ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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最近疲れが取れない……。


第四話

「使用人に関してはまだ募集が中々出来ておらず、何か御用がございましたら私どもにお伝えください」

 

 ティア先導の元、俺たちは館の中を歩いていく。

 

 俺はその間、館の廊下を興味深く見ていく。

 

「どう? 何か思い出した?」

 

 俺の隣を歩いていたセルヴィアが俺に聞いてくる。

 

「一応、昔と全く同じようにしてあるのだけど、どうかしら」

 

「そうですね、懐かしさは感じますけど、そこまでですね」

 

「まあ、貴方も大分幼かったものね。仕方ないわ。あ、後私に敬語は要らないわ。私は貴方に仕える使用人何だから」

 

 ウィンクでもしそうな軽い感じでセルヴィアがそう言ってくる。

 

 しかし、このヒトは……アレなのだろうか? もしそうなら、俺は初めて出会う事になるな。

 

 まあ、そこまで接し方を考える必要も無いだろうけど。

 

「こちらです」

 

 気づけば、ティアがドアの前で立ち止まる。

 

 そしてドアを開けて俺たちの中に案内する。

 

「へえ……」

 

 中はシックな感じに落ち着いた装飾で、寛ぐように造られた部屋の様に感じた。

 

 ここの主は親父殿だったんだから、親父殿がそういう趣味を持っていたんだろうな。部屋に暖炉まで設置されているし。

 

 一誠たちも物珍しそうに中を見渡していた。

 

 とはいえ、本家ほどでは無いが、ここも十分に馬鹿でかい。見るからに高級品があちこちにあるし。

 

「それでは皆様、暫しご寛ぎください。お茶をお持ちします」

 

 ティアは一礼すると、部屋を出る。

 

「ふう……」

 

 俺は近くにあるソファーに体を預けて座る。

 

 良いやつだなこれ。座っただけで分かる。

 

「そういえば、セルヴィア」

 

「何かしら?」

 

「他の親父殿眷属は? お前だけなのか?」

 

 あんまり聞きたくないのだが、ここで聞いておかないとな。

 

 セルヴィアは少し顔を歪めると、言いにくそうになる。

 

「えーと、私以外にも後二人いるわ。ただ……」

 

「ただ?」

 

 少し視線を彷徨わせていたが、やがて諦めたようにセルヴィアは言う。

 

「一人はこっちから会いに行く気は無いって言って、もう一人はペガサスに乗って遠出しちゃって……」

 

「……何だそりゃ」

 

 思わず、口から出る。

 

 セルヴィアは本当に申し訳なさそうにしている。

 

「本当にごめんなさい。ペガサスに乗っている方はもう直ぐ帰ってくると思うんだけど、もう一人は多分無理ね……」

 

「なに、親父殿の眷属は自由奔放なの?」

 

「いえ、どちらかというと、我が強いというか基本的に『他者の命令なんて聞くか!』的なヤツが多かったから力で捻じ伏せないと駄目だったのよねえ」

 

 やれやれ、と首を振るセルヴィア。

 

 ……親父殿、すげえ。

 

「それで、その……来ない方が……」

 

「――それに関しては私の方が処理しておくと言っておいた筈ですが」

 

 言いにくそうにしているセルヴィアの後ろから声が聞こえた。

 

「ひっ!」

 

 怯える様に声を漏らすセルヴィア。

 

「セルヴィアさん、カレン様は帰ってきたばかりなのです。余計な心労を増やすべきではありません」

 

「それはそうなんだけど……」

 

 淡々とするティアに、セルヴィアは煮え切らない態度を取るが、ティアがジロリとセルヴィアを見る。

 

「分かりましたね?」

 

「……はい」

 

 諦めたようにガックリと項垂れるセルヴィア。

 

 何だろう、セルヴィアが苦労人の雰囲気を出している。

 

「お待たせしました皆様」

 

 ティーセットを台車に載せてティアがテキパキとお茶の準備をしていく。

 

「どうぞ」

 

 ティアが俺の前のテーブルにお茶を置く。

 

 それから順番に一誠たちの前に置いていく。

 

「皆様もどうぞ。そこいらの物よりかは自信がございますのでお飲み下さい」

 

 すげえ。自分の能力をアピールしてきた。グレイフィアさんとは違うなあ。

 

 では、この自信満々なメイドの淹れた紅茶はどんな感じかな?

