「よし、全員揃ったな」
グレモリー本家の庭の一角。俺たちはジャージ姿になってアザゼル先生の前に揃っていた。
あの会合の次の日。俺たちは早速ゲームまでの間トレーニングとしゃれ込む為にアザゼル先生のミーティングを受ける事になった。
「予め言っておく。今回の修行はあくまで長期的に継続するための最初の一歩だ。短期的に結果が出る者もいれば、長期的に気づかない面で出る者もいるかもしれない。そこは分かっておく様に」
『はい』
全員が返事をする。
ま、それもそうだ。寧ろ直ぐに結果が出たらそれはそれで笑えるわ。
「さて、それじゃあ順番に伝えていくぞ」
アザゼル先生が順番に俺たちの修行メニューを渡していく。
一誠まで渡されて……俺の無かった。
え、どういう事?
「先生? 俺のは……」
「あーお前のはちょっと別だ。最後に話すさ」
あ、そう。そう言われては俺は引き下がるしかない。
そしてアザゼル先生が修行の内容を伝えていく。
先ずはリアス。リアスの場合は元々の才能は計り知れない。このまま順当にいけば最上級悪魔になれる素質を持っている。
しかし、リアス自身は更なるパワーアップを望んでおり、アザゼル先生もそれに応えた修行法をリアスに渡した。
とはいえ、そこまで特別な事をやる必要が無い。リアス自身も基礎的なトレーニングと王としての状況判断を鍛える様にするのがリアスの課題だ。
次に朱乃。アザゼル先生に呼ばれたとき、朱乃はどこか不機嫌だった。
やはり、まだしこりというか、堕天使に嫌悪感を持っているのだろうか。
そんな朱乃だったが、先生が朱乃に出した課題は一つ。
――自分をさらけ出せ――。
自分をさらけ出す。つまり、堕天使としての力を使えという事だろう。
しかし、酷な話でもある。朱乃は堕天使の力を毛嫌いしている。だからこそ、今までピンチな状況でも使わなかったのだろう。
だが、それでは前に進めない。今まで以上に強くなるためには自分とちゃんと向き合う必要がある。それは朱乃も分かっているだろう。
次に
祐斗は聖魔剣の長時間の維持。肝心なところで使えなきゃ意味が無いからな。
剣術については師匠のところで一から勉強しなおすとの事だ。
師匠か……。そういえば、もうそろそろか。
次にゼノヴィアはデュランダルの制御。そしてもう一本特別な剣を扱えるようになること。
特別な剣っていうのが分からんが、それも後のお楽しみだそうだ。
次にギャスパーだが、しばらくは先生考案の引きこもり脱出プログラムを遂行するそうだ。
外に出れなきゃゲームに参加するのも憚れるからな。
同じくサポート要員のアーシアは今よりも神器の力を高める事。
彼女の能力を強化することで俺たちの戦闘継続能力を高める事が出来ればチーム戦もだいぶ楽になる。期待しているぜ。
次に小猫だが……。これも朱乃と同じ課題だった。
自分をさらけ出せ。その一言であれだけやる気に満ちていた小猫のテンションが一気に下がってしまった。
小猫にも何かあるとは思っていたが、どうやら、朱乃並みに厄介な事情が有りそうだ。
一誠が軽い感じで小猫の頭を撫でようとしていたが、止めておく。今のこいつにそれは逆効果だろう。
「で、次にカレンだ」
やっと俺か。
「お前は現在のグレモリー眷属の中でトップクラスだ。正直、ヴァーリと同等クラスの素質を持っていると俺は考えている」
あの歴代最強の白龍皇とか。それは良い事を聞いたな。
「だが、お前はもっとその先、四死剣との戦いを念頭に入れているんだよな?」
「……ああ。勿論だ」
自然、声が低くなる。
そう、奴らは全員殺す。その為ならどんな事をしても強くなる。
「……そうか。じゃ、頑張れよ」
「は?」
え、それだけ?
