ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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第五話

 いつになく家の雰囲気が悪い。

 

 駒を貰い冥界から人間界に戻ってきたら、何か家の様子が変だ。

 

 イッセーやリアスたちも会話こそするが、どこか変な遠慮を感じる。

 

 義父さんや義母さんたちは特に感じないからあいつらが何かしたんだろうけど……。

 

 俺が何を言ってもはぐらかすだけだし、ゼノヴィアや一誠に至っては露骨な話題転換をするし。いや、本当に何なんだろうな。

 

「で、何が起きた?」

 

「あははは、どうして僕に聞くんです?」

 

「お前なら露骨な話題転換はしないだろ?」

 

 悪魔としての仕事をする中、俺と祐斗は部室で二人で話していた。

 

 他の連中全員契約に出ており、俺と祐斗は珍しく依頼が入っていない為、こうやって二人でいるわけだ。

 

「リアスたちから口止めされてんのか? 別に良いぜお前から聞いたとは言わないから」

 

「いえ、そういうわけじゃあ……」

 

「じゃあ言えるよな? 言おうぜ。うん、言え」

 

 ニッコリ笑って祐斗に圧を加えると、祐斗は諦めたようにため息を付く。

 

「カレン先輩の過去について少々イッセー君から聞いたんですよ」

 

「……あ?」

 

 いや、ちょっと待て。何、俺の過去? 俺の昔について一誠から聞いた?

 

 ……何考えてんだこいつ等。あれか? 頭の中に何か湧いてんのか? あ、こら? 

 

「……やっぱり怒ってますよね?」

 

 恐る恐る聞いてくる祐斗を思わず睨んでしまうが、直ぐに目を逸らす。

 

「はあ……」

 

 本当に疲れる。最近マジでやばいな。あれかな、マッサージでも行った方が良いのかな。

 

「……他の奴は兎も角、お前の過去を俺は勝手に聞いた。なら、お前に関しては特にいう事は無い」

 

「別に僕のは特に構わないですし」

 

「あーもー、なら俺も良い。で、どこまで聞いた?」

 

「先輩が中学になった辺りですかね」

 

 ああ、そこか。確かに、あそこが俺の人生を節目でもあったな。

 

 紫水と会ったのは丁度あの頃だったし。

 

 そっか、もう結構経つんだよな。

 

「……あの頃、俺は母様が死んで何もかも嫌になっていたんだ」

 

「…………」

 

 俺の独り言に祐斗は何も反応を示さない。

 

 けど、話を聞いているのは分かる。

 

「そのころ、俺は不良共とやたら滅多に喧嘩してたんだ。それこそ、飽きるかってくらい」

 

 そうだ。今思えば、何て馬鹿な事をしていたのだろう。これが後々の原因になったってのに。

 

「まあ、その後、とある奴に会ってな。そいつのお蔭で大分救われた」

 

「じゃあ、今のカレン先輩がいるのはその人のお蔭なんですか?」

 

「んーまあ、そうかな。後はそいつの祖母(ばあ)さんだ」

 

「祖母さん?」

 

「そ、俺の師匠」

 

 お師匠様、今はどうしているのやら。まあ、あの人がくたばるのは世界が終わるころじゃね? と思えるほどには元気ではあったが。

 

「先輩はその人に剣術をお習いに?」

 

「ああ、結構強かったよ。というか、三年前まで結局一回も取れなかったし」

 

「カレン先輩が?」

 

「あの頃よりはだいぶ強くなったけど、どうかな。今でも勝つイメージが湧いてこないな」

 

 これは単純に俺がお師匠様に対してそんなイメージを抱いているだけなのかもしれないが。

 

「ま、その後色々とあって今は全く寄り付いていないけど」

 

「そうですか……」

 

 俺の言う”色々”が本題だっていうのに、祐斗は踏み込んでこないな。

 

 それはリアスの役目ってか? たく、こいつは。

 

 どこか生真面目な後輩に俺はついつい苦笑を漏らしてしまった。

 

******

 

「おりゃああああああああ!」

 

「…………」

 

 声を上げながら突進してくる一誠。

 

 その身は既に赤龍帝の鎧に包まれており、俺も鎧に体を包んでいる。

 

 背中のジェットを吹かせながら一誠が迫ってくる。

 

 俺も構えを取り、一誠を迎え撃つ準備をする。

 

 直ぐに一誠は俺に接近し、拳を振りかぶる。

 

 俺は拳の勢いを殺さない様に軽く一誠の腕を上に軽く殴る。

 

「うえ!?」

 

 いや、別に上に殴ったからってそんな事言う必要ないぞ?

