ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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最近、上手く書けませんね……。


第九話

「はあ、はあ、はあ……」

 

 呼吸が荒い。正直、息をするのが嫌になってくる。

 

 何せこの暑さだ。呼吸するだけで喉が焼ける。

 

 汗が止め処なく溢れて来る。目や鼻に入り鬱陶しいこの上ない。

 

 それでも俺は油断なく前を見据える。

 

 目の前に立つのは俺よりもずっと上にいる存在だ。少しでも油断したらその瞬間にやられてしまうだろう。

 

「どうした? その程度か?」

 

 こちらに近づく茨木童子を見て俺は苦々しく思ってしまう。

 

 こちらは傷が無いところを見つけるのが無理なくらい。だが、茨木童子は傷一つ無いと言ったところだ。

 

「来ないのなら、またこちらから行くぞ!」

 

 地面を蹴り、宙に飛ぶ茨木童子。

 

「くそっ!」

 

 毒づきながら俺は魔力の弾を数個展開し、茨木童子目掛けて撃ち放つ。

 

 当たれば上級悪魔でもそれなりの傷は追うはずの力はある。

 

 しかし、現実は甘くは無い。

 

 茨木童子は飛来する魔力弾を避ける事もせずそのまま突っ込む。

 

 魔力弾は全て直撃するもまるで傷付かない。

 

 皮膚がどれだけ厚いのかと突っ込みたくなるほどの固さだ。いくら戦車(ルーク)とはいえこれは可笑しくないか。

 

 等と考えている間もなく、茨木童子の拳が迫ってくる。

 

 俺はオーラを身にまといながら右に避ける。

 

 だが、拳は完全に躱すもその衝撃までは躱せなかった。

 

 衝撃を受けて俺の体は後方に飛ぶ。

 

 何とか空中で態勢を整えて受け身の状態になり、地面に着地する。

 

 さっきからこんなやり取りがずっと続いている。茨木童子が攻めて俺が反撃するもまるで歯が立たずに拳を躱してもその衝撃でけがをする。

 

 悪循環に完全に落ちているな、これは。

 

 神器も無し。神星剣も無しとなると俺じゃあこの鬼には勝てない。それだけの差が今の俺たちにはある。

 

 ……結局、また俺の力不足が原因という事か。ここ最近、というかいつもそうだな俺の場合は。

 

 自分の力不足を強く痛感する。

 

 何時だって、後悔ばかりだ。

 

 お師匠様が言うには人間、後悔が無い生き方をするようにした方が良いと言う。

 

 まあ、俺もそう思うし、出来ればそうしたいと思う。

 

 だけど、そういう生き方が出来るのは本当に強いヤツだけなのだろう。俺ではダメだ。ここ最近は本当にそう思ってしまう。

 

 茨木童子が再び拳を繰り出してくる。俺はそれを何とか躱す。

 

「どうした、逃げてるばかりでは強くはなれんぞ。それでは四死剣の連中には歯が立たんぞ」

 

 瞬間、俺の中で沸騰するような感情が湧き上がる。

 

 自分でも分かるように茨木童子を睨み付ける。

 

「……そんなに憎いか」

 

「ああ憎いね。憎くて憎くてしょうがない」

 

 断言できる。この感情は晴らすまで永遠に続くものだ。

 

 たとえ何があろうともどうなろうとも。

 

 俺は、奴らを必ず殺す。

 

「…………」

 

 茨木童子が静かに俺を見据える。

 

 やがて大きなため息を付くと、

 

「少し煽り過ぎたか」

 

 ボソリと呟くと同時に茨木童子が姿を消す。

 

 それがあまりの速さで動いていると俺が認識できたのは目の前にヤツが現れた時だった。

 

「今日はここまでだ。少し休め」

 

 言うや否や、俺の腹に大きな衝撃が走る。

 

 殴られたと分かった時には俺の意識は闇の中に沈んでいった。

 

 薄れゆく意識の中で俺はある事を考えていた。

 

(これ、絶対にヒトを休ませる方法じゃねえ)

 

******

 

「……はっ!?」

 

 意識を取り戻す。

 

 自分が仰向けになって眠っていたのだと、態勢から何となく感じ取る。

 

 冥界の紫色の空が少し暗くなっている。恐らく、今は夜なのだろう。

 

(今、何時だ?)

