ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

61 / 97
後日談

「何であんたがここに居るんだ?」

 

「色々とあってな。どうだ、似合っているだろ?」

 

 決めポーズらしきものを取るアザゼルを俺は冷めた目で見る。

 

 またぶっ倒れた俺が起きたときにはすべてが終わっていた。

 

 白龍皇は一誠と激突。両者一進一退の攻防を繰り広げたらしい。

 

 更に白龍皇が何か奥の手らしき物を使おうとしたとき、乱入者が現れたと言う。

 

 美猴。かの西遊記で有名な闘戦勝仏、つまりは孫悟空の末裔らしい。

 

 その美猴だが、何やら他の神族と一戦交えるから戻るように来たと言う。

 

 結局、勝負は付かず、白龍皇は帰ってしまったらしい。

 

「しかし、良く互角に戦えたなお前。禁手化出来なかっただろうに」

 

「いやさ、アザゼルから貰った腕輪があったから出来たよ」

 

「腕輪?」

 

 話を聞くと、アザゼルが作成した一時的に禁手化させる腕輪を使い一誠は禁手――赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を発現したと言う。

 

 ただ、あくまで一時的なモノで精々が数十秒が限界らしい。

 

 けど、その戦いの際に白龍皇の鎧の宝玉の一つを自身の鎧に取り込み、結果として白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)を手に入れ、白龍皇の半減の力を手に入れた。

 

「お前、無茶すんなあ」

 

 実際、同じドラゴン系の神器とはいえ、可なりリスクがある筈だ。その辺分かっているのかねえこいつは。

 

 恐らく寿命とかそういう部分も削っていたんじゃないかな。そういう所が無頓着なのは不味いな。

 

「で、結局アザゼルは何なのさ?」

 

「同盟の証って事でな、このオカルト研究部の顧問を務める事になったんだよ。しばらくお前らのサポートを務めてやるよ」

 

「サポートねえ……」

 

 この胡散臭いヤツがなあ……まあ、神器についてはかなりの研究をしているって言うしサーゼクス兄さんもその辺分かっているのかもな。

 

「所でカレンよ。神星剣はその後どうだ?」

 

「名前で呼ぶな。……出し入れは普通に出来るよ。あれ以来一度も出していないけど」

 

 出すだけでも色々と面倒な部分があるからな。出来れば周りを気にせず出したいところだが……。

 

「そうか……お前はかなり特殊な立ち位置にいる。ルーファスの派閥の四死剣はこれからもお前を狙ってくるだろう。本来ならばお前は守られる立場にあるんだが、神星剣相手だとサーゼクスとかでもキツイだろう」

 

 やはりか……。

 

「いま一番手っ取り早いのはお前を鍛えて神星剣使い達と戦えるようにすることだ。早急に力をつける必要がある」

 

 力……力か。

 

「四死剣て言うからには奴らは神星剣を四本以上持っているんだろう。これ以上奴らに残りを渡しちゃいかねえ。その為にもお前は本当に強くなってもらわなくちゃいかねえ」

 

 やけに真剣だな。神星剣に何の秘密があるのやら。

 

 まあ、興味は無い。奴らを殺せるならば俺は文句なんて何もない。

 

「はあ……」

 

 ソファーに背中を預けて天井を仰ぎ見る。

 

 ああ、楽しみだな。奴らをこの手で殺す。その為の力の一つは手に入った。後は、それを高めるだけだ。

 

 こっちから探さないでも奴らから勝手に来るんだ。それまでに神星剣を完全に使いこなせるようにならないとな。

 

「待っていろよ。必ず全員殺してやるかな」

 

 誰にも聞こえないような声で決意を呟く。

 

「夏には冥界に改めて戻るわ。皆そのつもりでね」

 

 冥界……そういえば彼らをまだいるのだろうか。

 

 親父殿の眷属達は、まだ生きているのだろうか。

 

******

 

 冥界にある、とある火山。

 

 その内部に男はいた。

 

 肩まで無造作に伸ばした黒色の髪は邪魔にならない様に首元で一本にまとめられていた。

 

 屈強に鍛えらえた体の褐色の肌には無数の傷跡が刻まれており、戦いの傷跡が伺える。

 

