神星剣。それが何なのか、結局良く分からないままだ。
ミカエル様もあの後直ぐに戻ってしまい、何だか不完全燃焼だ。
「はあ……」
朱乃が出してくれたお茶を飲みながら俺はため息を付く。
「ミカエル様とのお話、何を話してのです?」
「んー? 別に」
朱乃の言葉にも気が抜けたように返事する。
母様の集めた刀剣が冥界にあると言う。神星剣もそこにあるというのだろうか……俄然、興味が湧いてきた。
「カレン?」
「ん」
呼ばれて朱乃の方を見ると、少し不満げな顔をしていた。
「折角私とおしゃべりをしているのに考え事ですか?」
おや、拗ねさせてしまったか? そんなつもりは無かったが、まあ、基本的に俺が悪いんだろうから謝っておこう。
「ごめんごめん。ちょっと気になることがあったんだけど、大丈夫だった」
「なら良いのですが……」
取り敢えず神星剣は後にしておこう。今考えてもしょうがないしな。
「しかし、朱乃は巫女服姿が本当に似合うんだな」
「あら、そうですか? まあ、母が神社の巫女をやっておりましたから、その影響でしょう」
「へえ、お母さんが」
母親が巫女かあ。朱乃はその血を継いだって感じか。
「――そして、同時に堕天使の血も継いでおります」
「…………」
朱乃は視線を自分の湯呑みに移すと、静かに語りだす。
「あなたもご存知でしょうが、私は堕天使バラキエルと人間の母との間に生まれたハーフです」
朱乃の背に悪魔の翼と――堕天使の翼が現れる。
「ある時、傷ついて倒れていたバラキエルを介抱したのが母だったそうです」
バラキエル、ねえ。父親を名前で呼び捨てにするとは……結構な確執があるみたいだな。
「私にとってこの羽は忌むべき存在です。おぞましい、私の中に半分流れる忌々しい血……」
……本当に、憎むように堕天使の翼を見ている。それ程なのだろう。
「……カレンは堕天使が嫌いでしょう? 貴方と貴方の義弟のイッセー君を殺した堕天使が」
自嘲するかのように言う朱乃。
「いや、別段」
俺はそれに普通に答える。
「…………」
俺の答えに唖然とする朱乃。はて、何か変な事でも言っただろうか。
「どうして、ですか?」
「どうしてって……いや、確かに俺は堕天使に殺されたけど、その相手はもう殺したし、それで終わりさ。一々堕天使を毛嫌いしていたら終わらんさ」
確かに、好意感情を持っているというわけでも無いが、別に悪感情を有しているわけでも無い。
特に、という感じなのだ。いや、本当に。
「だから、お前の事が嫌いとかそんなん全くないぞ。そもそも、お前はお前だろ? 堕天使だの、悪魔だの、ハーフだの、一々気にしていたら面倒極まりない」
取り敢えず、自分の思いの丈を答えてみる。
どうも、朱乃は自分の事を卑下しすぎな感じがある。もう少し、自分に肯定的になった方が良い気がするな。
これは、俺の嘘偽りない気持ちだ。本当に、どうでも良い事なのだから。
取り敢えず、朱乃の顔を見てみる。
「…………」
「……ん? 朱乃?」
何か、顔を真っ赤にして固まってるな。え、どうしたの?
「はっ!? あ、ごめんなさい」
直ぐに我に返り何やらあわあわとし始める朱乃。
はて、俺、何か変な事でも言っただろうか?
