ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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ゴールデンウイークはバイト尽くしだったなー。マジで疲れた。

最近、マジで戦闘描写が駄目になっている。どうすりゃあ良いかな。


第十一話

「で、本当に何で来た?」

 

「だから貴方が心配だって言ったでしょ」

 

 それは分かってるが……。ああ、もう。

 

 俺たちは機械が所狭しと並んでいる場所を二人で歩いてた。

 

 本当は一人で良かったのに、何だってこいつが来てるんだか。

 

「しかし、ここは随分と長いな。どれだけの広さだか」

 

 先ほどのフィールドよりもずっと長い。歩けど歩けど、ゴールが見えてこない。

 

 走った方が良いのであろうが、何故か、歩いた方が良いという感覚が俺の中にある。

 

 翠の事を思えば走ってでも行くべきなのに、何故だろうか。

 

「……ねえ、カレン」

 

 無言でしばらく歩いていると、リアスが話しかけてきた。

 

「貴方とあの子……翠との間に何があったの?」

 

「…………」

 

「あの子は貴方を恨んでいる、とは一概に言えないけど、何か複雑な感情を抱いているのは確かだわ。少なくとも簡単なものでは無い。そうでしょ?」

 

「…………」

 

「無理に話したくないのなら聞かないけど、ああいや、違うわね。聞きたいわ、私は。貴方が何を抱えているのか。何に対して罪悪感を抱いているか」

 

 罪悪感、か。

 

 確かに、俺は翠に対して負い目らしきモノを感じている。

 

 だけど、それだけじゃないんだよな。それだけじゃ。

 

「どこまで話したっけ?」

 

「貴方が紫水さんと付き合い始めて、二年くらいで終わったって」

 

「そうか、そこらへんか」

 

 静かに話し始める。

 

「俺が中学三年の頃、一つ上の学年だった紫水は駒王学園に入学していたんだ」

 

「駒王学園に?」

 

「ああ。だから、俺も駒王学園に入学しようとしていた」

 

 勉強自体は特に問題は無かったと思う。余りいい成績では無かったが、紫水が勉強を見てくれていたお蔭で何とかやれていたからな。

 

「そんで、夏休み最後の日に、紫水は俺を祭りに誘ったんだ」

 

 それが終わりの始まりってやつだった。

 

「待ち合わせをして行こうって話になって、俺が少し遅れそうになった」

 

 だからこそ、急ごうと走っていたのだ。

 

「そしたら、誰かとぶつかって、直ぐに謝ろうとして、そいつの顔を見たら、覚えがあってさ」

 

 あちらもこっちの事を覚えていたらしく、驚いた顔をしていた。

 

「そいつ、俺が昔ボコしたヤツの一人だったんだ。いやあ、びっくりした。しかも俺にやられた恨みを忘れていなくて襲い掛かってきたんだ」

 

 昔なら相手をしていたが、当時の時点で俺はもう喧嘩はしないと決めていたから逃げる事にした。途中で紫水に遅れる事をメールで伝えた。

 

「何とか巻いて待ち合わせ場所に行ったら」

 

 一回大きく息を吸う。

 

「もう、紫水は死んでいた」

 

「…………」

 

 リアスは息を呑む。

 

「事故、だったそうだ。暴走した車が歩道に突っ込んで、紫水を含めた五人を巻き込んだ大惨事だった」

 

 今でも直ぐに思い出せる、あの光景は。

 

 悲鳴や怒声。野次馬なども大勢居て辺りは大混乱だった。

 

 そんな中を俺は人ごみをかき分けながら進んだ先に居たのは。

 

「血塗れで倒れていた紫水だった」

 

 体中が血で染まっており、着ていた浴衣など元の色が分からないほどだった。

 

 俺自身、暫くそこから動くことも出来ず、正直、その前後の記憶はあまり残っていない。

 

「俺の所為だったんだ、紫水が死んでしまったのは」

 

 俺が昔の因縁で絡まれず、遅れなかったら紫水とそのまま祭りに出かける事が出来た。

 

 俺の今まで行いのツケが纏めて払わされた。

 

「その事を俺は正直に話した紫水の両親やお師匠様は許してくれたけど、翠は違った」

 

 ――あなたの所為で姉さまは死んだ!――

 

 あいつの通夜の時、翠は俺の頬をひっぱ叩きながらそう言った。

 

「まさしくその通り。俺が悪い。俺の行ってきたことが紫水を殺した。――俺が殺した」

 

 あれ以来、道場には顔も出せず再び無気力な毎日を送ることになった。

 

 だけど、それもある種の俺への罰なのかもしれないが。

 