 

 そんな事を心の中で突っ込みながら俺は一誠の懐に入り、逆にボディブローをぶちかます。

 

「ぐふ……」

 

 拳はめり込み、鎧にひびが入る。

 

 そのまま拳で押し込んで少し距離を取る。

 

 そして右で回し蹴りを食らわせる。

 

「うおおおおおおお!?」

 

 叫び声を上げながら飛んでいく一誠。

 

 む、少しやり過ぎたか?

 

『問題ないでしょう。仮にも赤龍帝の鎧を身に纏っているんです。あれしきの攻撃で死んでいたらそれこそ笑いものです』

 

 お前は本当に二天龍に対して厳しいな。

 

『さて、何の事だが』

 

 まあ、良いけど。

 

 飛ばされた一誠に近づき、声を掛ける。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「……飛ばした人が何を言ってんだよ。いてて」

 

 起き上がった一誠だが、声からして本当に問題なさそうだな。

 

「お前こそ馬鹿か。馬鹿正直に突っ込んでくるか。あれは相手の意表は付けるけど、それは戦闘を継続していた時だ。分かった馬鹿」

 

「馬鹿しかいえねえのかよ!」

 

「何だ? やるか? ほらほら、来いよ」

 

「この!」

 

 煽りながら俺は翼を使って空を飛ぶ。

 

「あ、汚いぞ!」

 

「悔しかったらお前も空を飛んでみろ」

 

 一誠も直ぐにジェットを使って空に居る俺を追いかけ始める。 

 

 俺の様に自由に方向転換できるわけでも無く、一誠は直進して、俺に躱されるたびに途中で止まって方向転換している。

 

 さて、俺たちが何をしているかというと、単純な話、修行だ。

 

 元々やってはいたが、現在はより本格的に、夏休みの修行と同じ程度には皆が励んでいる。

 

 俺と一誠は現在、禁手状態での模擬戦を行っていた。

 

 鎧という頑丈なものに包まれているせいか、俺達は二人とも本気でやり合っていた。

 

 最も、戦闘という点では一日の長のある俺が一歩どころか二歩から三歩もリードしていた。

 

 とはいえ、一誠の瞬間的な爆発力は目を見張るものがあるし、何より気迫が凄い。

 

 そう、凄いのだが……。

 

「ぜえ、ぜえ……」

 

「この持続力の無さが問題だな」

 

 地面に横たわり、息を吐いている一誠を見て俺はため息を付く。

 

「十五分。今回の鎧を具現化出来ていた時間だ。相も変わらず遅いぞ」

 

「分かってる、よ……」

 

 何度も息を吐きながら答える一誠。

 

「相手が逃げの一手を取ってきたら、お前は大分不味いな。能力的には倍加すれば大抵の奴には勝てると思うし、そこは問題ないけどやっぱ継戦能力が無きゃ長期戦は無理だな」

 

「……やっぱそうだよなー」

 

「まあ、でも最初に比べて大分伸びてきただろ。才能無い無いって言われてるけど、案外そうでも無いかもな」

 

「ホント?」

 

「ああ、根性だけは才能があると思うぞ」

 

「根性だけかよ!」

 

「いやいや、根性は馬鹿に出来ないぞ。何事においても必要な事だ」

 

 お師匠様も言っていたが、何事にも継続してやろうとし、諦めない気持ちが重要なのだ。

 

 その点、一誠はそれがちゃんと備わっている。今後において必要になってくるだろうからな。

 

「しっかし、ここは良いね。周りに気にせず戦える」

 

 俺は広大なこの空間を見渡す。

 

 この空間は上から貰った異空間に作られた修行専用のフィールドだ。

 

