ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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全然更新できない……。もっと頑張らねば。


第十五話

 遂に始まったシトリー眷属とのレーティングゲーム。

 

 皆が皆、やれるだけの事をやって臨む大事な一戦。

 

 この一戦は俺たちにとっても、ソーナ達にとっても負けられない戦いだ。皆、大きな覚悟を持っている。

 

 勿論、俺もその一人だ。リアス達の為。それに、俺に修行をつけてくれた茨木童子や、ティア達にも情け無い所は見せられない。

 

 なのだが。

 

「……暇だ」

 

 寝転がりながら天井を仰ぎ見る分には暇だった。

 

「ちょっと待った。今ゲーム始まってるよな」

 

「始まってるわね」

 

 隣に座っていたリアスが返す。

 

「ソーナ達とお互いの夢の為に戦っているんだよな?」

 

「そうですわね」

 

 今度は朱乃が返してくる。

 

「で、今は一誠達が進撃しているんだよな?」

 

「は、はい。その筈です」

 

 アーシアも返してくれる。

 

「ふむ……じゃあ何で俺、こんなに暇なの!?」

 

 上半身を起こし、周りを見る。

 

「はあ、貴方ね、さっき説明したでしょ?」

 

 リアスがため息をついてまたさっきと同じことを言おうとしているので手を出して止める。

 

「分かってる。俺がソーナの最重要警戒に入っているから不用意に動くのは危険だって。先に一誠達で様子を伺うって」

 

 グレモリー眷属の最高戦力は現在は俺だ。当然、ソーナもそれを分かっているからこそ、間違いなく俺を一番に叩こうと思うだろう。

 

 だからこそ、切り札たる俺をそう簡単に出さないで、相手の出方を見るのは分かるのだが。

 

「暇すぎる。何とかしてくれ」

 

「カレン、ちょっと気が抜けすぎよ。もう少し気を引き締めなさい」

 

「だってさ、いざやってやろうと思ったら待機だぜ?つまらん」

 

「あらあら、子供みたいですよ?」

 

 朱乃が苦笑する。

 

「第一さあ、今回のルールなら俺の方が良かったんじゃね?一誠とかゼノヴィアとかはあいつらにこのルールを守れる気がしないんだが」

 

 今回のゲームにはある特殊ルールが加えられることになったのだ。

 

 フィールド内のものをなるべく壊さないこと。

 

 つまり、辺りを巻き込む様なでかい技は使いずらいのだ。

 

 力加減が下手な一誠とゼノヴィアは勿論、グレモリー眷属は大きな技を持ち味にしている奴らが多いので、俺たちは持ち味を半減させられてしまった。

 

 祐斗の様な、テクニック的な戦い方を主にするのも居るが、それでも苦戦は否めない。

 

「あー何だろう、口にしたら余計心配になってきた。あの二人がルールを守って戦っている姿が想像できん」

 

「それは幾ら何でも……あり得るかしら」

 

「そ、そんな事ありません!イッセーさんもゼノヴィアさんもルールを守って戦います!多分……」

 

 アーシア、庇うならせめて最後まで庇おうぜ。

 

「兎に角、貴方は待機。良いわね?」

 

「はいはい、大人しくあいつらが暴れている中で待ってるよ」

 

 そう言った途端。

 

『リアス・グレモリー様の僧侶一名リタイアです』

 

 辺りに沈黙が辺りに漂う。

 

「……僧侶ってギャスパーだよな?」

 

「ええ、アーシアがここにいるからそうね」

 

 何やってんのあいつ!?確か、偵察に行ったよな?それでもう負けたの?早いよ!

 

「あいつの神器があればそう簡単に負けるとは思えないんだが」

 

「多分、ニンニクを使われたんでしょうね。ここはショッピングモールで食材を再現されているでしょうし」

 

 ニンニク、吸血鬼の弱点の一つだな。

 

 あの野郎、男を見せるとか言っておいてこれか。ニンニクに負けるとか、ダサいにも程がある。

 

「他の奴らはしょうもない負け方したら、どうしてやろうか」

 

「何言ってるのよ」

 

 呆れるリアスだが、これはテレビでも放映されているんだ。みっともない姿を見せたら笑い種じゃ済まないぞ。

 

 つまり、あいつらも見てるって訳だ。

 

 ここで変な所を見せたらどうなるか……考えただけでも寒気がしてくるぜ。

 

 ええい、一誠よ。変な所を見せたら承知しないぞ。分かったな!