 

 確か、冥界の時間は地球は同じだからズレとかは無いと思うが……。

 

「ほう、もう目覚めたのか。早かったな」

 

 声と同時に、ペルセウスがこちらに歩み寄ってきた。

 

「ペルセウス……?」

 

「ああ、ペルセウスだ」

 

 ペルセウスは濡れたタオルを俺に差し出す。

 

 俺はそれを受け取り、顔に当てる。

 

「ふう……」

 

 ひんやりとしていて気持ちが良い。

 

「にしてもあの茨木のしごきに耐えるとは素質があるぜ」

 

「どうだか。今更ながらに自分の欠点を認識したよ」

 

「認識できるだけマシだ。それを認識できずにやられてしまったら格好悪いにも程があるだろ?」

 

「確かに……」

 

 上半身を起こそうとすると、ペルセウスが手で制する。

 

「最初はフェニックスの涙でも使おうと思ったんだが、生憎と手元に無くてな。まあ、回復の心得はそれなりにあるから安心しろ」

 

「…………」

 

 そう言われて改めて体を確認する。

 

 体中が包帯だらけだが、きっちりと巻かれており無駄が無い。

 

 両腕も罅が入っていたりと動けなくなっていたはずだが、若干のしびれを残しているものの動く様になっている。

 

 凄いな。フェニックスの涙があるわけでも無く、アーシアみたいに回復の神器を持っているわけでも無い。にもかかわらずここまで治すなんて……。

 

「てか、俺ってどれくらい眠っていた?」

 

「四時間位といった所かな。飯を食うか? ユースティアが弁当を作ってきたからな」

 

「ティアが?」

 

 ほら、とペルセウスが包みを取り出す。

 

 ……重箱サイズのものを。

 

「……何これ」

 

「弁当だって」

 

 ペルセウスが包みを外すと本当に重箱が出てきた。

 

 驚くことなかれ何と五段という家族用の量としか言いようが無い。

 

 ペルセウスが重箱を外していく。

 

 中には驚くほど色とりどりの料理が詰まっており、普通なら腹の音が成るくらいには食欲が湧くであろう。

 

 そう、このボコボコにされて疲労状態が半端ない状態で食欲が一切湧いてこないこの状況でなければ。

 

「いやあ、ユースティアのヤツ一生懸命作っていたぞ。それはもう真剣に」

 

 わざとらしく言うペルセウス。

 

 この野郎……。

 

 俺はペルセウスを睨み付けるも本人はまるで気にしていない。

 

 意を決して改めて中を確認する。

 

 本当に上手そうだ。普段の食事の場ならどれだけ良かった事か。

 

 だが、もし食べなかったら恐らく何も言わないがティアの事だ、きっと悲しむだろう。

 

 それは俺としても望むところでは無い。

 

 ここは全て食べる事が男の甲斐性というものなのだろう。

 

 だが、この腹で行けるのか、俺は……!?

 

 

 ******

 

「いやあ、お前凄いな」

 

「……何がさ」

 

「何がってあれ全部食べ切ることがさ」

 

 結局全部食べた。正直、途中からもう何を食べているのか良く分からなくなってきていたけど。

 

「そういえば、二日後は一度本家に戻ってもらうぞ」

 

「本家に?」

 

 食後、膨れた腹を気にしながら食休みをしていると後片付けをしているペルセウスがそんな事を言った。

 

「ああ。修行後に顔合わせのパーティーがあるんだがダンスもある。お前、そこらへんは全然駄目だろ?」

 

「まあな」

 

 ぶっちゃけフォークダンス位しかやったことない。それを考えると練習は必要だな。

 

「だから修行の内、数日は休日にしてダンスの練習だ。そして何と教えるのは奥方様だ。喜ぶと良い」

 

 奥方様……叔母上か。あの人もあの人で結構厳しいからな。ま、ダンスはキチンと覚えておかないと後々面倒な事になるかもしれないからな。

 

 つか、それは休日じゃないだろうが。

 

「しかし、本当に派手にやられたな。流石は茨木といった所か」

 

「神器無しでこんなにきついとはな。改めて自分の弱さを実感したよ」

 

 こんなのでよく奴らを殺すとのたまっていたものだと、我ながら酷いものだ。

 