「何か変な事でも言ってしまったか? それなら謝るが……」
「いいえ、寧ろありがとうございます」
「ん?」
「少し、気が晴れた感じがします」
「そいつは良かった」
……少し、か。本当の意味で朱乃が自分を受け入れる事が出来るようになるのは大分先かな。
******
「いよいよ、明日始まるそうだ、三大勢力会議は」
「ほう、魔法使い連中が動いているのはそれが原因か。全く、態々死に行くとは、馬鹿なものだ」
「まあ、良いではないか。カテレア様も赴くそうだ。少しは勝率が上がるであろう」
「――はっ。心にもない事を。あの程度の実力で、トップの――特にサーゼクス・ルシファーを相手取るなど無理であろうに。未だに過去にしがみ付く亡霊め」
「随分と辛らつな物言いだな。まあ、否定できんが。――さて、明日は私も行くとしよう」
「……何? お前自ら行くのか? どういう風の吹き回しだ」
「『彼』が記憶を取り戻したようでね。話を聞きに行こうと思う」
「あいつか……記憶を戻したとして、覚えているとは思えんが」
「問題ない。いざというときは、魂に直接問いかければ良い」
「……余りやり過ぎるなよ? ただでさえ、見つからないのだから」
「分かっている。ふふ、楽しみだね」
「全く、お前は相変わらず面倒な男だな、ルーファス・アガリアレプト」
******
神社の一件から数日、遂に駒王学園は三大勢力会議を迎えていた。
周りには悪魔、天使、そして堕天使の軍団が数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどいる。和平交渉が拗れたらその場で大戦の続きが起きそうな感じだ。
まあ、大戦が再び勃発したらそれはそれで世紀末か感じで面白そうだが、学園が吹き飛ぶのはちょっとな。
で、まあ、俺たちは今、その会議が行われる場所に向かっている途中だ。
今回の会議が開かれる原因にもなったコカビエル戦での出来事を報告するためだ。
一応、俺がぶちのめしたらしいけど、記憶が無いから何とも言えん。意見を求められても何も言えないぞ。
因みに、ギャスパー君は部室で待機だ。あれから一誠達と特訓を続けていたらしいが、まだ制御が上手く出来ていないらしい。そんな中で、時間停止させたら大変だからな。
「失礼します」
ノックし、入室の許可を貰ったと同時に、俺たちは会議場に入る。
会議場には、静けさが漂っていた。会議場にはひときわ大きな円卓が置かれており、それぞれのサイドに一人か二人座っていた。
先ず悪魔サイド。サーゼクス兄さんにセラフォルー様。セラフォルー様は授業参観の時のような魔法少女姿では無く、ちゃんとした格好だ。その横でグレイフィアさんが立っていた。
天使サイドはミカエル様に女性の天使が一人。
堕天使サイドはアザゼル。浴衣姿では無くローブに身を包んでいる。で、近くの壁際に白龍皇ヴァーリが立っていた。
ヴァーリはこちらを見ると、フッと笑った。
「私の妹と、その眷属だ。先日のコカビエル襲来のときは活躍してくれた」
「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」
サーゼクス兄さんの言葉を受けて、ミカエル様がこちらに礼を言う。
「悪かったな、うちのコカビエルが迷惑をかけた」
アザゼルだけはおざなりに謝るだけだ。リアスも思わず口元をひくつかせていた。
とまあ、挨拶も済み、いよいよ会談がスタートする。
「ここにいる者は皆、神の不在を知る者として話を進める」
サーゼクス兄さんのその言葉を最初に、会議は始まる。
******
内容は実に興味深いモノだった。と言っても、大半は理解できないことが多かったが、それでも歴史的な場にいると思い、俺は話を聞いていく。
『しかし、この面子が揃って話をしているとは……何が起こるか分かったものじゃありませんね』
リンドが静かにそう言う。
そういえば、気になっていることがあったんだが。
『何です?』
以前から気になっていたんだが、リンドは二天龍の事が嫌いなのか?
『……何故そう思ったのです?』
いや、一誠たちから聞いた話だと、随分冷たい対応をしているらしいじゃないか。しかも、二天龍は二天龍でお前の事を苦手としている。
『ふん、完全にあれらが悪いんです。貴方は二天龍が封じられた経緯を聞いたことがありますか?』
ん、ああ。あれな。
昔、三大勢力の大戦の時だ。
どの勢力も自分たちが世界の覇権を取ろうと本気で戦っている最中、ある出来事が起きた。
二天龍――赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンが突如として戦場のど真ん中で喧嘩を始めたらしい。
当然三大勢力はキレた。「喧嘩なら他所でやれ」と。
だが、
『神如きが、魔王如きが俺たちの邪魔をするな!』
等と、三大勢力のトップ達を完全に馬鹿にする発言を連発。これには三大勢力も完全にイラッとしたらしく、彼らの討伐を決行。一時的に手を取り合って二天龍を攻撃したらしい。
結局、二天龍は体をバラバラにされて魂は神器に封じられた。それが『
で、彼らは宿主を変えながら今も戦い続けていると。こんな感じだよな?
