暗い。何も見えない。何も聞こえない。
俺はどうしたんだ? 確か、あの神星剣使いに斬られて、それから……。
そう、それから、記憶が無い。意識が飛び飛びになっている。一誠に肩を貸されていたかもしれないし、リアスの顔を見たような気もする。
白龍皇も近くにいたような……ああ、駄目だ。記憶が無い。どうすりゃあ良い。
気づけばこの闇の中だ。
ここも、神器の中って訳じゃなさそうだな。リンドが姿を見せないし、あの男も姿を現さない。
何がどうなっている? 戦況は? リアスや一誠は無事なのか?
その時だった。
『――最終所有者との契約に基づき、《結びの儀式》を執り行います』
闇の中から声が響く。
「っ!」
驚き、辺りを見渡しても誰もいない。闇だけだ。
『貴方に問います』
だが、確かに何かが俺に問いかけている。
「おい! 誰かいるのか!?」
声を響かせるも誰も見えない。
『貴方はまだ生きる意志がありますか?』
「あ?」
いきなり何を言っているんだ?
『貴方は力に何を求めますか?』
いきなり何だよおい……質問を重ねて聞いてくるとか。
『貴方は力で何を成しますか?』
『貴方は……世界を変える力が欲しいですか?』
その質問を最後に再び沈黙が訪れる。
何か、これらの質問に答えないと先に進まないのか? 訳わからん。
まあ、良い。兎に角答えるか。
「最初の質問だが生きる意志はある。つか、まだ死んでたまるか」
『受諾』
短く答えるなあ。何も聞かないのか?
良いか。次の質問に行こう。
「力に何を求めるか、か……」
これは……あれかな?
「俺は力に不条理に、どうしようもない事への打ち勝つことを求める。何でも思い通りとかは思わないけど、譲れないものの為ならばそれを打ち破りたい」
『受諾』
これまたあっさりと答える。
三つめの質問に行くか。
三つめは確か……。
「力で何を成すか、だったな……」
難しい質問だ。ちょっと前の俺ならば迷うことなく答えていられただろうに。
けど、今の俺にとって最もやりたいことは……。
「復讐だ。奴らを……俺の親を殺したあいつらを殺す。この手で、一人残らずだ」
『……受諾』
今度は返答に間があった。だけど何も言わない。
四つめ。次は、世界を変える力、か。
突然、大きな話になってしまった。まるで
「世界を変える力は……別に要らないかな? あーでも、俺の世界を守れるならば欲しいかな」
『……貴方の世界?』
お、今度は別の反応があった。
「ああ、別に俺はこの世がどうなろうが別に興味なんて無い。ただ、俺の周りが……俺の世界が守れればそれで良い」
リアスが、一誠が、朱乃が、アーシアが、小猫ちゃんが、祐斗が、ゼノヴィアが、ギャスパーが。
サーゼクス兄さんに、グレイフィアさん。
他の皆がいればそれで良い。だから、世界を、俺の世界を守れるなら。
「その力を俺に寄越せ……!」
『受諾。契約成立』
瞬間、赤い光が辺りを包み込む。思わず目を手で覆う。
しばらくして、光が収まり、目を開けると俺の目の前に一本の剣が浮かんでいた。
赤い刀身は同じく赤く光っており、何処までも神々しさが漂っている。
「神星剣、か」
一目で分かる。あの男が使っていたのとまったく同じオーラを漂わせている。
『神星剣が一本、
俺は迷うことなくその剣を手に取る!
瞬間、再び世界が輝く。
******
イッセーが白龍皇と激しい戦闘を開始した。
技術は圧倒的に白龍皇が上だが、勢いは赤龍帝であるイッセーが上回っている。
「ほほう、今代の赤龍帝は余り素質が無いと聞いていましたが……いやはや、若者は凄いですね」
「おいおい、爺臭いセリフだな」
アザゼルが笑みを浮かべながら言う。
以前、状況は変わっていない。お兄様たちもまだ結界の解除に手間取っている。
祐斗たちも他の魔術師たちの相手に手間取っている。
そして私の腕の中には意識の無いカレン。アザゼルも左腕を失っている状態。
完全に不味い状況。神星剣を持っているルーファス・アガリアレプトを相手取るには私じゃ絶対に無理だ。
どうすれば……!
