ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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第十七話

 屋上に着くと、フェンスに手を当てて空を見上げているソーナがいた。

 

「よお、さっきぶり」

 

 俺が声を掛けると、ソーナが後ろを振り向いて微笑んでくる。

 

「やはり貴方が来ましたか」

 

「予想通りってか?」

 

「貴方ならば真っ直ぐここに来るとは思っていましたから」

 

「ふーん」

 

 俺は神器を振り回しながらソーナに近づく。

 

「恐らく、お前の残りの眷属はリアスたちに倒されるだろう」

 

「ええ」

 

「それでもやるか?」

 

 答えなど分かり切っているが、それでも聞いておかなければならない。

 

「勿論――戦います」

 

 ソーナの体から魔力が発せられる。

 

 ふと、空を見れば、次々とフィールド内の水がソーナに目掛けて集まって来ていた。

 

 確か、氷の魔力を得意とする姉のセラフォルー様に対してソーナは水の魔力を得意としていたな。

 

「これが、私の全力です」

 

 ソーナが水で動物――ライオンや、蛇、大きな鳥。挙句の果てにはドラゴン等を作り出す。

 

「わお」

 

 思わず声に出る。場違いな感想かもしれないがまるで水のアートを思わせるぐらい精密だ。

 

「驚いていただいているようで良かったです」

 

「いやあ、びっくり」

 

 俺は神器を構えると真っ直ぐソーナに向かう。

 

 水で作られた動物たちが俺に襲い掛かってくる。

 

 俺は神器を振りかぶり、斬りかかる。

 

 しかし、

 

「あり?」

 

 斬った。そう斬ったは良いが斬った直後に何と体が再生したのだ。

 

 って、そうか。水だから斬っても意味ねえのか。

 

「厄介な」

 

 剣を主とする俺には相性が最悪に近い。何せ斬っても意味が無いのだ。

 

 吸収も、魔力そのものならまだしも、実体のある水を吸収するのは難しい。

 

 リアスの滅びの魔力とかあれば問題ないんだろうけど、生憎と持ってはいない。

 

 水で作られたライオンが牙をむきながら俺に迫ってくる。

 

「ちっ」

 

 剣で斬るのを止めて俺は魔力の弾を一つ作り、撃ちだす。

 

 弾が直撃したライオンは弾けるも、直ぐにまた別の獣たちが迫ってくる。

 

「解せまんね。何故、禁手を使わないのですか?」

 

 俺が苦戦する様をジッと見ていたソーナがふと、そんな事を言ってきた。

 

「まさか、禁手無しで私に勝てると思っているのですか? 流石にそれは舐めすぎではないでしょう」

 

「いやいや! お前さんを舐めているつもりはねえよ」

 

 水の獣たちの攻撃を避けながら俺は答える。

 

 まあ、単純な話。禁じられているんだよねえ。

 

 俺は昨日の事を思い浮かべる。

 

******

 

「禁手無し?」

 

「そうだ」

 

 明日のゲームに備えてもう寝ようかと思った矢先、茨木童子が俺にそう告げた。

 

「え、何で?」

 

「……言わねば分からんか」

 

 やばい。茨木のヤツ、キレてきている。

 

 ええい、考えろ。考えるんだ俺!

 

「ええと、修行?」

 

 多分だが、茨木の奴ならこれしか無いだろう。

 

「それに近い。今のお前は禁手すれば大抵の者には勝てるだろう。だが、それでは意味が無い」

 

「意味が無い?」

 

「禁手出来れば勝てると思っていては意味が無い。なればこそ、常に厳しい状況に身を置いて己を高める事を忘れるな」

 

******

 

「とは言ってもなー」

 

 近づく水の獣たちを魔力で蹴散らしながら俺はどうするか考える。

 

 この水は魔力で造った訳じゃ無くて実際にある水をそのまま応用したものだ。それを魔力で操っている。

 

 こうなると、水そのものをどうにかした方が良いかもしれないな。

 

 だったらどうするか。水を消し飛ばすだけの魔力を辺りに放出する? いやいや、確実性が無い。それにここが屋上だからってフィールドを傷つけたら厄介な事になるだろうし。リアスに怒られるのも嫌だね。

 

 ……あれ、何だろう。何か忘れている気が……って今はソーナとの戦いに集中しないと。

 

 しかし、このまま囲まれていても埒が明かん。一度距離を取るか。

 

 俺は背中に悪魔の翼を広げると空へと飛ぶ。

 

 うーむ、多いな。

 

 水の獣たちの数は正直馬鹿にならない。まあ、このフィールド内すべての水を使っているから当然かな。

 

 ……ふむ。

 

