ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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お待たせしてしまい申し訳ありません。身内の不幸などがありまして色々とバタバタしておりました。いい加減更新を再開しようと思います。


第三話

「あの、俺何で皆に囲まれているんです……?」

 

 おっかなびっくりな様子で自分を囲んでいる私たちを見るイッセー。

 

「何か、怒られるような事しました?」

 

「いいえ、そういうわけじゃ無いわ」

 

 話を聞くだけっていうことで、これはやり過ぎたかしら?

 

「ふむ、取り敢えず私は何も聞いていないのだが?」

 

「わ、私もです」

 

「……同じく」

 

 ゼノヴィア、アーシア、小猫が首を傾げている。

 

「突然、イッセー君たちの家に来いって言われただけですしね」

 

 祐斗も困惑している様子だった。

 

 まあ、今回は私と朱乃しか知らないし、当然ね。

 

「と、所でカレン先輩は、家に来てから見かけていませんが」

 

 ギャスパーが段ボールに入ったまま辺りをキョロキョロしている。

 

「カレンは今冥界に居るわ。カレンの悪魔の駒が漸く準備出来たらしいの」

 

「兄貴の? てか、上級悪魔になったんすか!?」

 

 イッセーが驚きの声を上げる。他の皆も大なり小なり驚きを露わにしている。

 

「別に不思議な事じゃないわ。カレンだって半分とはいえグレモリーの血を引いているのよ? おまけに実力も織り込み済み。問題ないわ」

 

 本当はもっと面倒な事になるのでは無いかと思ったのだが。

 

 カレンはグレモリーの血を引いているが、転生前は半分に人間だったのだ。

 

 最近は露骨では無いものの、純血主義は悪魔界に根強く張っている。

 

 魔王の血縁者である者が半血となると、お兄様の政敵何かは喜んでそこを突いてくるだろう。

 

 実に腹立たしい。そんな事でカレンの評価を不当に貶めようとする、とまではいかないまでももっとごねると思っていたのだが。

 

 ソーナたちとのレーティングゲームが影響しているのかしら? それ以外にも何かあるのか……。

 

「まあ、それは今は置いておいて、カレンは明日まで帰ってこないわ。というわけでイッセー」

 

「は、はい」

 

「カレンの昔話をして?」

 

「……はい?」

 

「だから、カレンの昔話をしてちょうだい」

 

「いや、え、ええええええ!?」

 

 そんなに驚くことかしら?

 

「ちょ、部長何言ってんすか!? え、兄貴の昔話?」

 

「そうよ、だからほら、話しなさい」

 

「ぶ、部長……急にどうしたんですか、いきなり」

 

 本当に困惑したようにする祐斗。他の皆も似たり寄ったりな反応だ。

 

「私たちはカレンについて知らなさすぎるわ。それは今後の戦いに大きな支障を来たす――別に私がカレンの事知りたいわけじゃ無いわよ」

 

「最後の一言で全部台無しです」

 

 ため息を付くイッセー。

 

 何よ、良いじゃない。カレンの事私だって知りたいし。

 

 ……それに気になるのはカレンの元カノらしき影。それが一番知りたいことだ。

 

「まあ、いいすっけど、何処から聞きたいんです?」

 

「イッセーは一番最初に覚えていること」

 

「一番最初……えっと、確か俺と兄貴が初めて会ったのは、公園っすね」

 

「公園」

 

 成程、子供としてはベタな所ね。

 

「で、俺が公園に入ったら、兄貴何か当時確か小学生だったんですけど、中学生をボコボコにしてて」

 

「待って、そこから可笑しいわ」

 

 何でそうなってるの!? いや、まあ、あの子結構短気な部分もあるけど。

 

「あんときはビビったな。顔面とか思いっきり殴っていて、まるで容赦無いんです」

 

「い、今では想像が付きません」

 

 恐ろしげに体を震わすアーシア。

 

「全くだ。寧ろ、本当にカレン先輩なのか? と疑いたくなるな」

 

「……別人みたい」

 

 ゼノヴィアや小猫も同意見の様ね。

 

「いやいや、マジだって。昔の兄貴って髪が原因で色々とあったみたいでさ」

 

「髪……紅髪でかい?」

 

 祐斗の質問にイッセーは頷く。

 

「ああ、高校ではそうでも無いけどさ、小学生にはあの髪は結構目立つんだよな。それが原因でからかわれたり、いじめを受けたりさ」

 

「何てこと……」

 

 そんな物受けていただなんて……そいつら後で探し出して粛清してやろうかしら?