「さて、そろそろ時間も迫っている頃でしょうし、私も自分の事をやりましょう」
ルーファスはこちらを見る。
「――カレン・グレモリーをこちらに渡して下さい。そうすれば、私は何もしません」
あっさり、何も無い様に言う。
「なっ……」
余りの要求に私は絶句する。
「ふざけ、無いで……!」
絞るように呟く。
何を言っているこの男! 冗談じゃ無いわ!
「随分と言ってくれるじゃねえか……」
嘆息しながら言うアザゼル。
「アザゼル殿、貴方ならばこの状況を正しく理解できていますよね? どの選択が正しいのか」
「まあ、なあ。そこの坊主をお前に渡せば取り敢えずの危険は去るって訳か」
「アザゼル……!」
キッと睨み付ける。
アザゼルは肩を竦めるだけだ。
「……まあ、お前にこいつを渡したらもっと最悪な状況になりそうだな。それに俺がサーゼクスの野郎に殺されちまう。だからノーだ」
「そうですか……残念ですね」
本当に残念そうに首を振るルーファス。
そして、神星剣の切っ先をこちらに向ける。
「では力尽くで。覚悟してください」
「くっ……!」
このままじゃ……!
その時だった。
カレンの体から赤い光が溢れる。
「これは一体……?」
見れば、アザゼルも驚いている。
たが、ルーファスはただ一人この現象に気づいているらしく、歓喜に身を震わせていた。
「まさか……! そこにあったのか……!」
そして、カレンは立ち上がる。
「カレン……?」
髪に隠れて顔は見えない。
ゆらりと歩き出す。
歩きながらカレンは自分の胸に手を――埋め込む!
「カレン!?」
突然の事に驚く。だってカレン、貴方!
驚き場を置いてカレンはゆっくりと手を胸から抜き始める。
やがて見えたのは一本の剣の……柄。
「そうか、そういう事か! やってくれるぜ朝凪日月!」
アザゼルも理解したらしく声を上げる。
皆が見ている中で勢いよく柄を引き抜く!
現れたのは赤い剣だった。
刀身は赤く、さらに同じく赤い光が刀身を覆っている。
まさか、あれって。
「――神星剣の一本、火星神剣《マーズ・ソード》。朝凪日月が所有していた剣。驚いた自分の息子の体の中に隠していたのか……! 道理で見つからないわけだ」
愉快そうに笑っているルーファス。
神星剣をカレンの体の中に隠していた……? 叔母様が……? 一体どういう事?
混乱する私を尻目に場は動く。
「……覚悟しろルーファス・アガリアレプト。貴様は俺が殺す」
「おやおや、記憶が戻ったのですかな?――予定変更です。今ここで貴方の力を確かめておきます」
「ぬかせ。こっちも神星剣だ。ならば条件は同じ。覚悟しろ」
ルーファスを睨み付けるカレンの瞳は、冷たく凍えていた。
カレン、やっぱり貴方……。
神星剣をお互いに構える二人。
次の瞬間、二人の体が消える。
何処に!?
視線を彷徨わせれば、二人が神星剣をぶつけ合っていた!
神星剣がぶつかり合うと同時に辺り一帯が吹き飛んでいく。
砂や岩が飛んでくる!
「くっ……!」
魔方陣を展開させてそれを防ぐ。
「はははは! マジかよ! こいつはやべえな!」
アザゼルは笑いながらその光景を見ていた。
カレンとルーファスは高速で移動しながら剣をぶつけ合っていた。
残像が残す程の速さ……これが神星剣の力だって言うの……?
「はあ……!」
一度距離を取りカレンは神星剣を振りかぶる。
すると、斬撃のオーラがいくつも繰り出された!