 

 ******

 

(何だろう、今兄貴に猛烈にふざけんなって言いたくなった)

 

『何を言っている相棒?』

 

 呆れた様にドライグが言っているが、一誠は無視する。

 

「どうした兵藤!そんなもんか」

 

 それよりも今目の前に立ちはだかる匙が問題だと前を見据える。

 

 状況はあまり良く無いと言える。

 

 現在、一誠は小猫と共に匙ともう一人の兵士と戦っていた。

 

 一誠の神器は現在、禁手一歩前まで来ていると言われているが、そこに至るまでがどうしても出来ない状況である。

 

 機能が少し落ちており、普段よりも力が出せないのだ。

 

 リアスも最初は譲渡を主体として戦わせようとしたが、他ならぬ一誠自分から戦いたいと志願した。

 

 ーーもうこれ以上みっともない所は見せる事が出来ない。

 

 そんな気持ちが一誠の中を渦巻いていた。

 

 そして、同じ兵士である匙との対決が始まったのだ。

 

 序盤から一誠は圧倒されてしまった。

 

 力量は間違いなく神滅具を持っている一誠の方が上である。しかし、驚くべきは匙の戦い方である。

 

 匙の神器はラインを繋げる事で、相手の生命力を奪ったりする、龍王ヴリトラの力が宿ったものだ。

 

 それ以外は匙は平均的な悪魔で、一誠よりも魔力はあるが、あくまで普通止まりだ。

 

 だが、彼は本気であった。本気で自分の主たるソーナの夢をかなえようとしていたのだ。

 

 その為に匙はラインを自分の体につなげて命を削ってそれを攻撃に転換したのだ。

 

「……すっげえな匙」

 

 思わず、そんな言葉が出てしまう。

 

 一誠は足を震わせながら立ち上がる。

 

「なあ、匙。俺の夢ってさハーレム王になる事なんだよ」

 

「ああ、聞いたぜ」

 

「でも、最近、別の目標が出来たんだよ」

 

 一誠の言葉に匙は訝しげな顔をする。

 

 自分でもらしくないと一誠は考える。

 

 だけど、この目標は絶対に達成しないといけない。そう考えている。

 

 自分は何時だって肝心なところで役に立てていない。

 

 ライザーとの戦いのときも、コカビエルとの戦いでも、この間の黒歌との戦いでも。

 

 いつも見ているだけだった。何時だって、兄の背中を見ているだけだった。

 

「……ずっと兄貴と暮らしてきた。兄貴がすげえ奴だってのは知っている。俺の自慢の兄貴だ。……だけど、それだけじゃダメなんだ。兄貴になんでも頼っているだけじゃ悔しいんだ」

 

 一瞬、俯く。そして直ぐに顔を上げる。

 

「俺は――兄貴を追いかけたいんじゃない! 隣で一緒に戦いたいんだ! 兄貴に頼られるような男になりたい!」

 

 心からの叫びだった。その迫力に、匙も、先ほどまでシトリー眷属の兵士と戦っていた小猫も目を開いていた。

 

「兵藤……」

 

「イッセー先輩……」

 

 ドライグもクックッと笑う。

 

『急にどうした相棒。熱血漢にでも目覚めたか?』

 

(うるせーよ。さっさとやるぜ)

 

『ああ、その叫びのお陰で至ったぞ』

 

(は?)

 

 思わず、ポカンとしたその時だった。

 

 一誠の赤龍帝の籠手が赤く輝きだしたのだ。

 

 ******

 

 神器を軽く振り回していると、柄に埋まっている宝玉が輝きだした。

 

「あ?……ああ、成程」

 

 それを見て一瞬、疑問に思うも、直ぐに解消する。

 

 そうか、至ったのか。

 

 たく、遅いったらありゃしない。ま、あいつにしては良い方と言うべきかな?

 

「どうしたカレン?」

 

「んー? 別に。ただ、あいつが一皮向けただけさ」

 

「?」

 

 

 ******

 

 赤い閃光が晴れると同時に一誠は目を開ける。

 

 最初に目に飛び込んできたのは、赤い鎧に包まれている自分の腕だった。

 

「これって……!」

 

 その正体を知っていた一誠は思わず声を上げる。

 

『ああ、遂に禁手に至ったのさ。まさか、最後の一押しがお前の兄への葛藤だったとはな』

 

 ドライグが愉快げに語る。

 

 一誠は思わず拳を作る。

 

 やっと、スタートラインに立った。既に随分と距離は出来てしまっているが、それでも必ず追いついてみせる。

 

「さあ、匙!悪いがさっさと終わらせるぜ!」

 

 唖然としていた匙だったが、思わず、という風に笑い出した。

 

「この土壇場で禁手かよ……たまんねえな!」

 