 

 俺はカップを手に取り、口にする。

 

「…………」

 

 へえ……。

 

「上手い!」

 

「ほ、本当に美味しいです」

 

 一誠とアーシアが驚きを隠せていなかった。

 

「確かに、これは美味しいね」

 

「ああ、紅茶に関しては素人の私でも上手いと感じる」

 

「ほ、ホントですぅ」

 

 祐斗とゼノヴィア、ギャスパーを感想に口にする。

 

「あらあら、これは負けてしまいましたわ」

 

「……本当に美味しいわね」

 

 困ったように笑みを浮かべる朱乃と、不機嫌そうに飲むリアス。

 

「本当に美味しいよ。その自信は嘘じゃないようだな」

 

「当然でございます。私めは、貴方様の侍女でございますから」

 

 それでも褒められてうれしいのか、微笑を浮かべるティア。

 

「……ユースティア、お代わり頂けるかしら?」

 

 リアスが空のカップを上げてティアに催促する。

 

「はい、只今」

 

 ティアも直ぐに紅茶のお代わりを入れていく。

 

 何だリアスのヤツ、やけに不機嫌そうじゃねえか

 

「あらあら、これはちょっと面白そうね」

 

 何やら俺たちを見てニヤついているセルヴィア。

 

「…………」

 

 不機嫌そうに紅茶を飲みながらティアを見詰めるリアス。

 

「ふふ……」

 

 対して余裕そうに笑みを浮かべながらそれを見るティア。

 

 何だこれ? 何この修羅場的な感じ。可笑しいな。俺は今日実家に帰ってきたはずなんだよな? なのに何でこうなっているわけ?

 

 ああもう……。

 

「そうだ、セルヴィア聞きたいことがあるんだった」

 

「ん?」

 

******

 

 俺は皆と離れてあるところに向かっていた。

 

「……だから、何で付いてくるんだ?」

 

 俺はげんなりと後ろを振り向く。

 

「あら、叔父様のお墓に行くんだったら、私も挨拶しなくちゃ。姪ですもの」

 

「私はカレン様の護衛を務めております。ですので、空気みたいなものと思って下されば結構です」

 

 リアス、ティアの順番で言ってくる。

 

「はあ……」

 

 疲れる。本当にどうしたこうなった?

 

 確か、母様を親父殿の所に連れてってやろうとして皆がまだ寝ている早朝に向かおうとしたら、二人が玄関の前にいたんだよな。

 

 お互いに牽制し合う様に睨みあっていたから、険悪ムードで酷い。一瞬体が回れ右するところだったぜ。

 

 つうか、本当にこの二人何で仲悪いんだ? リアスや朱乃みたいなケンカするほど仲が良いって感じでも無く、本当に仲が悪いって感じだ。

 

 この二人って昔会った事あるっけ? そこらへんはセルヴィアに聞いておくか。

 

「ほら、二人とも行くぞ」

 

 めんどくさくなって俺はさっさと歩く。

 

「こら、カレン待ちなさい」

 

「…………」

 

 二人も睨みあうのを止めて俺についてくる。

 

「ええと後どれくらいだ?」

 

 セルヴィアに渡されたメモを頼りに俺は道を進む。

 

 親父殿が埋葬されているのは、この先の俺たち家族の思い出の場所という。

 

 思い出の場所。俺の断片的な記憶の中ではある光景が脳裏に思い浮かんでいる。

 

 俺の予想が正しければ多分あの場所だと思うんだけど。

 

「……ん?」

 

 そこで俺はふとあるものに気づく。

 

「何だこれ? 雪……じゃないな」

 

 それは小さな粒だった。金色の小さな粒子。

 

