ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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はい、遂に一カ月以上丸々放置でした。実習が六月に集中してそちらに手一杯になってしまったのが大きな理由ですが。

一先ずひと段落したのでまた更新していきたいと思います。


第十二話

 今、現在俺は自分の認識について大いに変更を余儀なくされている。

 

 自分でも何だが、俺は基本的に戦うときは女であろうと容赦はしない。

 

 レーティングゲームとかだったらまあ、顔はなるべく狙わない様にはしているが。

 

 俺の周りの女はやらた滅多に強いというのも大きな理由の一つだが。

 

 で、何が言いたいのかと言うとだ。

 

「どうすっかなあ、と!」

 

 魔力の波動を数発翠に向けて撃ちこむ。

 

 それなりの威力はあるが、しかし普段の俺ならばもっと強力な威力を出せる筈だが、何故かこうなってしまっている。

 

 当然、神星剣を持っている翠には効かず、あっさりと神星剣で払われてしまう。

 

 それを見た俺は嘆息する。

 

 何故だろうか。今一実力を発揮できていない。どうしたものか。

 

『貴方が存外女々しいだけでしょう』

 

 何だとコラ。リンド、最近黙っていることが多かったと思ったらそんな事を考えていたのか。

 

『黙りなさい。昔の女に情けを掛けている時点で間違っていないでしょう』

 

 誰が昔の女だ!? アホか! 翠は俺の女でもなんでも無いわ!

 

『貴方の事を好いているのは確かでしょ?』

 

 それは、そうかもしれんが。でも俺の女じゃねえよ!?

 

『ごちゃごちゃとうるさいですね。……めんどくさい』

 

 おま、めんどくさいとは何だ!?

 

『どうでも良いですが、来ますよ』

 

「っ!?」

 

 翠が再び接近してくる。

 

 俺も負けじと神星剣を使って斬り合う。

 

 高速で動く中、俺の頬に何かが飛び散ってきた。

 

 何だ? 俺は頬に飛び散った物を舌で少し舐めてみる。

 

「……血?」

 

 鉄の味。間違いなく血だ。だが、今は俺は血を流していない。先ほどの剣聖との戦いで出来た傷は殆ど癒え始めている。まだ血がにじんでいるところもあるが、殆ど固まっている。

 

 じゃあ、この血は……。

 

「翠……!」

 

 翠の体を見て俺は絶句する。

 

 翠の体にはあちこちに裂傷が出来ている。そこから血が流れており、俺の頬に当たったのはそれの一部だろう。

 

 いや、そんな事はどうでも良い。

 

 問題は何で翠がこんな風になっているかだ。

 

 どういう事だ。俺は傷つけていない。寧ろ、俺の方が傷つけられそうになっているのだ。

 

『体が付いて行っていないのでしょう』

 

 どういう事だリンド。体が付いて行ってないって。

 

『神星剣は確かに所有者の肉体を極限までに高める。しかし、それはあくまで馴らしていく必要があります。現に貴方だって初めて神星剣を使ったときは疲労で倒れたでしょ?』

 

 あれってそういう事なのか? てっきりルーファスに斬られたときの傷が原因かと。

 

 まあ、今は置いておこう。

 

 問題は翠だ。リンドの言葉通りなら、神星剣の力にあいつの体が耐えられていないって事だな?

 

『ええ、このまま行けば貴方が倒すよりも先に彼女の体が自滅するでしょう』

 

 …………。

 

 改めて翠を見る。

 

 息は荒く、全身を血で濡らし、さながら戦場でずっと戦い続けている戦士……いや、そんなまともなモノじゃないな。狂戦士か。

 

 さて、どうするか。

 

 このままの状態で戦っていたら翠は神星剣の力に耐える事が出来ずに死ぬ。かといって、俺が大人しく翠に殺されるわけにもいかん。

 

 ならば俺の選択肢は?

 

 ……翠を殺す。

 

 その考えはすんなりと出てきた。最も、実践できるかどうかは別としてだ。

 

 今の翠は洗脳を受けているわけじゃないから意識を刈り取れば元に戻るとも限らない。

 

 目を覚ました時に再び暴れだしたら最悪死人が出る。それだけは避けなくてはいけない。

 

 だけど、俺に出来るのか。それが。翠を殺すという事が。

 

 ……俺はあの姉妹を殺すことが運命づけられているとでも言うのか。だとしたらとんでもなく最悪だな。

 

「どうしたんですか兄様。来ないんですか? だったらこっちから言った方が良いですか? 昔からそうですもんね兄様は私と戦うときは全然自分から攻めてこないんですもん」

 

「…………」

 

「だんまりですか。まあ良いです。そろそろ終わらせましょうか」

 

 そう言うと、翠は冥王の砕剣を頭上に掲げた。

 

 すると、冥王の砕剣は怪しげな輝きを放ち始める。

 

 不味い。あの輝き、さっきの剣聖と同じ――!