 左腕には乱雑に巻かれた包帯がある。所々が剥がれていたが男は気にしている様子は無かった。

 

 そして、黒い髪からは二本の角が伸びており彼が人間では無い事を示していた。

 

「……」

 

 男は何をするでもなく、ボンヤリとマグマの川に片足を突っ込んで座っていた。

 

 しかし、痛がるわけでも無く、ただマグマを見詰めていた。

 

 静寂だけが辺りを包み込んでいる中、男が静かに口を開く。

 

「――何をしている」

 

 辺りに人影は無い。しかし、男は静かに後ろに問いかける。

 

「あらあら……相変わらず凄いわね」

 

 暗闇から姿を現したのは燕尾服を着た若い()()だった。

 

 カールの掛かった金髪を弄りながら青年は笑みを浮かべていた。

 

「結構気配は上手に消していたつもりだったんだけど……流石ね、茨木」

 

「質問に答えろ。何をしている」

 

 有無を言わせない口調に青年はやれやれと首を振る。

 

「決まっているでしょう。――坊ちゃまが冥界に戻っていらっしゃる。貴方もいつまでここに居るつもりかしら?」

 

「自分の領土にいて何が悪い」

 

 取り付く島の無い茨木と呼ばれる男に青年はため息を隠せなかった。

 

「もう……ティアちゃんは既に準備を始めているっていうのに、同じ眷属でこうも差があるなんて」

 

「俺はガキの下僕では無い。そこを間違えるな」

 

 男の言葉に青年は眉を顰める。

 

「確かにそうかもしれないけど、坊ちゃまに仕えるつもりじゃなかったの?」

 

「十数年前に会ったきりの奴にどうしろと? 俺はユースティアの様に盲目的では無い」

 

 地味に正論な為に返せない。青年はここでの説得を諦める。

 

「分かったわ。だけど、帰ってきたらちゃんと会いなさい。貴方だって本当は気にしているんでしょ?」

 

「……ふん」

 

 今はこれで良い。そう判断した青年は踵を返して立ち去ろうとする。

 

「……いや、待て」

 

 そこで男から静止の声がかかる。

 

「どうしたの? やっぱり来てくれる」

 

「そうでは無い。ガキが戻ったらここに来るように伝えておけ。良いな」

 

「は? ここに!?」

 

 青年は思わず男の方に振り返る。

 

 男は相変わらず背中をこちらに見せている。

 

「ちょ、ちょ、貴方分かってるの!? ここ冥界でも最も危険と謳われている火山の一つよ!? そこに坊ちゃまに来いだなんて」

 

「意見は変えん。ちゃんと伝えておけ」

 

 有無言わせない男の言葉に青年は冷や汗を隠せない。

 

(ど、どうしましょう。茨木がこう言うならもう意見を変えるつもりは本当に無いでしょうし。伝えなかったら私が茨木に殺される。で、坊ちゃまに伝えたら伝えたで私がティアちゃんに殺される……って、どのみち私殺されるじゃない!)

 

 私の人生終わった。青年はそう感じ、ガクリと肩を降ろすのだった。

 

******

 

 時を同じくしてとある館の一室でメイド服に身を包んだ少女は作業をしていた。

 

 机一つでも誇りの一つも許さないと風に丁寧に洗っている。

 

 顔立ちは非常に整っており、ウェーブがかかった金髪に金色の瞳が特徴的な美少女だ。

 

「……こんな所ですか」

 

 掃除がひと段落したらしく、部屋を見渡す。

 

 客間らしく、天蓋付きのベットに家具。机や冷蔵庫まで完備されていた。

 

 それのどれもが一級品で、並の悪魔ならば使うのさえためらうほどのだ。

 

「冷蔵庫の中身も炭酸系にお水。果物系のジュースも全て完備。軽食系も問題ない。後は……」

 

 指を一つ一つ折りながら確認していく少女。

 

(そういえば、セルヴィアさんはどうしたんでしょう。茨木さんに呼びに行くと言っていましたが……まあ、無理でしょうね)

 

 自信満々にここを出ていったオカマな青年の事を思い出しながら少女はそう断ずる。

 