 見れば、あちこちにこの粒子が舞っている。

 

「これって……」

 

「どうやら近くになってきたようです。これが見えると言う事はもうすぐそこですよ」

 

 ティアが後ろから言う。

 

「これ何だか知っているのか?」

 

「はい、ですがちゃんと見たほうが説明しやすいのでそちらに向かいましょう」

 

 こちらです。と言ってティアが先導し始める。

 

 俺とリアスにそれに付いて行く。

 

「リアス、この粒子、覚えがあるか?」

 

「ええ……朧げだけど貴方と一緒に見たことがある気がするわ」

 

 だとしたら、やっぱり、ここは……。

 

 森を抜けた次の瞬間だった。

 

「あ……」

 

 俺の視界は金色で埋め尽くされた。

 

「これって……」

 

 隣のリアスも驚きを隠せていなかった。

 

 そこは草原だった。風で草が揺れている。

 

 そして、その草の隙間からはさっき見た金色の粒子が次々と噴き出ていた。

 

「ここは冥界でも特殊な場所で冥界の大地に存在する龍脈から魔力が噴き出る場所なのです。レオン様のお気に入りの場所で、良くご家族でいらっしゃっておりましたよ」

 

 ティアの説明に俺は納得する。

 

 確かにそんな記憶も無くはない(もしくはある)ような気もする。

 

「こちらです」

 

 草原をティアに先導されながら進む。

 

 ああここは本当に懐かしい。よく遊んだものだ。

 

「懐かしいわね。昔はよくここで二人で遊んだものね」

 

 風に揺れる髪を抑えながらリアスが懐かしそうに周りを見る。

 

「そうだな……二人でこっそり屋敷を抜け出してここで遊んで、帰ったら母様にめっちゃ叱られていたな」

 

 あのヒト、自分の事棚に上げて怒るからイラッとするんだよなー。

 

「……ねえカレン」

 

「んー?」

 

「彼女ともここで遊んだことあるの?」

 

「彼女?」

 

「ユースティアの事よ」

 

「ああ……」

 

 ティアとか……どうだったか。

 

「よく、覚えていないな……リアスの事ははっきりしているんだが」

 

「ふーん、そう……」

 

 機嫌よさげにリアスが呟く。

 

「――カレン様、問題ございません。これからまた親交を深めていけば良いのですから」

 

 前を歩いていたティアがこちらを振り返ってニコリと笑う。

 

「お、おう」

 

 妙に迫力のある笑みに押されつつ俺は頷く。

 

 そして更に数分歩き、漸く目的地に着いた。

 

 親父殿の墓があったのは滑らかな丘の上だった。

 

 その丘の上に一つだけポツンと墓が置いてあった。

 

「……ん?」

 

 墓の前に誰かいる。それに隣にいるのは……馬?

 

 馬ではあるのだが、毛並みは純白で、その背中からは翼が生えていた。

 

 あれって、うわさに聞くペガサスか?

 

「驚いた……ペガサスはギリシャ神話勢の領域の中でも極わずかしか生息していないと言われているのに」

 

 リアスが隣で感嘆の声を上げていた。

 

「……全く」

 

 しかし、ティアはため息を付くと、真っ直ぐ男に近づいていく。

 

 そして、男の後ろに立つ。

 

「――――」

 

 次の瞬間、ティアの足が目にも止まらなぬ速さで動く。

 

 そのまま男の首を刈り取ろうとするかの如く、轟音を伴いながら男の首を狙う。

 

 そして男は反応出来ないままその蹴りを喰らう。

 

 あまりの勢いに、周りの草が風圧で飛び散り、粒子も一気に飛ぶ。

 

「……は?」

 

 突然の出来事に俺は思わずそんな言葉を口にしていた。

 

「……危ないな。いきなり殺しに掛かってくるなんて、随分と物騒では無いじゃないか?」

 

 そして草が地面に落ち、改めて二人を見ると男の頭は首から離れていなかった。

 

 男は腕を盾にするようにしてティアの蹴りを防いでいた。

 

