ」
そして自然とお互い笑う。
問題は無い。時間は山ほどある。それこそ、悪魔は永遠に近い寿命を持っているのだ。のんびりといこう。
カレン。私の幼馴染。私の従兄弟。
私の――一番大好きなヒト。
私たちはやっと再会したのだ。
******
「やはり、素晴らしい。彼がここまでの逸材とは」
「……本当にそうか? 私の目には精々魔力がデカい程度にしか映らなかったが」
「だからこそだ。彼はその有り余る魔力だけでコカビエルを倒しんだぞ? それだけの力を持っていると言う事だ」
「ふん……おい、剣聖、お前はどう思う」
『……我、主の言葉、従う』
「ちっ、木偶人形が。聞いた私が馬鹿だったか」
「まあまあ、良いじゃありませんか。計画はまだ始まったばかり。いくらでも修正が効きます。ここはリーダーのいう事を聞くのも一つの手でしょう」
「……本当にこいつ等大丈夫か……? 割と心配になってきたぞ」
「はは、相変わらず君は心配性だな。――私に任せておけ。それで全て万全だ。……いや、『私たち』だな」
「……その『私たち』は誰だ?」
「決まっているだろう。私たちだよ」
「……まあ、良い。私は計画が成就されればそれで良い」
これにて第三章は終わりです。それと同時に今年の更新もこれで終わりの予定です。
バイトも始まり、思う様に執筆活動も難しくなってきました。一旦落ち着いたらまた更新を再開する予定です。
次回の第四章は、いよいよ夏蓮の仇敵ともいえるやつらの登場です!