ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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第六話

 日曜日。

 

 雲一つない、実に晴れやかな天気だ。のんびり散歩をするのも良し。どこかに遊びに行くのも良し。

 

 ……デートするも良し。

 

「いやあ、無いわー」

 

 何やってんだろ俺。今更ながら今の自分のテンションの低さに自分でも驚いている。

 

 リアスとのデート。それが今日の俺の予定だ。

 

 一応、一緒の家に住んではいるんだが、何故か外で待ち合わせをしてからするという事になった。

 

 あれか、雰囲気的なものを大事にするあれか? まあ別に良いが。

 

 ショッピングモール近くの噴水広場の近くの椅子に俺は腰かけていた。

 

 因みに服装は適当だ。いやまあ、男子組に相談に乗ってもらいながら服を選んだが、それでもおしゃれとは程遠い感じかな。

 

 何気なく俺は広場の時計を見る。

 

 時刻は一時ちょっと前。一時丁度に約束をしていたから少し早めにこっちに来たけど、リアスも、もう直ぐ来るかな。

 

「……お、お待たせ」

 

 ボンヤリとしていると、後ろから声が聞こえてきて、そちらを向くとリアスが……立っていた?

 

「ま、待たせちゃったかしら? ごめんなさい」

 

「…………」

 

 声が出なかった。

 

 普段からリアスは美人だと思っている。普通に制服を着ているだけでもそれは分かる。

 

 まあ、何が言いたいかと言うと、そんな美人なリアスが化粧などをして、綺麗に着飾ったらどうなるか。

 

 ――めちゃくちゃ美人じゃん!

 

 思わず顔を背ける。

 

 あっれー? リアスってこんなに化けるの? 化粧を軽くするだけで? え、マジで? 化粧をした姿なんて冥界でも見たのに何で今日はこんなに美人に見えるのさ。訳わからんぞ。

 

 くそう、従姉妹だからって甘く見ていたか? ぶっちゃけ紫水よりも可愛いと思っちまった。いや、別に紫水が劣っているって訳じゃ無いぞ。あいつはあいつなりの良さがあったし。

 

 というか、そもそも何でこんな事を考えているんだ俺は。まあ理由は分かってるけど。ああヤバい何だか思考が完全にパニくってる。メンドくせー。

 

「カレン?」

 

「はっ!?」

 

 リアスに話しかけられて我に返る。

 

 見ればリアスが不安そうな顔をしている。

 

「や、やっぱり変だったかしら? 朱乃達に相談に乗ってもらいながら色々と決めたのだけど……」

 

 それで変って朱乃達も変、って事になるが……。

 

「いやいや、あんまりに綺麗だったんでびっくりしていただけだよ。正直、舐めてたな」

 

「綺麗? そう、綺麗なのね……」

 

 照れたように頬を染めるリアス。

 

 何だこりゃマジで可愛いな。やばいやばい。

 

「えっと、取り敢えず行くか? どこ行くんだっけ?」

 

 話題を変える為、俺はリアスに聞く。

 

 今日のデートに関してはリアスに一任しているから俺はリアスの言う通りに動く様になる。

 

「え、ああそうね。ちょっと待って」

 

 リアスは慌てたように肩に下げていたバックからメモ帳を取り出し中を確認し始めた。

 

「えと、先ずはそうねここに行きましょう!」

 

「あ?」

 

 メモ帳を突き出されて俺はその内の一ページを見る。

 

 そこには『オススメ!!』とデカデカと上に書かれており、下には何かしらの店の名前が書かれている。

 

「何だこの店? 聞いた事無いけど」

 

「最近できたらしいわ。何でもここのケーキすごく美味しいらしいわ」

 

「ケーキって、何というか女性はケーキとか甘いモノとか本当に好きだよな」

 

「あら? 貴方だって好きでしょ?」

 

「まあ、否定はしない」

 

 甘いモノとか良く食べるしな。

 

 とはいえ、女みたいに休みのごとにメルヘンな店に行って食べる程では無いと、自分では思っている。

 

「てか、出来たばっかでケーキも美味しかったら混んでじゃねえのか?」

 

「そこは抜かりないわ。しっかりと前もって予約を入れておいたわ」

 

「予約?」

 

 え、何ケーキ屋で予約なんてあるの? それがちょっとびっくり何ですけど。

 

「けど、その予約も良く取れたな」

 

「それはまあ、色々とね」

 

 ニッコリと笑みを浮かべるリアス。

 

