「失礼します」
朱乃嬢から貰った紅茶がちょうど半分くらいまで飲み終わった直後、部室のドアが開いて、新しいヤツが入ってきた。その姿を見たとき、俺はもうこの部がマジでおかしいんじゃないのかと思ってしまった。
「あ、どうも。兵藤夏蓮先輩ですね? 初めまして、木場祐斗です」
「……よう」
そう言って、入ってきたヤツ……木場祐斗はニッコリと笑った。
木場祐斗。駒王学園二年生なので、つまりは一誠の同級生。
この場にいるリアス嬢、朱乃嬢、そして塔城ちゃんと並ぶ、この駒王学園のアイドルとも言うべき者だ。
顔は間違いなくイケメンの部類に入り、性格も爽やか。俗に言うと爽やかイケメンという奴だな。
……こいつもどっかの部活に入っているとは聞いていたけど、まさかオカルト研究部だったとは。ヒトは見かけに寄らないとはこの事だな。
「あ、兄貴」
そんな学園の貴公子の後から、我が愚弟、一誠が入ってきた。
そんな一誠だが、この部屋に入って内装に驚き、物珍しそうにキョロキョロしていた。
まあ、普通はそういう反応を示すだろうな。
「よ、リアス嬢の準備が終わるまでもう少し待ってろ。話はそれからだそうだ」
「準備?」
一誠が不思議そうに首を傾げ、奥を見て……って、おい。
部屋の奥のシャワールームでリアス嬢がシャワーを浴びているのに気がついたのだろう。案の定、一誠の顔がみるみるだらしなくなり、鼻の下を伸ばし始めた。
……一誠、今お前が抱いている感情は別に理解できないわけではないけど、もう少し抑えろ。義兄としてすごく恥ずかしい。
「……いやらしい顔」
おう……塔城ちゃん、ナイスツッコミ。
「ごめんなさいね。昨日、治療に時間が掛かってシャワーを浴びれなかったの」
……それ言われるともう完全に俺のせいなので、俺は何にも言えんな。
リアス嬢は、朱乃嬢から受け取ったタオルで髪を拭きながら出てきた。
ここにきて、一誠は此処にいる豪華なメンバーに驚きを出していた。
まあ、俺たち兄弟を除けば、此処にいるメンバーは全員この学園において相当な有名さを誇る。驚かない方が驚きだ。
「さて、全員揃ったわね」
部屋の中を見渡しながらリアス嬢が言う。
どうやらここにいるメンツで全員らしいな。ソレでも凄いとしか言えないな。
「夏蓮君。兵藤一誠君」
「おう」
「は、はいっ!!」
あーあー。ガチガチに緊張してんじゃん。ちょっとは落ち着いておけ。
……まあ、二大お姉様の片割れに初めて(?)話しかけられたんだ。緊張は当然か。
「オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ」
「は、はい!」
「悪魔としてね」
……何ですと?
******
悪魔
堕天使と違い、コレは広く世の中に知れ渡っているだろう。
勿論、堕天使だって聞けば知っているだろうが、流石に悪魔には勝てないと思う。
悪魔の世間様が持っているイメージはは怪しげな儀式を行い、悪魔を召喚する。さらに、召喚した悪魔に対して対価を払う代わりに願いを叶えてもらう。そういう仕組みのはずなのだが……。
「私たち悪魔は現代においてもちゃんと存在しているわ。そして、あなた達が昨日会ったのが堕天使。邪な感情を抱いてしまったから天から追放された堕ちた天使。私たち悪魔とは長年の敵対関係にあるわ」
あり、悪魔と堕天使って敵対関係にあるんだ。ちょっと意外だなねえ。
「更にここに神の使いである天使が加わると三すくみの状態になるわけ」
「ちょ、ちょっと待ってください。悪魔やら堕天使何て言われたって、普通な高校生の俺には何が何だかサッパリ……」
一誠が当惑したように言う。
まあ、いきなり悪魔やら何やら言われてもしょうがないだろう。
「ーー天野夕麻」
『っ!』
その、名は……!
