ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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第二話

「はあ……」

 

「…………」

 

「ああ……」

 

「………………」

 

「はあぁああ」

 

「……カレン、どうかしたの? さっきからため息ばかりを付いているけど」

 

 俺の連続ため息に耐え切れなくなったのか、頭を押さえながらリアスが聞いてきた。

 

 翠との再会から一日。遂に新学期が始まったわけだが、初日という事もあって学校は午前で終わり、俺たちはさっさと家に戻っていた。

 

 で、俺はというと、何をするわけでも無く只々自室のベットでゴロゴロしているわけなのだが……。

 

 うん。元気が全く出ないな。何かすることがあるはずなのに何もする気が起きない。

 

「ちょっとカレン、無視しないの」

 

 ペシっと俺の頭を軽く叩くリアス。

 

 仕方なく、俺は体をリアスの方に向ける。

 

 見ると、我らがグレモリー眷属の内、家に住んでいる連中が勢ぞろいしていた。

 

 いや、そもそもここ俺の部屋の筈なのだが、何でこいつ等いんの? って、言った所で、意味ないか今更。

 

 他の奴らもこちらを見ている。

 

「ホント、どうしたんだよ兄貴。昨日帰って来てからずっと変だぜ」

 

 一誠も心配そうに聞いてくる。

 

 一誠にまで心配を掛けるとは……俺もまだまだの様だな。

 

「どこか上の空で、ボンヤリとしてますわ」

 

「……注意力が無い」

 

 朱乃や小猫も心配そうにしている。

 

「うん、普段のカレン先輩からは想像も出来ない」

 

「お、お疲れなのでしょうか?」

 

 アーシアやゼノヴィアもこちらを見て話している。

 

 うーむ、どうやら他の連中に随分と心配をかけたようだな。この分だと祐斗やギャスパーの奴にも同じように心配をかけていたようだな。

 

「あーなんだ。すまん。どうやら変な心配を掛けちまったようだな。悪い」

 

 軽く頭を下げておく。

 

「本当にどうしたの? 昨日帰ってきたから本当に元気が無いし……結局どこに行くのかも教えてくれなかったし」

 

 リアスが少し不満げに言う。

 

「良いだろ別に。俺だって個人的な用事で動くことだってあるさ」

 

「それはそうだけど……」

 

「あんな表情で帰ってきたらビックリするに決まっていますわ」

 

「……心配」

 

 皆口々に言うが、生憎と話すつもりは無い。

 

 話したら話したで自分の過去についても話さなければならない。何が楽しくてそんな事をしなきゃいけないのだろうか。

 

「あーもーやめやめ。こんな話してても不毛だ。別の話をしようぜ」

 

「カレン、貴方ね……」

 

「気持ちを切り替えるからさ、それで良いだろ?」

 

「もう……」

 

 しつこく食い下がりそうだったので、俺はリアスの耳元に口を近づけると、小声で言う。

 

「頼むよリアス。今度何かお願い事聞いてやるからさ」

 

 その言葉にリアスの雰囲気が変わる。

 

「……なんでもって言った?」

 

「え、言って」

 

「言ったわよね?」

 

「……ハイ、何でも聞きます。一つだけ」

 

 一先ず一個だけにしておく。

 

「分かったわ……破ったらタダじゃおかないわよ?」

 

 ゾッとするような声音で俺の耳元で囁く。

 

 ……後悔するかも。

 

 そんな事を思う俺であった。

 

*****

 

「ディオドラ・アスタロト?」

 

「ええ」

 

 授業が本格的に始まったある日の昼休み。

 

 俺とリアス、朱乃の三年生組は中庭で三人昼食を取っていた。

 

 俺も含めて非常に目立つメンバーだが、遠巻きに見るだけで近づく子がいない為、周囲には人がいない。

 

 そんな中で出た話題が一人の悪魔だった。

 

「確かそいつ、若手悪魔のメンバーの一人だった。アスタロトっていうと、現ベルベブブ様の実家だったな」

 

 アジュカ・ベルゼブブ。妖艶な雰囲気を持つ方なのは見て分かるが実際のところあまりは知らない。

 

「で、そいつがどうしたのさ?」

 

「どうもこうも無いわ。アーシアに求婚しているのよ」

 

「はあ?」

 

 何でアスタロト家の次期当主がアーシアに?