先生のあまりに投げやりとした感じに俺は思わずポカンとする。
「い、いや先生? 俺の特訓メニューは?」
「ん? 一応作ったんだが無しになった」
「何でさ!?」
何これ? 自分で考えろってそういう事?
俺の表情で分かったのか、先生はめんどくさそうに手を振る。
「違う違う。お前には個別に付いてくれる師匠がいるんだよ。――お前の親父の眷属がな」
「っ」
親父の眷属。セルヴィアか、ペルセウスか?
「取り敢えず、地図に書いてある場所に行け。そこで待っているそうだ」
そう言ってアザゼル先生が地図を渡してくる。
どれどれ、と俺は地図を覗き込む。
目的地らしい赤丸付いている場所は……。
「火山?」
何故か火山だった。
いや、山籠もりなら分かるかもしれないが、何故に火山? マグマと一緒に生活しろと?
何となく、不安になり、俺はリアスに地図を見せた。
それを見たリアスが顔を驚きに染める。
「え、うそ? これって悪魔の領内で三指に入る危険火山の一つよ!? 今だって活動を続けているから絶対に立ち入りは禁止だって言うのに」
マジか。そんな危険なの?
リアスがキッとアザゼル先生を睨み付ける。
「ちょっとアザゼル! どういう事? カレンをこんな危険な場所に連れて行こうとするなんて!」
「俺に言われてもな……」
困ったように後頭部を掻く先生。
「アザゼル?」
ニコニコと笑みを浮かべながら手元に雷を集めている朱乃。怖いよ。
「お、おい待て待て。俺の所為じゃないって言ってるだろ! 文句ならあの馬鹿力に言え!」
「馬鹿力?」
「ああ、そうだ。お前の修行相手だ。正直あんまし関わり合いたくないんだよ俺は!」
あの先生が珍しく嫌がっているとは……親父殿の眷属って言うけど、あいつらじゃないのか?
「あー二人とも、良いさ。先生にどうこう言ったってしょうがない。大人しく行くさ」
「カレン……」
「本当に大丈夫なんですの?」
二人が心配そうにこちらを見る。
その様子から心から心配しているのが分かるし、若干心苦しいがこれも強くなるためならば問題ない。
「あー良いか。じゃあ、最後はイッセーだが……お、来た」
先生が空を見上げる。俺たちもつられてそちらを見る。
「ん?」
空に黒い豆粒みたいな影がある。それが段々とこちらに近づいてくる。
豆粒はやがてデカい影になっていき、猛スピードでこちらに迫っている。
そしてでかい地響きと共に何かが俺たちの前に着地する。
「ドラゴンか……!」
おれは思わず呟く。
そう、着地したのはドラゴンだった。
体長は十五メートル程で馬鹿太い四肢に大きな翼。まさしく物語に出てくるドラゴンそのものだ。
『タンニーンじゃありませんか』
リンドが周りに聞こえる様に言う。
「ほう、リンドヴルムか久しいな」
ドラゴンも口を開き懐かしそうに呟く。
「リンド知ってるのか?」
『ええ、『
「正確には元、だな。今は悪魔に転生して最上級悪魔だ」
リンドの説明にアザゼル先生が補足する。
「ドライグも聞こえているのだろ?……ドライグ?」
反応が無いのを訝しんでタンニーンが一誠の方に目を向ける。
少し経ってから声が聞こえる。
『あ、ああ久しぶりだなタンニーン』
久しぶりに聞いたドライグの声にリンドが冷たく当たる。
『あら、私には何も挨拶が無いのかしら?』
『い、いや、普段から会っているわけだからな? 絶対に顔を合わせているわけだし』
……何だこれ。
二匹の会話を聞いたタンニーンが嘆息をこぼす。
「リンド、いい加減機嫌を直せ。まだ根に持っているのか?」
『あら、何の事です? 私は何も根に等持っていませんよ?』
「……それが持っているというのだよ」
全くだ。もう数百年も前の話なんだからいい加減許してやれば良いモノを。