「まあ、いざとなった私が無理やり連れて行けばいい事ですし」

 

 セルヴィアが聞いたら顔を真っ青にする事をあっさりと言う少女だが、ふと、あるものが視界に映る。

 

 それは写真立てだった。中に映っているのは四人。

 

 二人は大人だ。紅髪の男性と黒色の髪を持つ女性――レオン・グレモリーと朝凪日月だ。

 

 もう二人はレオンと同じ紅色の髪を持つ小さな少年と、子供よりも少し背が高い少女だった。

 

 恥ずかしそうにしている少女の手を少年が引っ張っている。それをレオンたちが微笑ましそうに見ている。

 

「カレン様……」

 

 写真立てを手に持ち、少年を愛おしそうに撫でる。

 

「もう直ぐなのですね。もう直ぐ、会えるのですね」

 

 どれ程の長かっただろうか。悪魔の永遠の生から見ればほんの些細な時間だったが、彼女にとってはその永遠に等しかった。

 

 あの時、何も出来なかった。その時の後悔だけを胸に少女は生き続けていた。

 

 いっそ死んでしまった方が楽なのでは無いかとも思った事も何度もあった。

 

 しかし、そのたびに少年の笑顔が浮かび上がり、思いとどまった。

 

 その思いとどまりが漸く身を結んだのだ。嬉しいわけが無い。

 

「カレン様、速く戻ってきてくださいね? 私はもう十分すぎる程待ちました。これ以上待ったら本当に死んでしまいそうです」

 

 その場で踊るようにステップを踏む少女。

 

 そのたびに金色の髪が揺れる。

 

 愛おしそうに写真を胸に抱え彼女は回る。

 

 回り続け、そしてピタリと、止まる。

 

「……何を覗いているんですかペルセウスさん。殺しますよ?」

 

「キミはあれだな。容赦という言葉を知っておいた方が良いぞ?」

 

 そんな言葉と一緒に入ってきたのはくすんだ茶髪をした青年だった。

 

 悠然とした佇まいは隙が無く、見る者が見ればかなりの実力者だと直ぐに分かるだろう。

 

 ペルセウスと呼ばれた青年に少女はじろりと視線を寄越す。

 

「貴方には館の周りの見回りを任せた筈ですが?」

 

「知っているさ。だが、僕の愛馬が疲れたと言ってね。少し休みを貰った。大丈夫さ、ここに居ても何かあれば直ぐに駆けつけるよ」

 

「なら良いですが」

 

「と、言うよりもだ。カレンはまだこちらに来てもいないのだろう。今からこんなに忙しくてしても意味が無い気が……」

 

「何を言っているんですか」

 

 ペルセウスの言葉を遮るように少女は口を開く。

 

「まだ来ていないからこそ、です。それまでにカレン様が不愉快に思われない様に全て万全にしておかなければなりません」

 

「はいはい……」

 

 困ったものだと、ペルセウスは思う。

 

 まだ来るにしてもあちらの高校が夏休みに入らなければ来るはずが無いのに、今から準備していても意味が無いだろうに。

 

 それだけ目の前の少女の気持ちが昂ぶっているのだろうが。

 

(泰然と待っている茨木とは正反対だな)

 

 セルヴィアが説得しにいっている筈だが、期待せずに待っておこう。

 

(さてさて、これからどうなるのだろうか)

 

 ずっと停まっていたモノが動き出した。ペルセウスにはそう感じる。

 

 カレンが帰ってくることで一体どうなるのか。それは英雄の子孫たるペルセウスにも分からない。

 

 だが、確実に何かが動き出す。それだけはペルセウスにも感じ取れた。




漸くこの章も終わりです。いやあ、長かったなあ。

取り敢えず、少し休憩を頂きます。今月は色々と忙しいので、二三週間ぐらい更新出来ないかも。

出来ればお気に入り登録1500を超えた状態で投稿したかったなあ。何か感想も二つほど減っていたみたいだし。どういう事?

ゴールデンウイーク中のバイト5日中4日と泣きたくなる状態……。

あーでも、コードギアスの映画見に行く予定だから楽しみです。何やら章が追加されるらしいし。今からワクワクしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。