「あの日、あなたは彼女と間違いなくデートしていたわ」
「……冗談ならそれまでにしておいてください。その話はこういう雰囲気で話したくない」
おう、一誠が普段とは比べ物にならないほどに声が低い。正直驚きだぜ。
「落ち着けって一誠。……で、彼女は実在しているのか、リアス嬢?」
「ええ。この子よね? 天野夕麻ちゃんって」
そう言ってリアス嬢は一枚の写真を取り出して俺たちに差し出した。
俺と一誠は写真を覗き込み、驚く他なかった。
俺は写真で見ただけだが……間違いない。彼女だ。天野夕麻だ。
「この子、いえ、コレは堕天使。昨日あなた達と遭遇したのと同種の存在よ」
そういや、あの男も自分のことを堕天使って言っていたな。
「この堕天使はある目的があってあなたと接触した。そして、その目的を果たしたから周囲から自分の記憶と記録を消させたの」
「目的?」
何だそりゃ。一誠に近づく目的って……。
「そう、あなたを殺すため」
『っ!?』
おいおい……どういう事だ。さすがにそれは聞き捨てならんな……。
「なんで俺がそんな!?」
「落ち着いて一誠。仕方なかった……いいえ、運がなかったのでしょうね、殺されない所持者もいるわけだし……」
所有者? 何の話だ?
「運がなかったって」
信じられないと言った顔の一誠。けれども、リアス嬢の言葉は少し理解出来る。何せ、ヒトが死ぬのは大抵運が無いとしか言いようがないときだ。
病気になった。通り魔に襲われた。事故に遭った。そんな物、極論から言ってしまえば、運が無かったとしか言えない。
……あいつが死んだようにな。
「なんで俺が殺されなきゃ……! でも俺生きてるっすよ!」
そうだな。ついでに言えば、俺もだ。さすがにあの怪我で生き残れる方が不思議だ。
「彼女があなたに近づいたのはあなたの身にとある物騒なモノが付いているかいないか調査するため。反応が曖昧だったんでしょうね、それでじっくり調べた。そして確定した。あなたが
俺は初めて聞く単語に首を傾げる。
「
「現在でも体に
木場、朱乃嬢と続き、
……もしかして、”アレ”のことか? だとしたら色々と納得出来る部分がある。
「なあ、ちょっと良いか?」
俺はそれを確かめるために手を挙げる。
「ええ。何かしら?」
「もしかして、
「え?」
俺はソファから立ち上がり、右手を前に突き立てる。
「ふう……」
落ち着け。別に失敗する事は無い。最初の一回以降、全部普通に出せているじゃないか。
「ふっ……!」
――出ろっ!――
俺が念じると、俺の右手に銀色の光が集まる。
「うおっ!?」
隣に居る一誠が突然の光に驚くが今は無視だ。
やがて、光が収まり、俺の手にあるのは――
「銀色の……刀?」
正確に言うならば、片刃の剣だろう。
刀身は滑らかな銀色をしており、柄には装飾が施されているが、実戦でも耐えられるような代物だと見る者が見れば分かるだろう。
「コレが
「……ええ。驚いたわね。持っていたのは分かっていたけれど貴方、既に発動出来たの?」
「ああ。昔、道場で修行をしていたいきなりな」
アレはマジで驚いた。竹刀握っていたら、いきなり目の前に
「で、これは何て
「……恐らく、『
……何やら大仰な名前だな。
「レアなのか?」
「ええ。何せ、滅多にお目にかかれない優れものよ? ……だから
「ん? 何か言ったか?」
「ん? いいえ。さて、次は一誠の番よ」
******
「ぷっ……くっくっ……」
「あの、兄貴?」
「何だ?……ぷっ」
「笑うなよ!! と言うより、笑過ぎ!!」
いや、そう言うが一誠よ。今のを笑うなと言う方が可笑しいんだよ。
思い出すだけで……ぷっ!!