 

「酷い話ですわ……それで喧嘩などを?」

 

「ええ、まあ。特にちょっかいを出す男子たちをボコボコにしたり、そいつらの中学生の兄貴たちを更にボコボコにしたり、そんな事を繰り返しているうちに付いたあだ名が赤鬼っす」

 

「赤鬼……」

 

「本当に今とは想像が付きませんわ……」

 

 同時に、それだけ荒んだ生活を送っていたのかと、思うと胸が締め付けられる。

 

「当時、赤鬼には近づくなってのが、子供たちの共通ルールでしたから、他には誰も居なくて、で、兄貴こっちに近づいてきたんすよ」

 

 こう、ゆら、ゆら、っと。恐ろしげに語るイッセー。

 

「当然、俺は恐怖で体が竦んぢまって、動けなくなったんですよ……」

 

 当然と言えるわね。小さいころにそんなのに出会ったたまんないですもの。

 

「で、兄貴が俺の目の前に来たんですよ。そんで咄嗟にこういったんです」

 

 ――おっぱい好きですか!?――

 

 …………。

 

 ………………。

 

 ……………………。

 

 はい?

 

 場を沈黙が漂った。

 

「ごめん、イッセー君なんて言ったの?」

 

 祐斗が信じられなかったのか、頭を押さえながらイッセーに聞く。

 

「いや、だからおっぱい好きですか、って聞いたんだよ」

 

『何で!?』

 

 全員がツッコんだ。それだけ内容が奇怪だったのだから、当然と言えるわね。

 

 何よそれ……おっぱい好きですか、何て。まあ、イッセーらしいと言えばイッセーらしいけど。

 

「何をどうやったらそうなるのかしら」

 

「……当時から変態」

 

 私が嘆息すると同時に小猫も痛烈な一言を送る。

 

「いやあ、当時からおっぱいに興味あったんですけど、咄嗟に出たのがそれだったんですよねー」

 

 あはははーと軽く笑うイッセー。

 

 それを見て、皆軽くため息を付く。

 

 ――やはり、イッセーはイッセーなのだと。

 

「それで、どうしたのですか?」

 

 朱乃がイッセーに続きを促すと、イッセーは話を再開する。

 

「えっと、俺が叫んだ瞬間、兄貴は固まったんですよね。で、十秒ほど止まって『…………は?』って言ったんすよ。で、もう一度俺がおっぱい好きですか!? って聞いたんですよ」

 

 それからはこうだ。

 

 あまりの事にカレンは呆れたようにため息を付いて、その場を去ったらしい。

 

 で、次の日にもう一度公園に行くと、カレンはのんびりとベンチに寝そべって昼寝をしていたらしい。

 

 イッセーが近づくとカレンは直ぐに起きて、イッセーを睨み付けた。

 

『何の用だ』

 

 低く、まるで全部を拒絶するようなそんな目をしていた。

 

 だが、イッセーは不思議と、怖くなかったらしい。昨日怖がっていたのが、不思議だったと言う。

 

『なあなあ、あんた女の人のおっぱい好きか?』

 

『あ?』

 

 それからイッセーは良くカレンと話をするようになったらしい。

 

 最初は鬱陶しそうにしていたカレンも数日経つと、根負けしたようにイッセーと会話するようになってきたらしい。

 

 そこからちょくちょく遊ぶようになってきて、親同士も交流を持つようになったという。

 

 そこで驚いたのが、イッセーのお母様と日月さまが同じ所でパートのお仕事をしていたと言うのだ。

 

 そんな事もあって、両家は家族ぐるみでの付き合いを始める様になったと言う。

 

 イッセーの家族との交流を深めていく中で、カレンも大分落ち着いてきたのだが、カレンに、また悲劇が襲う。

 

「叔母さん……日月さんが亡くなったんすよね」

 

 原因不明の病気でこの世を去った叔母様。

 

 一人残されたカレンを不憫に思い、兵藤家に引き取られたのだと言う。

 

 中学にあがったカレンはしばらく不良たちと喧嘩に明け暮れる毎日を送っており、また、イッセーたちも強く言えなかったらしい。

 

