親知らずを抜いたり、レポートに追われていたりと、気づけば随分と経っていました。
少し落ち着いたので、またボチボチ更新していきたいと思います。
俺が結界内に入った時、既に状況は大分悪い方に向かっていた。
最初に目に入ったのが、ボロボロの一誠と倒れているリアスと小猫。
そんな三人に相対するよう黒い着物を着崩して着ている猫耳を生やした美女が木の上に座っていた。
「あんたが敵で良いんだよな?」
俺はマーズ・ソードの切っ先を着物の女に向けながらそう聞く。
「……ええ、まあ、そうなるかしらね」
微笑みこそ浮かべているが、その眼差しは最大限の警戒を俺に向けている。
「それが噂に聞く神星剣でしょ? 厄介ね全く。ヴァーリからもそれは出来るだけ真正面からやるなって言われているし。困るにゃ」
「ヴァーリ?」
やっぱり禍の団か。となると、さっきからあっちで爆発音でやっているのは。
「ハハハハハハハハ! こいつは面白れえ! 赤龍帝の兄貴まで来ているじゃねえか! しかも黒歌の結界を破ったってか!?」
上機嫌な笑いが聞こえ、そちらを見ると、雲の上に乗っている男がいた。
「お前が孫悟空の子孫か?」
「そういやあ、会うのは初めだな。俺っちは美候ってんだな。よろしくな赤龍帝の兄貴!」
ヤツが噂の。じゃあ、あの乗っている曇って筋斗雲か? マジであるんだな。
「来たかカレン・グレモリー」
タンニーン殿がこちらに視線を向ける。どうやらあの猿野郎と戦っていたんだな。
「すまんが、こちらは手一杯だ。そちらは任せる」
「ああ、任された」
視線を黒歌に戻し、俺は一歩前に出る。
「……ホント、困るにゃあ。それ、強力ってレベルじゃないんでしょ?」
「良く分かってるじゃねえか。四死剣の連中にでも聞いたか?」
「いやいや、あの連中めんどくさいのよね。あたしたち以上に独立性が強いし、何を目的としているのか全く分からないし。正直薄気味悪いのよね」
禍の団の内でも奴らは秘密主義って訳か。アガリアレプトはルシファーに仕えていたと聞いてるけど、どうもそのままって訳じゃなさそうだ。
「まあ良い。どんなに細くても奴らに近づく材料だ。話を聞かせてもらうぞ」
「にゃはははは、そりゃあ、勘弁ね!」
そう言うや否や、四方から力の波動が迫る。
「ふん」
俺は軽く神星剣を振る。
それだけで波動は全て消え去る。
黒歌もそれは想定内なのだろう。最初に放った波動に隠すように二発目が迫っている。
俺は当たる場所に魔力を集中させてそれを防ぐ。
それを見た黒歌がニヤリと笑う。
刹那、俺の体が片膝を付く。
「何だこれ」
急に体がいう事を聞かなくなってきた。どうなってる?
「にゃははは。不用意に仙術の攻撃を受けたからにゃ。体内の気を乱したのよ」
仙術?