「だー、駄目だ!! 笑っちまう!! ぶっはっはっはっは!!」
「あ〜に〜きっ!!」
一誠が詰め寄ってくるが、この際無視! いやあ、可笑しい。
「もしビデオカメラがあれば真っ先に撮っていたのに……くっくっくっ」
「うぐっ」
一誠が顔を真っ赤にしているが、あれは多分恥ずかしさから来るものだろう。
******
俺が
「次に、一誠、手を上にかざしてちょうだい」
「え?」
「いいから、早く」
リアス嬢に急かされて、一誠は手をかざす。
「目を閉じて、あなたが一番強いと感じるものを想像してみて」
「い、一番強い存在。……ドラグ・ソボールの空孫悟かな……」
漫画キャラかよ。まあ、今時の高校生にとって、一番強い存在なんて漫画のたぐいのキャラだよな。
「ではそれを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべてその姿を真似るの」
え、ちょ、おま……。
戸惑いながらも、一誠は両手を合わせて前に突き出すような格好になり、叫ぶ!
「ドラゴン波!」
マジでやりやがった……! 何て野郎だ我が義弟よっ!
「さあ目を開けて。これで貴方も
一誠が目を開けると、一誠の左手に徐々に光が集まり始め形を為してくる。
おお、こうやってみると、俺が
やがて、光が収まると一誠の左手に、赤い籠手が装着されていた。
「な、なんじゃこりゃああああ!?」
ほっほー一誠のは籠手か。
「あなたはその
リアス嬢がそう言って一枚のチラシを渡してくる。
そこには『あなたの願いを叶えます!』と、何とも詐欺の匂いがぷんぷんするチラシ。
つうかコレ……。
「前に貰ったな」
「あら、貴方も貰っていたの?」
「ん? ああ。けど、あんまりに胡散臭くて、机の引き出しに眠っていると思うよ」
リアス嬢には悪いけど、コレはちょっとね……。
「むう……」
あれ、何かリアス嬢がご不満そう……。
一瞬、かわいらしいな、と思ったが直ぐに隅に置いておく。何か色々とやばそうだし。
「まあこの際、夏蓮君の行為は何も言わないでおくわ。これ、私達が配っているチラシなのよ。裏にある魔方陣は私達を召喚するためのもの。こうしてチラシとして悪魔を召喚しそうな人達に配っているの。たまたま私達が使役していた使い魔が人間に化けて繁華街でチラシを配っていたの。それを一誠が手にした。そして、堕天使に攻撃された一誠は死の間際に私を呼んだのよ、願いが強かったのね。普段なら眷属の朱乃たちが呼ばれているはずなんだけれど」
はあ、まあ死ぬ間際だったらしいしな。人間、死に際にはとんでもない力を出すって言うし。そんなもんだろう。
そうやって考えていると、リアス嬢達の背中に、黒い翼が広がる。
気がつけば、俺と一誠の背中にも翼が……。
……俺、マジで人間止めたんだな。分かってはいたけど。
「改めて紹介するわね。祐斗」
リアス嬢がそう言うと、木場がいつもの爽やかイケメンフェイスで言う。
「兵藤君とは同じ学年だね。えーと、僕も悪魔です。よろしく」
「………一年生、塔城小猫です。よろしくお願いします。…悪魔です」
次に塔城ちゃんがぺこりと頭を下げる。
「三年生、姫島朱乃ですわ。オカルト研究部の副部長も兼任しております。今後ともよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ、うふふ」
朱乃嬢がいつも通りの笑みで言う。
最後にリアス嬢が誇らしげに言う。
「そして私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、夏蓮君、一誠」
……拝啓、天国で俺の事を見守ってくれているはずの母上様。
母上様から頂いたこの大事な体ですが、どうやら悪魔になってしまったようです。
母上様には大変申し訳ない気があるのですが、同時に俺はワクワクしています。
俺が憧れた伝説や神話への道が今、目の前に示されたような気がするのです。
主人公の神器ですが、今回は名前と形状だけです。名前に関しては殆ど当て字ですので、特に意味は考えずにお願いします。