ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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第六話

 夢とは、尊いものだ。それを信じ、歩いていく事は輝いて見えるものだ。

 

 夢を見失った身としてはどんな夢であれ、本人が本気ならば是非とも応援してやりたいものだ。

 

『ハハハハハハハハハハハっ!!』

 

 こうやって誰かに馬鹿にされるように笑われると助けてやりたいくらいには。

 

******

 

 長ったらしいまるで学校の校長の話みたいに延々と話していた上役や、ゼクス兄さんだが、流石に俺たちが退屈してきたのを見抜いたのか、話を止めた。

 

「さて、長くなってしまったね。最後に皆の夢について聞いても良いかな? 何、未来ある有望な若者の夢を私たちに聞かせてくれ」

 

 ゼクス兄さんの話を聞いて最初に話したのはサイラオーグだった。

 

「俺の夢は魔王になる事です」

 

 堂々と、はっきりと答える。

 

『ほう……』

 

 お偉い方は感嘆するようにため息を漏らす。

 

 かくいう俺も驚いている。

 

 魔王。つまりは悪魔界のトップに立つって事だ。こいつの事だから魔王の中でも特別とされるルシファーを狙っているのかもな。

 

 次にオズワルドの番が回る。

 

「俺は全てを知りたいです」

 

『……?』

 

 オズワルドの言葉にその場の全員が首を傾げる。

 

 唯一オズワルドの眷属だけが表情に変化が無い。

 

「それはどういう事かなオズワルド? 分かるように言って貰えるかな?」

 

 ゼクス兄さんの問いにオズワルドは苦笑する。

 

「ああ、申し訳ありません。ルシファー様。確かにこれでは伝わりにくいですね。では、こう言い換えます。――私は世界の全てを知りたい。悪魔も天使も堕天使も、そして人間。神さえも。世界も! そのすべてを、私は知りたい」

 

 何かを掴むように拳を握りしめるオズワルド。その様子は熱に浮かされたようだった。

 

 その様に皆が圧倒される中、オズワルドはフッと雰囲気を和らげた。

 

「ま、要するに世界の知識を詰め込みたいですね。何せ俺はダンタリオンですから」

 

 それに納得を見せるお偉い方。

 

 しかし、何人かは顔を険しくしている。

 

「……ダンタリオン家は世界に存在するあらゆる書物を集めている、本の一族よ。その書庫の中には世界に一冊しか現存していない本があると言われる程よ」

 

 リアスが小声で補足する。

 

 本の一族か。読書とかする身としては興味があるな。今度行きたいって言えば、入れてくれるかね?

 

 その後も残りのメンバーが夢を語っていく。

 

 リアスは前々から言っているようにレーティングゲームで全タイトルを取ることだ。こいつはこいつで夢がぶれ無くて良い。

 

 そして最後にソーナの番になったわけなのだが……。

 

「これは驚いた! シトリー家の次期当主は酔狂な事を考える!」

 

「無理な話だ!」

 

「これが公の場でなくて良かったものだ」

 

 ソーナの夢、下級悪魔でも通えるレーティングゲームの学校を作る事を聞いた上役の反応がこれだ。

 

「やはり、か……」

 

 予想通りとはいえ、流石に嫌なモノが胸の内をよぎる。

 

 訳の分からないと言った顔をしている一誠に祐斗が淡々と説明する。

 

「イッセー君。悪魔社会は未だに上級と下級悪魔を分ける部分が根強く残っている。下級悪魔は上級悪魔に仕えるべき存在だという認識の方がまだ強いんだ」

 

 そう、悪魔界は大戦後随分と変わった部分もあるが、それでも変わらず根強く残っている部分も多い。

 

 特にこの格差社会は顕著だ。変わらないもの、変わってはならないものとして彼らは信じている。

 

 小さく嘆息する。

 

 見れば、流石に馬鹿にされたのを気にして匙君が反論していた。

 

「何でそんなに笑うんすっか! 会長は自分の夢を語っていただけですよ! それのどこかが可笑しいんですか!」

 

「控えろ下級悪魔。ソーナ殿、下僕の教育が成っていませんな。しっかりと躾けなくてはなりませんぞ」

 

「申し訳ありません」

 

 嫌味たっぷりの上役の言葉にソーナは表情を変えることなく頭を下げる。

 

「会長! 何で会長が頭を下げるんですか!」

 

「サジ、おやめなさい。私はあくまで夢を語っただけ。それをとやかく言われるのは仕方のない事です」

 

 そう、仕方がない。それは分かっているのだが……。

 

「……少し、宜しいですか?」

 

 気づけば、俺は手を上げていた。

 