「面倒だな。消すか」

 

「は?」

 

 俺の言葉にポカンとするソーナ。

 

 俺は魔力をある物質へと変換する。

 

「な……」

 

 それを見たソーナが思わず、口を開けていた。

 

 当然と言えば当然である。何せ、俺の頭上に浮かぶのはマグマ。超特大のマグマの塊なのだ。

 

「水を魔力で一々消し飛ばすのも面倒だし、これで一気に蒸発させるよ。ソーナ、気をつけろよ!」

 

 両腕を振りかぶる。

 

 それと同時にマグマの塊が地面に目掛けて落ちていく。

 

「っ!」

 

 その容量に危機感を覚えたのかソーナは魔方陣を自分の眼前に展開するのと同時に水の獣の数匹自分の前に配置した。

 

 だが、それでも足りないぜ?

 

 マグマの塊が地面にぶつかるのと同時に弾ける。

 

 弾けたマグマは大波の如く浮かび上がり、獣たちを飲み込んでいく。

 

「……信じ、られませんね」

 

 マグマの熱気に当てられてか、ソーナが額に大量に汗をかいている。

 

「いやあ、想像以上。はは、笑えてくる」

 

 マグマに降れない程度にまで地面に近づく。

 

 周りを見れば屋上はほぼマグマで埋め尽くされており、灼熱の地獄と化していた。

 

 いやあ、俺がやったとはいえ、ひでえな、うん。

 

「さて、まだやる?」

 

 ソーナに笑いかけてみる。

 

「……どうせ私の魔力で同じことをしても意味は無いのでしょうね」

 

「当然」

 

 今あるマグマを使ってまたさっきと同じことをすれば良いんだしね。

 

「分かりました……降参です」

 

『投了を確認。リアス・グレモリー様の勝利です』

 

 終わったー。やあ、実に反省点の多い勝負だったな。茨木のヤツに殺されそう。

 

 って、その前にこのマグマ消さないとな。

 

「あ」

 

 その矢先、ソーナが態勢を崩した。

 

 そのままマグマに落ちそうになる。

 

 やば!

 

 俺は慌ててソーナもとに近づき、その体を支える。

 

「おい、大丈夫かソーナ?」

 

「……暑いですね」

 

「え、ああ。直ぐに消すからちょい待ち」

 

 魔力を操作し、マグマを消すようにする。

 

 直ぐにマグマは霧散し、屋上は元の状態に戻った。

 

「あちゃー。床が若干変形しているな。操作を間違えたかな。こりゃあ減点されてそう」

 

「あの」

 

「あーあー。茨木に何を言われるや。いや、何をされるか、か」

 

「カレン」

 

「しかしさ、俺だって頑張ったぜ。それはあいつを分かってくれるかな? いや、分かっててやりそう。やだやだ」

 

「カレン」

 

「はー。終わったらさっさと人間界に戻った方が良いかも」

 

「カレン!」

 

「ん?」

 

「いつまで抱きしめているのです?」

 

 あ。

 

 そう、崩れ落ちそうになっていたソーナを抱きしめるような形なのだ。今は。

 

「あ、ああ悪い。直ぐに」

 

「――直ぐに? 何をするのかしら?」

 

 …………おふぅ。

 

 今人生で一番聞きたくない声だ。

 

 だが、ここで振り向かなくては後はもっと怖くなる。

 

 俺は少し顔が赤くなっているソーナを離して、なるべく笑みを浮かべながら振り返る。

 

「よお! お疲れ……!?」

 

 振り向いた瞬間、俺の顔の両隣を何かが通り過ぎていった。

 

 それが滅びの魔力と、雷に光が混ざった雷光だとは直ぐに分かった。

 

 背中に冷や汗が流れ始める。

 

 視線の先にはリアスたちがいる。

 

 ……尋常じゃないオーラを纏いながら仁王立ちをする二 人(リアスと朱乃)が居なければもっと良かったんだけどなー。

 

「カレン」

 

「お、おう」

 

 ニッコリと笑っているがあれはヤバい。一番激怒している。

 

 てか、何で朱乃まで!? 俺何かした!?

 

「ゲームには勝ったわ。それは良かったわ」

 

「お、おう。俺がソーナを倒したんだからな」

 

「ええ、その通りですわ」

 

 朱乃もいつものニコニコとした顔を浮かべながら言う。

 

「けど、私との約束はどうしたのですか?」

 

「…………」

 

 やばい。

 

 やばいやばいやばいやばい!

 

 完全に、忘れてた!

 

 どうするよ! 朱乃と約束したじゃん! 自分の忌むべき力を使うから見守っていて欲しいって!