「魔力や光力と違って直接的なダメージは無いけど、そうやって体の体内から働きかける力を得意としているの。気を乱して、貴方の体の状態を悪くしたの」
黒歌がニヤニヤと笑いながら俺に教える。
成程、当たると厄介な奴って訳か。
ただ、まあ。
「俺には関係ないな」
立ち上がる俺。
それを見て黒歌は驚愕している。
「ちょっと、そう簡単に立ち上がれるようなモノじゃないわよ!? 何だって」
「はん、知るか」
神星剣を振りながら俺はゆっくりと黒歌に近づく。
神星剣を見て、黒歌は何かに気づいたように忌々しそうな表情を浮かべる。
「神星剣ね。確か、所有者の力を数倍にも引き上げる事が出来るっていう。それを使ったのね」
「へえ、知らないって言う割には良く知ってんじゃねえか」
「にゃはは、少しくらいは情報も流れてくるものなのよ」
じりじりと後ずさる黒歌。
「まあ、良い。この結界作っているのもお前だろうし、さっさと抜け出したいからちょっと痛めつけるぞ」
剣を突き出す構えを取る。
黒歌の目に緊張が走るのが分かる。
恐らくというか、確実にこいつは遠距離からの攻撃タイプだ。接近戦はてんで駄目だろう。
終わりだ。
俺が剣を黒歌に繰り出そうとした次の瞬間。
「――そこまでです」
突如、何もない空間から出た何かが神星剣を受け止めた。
否、剣の切っ先だ。それが神星剣を受け止めのだ。
「やれやれ、黒歌危なかったですね」
その言葉と一緒に出てきたのは背広を来た眼鏡の男。手に持った剣からは膨大な量の聖なるオーラが放たれていた。
聖剣だな。しかもエクスカリバーやデュランダルを余裕で超えてる。
「全員、その剣に斬られるな! それは聖王剣コールブランド。またのカリバーン。最強の聖剣だ」
っ、カリバーン。かのアーサー王が選定の為に抜いた剣。大昔に折れたって伝承にあったはずだけど。
まあ、そんなもん、意味無いか。現にここにある。それだけで充分だ。
「あなたがカレン・グレモリーですね?初めまして、私はアーサー。アーサー・ペンドラゴンの子孫に当たるものです」
「それはどうもご丁寧に。最強の聖剣様に会えて光栄だよ。で、腰にぶら下げている方は?そっちも聖剣だろ?」
アーサーが腰に帯剣している方を見ながら俺は聞く。
「これは
エクスカリバー。教会には保存されていなかった最後の一振り。
まさか、こんなテロリスト野郎に渡っているとは、聖剣も悲しいね。
「さて、本来ならばここで退散しておきたいところですが、そう簡単には返してくれいない様ですね」
「わかっているじゃねえか。当然だろ。お前らはここで捕らえる。聞きたいことは山程あるしな」
神星剣の切っ先を今度はアーサーに向ける。
「ふむ、最強と言われる神星剣。その内の一本の力、ここで見るのも悪くは無いかもしれませんね」
アーサーもまた剣を構える。
「…………」
「…………」
一瞬の無言の内に、俺たちは同時に前に出る。
高速で動く俺の斬撃にアーサーは全て対応してみせる。
防御ばかりでなく、要所要所で急所に攻撃をしてくるのが厄介だ。
他の奴らと違ってこいつは唯の人間だ。の癖して、ここまで速いのか。流石に嫌になってくるな!
「お前本当に人間か!? やたら滅多に速いな! ハーフの俺について来るなんてな!」
「はは、純粋な人間ですよ。英雄の子孫ではありますが」
「かっ、ヴァーリのチームは多種多様だな。まあ、あいつもハーフだって言うし、ある意味当然かもな!」
「まあ私は彼と性格が合ったから一緒にいるもので! 皆そうですよ」
そんな軽口を言い合いながら俺たちは斬り合っていた。
しかし、こいつマジで強いな。純粋な剣技なら俺よりも何段階も上だ。
こっちは神星剣によって身体能力跳ね上がっているが、問題は最強の聖剣であるコールブラッドに当たったら神星剣並みに不味いってことだ。
そう考えると、俺って弱点多いよなー。あー嫌になってくる。
「おっと!」
そんな事を考えていると、横の空間が歪み、そこから剣の切っ先が俺を狙ってくる。
体を後ろに反らすことでかわす。
「あぶねえな! なんだそりゃ、そんな曲芸も出来るのか」
「まあ、他にも色々とありますよ」
「そりゃあ怖い。先に教えてくれよ」
「そんなことしませんよ」
「それもそうだ!」
しかし、何だか楽しくなってきたな。アーサーも楽しそうに、てか滅茶苦茶楽しそうだし。
もしかしなくてもこいつ戦闘狂の気があるな。まあ、強い者と戦うためにテロリストになったヴァーリの仲間だし、当然といえば当然だな。