 レーティングゲームでそれなりの成果を見せた俺たちへのプレゼントというわけだな。

 

 これと同じものをバアルとダンタリオンも持っていると言う。

 

 ……ダンタリオンに関しては確かもう直ぐシトリーとやるだけでまだゲームはやっていない筈だ。

 

 そのくせして俺たちと同じフィールドを持っているんだから変なもんだ。

 

 それだけ期待されているわけって訳か。

 

 バアルとツートップとは聞いているが、どれだけの実力やら……。

 

 まあ、シトリーが先に戦うから後から試合映像でも見たらいいか。

 

 そういやあ、他の連中はどうなってるかな?

 

 直ぐ近くで剣で斬り合っている祐斗とゼノヴィアの方を見る。

 

 お互いに聖魔剣とデュランダルを手に真剣に斬り合っている。

 

 パワーで押すゼノヴィアに対し、祐斗は守りながらもフェイントを掛けながらカウンターで相手を狙っている。

 

 ゼノヴィアも前回のゲームでカウンターでやられたんだからそこは警戒していると思うんだが。祐斗もそれを分かってそんな戦い方をしているんだろう。

 

 聞くところによると、デュランダルは祐斗も扱えたそうだが、祐斗の方が制御を出来ていたらしい。

 

 まあ、だからといってデュランダルを使うのはゼノヴィアだ。あれ程の大剣は祐斗には似合わないしな。

 

「カレン」

 

 休憩中か、リアスが近づいてきた。

 

「どう、調子は?」

 

「まあ、ボチボチかな。一誠のタイムもだいぶ伸びてきた。そっちは?」

 

「朱乃と二人で魔力を高め合っているわ」

 

 堕天使としての力を解放した朱乃。その力は飛躍的にアップしており、リアスも苦戦することが多くなっているようだ。

 

「みんな、各々がパワーアップをしているようだな」

 

「そうね……」

 

 リアスの方を見ると、何か言いたげだ。

 

 いや、まあ、理由は何となくだが見当が付いている。

 

 だからこそ、最近俺に対してぎこちないんだろうけど。

 

 それはどうも、朱乃や小猫にも言える事で、俺との接し方が変だ。

 

 ……ああ、何とまあ面倒な状況になってきたね、どうも。

 

「ねえ、カレン」

 

「ん?」

 

 話しかけてきたリアスだが、何か葛藤するように口を開いたり閉じたりしている。

 

 何だ、一体。

 

 俺がジッと見ていると、やがて決心がついたのか、意を決した表情になり、こう告げた。

 

「私とデートなさい!」

 

「……はい?」

 

******

 

「で、どう思うよ男子諸君」

 

「何が」

 

「リアスが俺をデートに誘った事だ」

 

「行けば?」

 

「何でさ」

 

「何でって、え、行かないの!?」

 

「本気ですか?」

 

「ま、不味いと思いますぅ」

 

 一誠と祐斗、そしてギャスパーが信じられないもの見る目でこっちを見て来る。

 

「やっぱ行った方が良いか?」

 

 俺が聞くと三人が同時にうなずく。

 

 さて、リアスにデートに誘われた訳だが、返事をする前にリアスがどっか行っちまったから仕方なく、修行を終えた後に男衆で話をしているのだ。

 

 まあ、当然内容はリアスが俺をデートに誘ってきたことだ。

 

「兄貴、何でそんなに行きたがらないんだよ? 何か理由でもあるんのかよ」

 

「理由?」

 

 理由。理由か。

 

 確かに、無いわけでも無い。けど、それを話すことは過去について話すことでもある。

 

 今更だから話す事には問題ないのだが、本音を言えば、一番最初に話す相手はあいつが良いしな。

 

 ……だったらデート受けたほうが良いんだろうな。

 

「先輩、受けたほうが良いかと……。ここで断ったら部長もどうなるか分からないですし」

 

「そ、そうですうぅぅぅ! 部長が本気で怒ったら怖いですよぉぉぉぉ!?」

 

 いや、まあ、そうなんだけどな。

 

「受けるしか、無いのかな」

 

 俺の呟きに三人同時に頷くのであった。

 

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