 俺の自嘲にペルセウスは否定を返す。

 

「結局のところ、神器も神星剣もお前の力に変わりは無いだろう。お前の場合、素の能力を鍛える事で全体的なパワーアップが可能になるのだからな」

 

「そうか?」

 

「ああ、お前の神器も身体能力を鍛える事で吸収できるのキャパも増えていく事だし、神星剣の基本能力も基礎の極端な迄の底上げだからな」

 

 確かに、その通りなのだろう。そう考えると、一誠の神器も素の能力を上げれば上げる程力を増すことが出来る。

 

 義理とは言え、兄弟だからってここまで強くなる方法が似る必要は無いだろうに。やれやれだぜ。

 

「ふむ、そうだ。どうせならお前の人間界での話を聞かせてくれないか?」

 

「はあ?」

 

 唐突にペルセウスが変な事を言い始めた。

 

「何だって急に」

 

「いやなに。まだ寝るには少し時間もあるだろうし、お前の人間界での生活には興味があった。――茨木もそうだろ?」

 

 え。

 

 俺はペルセウスの視線を辿ると何と岩の上に茨木童子が座り込んでいた。

 

 何時の間に……気配を感じなかった。すげえ、流石は親父殿の眷属と言うべきか。

 

「話ねえ……別に話すことなんて何も無いけどな」

 

「何でも良いさ。普段の駒王学園での生活での話を聞かせてくれれば良い」

 

 駒王学園での、ねえ……。

 

「本当に面白くないぞ?」

 

「構わないさ」

 

 茨木童子も特に反対では無く、無言のままだ。

 

「それじゃあ……」

 

 俺は駒王学園での特にオカルト研究部での話をする。

 

 当たり障りのない当たり前の日常の話をする。

 

 特段、面白い話でも無いが、ペルセウスや茨木童子も口を挟まず聞いていた。

 

 まだ一年も経っておらず、半年も経っていない。その割にはかなり濃い内容だったな。

 

「……でさ、一誠のヤツがまーた契約に失敗してさ。の割にはアンケートでは最高評価何だよなー」

 

「はは、意外性ナンバーワンというヤツなのかもしれなお前の弟は」

 

「まあ、かもな」

 

 俺としてもあれは面白い。一誠はあのままで問題ないだろう。

 

「そういうお前はどうなんだ契約の方は?」

 

「んー? まあ色々なヒトとやってるぞ。あーでも、何故か同世代の女子が多いんだよな。お蔭でリアスや朱乃がアンケートを読むと俺の事睨んでくるんだよな。本当に面倒だ」

 

 こちとら仕事はきっちりとこなしていると言うのに何という仕打ちか。

 

 やれやれと首を振っていると、ペルセウスがあきれ顔をしている。

 

「何とまあ……」

 

「……あの親にしてこの子どもだな」

 

 茨木童子がボソリと呟く。

 

 はて、俺の親が今の話で何か関係してくるのか?

 

 親父殿や母様も俺と同じようなやり取りをしていたのかな。

 

「俺の話もそうだけど、そういやあペルセウス」

 

「ん、何だ」

 

「お前、親父殿達の話をしてくれるって言っていたけど、何時になるんだそれは」

 

 こういう時じゃないと、俺だけで話が聞けない。

 

「ふむ……そうだなゲームが終わったら話してやってもいい」

 

「はあ?」

 

 つまり夏休みが終わりまでかかるって訳かよ。

 

 参ったな。夏休みが終わり前には人間界に戻りたいから時間が無いじゃないか。

 

 思わず恨みがましくペルセウスを睨んでしまう。

 

 それを受けたペルセウスは苦笑を浮かべる。

 

「そんな顔をするなよ。ちゃんと話はする。それは言っただろ」

 

「まあ……」

 

「なーに、その時になったら全員で話をしてやる。な、茨木?」

 

「…………」

 

 ペルセウスの問いに茨木童子は無言で答えるも特に反対しているわけでも無いから多分オーケーなのだろう。

 

「……分かった」

 

 仕方なく引き下がる。

 

 まだ一日目。正直どうなるかはまだ分からないが何とかして必ず強くなる。

 

 強くなって必ず目的を果たす。そう、心に誓うのであった。

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