「ふ……」
ルーファスも同じく闇色の斬撃のオーラを繰り出す。
同じ数の斬撃がぶつかり合い、当時に霧散する。
その結果が分かっていたのか、カレンは既に行動を開始していた。
一気に距離を詰め寄り、その勢いで突きを繰り出す。
ルーファスは紙一重で避け、カウンターで、神星剣を振りかぶる。
それを見たカレンは体を捻り躱す。
「ふふ……」
「…………」
一瞬、見詰め合う二人。そして同時に神星剣を握っていない方の手を突き出し、手の平に強大な魔力の塊を生み出す。
そして、紅と黒の魔力の波動を同時に打ち出す。
爆発音と共に砂埃が辺りを覆う。
「けほっ!」
思わず咳き込んでしまう。
口を押えながら辺りを見渡すも、当たり一面何も見えない。近くにいたはずのアザゼルも見えないほどだ。
カレンは一体……。
カレンを探そうにもこの状況じゃ……どうすれば。
次の一手に苦慮している時だった。
誰かがこちらに近づいてきた。
手元に魔力を生み出す。
誰……?
警戒する私だが、直ぐに警戒を解く。
「リアスか?」
カレンだった。
「カレン!」
私は直ぐにカレンに近づいた。
「無事?」
「ああ、何とかな」
答えながらも辺りに注意しているカレン。
その様子を見ながらも私はつい聞いてしまった。
「カレン……大丈夫?」
「ん? 怪我か? それならコイツのお蔭で何とかな」
神星剣を見ながら言うカレン。
「そうじゃなくて……」
「?」
上手く言葉に出来ない。この焦燥をどう表せば良いのだろう。かく言う私だってどうすれば良いのか分からないのだから。
言葉に苦慮している時だった。
カレンがいきなり私を抱き寄……せ!?
「ちょっ、カレン!?」
突然の事に顔が赤くなるのを感じながらカレンを見る。
その瞬間だった。砂煙からルーファスが姿を見せたのは。
剣を振りかぶり、こちらに斬りかかろうとしていた。
直ぐにカレンが応戦する。
金属音と共に神星剣がぶつかり合う。
「……成程な。大体わかってきたぜ」
ポツリと、カレンは呟く。
そして、私を抱きかかえたまま私に告げる。
「リアス、俺に体を預けとけ。……少し速くなる」
「え……きゃ!」
何が、とは聞けなかった。次の瞬間、凄い勢いで動き出す。
私では無く、私を抱えたカレンが、だ。
「きゃああああああ!?」
思わず悲鳴を上げる。
そんな私にお構いなくカレンは高速で動き続けながらルーファスを剣を交え続ける。
「ちょ、カレン!」
たまらず私は声を上げる。
「降ろしなさい! いくらあなたでも私を抱えたままじゃ戦えないわ!」
「……」
同じ神星剣同士でも片手を使えないんじゃカレンでも無理だ。
私も思いが通じたのか、ポツリと「それもそうだ」と呟く。
「だけど、そう言っていられない」
「え?」
「あの男、俺がお前を離した瞬間、お前を狙う」
「どういう事……?」
彼の狙いはカレンじゃ無いの……?
「どうも俺を煽りたいみたいだ」
「煽るって……」
カレンを怒らせてどうする気なのだろうか。ルーファスの真意が全然掴めない。
「兎に角、お前をどこか安全な……」
激しい剣戟の音を繰り広げながらカレンは辺りを注視する。
そして、ふと一点を見詰める。
「……リアス」
「何?」
「着地は頑張れ」
「へ?」
言葉の意味が一瞬分からなかった。
だけど、直ぐに理解する。体で。
「ふん」
カレンが私の体を投げたのだ。ほぼ全力で。
「きゃああああああ!?」
碌に態勢も取れないまま私は地面に近づく。
ぶつかる! そう思い、目をつむってしまう。
しかし、何時まで経っても衝撃が来ない。
「たく、俺がいなきゃどうする気だったんだか……いや、分かっていてやったのか」
恐る恐る目を開けてみると、そこにはやれやれと首を振っているアザゼルがいた。
気づけば、宙に浮かんでいる私。どうやらアザゼルに助けられたようだ。
安心すると共に怒りがこみ上げてくる。
そしてキッと空にいるカレンを睨み付ける。
「カーレーンー! 後で覚悟しておきなさい!!」
今回のあんまり出来が良くない感じですので、書き直すかもしれません。
ダンまち、一期だけみたいですね残念です。
DDの三期も始まりましたからテンション上げたいなあ。