 

「以前、アーシアちゃんが悪魔の治癒したことで教会を追放されたことは覚えてますよね?」

 

「ああ」

 

 朱乃の言葉にうなずく。

 

 それであの堕天使の組織に身を置いていたんだからな。

 

「って待て。もしかしなくてもその時の悪魔がディオドラ・アスタロトなのか?」

 

「そのまさかよ」

 

 嘆息するリアス。

 

「すると何か? 助けられた時の恩で恋心が目覚めたと? はは、過程をすっ飛ばし過ぎていて笑えてくるな」

 

 今どき、出会ってすぐに結婚なんて無理に決まっている。普通は順序良くいかないとな。

 

 まあ、出会ってスピード結婚なんて人もいるだろうが。

 

「で、結局断ったんだろ?」

 

「ええ、でも」

 

「あの様子だと、諦めてはいないでしょうね」

 

「そいつはめんどくさいな」

 

 普通ならバッサリと断ってやれば良いんだろうけど、相手が現ベルゼブブを輩出した名門ならば、無下に出来ん。

 

「何とか俺たちだけで解決できれば良いが」

 

「ほんとね……」

 

 悩ましい問題だと、俺たち三人はため息を付いてしまう。

 

 しかし、結婚。結婚か……。

 

『ねえ、私たち結婚する?』

 

「…………」

 

 最悪だ。最悪過ぎて嫌になってくる。

 

 翠に会ったせいか? 何だってあんなことを思い出さなきゃならないんだよ。

 

 いや、思い出さなきゃいけないことだったのかもしれないな。

 

 悪魔として生きていくならば遠からず、翠達とは別れる様になる。もしこのままだったら、何も出来ないまま、長い時間を生きる事になるって訳か。

 

 とはいえ、解決するって言ってもどうすれば良いのやら。

 

「はあ……」

 

 またため息を付いてしまう。

 

 本当にここ最近ため息を付くことが多くなってきている気がする。

 

「……おし」

 

 俺は席を立ちあがる。

 

「どうしたのカレン?」

 

 リアスと朱乃が目を丸くして俺を見る。

 

「ちょっと走ってくる。五限には間に合うようにするから。じゃ」

 

 それだけ言うと、俺はそのまま走りだす。

 

******

 

「行ってしまいましたね」

 

「本当ね」

 

 走り去っていくカレンを見て、私――リアス・グレモリーと朱乃は揃ってため息を付いた。

 

 本当にどうしたのかしらカレンは。昨日から様子が酷かった。

 

 本人は気付いていなかったようだけど、夜、寝ている時もうなされていることがあった。

 

 起こそうかとも思ったが、結局そのままになってしまった。

 

 ……実のところ、気になってしまっているのだ。うなされている時に寝言で呟いていたこと言葉が。

 

『ごめん、紫水。ごめんな紫水』

 

 紫水。名前からして男か女かは分からないが、恐らく女だろう。私の女としての勘が、それを告げている。

 

 多分だけど、カレンの昔の女だ。私の処女を貰ってほしいと言ったときのカレンの反応からしてみて間違いない。

 

 まさか、私以外に女を作っているなんて……!

 

 思わず怒りに身を任せそうになって、私はあることに気づいた。

 

 私は、カレンのこっち(人間界)に来てからどうやって生きていたのかを知らないのだ。

 

 知っているのは叔母様……日月さまが亡くなられてからは兵藤家に引き取られて一誠とは兄弟として暮らしていたことぐらいだ。

 

「……朱乃」

 

「はい?」

 

「カレンの過去についてちょっと調べてみるわ」

 

「え、急にどうしたのですか?」

 

 驚いた顔をする朱乃。

 

 まあ、当然よね……。

 

「どうしても知りたいことが出来たのよ。今夜にでも、兵藤の叔母様と叔父様にお話を聞くわ」

 

「まあ、それは構いませんが……カレンは自分の過去を知られるのを嫌がると思いますが……」

 

「今のカレンは昔の事で何かを悩んでいる。こんな状況で禍の団(カオス・ブリゲード)が襲って来たりしたら危ないわ。特にあの四死剣の連中なんかはね」

 

「四死剣……神星剣の保有者達ですね」

 

「ええ。彼らはカレンを狙っている。最近は姿を見せていないけど、間違いなくカレンに接触してい来る筈だわ。だからこそ、カレンには万全の状態でいて貰わなければ」

 

 本当は私達がサポート出来れば良いのだろうけれど、神星剣の力の恐ろしさはカレンの持っているものを通じて把握している。

 

 悔しいが、あれは今の私達でどうこう出来る物じゃない。

 

 お兄様やアザゼルだったら別かもしれないが、この二人はそう簡単には動けない。

 

 だからこそ、同じ土俵に立てるカレンには戦えるようになってもらわないといけないのだ。

 

 心苦しくもある。そして心配でもある。

 

 あの日、親の敵に会ったカレンの顔は尋常では無い程に憎悪に染まっていた。

 

 それがどういう事を意味するのか。嫌でも予想が付く。

 

 祐斗の様に乗り越える事が出来るかどうか。……正直、分からなくなってくる。

 

 もしも戻れなくなってしまったら……考えただけで寒気がしてくる。

 

 そんな事絶対に許されない。私が許さない。

 

 もう二度と、カレンは離さない。そう、絶対に。

 

「……リアス?」

 

 朱乃が顔を覗き込んでくる。

 

「貴方もあまり根を詰めてはいけませんわよ? 貴方は私たちのキングなのですから。私たちの事も頼ってください」

 

「朱乃……」

 

 本当に私にはもったいないくらいの女王だわ。

 

「けど、カレンはそう簡単に渡さないわよ?」

 

「あらあら」

 

 

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