 驚く皆に俺は黙っているようにジェスチャーを出す。

 

「何かね下級悪魔如くが我々に……ん? 紅髪?」

 

「それにあの顔は……」

 

 俺の事を見た上役たちがヒソヒソと隣同士で話し合っている。

 

「失礼、宜しいか?」

 

「ッ! ああ、構わんよ」

 

 話している最中で突然話しかけられたから、情景反射の様に返事をする上役の一人。

 

「では失礼して。先ほど、下級悪魔は上級悪魔に仕えるものとお聞きしました。成程、悪魔界の当たり前な事です。私も当たり前事とは言え納得させていただきました」

 

「ほう……」

 

 俺の言葉に上役たちは感心したようにため息を漏らす。

 

「良くわきまえている」

 

「ソーナ殿の所とは大違いだ」

 

「……っ!」

 

 何かに耐える様に拳を握りしめている匙君。

 

 そして、俺の方に視線を向けるソーナ。

 

 安心させるようにフッと微笑む。

 

「……ですが」

 

 ここからが面白いところだぜ。

 

 俺は、言葉を続ける。

 

「そんな下級だの上級だのにいつまで齧りついている頭が耄碌した老害などがここに居らっしゃるとは思いませんが」

 

 一瞬、場が固まる。

 

 そして次の瞬間、

 

「き、貴様! 我らを愚弄するか!」

 

「下級悪魔の分際で!」

 

「リアス殿! これはどういう事かね?」

 

 案の定激昂した上役のおっさんたちが身を乗り出して俺を罵ってくる。

 

「ああ、もう……」

 

「あらあら……」

 

 頭を痛そうに抱えるリアスに、困ったように笑みを浮かべる朱乃。

 

「まあまあ皆さん、それくらいで落ち着いてください」

 

 ゼクス兄さんがやんわりと宥める。

 

「サーゼクス様!」

 

「下級悪魔にこのような事を許しては……!」

 

「下級云々で言うならば、彼は上級悪魔ですよ」

 

 さらりと告げられたゼクス兄さんの言葉に上役の悪魔たちは一瞬止まる。

 

「サ、サーゼクス様? それはどういう……」

 

「彼の名はカレン・グレモリー。我が叔父、レオン・グレモリーの実子です。日本に居たのを妹のリアスが保護したんですよ」

 

 ギョッとするように俺の方に注目が集まる。

 

「道理で瓜二つだと……」

 

「しかし、それが本当ならば、ハーフであろう?」

 

「だとしても、あの朝凪日月の子だ……」

 

 すっかり混乱しているな。それだけ俺が物珍しいんだろうけど。

 

「この話はまた今度にしましょう。それとカレン、いくら上級悪魔でも目上の方には礼儀を持って接するように。分かったかな?」

 

「……はい、以後気をつけましょう」

 

 慇懃に礼をしておく。

 

 少しやり過ぎたな。今度はもう少し遠まわしに言ってやろう。

 

「黒い。黒い笑みを浮かべているぜ」

 

「あははは、カレン先輩、容赦ない所とかあるからね」

 

 一誠と祐斗が後ろでひそひそ話をしている。

 

 おいおい、俺は慈悲深いぜ? 単に敵対する相手には情け容赦ないだけだ。

 

「さて、ソーナも自分の夢を諦めるつもりは無いんだね?」

 

「もちろんです」

 

 即答するソーナ。

 

「それならどうだろう。リアスとソーナ、二人でレーティングゲームをしないか?」

 

『っ!?』

 

 ゼクス兄さんの言葉にリアスとソーナは互いに顔を見合わせて驚く。

 

「もともと、近日中にリアスのゲームを執り行う予定だった。ソーナも夢を語るには実力を示さなければならない。どうかな? セラフォルーもそれでいいだろ?」

 

 セラフォルー? 何でセラフォルー様の名前がそこで……ってああ。

 

 直ぐに納得する。

 

「うんうん! 良いよ良いよ! オジサマたちったらソーナちゃんを寄ってたかって苛めるんだもん! カレンちゃんもありがとうね!」

 

「はあ、どうも」

 

 そうこうしている内に、俺たちとソーナたちとのレーティングゲームは決定したのだった。

 

******

 

「あの、カレン君」

 

「ん?」

 

 ソーナが話しかけてきたのは会合も終わり、いざ帰ろうとした時だった。

 

「おう、どうした?」

 

「いえ、その……ありがとうございました」

 

「ん?」

 

 俺が首を傾げると、控えめに言う。

 

「私なんかの為に上役の方々に突っかかるような真似を」

 