 

 うわーうわー。これは完全に俺が悪いなー。

 

「それでカレン」

 

「は、はい」

 

 完全にびくつきながら俺はリアスの方を向く。

 

 今は朱乃の方を見たら怖いとかそういうレベルじゃない。

 

「何でソーナと抱き合っているのかしら?」

 

「……」

 

 …………ふっ。

 

 俺は回れ右をすると直ぐ様脱走を図る。

 

『待ちなさい!』

 

 二人は直ぐさま滅びの魔力と雷光を放ってきた。

 

「うお! あぶねえ! 本気で当てる気か!」

 

「黙りなさい! 何をしていたのかちゃんと言いなさい!」

 

「そして私たちのお仕置きを受けなさい!」

 

「俺は無実だあああああああああ!!」

 

******

 

「で、結局捕まって何時間もお仕置きと説教? 何をやってるんだいお前は」

 

「……うるせえ」

 

 ペルセウスが呆れたように言うも、俺は憮然として返す。

 

「まあまあ。カレンも女の子に手を出さなかったのだから偉いわよ」

 

「頭撫でんな。何かお前にやられるとゾワッとするんだが」

 

「もう、恥ずかしがっちゃって」

 

 俺の言葉に構わず撫でまわすセルヴィア。

 

「――セルヴィア、おやめなさい。カレン様が嫌がっております」

 

 冷やかに言うのはティア。冷たい眼差しをセルヴィアに送っている。

 

「もう、冗談よ。そんなに本気にしちゃあダメよ?」

 

 このおねえ野郎はどうも苦手だ。

 

 冥界滞在最終日。俺は屋敷に戻り、ティアたちに挨拶をしていた。

 

 ティアたちはもう少しいてほしいようだが、生憎と俺にもやることがある。それもあと数日の内にだ。

 

「カレン様、次は何時こちらに?」

 

「ん? んーもう直ぐ二学期が始まるから少し忙しくなるかな。けどまあ、残りのレーティングゲームもあるからちょくちょく来ると思うな」

 

「そうですか……」

 

「あら~? やっぱりティアちゃんはカレンと離れるのが寂しい?」

 

「…………」

 

 刹那、ティアのビンタがセルヴィアを襲う。

 

「あらあら」

 

 セルヴィアはそれを笑いながら躱す。

 

「もう、危ないわよ。直ぐに手が出る女の子は嫌われるわよ?」

 

「……それ、リアスたちにも言って欲しいな」

 

「それは貴方が悪いわよカレン。女の子には優しくいないと」

 

「男女差別って知ってる……?」

 

「まあまあ。そこら辺はまた今度ゆっくりとな?」

 

 ペルセウスが笑いながら言う。

 

 結局あの日、この場所で何があったかは聞くことが出来なかった。

 

 本当は今すぐにでも聞きたいところだが残念な事に時間が無い。

 

 あそこには必ず行かないといけないしな。

 

 ……ただ、あいつには会いたくは無いけど。

 

「カレン様、では次のご帰還、心よりお待ちしております」

 

「ああ」

 

 本当は茨木のヤツにも別れを言いたかったが、仕方ない。

 

 ま、あいつは何かそういう感じじゃないし、当然かもな。

 

「そろそろ時間か」

 

 もう列車の時間に間に合わなくなっちまうからな。転移魔方陣で飛んでいかないと。

 

「そんじゃ、あっち戻ったら連絡するよ」

 

「ええ」

 

「気をつけろよ」

 

「お気を付けて」

 

 三者三様の挨拶を告げられて、俺は生家を後にするのであった。

 

******

 

「……あの子、一応まだ大丈夫みたいね。四死剣の話をしなければ敏感にならないみたいだし」

 

「今回は、だよ。茨木が修行を付けたおかげでそちらに集中していたからな。次会った時は必ず話さないと」

 

「……その際は私が話します」

 

「ティアちゃん、無理しなくていいのよ」

 

「構いません。これは私がすべきことです」

 

「前にも言ったが、あれはお前の所為じゃない。お前にも我々全員にもあれは分からないかった事だ」

 

「…………」

 

「やれやれ、まあ良いわ。後で茨木とも相談しないと」

 

「どうかな、あいつは『くだらん』で終わりそう」

 

「確かにね。もう、まだまだ気が重いわね」




これにて五章終わりです。いやあ長かった。10月や11月に課題が多く出てそちらにかかりきりだったので、中々書けなかったですね。

次は原作6巻。ですが、前々から考えていたオリジナルの章を書いてみようと思います。主人公の過去の一端を明かしていこうかと。

取り敢えず、今年はこれで終わりです。次の章は新年の出来れば1月末日までには投稿したいですね。
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