「良く夢を見るよ。あの日の出来事。何度やり直しを望んだ事か。夢の中で、紫水の手を取ろうとした瞬間に、夢は覚める。俺は夢の中でさえ、紫水を助ける事は叶わないって訳だ」

 

 大きく息を吐く。

 

「これが俺の罪。俺の懺悔ってヤツだな」

 

 一先ずは全部吐き出した。余り思い出したくなかったものも何とか口にすることは出来た。

 

 さて、これを聞いてリアスがどう反応するか。

 

 貴方の所為じゃない。貴方は悪く無い、何て言うか。はたまた。

 

「カレン、貴方はどうして彼女を助けようとするの?」

 

「……」

 

 全くノータッチの所からの質問だった。

 

「何で、って言われてもなあ。妹分だから、かな」

 

「貴方の事を嫌っているのに?」

 

 何だ、何が言いたいんだこいつ。

 

「あいつが嫌っていようとも関係ないさ。俺が助けたいから助ける。それだけだ」

 

「そう……」

 

 それっきり、リアスは黙ってしまった。

 

 何なんだ本当にもう。

 

 それから暫し無言で歩く俺たち。

 

 そんな中、再びリアスが口を開く。

 

「カレン、大切な人を多く失った貴方の苦しみは私は少ししか分からない」

 

「…………」

 

「でも、私でも分かるわ。少なくともあなたの恋人だった紫水さんは貴方やあの子が苦しみ事は望んではいない筈よ。貴方だってそれは分かっているでしょ?」

 

「それは……」

 

「貴方は自分が苦しむ事で紫水さんが亡くなった苦しみから逃れようとしている。翠と向き合う事を拒絶しているのでしょ?」

 

「っ」

 

「だから、翠って子は貴方に対してあれだけの怒りを持っている」

 

 ……そういう事なのか? 翠が俺を憎んでいるのは。

 

「まあ、これはあくまで私の推測だから分からないわ。――だから、会って話しなさい彼女と。ちゃんと目を見て」

 

******

 

「やあ、待っていたよ」

 

 狭い道を長い事歩いた後、俺たちは再び広大な場所に足を踏み入れていた。

 

 そこに居たのはいつもの微笑を浮かべたルーファス・アガリアレプトと不健康そうな顔をしているワイズマンと呼ばれている女。

 

 そして、

 

「翠……」

 

 俺の呼びかけに反応せず、ただだらりと幽霊の様に立っているその姿は幽霊を思わせる。

 

「剣聖はどうだったかな? 私たちの研究の中ではそこそこの作品何だが」

 

「作品?」

 

「ああ、あれは作ったんだよ。とある高名な魂を生前彼が使っていた鎧に定着されてね。いやあ、あそこまでの形にするまで時間が掛った」

 

「な、あれ程の力を持っている者を自分の駒にしたっていうの? 一体どれだけの力を使って」

 

 ルーファスの言葉にリアスが驚愕する。かく言う俺もそうだ。

 

 元々出鱈目なのはさっきの戦いでも分かっているが、あれを作った? どんなやり方を使ったんだか」

 

「まあ、それは今は置いておいて、だ。こっちの彼女に集中してもらおうか」

 

 そういうと、ルーファスは魔方陣を手元に展開させて何かを取り出す。

 

「神星剣、だと?」

 

 ルーファスが使っていたモノで無い。それは別物だ。

 

 黒く。どこまでも黒く澄んだ色の刀身をしている。

 

冥王の砕剣(プルトーネ・グラディウス)。私が所持している神星剣最後の一本だ。とくと味わうと良い」

 

 そう言った瞬間に、俺は火星の崩剣を取り出し構える。

 

 そうしたときにはもう、翠は剣を振りかぶって俺の目の前に来ていた。

 

 神星剣同士がぶつかる。

 

 瞬間、剣聖の時と同様か、いやそれ以上の衝撃が辺りに広がる。

 

「きゃあ!?」

 

 その衝撃をもろに受けたリアスが吹き飛ぶ。

 

「リアス!?」

 

 俺は思わずそっちの方を見る。

 

「――何処を見ているんですか」

 

「っ!」

 

 ゾッとするような低い声。視線を翠の方に戻す。

 

「何であんな女の事を心配するんだ。何で私を見ない。何で何で何で何で何で何で何で何で何で!!」

 

 癇癪を起こした子供の様に翠は叫ぶ。それに呼応するように翠の神星剣も輝きを増す。

 

 翠が俺の顔を覗き込む。

 

 思わず、息を呑む。

 

 何も浮かんでいない。

 

 俺が想像した怒り、憎しみ。そう言った感情が何も浮かんでいない。空虚な表情だ。

 

