ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

77 / 97
全然時間取れねえ……書けねえ。


第十六話

「あれま」

 

 相手陣地近くまで来て、俺は思わず口に出す。

 

 何せ目の前の広場にキングであるソーナが立っていたからだ。

 

「こんばんはカレン君。漸く出てきましたか」

 

「よお、ソーナ。どうしたよ、キングがこんな所に出てきて。もう諦めたか?」

 

「まさか。私はまだ勝負を諦めていませんよ」

 

「そうですかい」

 

 そんな風に軽口を言い合いながらも、俺は周りを確認する。

 

 ソーナの他には僧侶の女の子が二人ソーナを挟むようにして立っている。

 

 他に目立つものとすれば、僧侶の女の子の一人が持っている物か。こちらからは良く見えないが、何か黒いラインと繋がって、ずっと奥まで続いている。

 

 確か、あっちには一誠たちがいるはずだな。てか、黒いラインって匙君の神器の能力だよな? けど、彼はもうリタイアしちまっているし、何かあるって訳か……。

 

「しかし、どうやって勝つつもりだ? 言っちゃ悪いが、現在の戦力は圧倒的に俺たちの方が優勢だ。こっちは二人やられたが、そっちは倍以上やられているだろ?」

 

 狙いを探る為、会話を続けてみる。

 

「ご安心を。手は打ってあります。本音を言えば、貴方に仕掛けたかったのですが……まあ、言っても仕方ありません」

 

「何?」

 

 俺に仕掛けたかった。つまり、誰かに仕掛けた? 

 

「すんません! 遅くなりました!」

 

 俺が考えようとした矢先、広間に声が響く。

 

 そちらを見れば、鎧を身に纏った一誠と……猫耳と尻尾を生やした小猫だった。

 

「おお、それが例の」

 

 思わず見入る。確か、ライザーの眷属にも獣人娘がいたが、小猫のはそれとは大分違う印象を見せられる。

 

「はい……猫又モードです」

 

 ジロジロみられて恥ずかしかったのか、少し頬を染める小猫。

 

 成程な。確か、この状態なら仙術を使えるんだけっけか。しかも、見た感じ目立った外傷も無い。以前の小猫なら少しは怪我を負っていただろう。つまりそれだけ成長しているって訳だな。

 

「今度は手合わせしてもらいたいな」

 

「……カレン先輩は戦う事ばかりですね」

 

 どこか呆れた風に言う小猫。

 

 失礼な。それではまるで俺が戦闘狂では無いか。断じて俺はそんな人種では無い。

 

「おい、兄貴」

 

「ん?」

 

 一誠に声を掛けられ、そちらを向く。

 

 そこには赤龍帝の鎧を身に纏った一誠がいた。

 

 …………。

 

 ……ふむ。

 

「よし」

 

 俺は体を逸らす。

 

「って、俺には何か感想は無いのかよ! やっと禁手化出来る様になったんだぜ!?」

 

「あーうん。良かったなー」

 

「棒読み!? ひでえな! 弟が活躍してきたっていうのに!}

 

「やー、だってねえ」

 

 何が楽しくて野郎の事を褒めないといけないのやら。

 

 しかも弟だぜ? 笑えねえよ。

 

「つうか何で今禁手化? 馬鹿なの?」

 

「はあ!?」

 

「だって今回は大味な技を出したら不味いんだぜ? それなのにお前は全力全開な力しか出せねえのに……ホント、タイミング悪い」

 

「うぐ……それを言うなら兄貴だってそうだろうが!」

 

「俺? そうだったねえ。でも残念、俺はもう大体の力のコントロールなら出来ているから。お前と違って」

 

「何その厭味ったらしい顔。ムカつくんだけど!」

 

「うん、だってわざとやっているし」

 

「うぜえ!」

 

 ギャーギャー喚く一誠をからかっていると、ふと、あるものが目に付いた。

 

「……おい、一誠それなんだ?」

 

「大体……え? ああこれ」

 

 俺の目に映る……黒いライン状のものが一誠にひっついていたのだ。

 

「匙と最初にぶつかった時に付けられたんだよ。禁手化したときも外れなかったし、あいつがリタイアした後もこのままで」

 

「…………」

 

 やはり匙君のか。だが何だこれは? 力を抜いてる様にも一誠の今の状態からはそうは見えないし、かといって彼がリタイアした後でも残っているってのは何か不自然だし。

 

 さっきソーナが仕掛けったていうのはこれの事か? 