『まだ、数百年です』
……そうですか。
「ま、ドラゴンの喧嘩はドラゴン同士でやっていてくれ。さてイッセー」
「? はい」
「こいつがお前の修行相手だ」
「……え?」
言われたことが理解できなかったのか、固まる一誠。
「タンニーンがお前の修行相手だって言ってるんだよ」
「え、ええええええぇぇぇぇぇ!? このドラゴンがぁ!?」
驚きを隠さない一誠。
つか、そんな風に言うなよ失礼だぜ。
「ドラゴンはドラゴンによって鍛えられる方が良い。そういうわけだ」
軽く言うが、元龍王の一角が相手とか笑えねえな。
「ドライグを宿した者を鍛えるのは初めてだ」
タンニーンも楽しそうに告げる。
『あまり苛めてくれるなよタンニーン。俺の宿主は本当によわっちいからな。直ぐに死んでしまう』
「なに、死ななければ良いのだろう?」
おう、見事にスパルタ発言。ま、一誠には丁度いいか。
「よし、じゃあ一誠はタンニーンとの修行で
そう言ってさっさと歩いていく先生。
タンニーンも一誠を捕まえて近場の山にへと向かった。
最後まで一誠は泣いて抵抗していたが、悲しきかな、非力な一誠では太刀打ちできなかった。
ああ、一誠。俺はお前の事が心配で仕方ないよ。この義兄を許せ。
『何笑いながら変な事考えているんですか?』
冷たいリンドの声が響く。
おっと、ふざけるのもここらへんにして俺も自分の修行場所に向かうか。
「そんじゃ、俺も行くわ。みんな、修行頑張れよー」
手をヒラヒラと振りながら俺もその場を後にしようとする。
「カレン、本当に大丈夫なの……?」
心配そうにするリアスたちに俺は笑いかける。
「問題ないさ。それよりも自分の心配しろよ。自分の事を出来ないやつに心配される程俺は弱いつもりは無い」
果たして俺の言葉に、二人ほど、胸を押さえていた人物がいた。
それが誰なのか、俺は敢えて視線を送らずにその場を去った。
******
「……熱いってレベルじゃねえぞこれ」
俺は思わず呟く。
既に汗が滝の様に流れており服は雨に濡れたかのようにびしょびしょだ。
あまりの熱気に呼吸するのが嫌になるほどだ。
「確かに危険地域って言われるほどの場所だな。悪魔でさえこれだ。並の生物じゃ棲むことすら出来ないだろうに」
俺は脇を流れるマグマの近くにある何かの骨を見て思わず口に出す。
ここでまだ山の中間の更に中間。四分の一しか上っていないのだ。頂上に一体どうなっているのやら。
「ああ、くそ、熱い」
いい加減汗にうんざりした俺はシャツを脱ぐ。
そしてシャツを絞ると汗がどんどん流れていく。
うわ、もう着たくないな。とはいえ、これを捨てるわけにはいかないし。
俺はシャツを肩にかけて再び歩き出す。
しかし、と俺は歩きながらここに来る前の事を思い出す。
一旦家に戻って事の顛末をティアたちに話したのだが、三者三様の反応を示した。
ティアは静かに怒りを滲ませ、セルヴィアは顔をこれでもかと、言うぐらい青ざめさせてペルセウスは大爆笑していた。
どこかに向かおうとするティアをセルヴィアが慌てて羽交い絞めにしてペルセウスがその間にペガサスに乗せて麓まで連れて来てくれたのだが……。
ティアのヤツ、どうしのただろうか。ペルセウスに聞いても笑うだけで答えてくれないし。
帰ったら聞いてみるか。俺はそう考えた。
「……ここか?」
ふと、立ち止まった大きな洞窟を見上げる。
親父殿の最後の眷属はここら一体で一番デカい洞窟の中に住んでいるとペルセウスが言っていたから、多分ここで合っていると思うのだが……。
どこからと通じているらしく、風が洞窟の中から吹いてくる。
すうっと息を吸う。
「行くか」
俺は意を決して中に入った。
大学のテストの都合でしばらく更新できません。再開は恐らく八月中旬になるかと。