 だからこそ、余計に怖い。

 

「翠……」

 

 思わず、名前を呼ぶ。

 

 すると、空白だった翠の表情はゆっくりと笑みが浮かんできた。

 

「名前で呼んでくれた」

 

「は?」

 

「呼んでくれた呼んでくれた呼んでくれた呼んでくれた呼んでくれた呼んでくれた!!!!」

 

 ……どうなってやがる。

 

 壊れた機械の様に同じことを何回も呟く翠。最早、何が何だか分からない。

 

 どう考えても何かされたとしか思えない。

 

「ルーファス・アガリアレプト! 翠に何をした!」

 

 事の元凶の男に罵声を上げる。

 

 どう考えてもこいつだ。じゃ無きゃ翠がこんなんになるわけが無い。

 

 しかし、ルーファスは変わらず笑みを浮かべるだけだ。

 

「確かに私は色々と調整はしたが、そこらへんは彼女自身だよ」

 

「何?」

 

「だから、今まで抑圧していた感情が一気に出てきたって感じじゃないかな。いやあ、人間は怖いね。愛で世界を滅ぼす! 何てね」

 

 これが翠自身って。

 

「うお!」

 

 動揺した瞬間を逃さず翠は一気に踏み込んでくる。

 

 俺は受け流し翠に斬りかかろうとし、剣を直前で止める。

 

 それを見逃さず、翠は凄まじい勢いで斬りかかってくる。

 

「ちぃ!」

 

 剣聖ほどでは無い。確かに動きは凄まじいが、あいつの剣は最早笑うしか無い程だ。

 

 確かに翠は俺が最後に手合わせしたときよりもずっと強くなっている。俺と会わなくなってからもずっと鍛錬していたのだろう。

 

 だけど、それでも俺にまだ届いていない。

 

 元々の地力の差もある。翠は純粋な人間に対して俺は元悪魔のハーフで現在は完全な悪魔だ。

 

 その時点でもう駄目だろう。恐らく、直ぐにでも決着をつけられる筈なのだが。

 

「くそったれめ」

 

 毒づく。翠の神星剣。冥王の砕剣だったか? 能力が良く分からん。

 

 神星剣には各々固有の能力があると聞くが、それなのだろう。

 

 翠の神星剣に斬りかかる。

 

 するとどうだ、そのまますり抜けやがった。

 

「またか!」

 

 剣を振りかぶってがら空きになっている胴体部分に翠は剣を構えたままもぐりこんでくる。

 

 翠は小柄な体格であるから、普通の立会いならば、俺の方が有利なのだが、今はそんな事を言ってる場合じゃない。

 

 翠の体格に合わせて神星剣の形状も変化しているからつまり俺にすでに切っ先が迫っていて。

 

「うおお!?」

 

 咄嗟に俺自身の神星剣を逆手に持って、その剣先を伸ばす。

 

 伸びた俺の神星剣は翠の神星剣にぶつかり、軌道を逸らそうとする。

 

 完全には逸らすことは出来ず、俺のわき腹を抉ってくる。

 

「うぐ……」

 

 思わず声が出る。

 

 相も変わらず神星剣で傷を負わされると無茶苦茶に痛い。どの種族に対しても天敵成り得る能力を保有しているのだから当たり前と言われたらおしまいだが。

 

 反撃として俺は左の手のひらに魔力の波動を生み出し、そのまま翠にぶつけようとして――途中で再び止めてしまった。

 

 それを見逃すはずも無く、翠は握りこぶしを作り、俺のがら空きの腹に拳をねじ込んできた。

 

「ぐふっ」

 

 口から何か出ちゃいけないもんが出た気がする。

 

 つか、翠のヤツ腕が上がってんなやっぱ。的確に、ねじ込んで、来て。

 

 苦し紛れに神星剣を振る。

 

 当然翠はそれを難なく躱し、後ろに後退する。

 

 俺は痛む腹を抑えながらチラリとリアスの方を見る。

 

 さっき吹き飛ばされてどうなったか心配だったが、大丈夫なようで頭を振りながら何とか立ち上がろうとしているのが見える。

 

「――誰を見ているんですか」

 

「おっと」

 

 流石にもう予想が出来る。気配を消して近づいてきた翠に俺は神星剣で防御する。

 

 何となくだが、今の翠の状態が分かってきた気がする。

 

 どうやら本当に洗脳とかは受けているようには思えん。いや、何かしらの暗示的なものは受けているんだろう。じゃ無きゃ、この暴走状態が説明が付かない。

 

 そしてもう一つ分かったことがある。

 

「どうしたもんか」

 

 俺は、翠を傷つける事が出来ないらしい。

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