 明らかな力の差。だが、匙は迷う事なく前に出る。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 雄叫びを上げながら匙は一誠に拳を繰り出す。

 

 一誠はそれを躱す事なく受け止める。

 

 そのまま握りしめた右手で匙の腹部に強烈な一撃を与える。

 

「ぐふ……」

 

 血反吐を吐き出す匙。そのままヨロヨロと後ずさりする。

 

 しかし、それでも倒れず、再び一誠目掛けて魔力弾を放つ。

 

 一誠はそれを腕で弾き飛ばす。

 

 弾かれた魔力弾は壁を大きく削る。

 

 それを見て一誠は顔を顰める。今回のゲームではなるべくフィールドを壊してはいけないのだ。この場で禁手化したのは間違いだったのかと思う。

 

(いや、此処で禁手化していなかったら匙に負けていた!)

 

 そう思えるだけの気迫が今の匙にはある。

 

 心負けしてはいけないと自分に言い聞かせて一誠は匙に殴りかかる。

 

 何度も。何度も。何度も。

 

 既に全身は血塗れ。拳も殆ど使い物にならない。足も全然覚束ない。見たら一目でもうダメだと思ってしまう。

 

 だが、それでも匙は立ち上がる。

 

 夢の為。仲間達の為。何よりも主人であるソーナの為。

 

 彼は何度も立ち上がった。

 

 一誠も匙が立ち上がる度に殴る。

 

 それを何回繰り返したのか一誠は覚えていない。

 

 少なくとも肩で息をする程には殴ったのだろう。

 

 気づけば、匙は立ったままピクリとも動かない。

 

「匙、お前……」

 

 既に匙の意識は無くなっていた。それでも倒れる事だけはしなかった。それだけはしなかったのだ。

 

 匙の体が光に包まれる。転移の光だ。

 

 匙の体が消えるのと同時にアナウンスが流れる。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士一名リタイアです』

 

「イッセー先輩」

 

 既に戦いを終えた小猫が一誠に歩み寄ってくる。

 

「ああ、小猫ちゃん。……悪い、何か頭がこんがらがってるわ」

 

「いえ……」

 

 戦いには勝利した。それは間違いない。

 

 なのに、どこか勝利を喜べない自分がいる。

 

「やっぱ凄えよお前は」

 

 そう、呟く。

 

 その言葉の中には紛れもなく相手に対する敬意が含まれていた。

 

 ******

 

「さてさて、大分削れたな」

 

 ソーナの兵士一名のリタイアを聞いて俺は呟く。

 

「ええ、これでソーナの残りの眷属は女王と僧侶二人だけ。そろそろ私たちも行くわよ」

 

 やっとか。俺は立ち上がり体を解す。

 

「やべ、大分固まったな。解さないとな」

 

 どうも、今回は最初から出番が無さ過ぎて気が抜けているな。いかんいかん、こんなの見られたら大事だな。

 

「で、全員で行くのか?リアスは残った方が良いんじゃね?一応万が一って事もあるしさ」

 

「あら、大丈夫よ」

 

 リアスは自信満々に言う。

 

「それまたどうして?」

 

 俺が尋ねると、笑いながら言う。

 

「だって、貴方が守ってくれるでしょ?」

 

「…………」

 

 いや、そんなまっすぐ言われるとなあ……。

 

「あらあら、仲が本当に良いですわね」

 

 むにゅん、と俺の背中に柔らかい感触が伝わってくる。

 

「…朱乃、わざと?」

 

 背中の感触に動揺を何とか抑えながら俺はため息をつきながら聞く。

 

「あらあら、何の事です?」

 

 俺の耳元で囁く朱乃。

 

 ちょ、息がかかってる。何かむずかゆいよ!

 

「はわわわわ」

 

 その光景を見たアーシアが顔を真っ赤にする。

 

「……朱乃? 今はゲーム中よ? こんな大事な時に何をしているのかしら?」

 

 リアスは感情を抑えるように――但し口元をひくつくかせながら――言葉を口にする。

 

 

「あら、こんな時だからこそですわ。終盤戦に突入する前に緊張を解しておかないと」

 

「いや、別に緊張なんて」

 

「何か言いましたか?」

 

「いえ、別に」

 

 怖い。何か迫力ある言い方だったよ!?

 

「ちょ、ちょっと待て二人とも! 今から相手陣地に乗り込むんだろ? さっさと行くぞ」

 

「ちょっと黙ってて」

 

「黙っててくれますかカレン?」

 

「……なんでだよ」

 

 俺ってそんなに威厳無い? これでも、もう直ぐキングになるんだぜ? 笑えねえわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後二話で五章完結予定
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