 ……もしかしなくても悪魔としての力が関係しているのだろうな。何せこの町はグレモリーの管轄だ。ケーキ屋の予約などお茶の子さいさいだろう。

 

「予約出来ているなら良いか。じゃ、行くか」

 

「ええ。あ」

 

 頷いた瞬間に何かを思い出したように声を出すリアス。

 

 そして恥ずかしそうにもじもじとし始める。

 

 何だよ急に。可愛いじゃねえか。

 

「えっと……手を繋いでも良い、かしら?」

 

 上目遣いをしながら俺の方を見るリアス。

 

 …………。

 

「……ん」

 

 俺は手を差し出す。

 

 それを見たリアスはホッとした顔になり俺の手に自分の手を重ねた。

 

 俺はそのまま手を握る。

 

「あ……」

 

「行くか」

 

「え、ええ」

 

 しっかりと握りながら俺たちは歩き始める。

 

 考えてみれば、誰かとこうやってしっかりと手を繋ぐなんて紫水以来か。そう考えると全然握っていないのかな。

 

 いや、別にそもそもそれが普通なのかな? 良くは分からないけど。

 

 ともかく、久しぶりのデートってやつだ。まだ心が晴れたわけじゃあ無いけど、それでもいい加減強引にやる必要もあるのかもしれないな。

 

******

 

「うーん、美味しいわね」

 

 ケーキを口の中に入れながらリアスが幸せそうに言う。

 

 それを尻目に俺もケーキを口に入れる。

 

 ……確かに上手い。甘いだけでなく、他の素材の味もよく引き出されており、お互いにマッチしている。

 

 にしても。俺は辺りを見渡す。

 

 日曜と言う事もあって店内は満席だ。店に来た時など、店からはみ出て行列が出来ていたのを見ると流石に驚いた。

 

 そんな行列を通り過ぎながらリアスが店の前に立っていた店員に声を掛けると、予め分かっていたのか最上級の笑顔を向けられながら店内に案内された。

 

 他の客もマナーがちゃんとなっているのかこちらに不躾な目を向けては来なかったが、流石に紅髪二人は目を引くようで、チラチラとこちらに視線を寄越していた。

 

 もう一つ、店内に居る男は圧倒的に少なく、客だけならば俺を含めて三人。店員を含めるならば四人だけだった。後は皆女同士で来ているみたいだ。

 

 店内は十数人は居ると言うのにその中で男が四人だけってどうなのよ。流石に肩身が狭い。

 

 それでもケーキの味は分かるのだから俺もそこそこ図太い方なのかもしれないけど。

 

「しかし、見事に女ばっかりだな。所謂ここはカップルの専用って訳じゃ無いのか?」

 

「そうみたいね。内装を見て分かると思うけど女性を主にターゲットにしているからでしょうね。まあ、それでも居る事に居るみたいだし、変に気にしなくても良いと思うわよ?」

 

「いちいち人の視線を気にするのはもう中学で辞めた。問題ないさ」

 

 昔は過剰に反応し過ぎていたのだろう。今は特に反応しない様にしては居るけど……。

 

「知ってるだろうが、俺は兎に角俺を馬鹿にするやつが許せなかった。だから結構やらかしていた」

 

 今でもよく思い出せる。目につく敵は全部殴り飛ばしていた。

 

 小学生にしては力が強いとは思っていたが、まあ悪魔のハーフだったから当然だろうけど。

 

「今は思えば、本当に子供だったなって思うよ。自分でも、短気だったと思うし」

 

「……私は当時の貴方の苦しみは分からないな。けど」

 

 一旦言葉を切り、リアスは俺の方を見て微笑む。

 

「少なくとも今の貴方には私たちが付いている。だから大丈夫よ」

 

 ……やばい、ちょっとグッと来たな。

 

 紫水。お前がいなくなってから俺はもう立ち直れないと思っていた。正直、今のままだとその通りだろう。

 

 だけど。だけども。

 

「……本当に潮時なのかもな」

 

「? 何か言った」

 

「いや、何でも無い。さ、ケーキ残り食べようぜ。その後にも行くところあるんだろ?」

 

「ええ、今日は沢山考えてきたもの。全部やらなきゃ」

 

 それは楽しみだ。リアスが考えたプランはどうなるのやら。

 

******

 

「……どんだけ回れば良かったんだよ」

 

 最初の集合場所の噴水広場のベンチで俺はぐったりとしていた。

 

 疲れた。兎に角そう感じた。

 