 

「すみません、お待たせしました!」

 

 俺が考えていると、再び声が聞こえてきた。

 

 見れば、俺たちや一誠たちとは別の通路から祐斗が出てきた。

 

 やはり、負けたのはゼノヴィアか。まあ、仕方ない。それに今回のゲームで言うならば、祐斗の方が残った方が良いしな。

 

 さて、これで全員揃ったし、そろそろ。

 

 そう思った矢先だった。隣に立っていた一誠が突如、膝を付いたのだ。

 

「……イッセー?」

 

 訝しんだリアスがアーシアに回復を掛ける様に伝える。

 

 アーシアも直ぐに回復のオーラを飛ばした。

 

 しかし、緑色のオーラに包まれても一誠は膝を付いたままだった。

 

「おい、一誠どうした? 何処をやられた」

 

 流石にこれは不味いか。俺も膝を付き、一誠に話しかける。

 

「分からない……何か急にめまいがしてきて」

 

「めまい?」

 

 俺が訝しんでいると、ソーナが声を出す。

 

「――ああ、やっとのようですね」

 

「ソーナ」

 

 俺は立ち上がり、彼女を見据える。

 

「お前が言っていた仕掛けってこれか?」

 

「ええ。本当はさっきも言った様に貴方に仕掛けたかったのですが。赤龍帝の鎧を身に纏った彼でもそう簡単に外せなかったのですから上手くいったかもしれませんね。最も、今となってはどうしようも無いですが」

 

「悪いけど、ここまで来ても答えが分からん。種明かししてくれないか?」

 

「構いませんよ。簡単な事です」

 

 僧侶の一人が持っていたモノをこちらに見せてきた。

 

 それは……血だった。病院などでよく見かける輸血パックの。

 

「おい、まさか……」

 

 それ見た瞬間、漸く俺は答えに達した。直ぐに神器を出すと、少し力を込めて一誠に繋がっている黒いラインを切る。

 

 思いのほか、簡単に切れて、切断面からは……赤い血が出てきた。

 

「そういう事か……」

 

 俺の苦々しいつぶやきにソーナは頷く。

 

「ええ、貴方の弟の血です。匙がラインを付けてからずっと気づかれない様に少量ずつ抜いていました」

 

「ソーナ、貴方……!」

 

 流石にリアスも動揺しているのか、ソーナを睨み付けていた。

 

「リアス貴方の評価を崩させてもらいます。かの不敗を誇ったレオン・グレモリーの息子であるカレンとその義弟である赤龍帝の兵藤一誠君。どちらか一人でも倒せば、貴方の評価はガタ落ちでしょう」

 

 うん、まあその通りとしか言いようが無い。他の皆も苦虫を噛みしめたような顔をしている。

 

 俺はというと、最早笑いすら出てきた。

 

「ははは、いやあ参った。こんな形で一誠をつぶしに来るとは。レーティングゲームってのは実際の戦いとは大違いだな」

 

「ええ、その通りです。普通の戦いならばこうはならないでしょう。ですが、レーティングゲームは実戦と似て非なる戦い。今回はそこを突かせてもらいました」

 

「成程」

 

 俺はチラリと一誠を見る。

 

 見るからに体調が悪いのは鎧越しでも分かる。生憎と今から血を増やすことは出来ないし、一誠は残念だがここでリタイアか。

 

 俺がそう思った矢先だった。

 

 一誠が突如不気味に笑いだしのだ。

 

「リタイア前に……俺は俺の煩悩を果たしてから消えようと思う」

 

「は?」

 

 何言ってんだこいつ?

 

 すると、一誠を中心に妙な魔力が辺りに広がった。

 

「高まれ、俺の欲望! 煩悩解放!」

 

 今自分で煩悩って言った? マジで何考えてんのこいつ?

 

「ふふふ、部長、今俺の事心配してくれましたね?」

 

「え!?」

 

 まるで考えが当てられたかのような表情を浮かべるリアス。

 

「アーシア……ツンデレ系?」

 

「はい?」

 

 アーシアに関しては何を言ってるのか分からん。

 

「ソーナ会長、もしかして今俺の技が相手の心の内を読めるものだと思いましたね?」

 

 ソーナが驚いた顔をする。

 

 え、まじ? 一誠のヤツ、そんな凄い技を思いついたのか? 一誠の癖に?

 

「ふふふふ、心を読んでいるわけじゃねえよ。俺のなけなしの魔力の才能全てを注いで作った、女性の胸のうちを! 否、おっぱいの声を!」

 

 ………………は?