 あれだけの勢いの蹴りだったのに男の方は腕で防いだだけで全く態勢を変えていなかった。

 

「黙りなさい。ここで何をしているのです? 茨木さんの説得の成功の有無関係なく直ぐに戻るように言っていたはずです」

 

 ティアはその事に驚くことなく、足を戻しながら淡々と言葉を紡ぐ。

 

「いや、なに。帰りのここに立ち寄ってね。どうせカレンもこっちに来ると思って待っていたんだ」

 

 ニコニコと笑いながらそう言う男にティアは不機嫌さを隠そうともしなかった。

 

「……あーティア? そちらは誰かな? 紹介してもらえるんだよな」

 

 何となく悪くなった空気を払しょくするために俺はティアに尋ねる。

 

 俺の方に振り替えると同時にいつもの表情に戻ったティアが説明する。

 

「彼はペルセウス。かの英雄ペルセウスの子孫でしてレオン様の兵士(ポーン)を務めておりました」

 

 ペルセウス! かの大英雄ペルセウスか!

 

 怪物メデューサの首を刎ね、その傷口から生まれたペガサスに乗り、囚われていた王女アンドロメダを救い出した英雄だ。

 

 この二人は結婚し、その子孫にはあのギリシャの大英雄ヘラクレスがいる。

 

 血筋、実力共にトップの英雄だろう。

 

 その子孫がこのヒトというわけか。成程、さっきのティアの蹴りを難なく防いだのも実力の高さが伺えるぜ。

 

 紹介された男、ペルセウスは苦笑する。

 

「そんな大したものじゃない。……守るべきものを守れないような敗北者だ」

 

 どこか、憂いを帯びた目をしながら俺を見るペルセウス。

 

 しかし、直ぐに表情を笑みに戻し、俺に話しかけてくる。

 

「久しぶりだなカレン。本当にレオンのヤツにそっくりだ。いや、目元なんかは日月さん似かな?」

 

「正直、親父殿顔なんて写真でしか覚えが無いんですけど、そんなに似ているんですか?」

 

「ああ、生き写しと言われてもしょうがないくらいだ」

 

 そんなに、か。親父殿を知っているヒトから反応が今からめんどくさくなってきたよ。

 

 てか、今はそんな事は良いか。さっさとやらないと。

 

******

 

「これでよし、と」

 

 親父殿の墓の隣に少し大きめの石を置き作業は終了する。

 

「母様、約束はこれで守ったことにしてくれ。随分と長い時間がかかちまったけどな」

 

 石を撫でながら俺は語る。

 

 漸く、親父殿の隣に母様を埋める事が出来た。俺の肩の荷も少し降ろせた訳だ。

 

「やっとこの二人は一緒に成れたんだな。我々もようやっと落ち着けます」

 

 俺の隣の片膝を付いたペルセウスが二人の墓をジッと見つめる。

 

「……なあ、ペルセウス」

 

「何です?」

 

「あの日、何があった? 俺は親父殿を刺したのがルーファス・アガリアレプトとしか覚えていない。気が付いたら母様と二人、雨の中で倒れていた」

 

 後ろで、ピクリとティアが揺れた。

 

「叔父上やゼクス兄さんに聞こうとも思ったがどうも俺との再会を喜んでいる二人からは聞き出せなかった」

 

 そうすることで誤魔化しるのでは、と思ったりもしたが。

 

「そうか……それだけか」

 

 噛みしめる様に言うペルセウス。

 

「――すまないカレン。私の口からはまだ言えない」

 

「どういう事だ。あんた親父殿の眷属何だろ? だったら」

 

「“まだ”言えないと言ったんだ。時期が早い。――焦るな。我々はどんな事があってもお前の味方だ」

 

「…………」

 

 ペルセウスの顔を見て俺のそれ以上の言葉を紡げなかった。

 

「……必ずだぞ」

 

 何とかそれだけは口に出来た。

 

「ああ、必ずだ」

 

 そして、俺の後ろで、何かに耐える様に俯いているティアとそれを見るリアスに、俺は気付けなかった。

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