 リアスの行動力を舐めていた。

 

 ケーキを食べた後、あちこち色んな場所に出かけた。

 

 ボーリングは数ゲーム。リアスがあそこまで上手いとは。ストライク以外全く出さねえ。ありえねえー。

 

 その後に行ったカラオケもそうだ。プロ顔負けの上手さだった。

 

 前々から多才なヤツだとは思っていたが、ここまでとは。正直悔しい。カラオケに関してはまあ、それなりだと思ってはいたんだが。

 

 カラオケの後もバッティングセンターやゲーセン等に行ったが、流石にそこまで負けはしなかった。最も、リアスは随分と悔しそうだったが。

 

 こんなに遊んだのも何時以来だろうか。そもそも、高校になってあまり友人の出来なかったから遊ぶと言う事を全然していなかったと思う。偶に一誠何かと遊ぶ事なんかもあったが、それはあくまで兄弟同士だからノーカンだな。

 

 誰かと遊んだのも多分紫水で最後だ。

 

 本当ならあの夏休み最後の日が…………。

 

「カレン、お待たせ……どうしたの?」

 

 自動販売機で飲み物を買ってきたリアスが戻ってきた。

 

 手にはジュースが二本。俺は一本を貰い、キャップを開ける。

 

「いや、昔の事をな……」

 

 中身を一口飲み、一息つく。

 

「子供の頃俺は兎に角周りに八つ当たりをしていた。それこそ、何のためにやっていたかは分からないほど」

 

 あの日の事は良く覚えている。雨がそれこそ滝の様に振っている中、母様に抱きかかえられながらあの曇天を見上げていたあの日を。

 

 それからの生活は貧しかったけど、母様と一緒だったから耐える事が出来た。 

 

「だけど、自分の髪を馬鹿にされるのはどうしても嫌だった。まるで、自分の事を全否定されているようでな」

 

 気づいたら手が出ていた。一度始まったらそこからはずっと歯止めが効かないままだった。

 

 何度か母様に窘められたこともあったけど、それでも髪とかを馬鹿にされると我慢が出来なかった。

 

「母様が死んで、正直荒れた。その頃は一誠と会って少しは落ち着いたんだが、またな」

 

 中学に入ってからは不良との喧嘩に没頭。義父さんや義母さんには随分と迷惑を掛けちまったものだ。今でも申し訳ないと思っている。

 

「で、喧嘩に明け暮れる中で、あいつに会ったんだ」

 

「あいつ……?」

 

「寿紫水。俺よりも一学年上で……俺の恋人だった」

 

「…………」

 

 リアスが息を呑むのが聞こえた。

 

 言った。遂に言ってしまった。

 

 もう歯止めは効かないぞ。

 

「紫水が俺をこっち側に戻してくれた。紫水がいなきゃ正直どうなっていたか分からない。それくらい、恩もあるし、感謝している」

 

 初めて会ったのは路地裏で喧嘩していた時だった。

 

 同じ中学生をボコボコにしていたら、後ろから声を掛けられたのだ。

 

 ――貴方が『赤鬼』? 成程、確かに鬼ね――

 

 紫水は兎に角強かった。実家が武道の道場をやっていたためか、滅法強かった。

 

 俺が何度挑んでも傷一つ付けられることなく、俺は地面に伏していた。

 

 ――貴方見どころがあるわ。ねえ、私と来ない?――

 

 しゃがみ込んで俺の顔を覗き込む紫水の顔は実に楽しそうだった。

 

 それからはずっと道場に通いぱなっしだった。

 

 お師匠様――紫水の祖母はあんな皺くちゃな癖に紫水並に強いと言う。当然ボコボコにされるという事を何度も繰り返した。

 

 今思えば、あの二人は俺の鼻っ面を徹底的に叩き折る事を目的としてた気がする。お蔭でその後の修行もすんなりと俺は受け入れていたし。

 

 修行のお蔭で俺は喧嘩することは無くなった。自分の中にある持て余していた力に方向性を付ける事が出来たからかもしれない。

 

「母様が死んでから、漸く楽しい事が見つかった。それからの毎日は本当に楽しかった」

 

 反発することもあった。だけど、それも含めて本当に楽しかった。

 

「紫水と付き合い始めたのは出会ってから一年経ったくらいかな。そんであいつに初めて試合で勝った時こう言われたんだ」

 

 ――貴方はあたしと付き合う権利を得たわ! さあ、私と付き合いなさい!――

 

 

 

 

 

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