 

「その名も乳語翻訳(パイリンガル)! 女性相手ならば絶対にそのおっぱいと会話が出来るんだ!」

 

 気づけば、女性陣ほぼ全員が腕で胸を隠していた。

 

 ……これは酷い。

 

 思わず、一誠を蹴飛ばす。割と本気で。

 

「って、何すんだよ兄貴。血が足らねえんだけど」

 

「知るか、さっさとリタイアして生命維持に必要な最低限残して全部血を吸われて来い」

 

「何で!?」

 

「お前のそのふざけた技に呆れてんだよ!」

 

 マジでこいつの頭はどうなってるんだ! ガキの頃からエロ方面は酷いと思ってたけど、これはマジでやばい!

 

「リアス、これは……」

 

「ええ、ゲームでは絶対に使えないわね」

 

 リアスとソーナも同意見の様だ。

 

「そんな……ちょっと待ってくれ」

 

 一誠が信じられない。という風に呟く。

 

「これじゃ……俺が唯の変態みたいじゃないか!」

 

『その通りだ!』

 

 全員からのツッコミ。敵味方関係なく、俺たちの心が一つになった証だった。

 

 マジでないわー。いっそのこと俺がリタイアさせてやろうかな。

 

「ちょっと待った兄貴。出てる、出てるよ声に! 怖いよ目がマジだぜ!」

 

「よし、じゃあやるか」

 

「本当にやる気!? 待ってくれよ……あ、やべ、叫んでたら頭くらくらしてきた」

 

「しゃあないな」

 

 本当に仕方ない。

 

「一誠、ソーナの胸に聞いて作戦聞け。それで俺からはチャラにしてやる」

 

「な……」

 

 そんな事を言うとは思っていなかったのか、ソーナが胸を腕で隠す。

 

 だが、それはあまり意味が無かったようだ。

 

「……みんな聞いてくれ。あそこに居るソーナ会長は精神だけをこっちに持ってきたんだ。幻影を攻撃させてこっちの、てか兄貴の体力を少しでも減らす作戦なんだ。本物の会長は屋上にいる」

 

 あれま、あれ精神だけとか。中々面白い事しんてだな。

 

「ほんじゃま、さっさと行くか。お疲れさん。お前はさっさとリタイアしてマジで頭冷やして来い」

 

「何だよ……それ」

 

 最早限界に近い一誠。

 

「イッセーさん」

 

 アーシアは再び回復のオーラを飛ばそうとする。

 

 効果が無いと分かっていてもやるとか……アーシアはマジでイッセー大好きっ子だな。

 

「それを待っていました」

 

 だが、それを予感していたかのように僧侶の一人がこちらに向かってきた。

 

 既に回復のオーラは出ている。何をする気だ?

 

反転(リバース)!」

 

 刹那、回復のオーラは緑色から禍々しい赤色へと変わった。

 

「あ……」

 

 それをもろに浴びたアーシアはリタイアの光に包まれる。

 

 って、リタイア!? おい、どうなってる?

 

 待て待て。この子、リバースって言ったよな。って事は、アーシアの治癒能力を反転させたって事か?

 

 反転、つまり逆の状態。傷を治すでは無く、傷つける方に力を変えた。

 

 やばいなそれ。アーシアの治癒能力は半端じゃない。それと同等の傷つける力になったら、手が付けられん。

 

 実際、反転させた僧侶の子も血を流しながらリタイアの光に包まれている。

 

 自滅覚悟で、うちの回復要員であるアーシアをつぶしにかかってきたか。

 

 とんでもないな、シトリー眷属は。

 

 そうこうしている内に、一誠とアーシア。それにシトリーの僧侶が転送されていく。

 

 残るはソーナと女王と僧侶の三人。

 

「しゃーない。さっさと終わらせるか」

 

 これ以上うちの評価を下げるわけにもいかん。とっとと、ソーナを倒して終わらせよう。

 

 そう思い、俺は屋上へと続く階段に急ぐ。

 

「っ、いかせません!」

 

 残った僧侶の一人が俺に魔力の波動を打ち込んでくる。

 

 って、おいおい。

 

『Absorb!!』

 

 直ぐに展開した神器に攻撃を吸収させる。

 

「俺にその攻撃は通じないって分かってるだろ? 失策だぞ」

 

「っ!」

 

 苦々しそうに顔を歪める僧侶ちゃん。

 

「そんじゃ、後は任せた」

 

 そう言って俺はさっさと階段を上っていく。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。