けどまあ、何時までもお互いに本気を出さないのは延々と終わらん。斬り合うだけなら誰にも出来ることだしな。
……少し、本気でいってみるか。
俺は一度距離を取って刀身にオーラを纏わせる。
「らあっ!」
そして、そのまま斬撃として飛ばす。
しかし、アーサーはそれを苦もなく躱してみせる。
当然それを予測しており、俺は斬撃を放つと同時にアーサーに迫る。
そして左手に神器を展開させると逆手に持って斬りかかる。
アーサーはそれをもう一つ持っていた聖剣、エクスカリバーで受け止める。
「ああ、そういえばそれを忘れていたな。コールブラッドの方がインパクト強すぎて」
「確かにこれは最強の聖剣ですが、こちらも伝説のエクスカリバーの一本ですよ。忘れてもらっては困ります」
「そいつは失礼した」
同時に後ろに飛ぶ。
「ふむ、そろそろ本当に不味いですね。これで退散させて貰います」
アーサーはコールブラッドで何も無い場所を斬る様に動かす。
すると、空間に裂け目が出てきた。
「逃げるか」
「追いますか?」
「……いや、良い。行くならさっさと行けよ」
驚いた様に目を開くアーサー。
「先程とはまるで違いますね。憎悪をあれほど感じていたのに」
「ふん、萎えた。さっさと行け」
しっしっ、と手を振る。
それを見てアーサーは苦笑する。
「変わった方だ。それではお言葉に甘えまして。これで失礼させていただきます」
言葉通り、アーサーは他二名を連れて裂け目の中に消えていった。
因みに美猴は「またなー」と実に軽い様子で言ってきて、黒歌はこちらを恨めしそうに見ていった。
「ふう……」
俺は神星剣と神器を仕舞うと、リアス達の元に近づく。
「よお、無事か」
「……毒がなければ完全に無事って言えたのだけれどもね」
リアスが嘆息しながら言う。
「それもそうだな。小猫、お前は?」
「……同じくです」
二人は問題無い、と。一誠はどうかな?
一誠の方を見ると、蹲ったまま、身じろぎ一つ見せない。
「ふむ」
取り敢えず軽く蹴ってみる。
「おい、大丈夫か?」
「った、なんで蹴るんだよ!?」
「え、何となく?」
「何となくで弟蹴るなよ!」
「うるせえなあ。これだから一誠は」
「何その反応、俺だから何!?」
「え、聞きたい?」
「待った。聞いたら余計最悪な事になりそうだから良い」
「お、聞きたいか。よし、なら聞かせてやろう」
「ヒトの話聞けよ!?」
少し元気になったか。
ぎゃーぎゃー騒ぐ一誠を見て俺は内心ため息をつく。
元気が無かったのは何となく分かったが、まあこれも急場凌ぎだな。つっても、俺が何か言っても意味あるかどうか。
「ああ、面倒だな」
騒ぐ一誠の頭を押さえながら俺は天を仰ぎ見る。
相も変わらない紫色の空は夜でも特に変わることなく、そこにはあった。
******
黒歌達の襲撃の対応策を話し合う中、アザゼルとサーゼクスは席を外してリアスとソーナのレーティングゲームについて話していた。
「アザゼルならば、リアスの眷属の内誰を最初に狙う?」
「カレンだな。と、言いたいところだが」
一旦口を閉じると、アザゼルは一回ため息を付く。
「修行から帰ってきたあいつを見て確信したよ。ソーナの眷属が総出で掛かっても今のあいつには勝てない。良くて相打ちだ」
「……そこまでの力を?」
「元々、力自体は非常に持っていた。でもそれを茨木童子との修行でコントロールする術を身に着けた。もう、そんじょそこらの相手じゃ話になんねえよ。正直、ヴァーリクラスじゃないと話にならないんじゃないかな」
ソーナには悪いけどな、とアザゼルは付け加える。
「ま、とはいえ、ゲームのルールがどうなるかによっては、いかに突出したヤツがいても負ける可能性だってある。そうだろ?」
「ああ、その通りだ。何が起こるかは分からない。それこそがレーティングゲームだ。リアスもカレンもそこはもう分かっているとは思うが……」
本来ならば、魔王として特定の悪魔に肩入れする事は褒められることでは無いが、それでも最愛の妹と従弟だ。心配したくもなる。
そして、個人としての負い目も。
「……アザゼル、少しカレンについて大事な話がある。時間がとれる日があるか?」
「あ? ああ、調整するが何についてだ?」
「ここじゃ話にくい。改めて連絡する」
「……そんなにか?」
「まあ、な」
杞憂で済めば良い。だが、それで取り返しのつかないことになってしまったら今度こそ本当に後悔だけでは済まない。
それだけは、何としても阻止しなくてはならない。サーゼクスはそう、心に誓うのであった。