『ええ、そうです。但し、そこに一つ付け加える事があります』
ん? 何だよ。
『それは――私を巻き込んだことだよこんちくしょう!』
……え、リンド?
『忘れもしない! あの時、のんびりと昼寝をしていた時にあの馬鹿どもの喧嘩に巻き込まれて私にとばっちりと受けたのだから!』
え、えーと。つまりだ。
リンドは、二天龍の喧嘩に巻き込まれて神器に封じ込まれたのか?
『ええ、その通りです』
うわぁ。それは、また……。
そりゃあ、リンドが二天龍を嫌うのも無理は無いし、二天龍が負い目を感じるのも分かる。
「――おい、カレン・グレモリー?」
そして、声を掛けられた。
******
私、リアス・グレモリーは自分の眷属で、同時に従兄弟でもあるカレンを見ていた。
三大勢力会議。私たちグレモリー眷属も参加しているこの会議で、一種の結末が見えた。
――和平。長年争ってきた三つの勢力が遂に和平を結ぶことになった。私たちはその歴史的ともいえる瞬間に立ち会っていた。
その和平を持ちかけたのが堕天使総督のアザゼルだったのは驚きだが、魔王ルシファーであるお兄様やセラフォルー様、そして天使長のミカエル様もそれに同意した。
そして、一誠のミカエル様への質問。それに伴うアザゼルとのやり取り。どれもが、一誠にとっては大事な事なのだろう。
「はい、何か用ですか?」
キョトンとするカレン。
「何か用ですか、じゃねえよ。さっきから呼んでいるのによ」
アザゼルがやれやれ、と首を振る。
「失礼、少々考え事をしておりまして。申し訳ありません」
柔和な笑みを浮かべて謝罪するカレン。
隣にいる一誠が目をこすりながら信じられないような目でカレンを見ている。
もしかして、余り一誠の前ではこんな態度を取ったことは無いのだろうか。
私は知っているが、もともとカレンはちゃんと目上の者に礼儀を持って接することが出来る。
ただ、今のカレンには少し違和感を感じるところがあるが。
カレンの丁寧な物言いにアザゼルは顔を顰める。
「なんだその物言い。やめろ、気色悪い」
「マジで? じゃあやめる」
あっけらかんと、砕けた口調になるカレン。
「で、俺に何か?」
「たく、お前はこの世界をどうしたい?」
「はい?」
「だから、お前はこの世界で何をしたいかって聞いているんだよ」
アザゼルの質問に首を傾げるカレン。
「何で俺に……? そういう質問は
「おま、本当に話聞いていなかったな……その二人には聞いたよ。後はお前だけだ」
アザゼルの言葉に、益々首を傾げるカレン。
「だから何で俺に? 俺は別に神滅具を持っているわけでも無いんだし、良くね?」
「良くねえよ。お前はここにいる赤龍帝と白龍皇とも引けを取らない戦闘能力を持っていると少なくとも俺は思っている」
確かに、と私は納得する。
カレンの戦闘能力は計り知れない。神器をさることなから、本人自身の魔力に、戦闘技術。今の私の眷属の中ではトップクラスだろう。
カレンは肩を竦める。
「別に世界をどうこうする気なんて無いよ。興味ないし。……ああ、でも、やりたいことは一つあるかな」
「ほお、何だ?」
そして、私は一瞬、背筋が凍りつくような寒さを感じた。
思わず、カレンの顔を見たら、そこにはいつものはカレンがいなかった。
冷たい、底冷えするような笑みを浮かべている
「――俺の、俺の本当の親を殺した奴を見つける。そして……」
その言葉を最後まで聞くことは残念だけど、出来なかった。
けど、私は後々ちゃんとここで聞かなかった事を後悔する事になる。
本日、遂にラストティーンを迎えましたーーーーー!!
いやあ、最後の十代、どう過ごすか考え物です。
しかし、この作品も気づけば二年以上やっているんですね。そのくせして未だに原作四巻をやっているとか(笑)自分の執筆の遅さに泣きたくなります。
けど、こんな作品でも感想が百件以上きたと思うとすごくうれしいです。これからも精進していきたいと思います!