ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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はい、皆さまお久しぶりです。待っていた方別段待っていない方。お待たせしました第六章です。

今回、オリジナル回という事で、かなり難しいですね。何か、頭の中には思い描けているのに、それを上手く文章に出来ないというか。

また、日曜に更新していきたいと思いますのでどうかお願いします。


第六章
第一話


「……何で夏って暑いんだろうな」

 

 そんな文句が口から出るくらい今日は暑い。

 

 八月最後の日とはいえ、これから暫く暑さは続くだろう。それを考えると気が滅入る。

 

 こんな日こそ、明日からの新学期に備えて冷房の効いた部屋でのんびりと過ごすのも悪くは無いが今日だけはそんな事を言ってはいられない。

 

 本当は昨日か一昨日の方が良かったんだが、冥界に行っていたからな。結局この日になっちまった。

 

 ……なるべく早く済ませて早く帰ろう。あいつにだけは会いたくないしな。

 

 おまけにリアスたちには何も言わないで来たから説明もめんどくさい。

 

 考えてみると、最近あまり一人の時間が無いなー。まあ、あいつらと一緒に居て煩わしいと言う訳じゃあ無いけど、やっぱり一人は一人で別の意味で落ち着くな。

 

 セミの鳴き声が響く中、俺は少し朧げな記憶を頼りに歩いていく。

 

 近づくのが分かるのと同時に俺の足取りは重くなってくる。

 

 出来る事ならば行きたくないのかもしれない。正直、自分でも良く分かっていない。

 

 だけど、行かないという選択肢は無い。それこそあってはならない。

 

 そんな事、俺には許されないのだから。

 

 やがて俺は一つの寺の前に立った。

 

「やっぱり、悪寒がしてくるな」

 

 寺も教会と同じように聖なるものに属する所だ。俺みたいな悪魔が入ったら即アウトだ。

 

 おまけに悪魔界と協定を結んでいるわけでも無いのだから入った瞬間に滅せられても文句は言えない。

 

 なので、叔父上とゼクス兄さんに頼んで何とか今日だけは入ることを許可してもらう事にした。

 

 事情が事情なだけに二人には一応の説明はしておいた。あれだけで納得してくるとは流石に思わなかったが。

 

 いや、本当は分かっていてそれでも俺のわがままを聞いてくれたんだろう。

 

「……行くか」

 

 意を決して、俺は門を通る。

 

 数秒間そこで止まるが、何も起きない。どうやら本当に取引は成功しているみたいだな。

 

 ここに来てやっぱ駄目ですなんて言われたら俺のストレスが爆発するかもしれんな。

 

 ま、兎に角行こう。

 

 俺は本堂には寄らず、真っ直ぐ目的地である墓地に向かう。

 

 無数の墓が並ぶ中で俺は直ぐに目的の墓を見つける。

 

 そこに書かれているのは寿家。

 

「……よお、紫水。一年ぶりだな」

 

 簡単に墓の周りを綺麗にして持ってきた花を添える。

 

「あれからもう三年か。これが短いのか早いのかは俺にも分からん。気づけば、俺はもうお前の年を超えちまった。早いもんだ」

 

 あれだけ年下扱いされていたのに、今じゃ俺の方があいつの年を超えてしまった。

 

「本当に早いな。おまけに今年に入ってからは色んな事が起きちまった。まだ一年経ってないのに、それぐらい感じるぐらいの濃い経験をしたと思うよ」

 

 そう、リアスたちによって悪魔となり、色んな事を経験した。

 

 どれもが俺の中で忘れられない事で、忘れてはいけないことだ。

 

「なあ、紫水。お前が生きていたらもっと別の人生を歩んでいたのかな?」

 

 ずっと一緒に居て、道場で汗を流し、笑いあったり、からかわれたり、飯を食ったり。

 

 そんなずっと同じような日常が続いていたのかもしれない。

 

 けど、どれだけ思ったと事で時間は戻らない。戻ってはいけないのだ。

 

 時間はずっと動いたままだ。それが絶対だ。

 

「……ああ、何か辛気臭くなっちまったな。このクソ暑い天気の影響かな。紫水、今日はここまでだ。次はまた何か面白い話を持ってくるよ」

 

 別れを告げて、俺がこの場を去ろうとした時だった。

 

「――兄様?」

 

 鈴の音と同時に掛けられた言葉に、俺はその場で凍り付いてしまった。

 

 馬鹿な何で気づかなかった。久しぶりだから周囲の計画を怠った? そんな馬鹿な。油断していたとはいえ、俺がこんな近くまで気づかなかったなんて。ああ、やばいやばい。思考が変だ。落ち着け落ち着くんだ。深呼吸だ。深呼吸するんだ。

 

 呼吸が早くなるのを感じる。これは駄目だ。変な呼吸になっちまう。

 

 兎に角落ち着け。落ち着くんだ。

 

 俺はゆっくりと振り向く。

 

 そこにいたのはやはりというか、予想通りの相手だった。

 

 淡い緑色の浴衣を身に纏い、日よけ用の麦わら帽子を被っている。

 

 手には花を持っている。墓参りであることは容易に想像がつく。

 

 茶色の髪を紫水と同じぐらいに伸ばしており、顔立ちもそっくりな事から一瞬、見間違えそうになる。

 

 まあ、それは当然でもあるか。

 

「……翠」

 

 紫水の妹なのだから当たり前だ。

 

 お互いに呆然としている。

 

 実に三年ぶりだ。あの日以来、全く会っていないのだから。

 

 俺は耐え切れず、目を逸らしてしまう。

 

「っ……」

 

 息を呑む音が聞こえる。

 

「……何をしているんですか」

 

 冷たい、何も感じさせない声に、体が硬くなっていく。

 

「何で貴方がここにいるんですか?」

 

「……それは」

 

「貴方がここに居る資格なんて無いのに」

 

「…………」

 

「貴方が、姉さんの墓の前にいる資格なんて無い。分かってるはずだわ」

 

 そうだ。その通りだ。翠の言葉に何も間違いはない。

 

「貴方が姉さんを殺した」

 

 その言葉は俺の胸に貫かれたような痛みがもたらされた。

 

「貴方が」

 

 次の瞬間、俺は駆け出してた。

 

 悪魔としての身体能力をフルに活用させて逃げた。

 

 翠に声を掛けられたと思うが、それも無視して駆け抜いた。

 

 全速力で何処を走っているのかも分からず走り続ける。

 

******

 

「はあ……」

 

 近くにあった電柱に背を預けてしゃがみ込む。

 

 何処だかまるで分からないが、ケータイで調べれば何とかなるだろう。

 

 やっちまった。そんな感情が俺を支配する。

 

 またしても俺は逃げてしまった。あの頃と同じだ。

 

 目を背けて、結局乗り越えられていない。

 

「やれやれ……他の奴らには偉そうな事言ってるのに、言っている本人がこれじゃあ、説得力が何にも無いな」

 

 自嘲気味に呟く。

 

 いくら強くなっても、ここら辺の部分は何も変わっていない。

 

 紫水、俺は何時までこんな感じなのかな? 翠とも結局何も話せなかった。

 

 このままじゃいけない。それは分かっている。

 

 分かってはいるんだが……進めないこのもどかしさ。嫌になってくるな。

 

「……帰るか」

 

 本当は帰りたく無いのだが、ここに居たってしょうがない。ならば帰るしか無いだろう。

 

 さて、さしあたって俺がやるべきことは……。

 

「ここ、何処だっけ?」

 

 ケータイで地図を見て現在地を調べる事だ。

 

 

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