「けど、兄貴が中学一年の秋くらいかな、急に喧嘩をしない様になったんすよ」

 

「急に?」

 

「はい、原因は俺も分からなくて、あーでも、何か武術習い始めたって聞きはしましたね」

 

「そう……恋人、とかの話は?」

 

 私は気になっていたことをイッセーに聞く。

 

 それに過敏に反応したのは朱乃と小猫。

 

 朱乃は気付いていたけど、まさか小猫まで……油断ならないわね。

 

 さて、私の質問にイッセーは首を傾げる。

 

「恋人……ですか? いえ、そんな話は聞いたことないっすけど。あーでも」

 

 何かを思い出したようにイッセーは声を上げる。

 

「兄貴が中三で、確か、夏の終わり。そう、丁度今ぐらいの時から、ですかね。何か葬式には出たみたいっす」

 

「葬式?」

 

「はい、それからしばらくずっと無気力に過ごしていて、どうしたのかって聞いても、『何でも無い』の一点張りで」

 

「葬式……」

 

 それが恐らく一番大きく関係しているようね。

 

 これ以上はイッセーからは何も聞けないかしら。後は、カレンから直接聞くしか……。

 

 けど、話してくれるかどうか。

 

 新たな問題に、私は思わず、頭を押さえてしまう。

 

******

 

「何か悩んでいるか?」

 

「は?」

 

 ボンヤリと、車の窓から外の風景を眺めていると、隣に座っていたペルセウスが俺に声を掛けてきた。

 

「何さ、急に」

 

「いや、だから何かを悩んでいるんじゃないのか? と聞いているんだ」

 

 めんどくさいと思いながらも俺はペルセウスの方を向く。

 

「あんたあれか、エスパーか」

 

「ははは、面白い事を言う。俺は超能力は使えんぞ」

 

「そういう意味じゃねえよ」

 

 ああ、面倒なヤツだ。俺は内心ため息を付きたくなる。

 

 自分の膝の上に置かれているケースを見て、今日の事を思い返す。

 

 悪魔の駒の準備が出来たと聞いて冥界に一人で来たときは正直、随分と早い帰還だな、と思ってしまった。

 

 帰るのはもう少し後になるのでは無いかと思っていてので、ほんの少し、ティアたちとどうやって顔を合わせようかとも考えてしまった。

 

 駒は首都で貰うらしく、誰か一人供を付ける様にと、言われた。

 

 供、まあティアたちしかあり得んのだが。

 

 先ず茨木は完全に論外。つうか、こっち来ても未だに火山に居るとか。

 

 後は三人だが、ここは何故かペルセウスに決定していた。

 

 セルヴィアはニコニコと手を振りながら『いってらっしゃーい』と言うし、ティアは頭を静かに下げるだけだった。

 

 結局ペルセウスを伴って俺は首都へと向かった。

 

 そして魔王城で駒を貰う作業を色々とし、拍子抜けするほど簡単に駒を入手することが出来た。

 

 ゼクス兄さんたちに会うかとも思ったが、やはり忙しいのだろう、会う事は叶わなかった。

 

「何か、色々とすんなりといったな」

 

「まあ、前回のシトリー戦での働きが大きく出たな。禁手を使わずに王であるソーナ・シトリーを倒したのだ。大きくプラスされていたなのだろうよ」

 

 成程、だからこそハーフである俺がこんなに簡単に駒を手に入れる事が出来たわけか。

 

「良いや。少し疲れた。直ぐに人間界に戻らんといけないし、色々と考えるのは後だな」

 

「そうか……ま、確かに強行軍ではあったな。それで? 悩みも後か?」

 

「……一気に頭の中に思い浮かんだよ。お前最悪だな」

 

「ははは、問題を先送りにしても意味は無い。結局いつかは来る。ならば、予め覚悟が出来ているうちにやった方が良いと思うけどな」

 

「………………」

 

 分かってはいるが、それを実際に行うとなると、全然なのだ。

 

 未だに引きずっている俺は何時まで経っても変わることが出来ないのだろうな。

 

 ……だけど、今がその時なのかもしれない。数年ぶりに翠に会ったのだ。今会うという事は、つまりそういう事なのだろう。

 

「……ああ、めんどくせーな」

 

 思わずぼやいてしまうが、それでもやる事にはした。

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