「ああ、その事か。気にしなくて良いさ。俺が単純に気に喰わなかっただけだからさ」

 

「ですが、その所為であまり良い印象を持たれなくなったと思いますよ」

 

 ま、そうだろうな。どうでも良いけど。

 

「お前が気にすることじゃないさ。夢を持つって事は本当に良い事なんだから。お前が実現したいと思ったなら、実現しろ。それだけの努力をしてるって事はお前の性格からすれば、容易に想像付く」

 

「カレン君……」

 

 俺はポン、とソーナの頭に手を乗せる。

 

「ちょ、カレン……?」

 

 突然の事に戸惑うソーナだが、俺は言葉を続ける。

 

「俺はもう夢ってものを持つことが出来ない。だからこそ、夢を持っている奴が羨ましい」

 

「……? それってどういう」

 

 ソーナが聞き返そうとした時だ。

 

「カーレーンー?」

 

 妙に間延びした感じで名前を呼ばれる。

 

 それと同時に肩をガシッと掴まれる。

 

「リアスか……」

 

「ええ、私よ。それで何で貴方はソーナの頭に手を乗っけているの?」

 

「いや、何となく?」

 

 肩を掴む力が強まる。

 

「何となくで、貴方は女の子の頭を触るのかしら?」

 

「ふむ、確かに」

 

 言われてみれば何という事だ。男として駄目だろうな。

 

「失礼したなソーナ」

 

「いえ……」

 

 流石に恥ずかしがったのだろう。珍しく表情を崩し頬を染めているソーナ。

 

 後ろで『キャー!』等と言っている生徒会の女性陣。それと血涙を流しそうな勢いで歯ぎしりしている匙君。

 

 ……何ぞこれ?

 

******

 

「……そうか、シトリー家とゲームが決まったのか」

 

 火山の中、茨木童子は静かに呟く。

 

『ええ、ある意味、当然と言える組み合わせかもしれないわね』

 

 手のひらサイズの魔方陣から映像でセルヴィアの体が浮かび上がっており、茨木童子に笑いかけていた。

 

『しかも、聞けばカレンちゃんたら、上役の方々に喧嘩腰で馬鹿にしたそうよ? 思わず笑っちゃったわ』

 

「その点は母親似かもな」

 

 あの自由奔放という言葉が一番似合う女を思い浮かべながら茨木童子は静かに呟く。

 

「……それで? そんな事の為に俺に連絡した訳じゃ無いだろ?」

 

 その言葉にセルヴィアは真面目な表情を作る。

 

『そうね。じゃあ言うわね……今すぐ戻って来て!? いい加減ティアちゃんの機嫌がやばいのよ~!』

 

 だが、それも直ぐに崩れて実に情けない顔になる。

 

「…………」

 

 茨木童子はゴミを見るかのような目で見つめ、無言のまま通信を切ろうとする。

 

『あ、ちょっと!? 切らないでよ!?』

 

「黙れ。何度も言っただろう。小僧を俺のところまで連れてこい。そうすれば解決する話だ」

 

『もう……』

 

 本当に困ったようにため息を付くセルヴィア。

 

 それを見つつ、茨木童子はあることを思いつく。

 

「……おい、小僧はゲーム前に修行はするつもりなのだろ?」

 

『え? ええ、その筈よ。アザゼル総督が直々に訓練メニューを作ってくれるそうだから』

 

「そうか」

 

 考え込む茨木童子にセルヴィアは恐る恐る声を掛ける。

 

『……もしかしなくても何を考えているのかしら?』

 

「セルヴィア」

 

『話聞いていないし。何よ?』

 

「小僧の修行、俺が面倒を見よう」

 

『……は?』

 

 思わず、と言った感じで呆けた表情を作るセルヴィア。

 

 そして次の瞬間、必死な形相になり、首を振る。

 

『いやいやいやいやいや! 何を言ってるの!? 貴方が修行を見るなんてカレンちゃん殺す気?』

 

「何故そうなる?」

 

『貴方情け容赦ないし、手加減というものが出来ないじゃない!』

 

「手加減など何故する必要がある?」

 

『ほらそういう所!』

 

 最早、悲鳴と言えるほどの声を上げるセルヴィア。

 

 うるさそうに顔を顰めながら茨木童子は

 

「兎に角伝えたからな」

 

『あ、ちょ』

 

 まだ何か言いたそうなセルヴィアを無視して通信を切る茨木童子。

 

「……レオン、お前の遺したもの、俺が鍛え上げてやる。その結果がお前の望むものでは無いとしてもだ」

 

 洞窟に響かせる様に呟く茨木童子であった。

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