 

「リアス、全力で防御を敷け! 今すぐ!」

 

 慌ててリアスに指示を出すも、

 

「――遅い」

 

 翠の方が一足早かった。

 

冥王星の闇帳(プルトーネ・リタース・グローリー)

 

 次の瞬間だ、世界が闇に染まった。

 

「なっ」

 

 何だ、これ……さっきの剣聖のヤツより何だこの異質さは……。

 

 見えない。それに何も聞こえない。まるで世界に一人ぼっちみたいなそんな感じだ。

 

『リアス!』

 

 リアスの名を呼んでみて愕然とする。

 

「――――」

 

 声が出ない。いや、発声は出来るている。なのに、声が俺の耳に入ってこない。 

 

 どうなっている。これっていったい。

 

 俺が混乱している中、背中に衝撃が走る。

 

「っ!」

 

 斬られたと判断するのに、そう時間は必要なかった。

 

「こ、の」

 

 殆ど苦し紛れに火星の崩剣(マーズ・ソード)を振りかぶる。

 

 当然当たった感触はせず、空振るだけだ。

 

 どうなってやがる。全く気付かなかったぞ。翠のこの技、一体何だってんだ。

 

『恐らく、五感の完全遮断ですね』

 

 どういうことだリンド。

 

『現実では暗くなっているわけでは無いでしょう。単に、貴方の五感が何も感じることが出来なくなってきているだけの事』

 

 いや、何気なく言っているけど、それって相当やばいじゃねえか。

 

 つまりは俺は何も見えないし、聞こえないし、感じ取れないって事だろう。

 

 ああ、やばい。神星剣を持っているはずなのに、それも感じ取れなくなってきている。確かに持っているはずなのに、柄を握っている感触が無い。

 

『直接的な攻撃力は無いですが、流石は神星剣といったところですか。下手をすれば何百人規模で今の貴方と同じことが出来るでしょう』

 

 それは……怖いな流石に。まるで神滅具みたいじゃねえか。

 

『一先ず私の鎧を纏っていると良いでしょう。私の力と神星剣のオーラが組み合わさればそれなりの防御は約束できます』

 

 それもそうか。俺はリンドの言葉に従い、素早く禁手化して鎧を纏う。

 

 さてと、どうするか。

 

 翠を倒さない限りはこの技を解除することは出来ないだろうし、傷の痛みも今は殆ど無くなってきている。お陰でどんだけの傷の深さなのか今一分からなくなってきている。それは流石に不味い。戦っている最中に倒れちまったらやばいしな。

 

「やっぱ方法はこれしかないか……」

 

 俺は手に握っている火星の崩剣を顔に近づける。

 

『カレン?』

 

 なあ、リンド。さっき剣聖は神星剣には技があるって言っていたよな?

 

『ええ、剣聖が先ほど使った重力攻撃。それに貴方の妹分が使ったこの技ですね』

 

 ああ。つまり、俺の火星の崩剣にもあるって事だよな?

 

『……確かに、そうなりますね。ですが、使えるのですか?』

 

 う、それを言われると。

 

 残念なことに剣聖の話を聞いた時から色々と考えてはいるのだが、どうやってあんな技を出せるのか分からないままだ。

 

 手に入れて一日も経っていない翠ですら技を手に入れる事が出来たというのにだ。

 

 ……そういえば。

 

『どうしたのです?』

 

 いや、火星の崩剣(こいつ)を手に入れたとき、だれかと喋った記憶があるんだよ。

 

 そいつが、何かのヒントになるんじゃねえかと思ってな。

 

『……誰かとは男ですか?』

 

 いや、確か女だった気が……なんでそんな事聞くんだ?

 

『いえ、男では無いのならば良いのですが……』

 

 ? 何を言ってるんだか。

 

 それはそうとして、もう一回あんときの声を聞くことが出来れば突破口になる筈だ。

 

 そこまで考えた時だ。右足に鈍い痛みが伝わってきたのは。

 

「いっつう……!」

 

 思わず顔を顰める。

 

 また斬られた。反応がついに出来なくなったなこりゃ。

 

 どうする。どうすりゃあ技を出せる? どうすれば……。

 

 落ち着いて考えてみろ。今日神星剣を手に入れたばかりの翠でさえ技を使うことが出来たんだ。なら、俺だって技を使うことが出来たっておかしく無いはずだ。

 

 それが出来ないのは、どうしてか。

 

 やっぱり、あの女との対話かな。

 

 ――なあ、火星の崩剣(マーズ・ソード)。俺は、この戦いに勝たなきゃいけない。俺が負ければ翠はリアスを殺すだろう。そうなったら、俺はもう自分が許せなくなるし、翠にそんな事をしてほしく無い。だから頼む。力を貸してほしい。母様に力を貸していたんだろ?――

 

 心の中で念じるように、祈るように火星の崩剣に話しかける。

 

 頼む。もう時間が無い! だから。

 

 必死に祈っている時だった。

 

 ――問いを投げかけます――

 

 殆ど耳も聞こえなくなっている状態で誰かの声が頭の中に響いてきた。

 

 なんだ? 誰だ。

 

『……これは』

 

 リンドは何かを分かったようにつぶやく。

 

 ――貴方は奴らに復讐するために力が欲しいと契約時に言いました。その言葉に嘘偽りは無いと――

 

 ああ、そうだ。あいつらを全員殺すまで俺は死ねない。それは間違っていないぞ。

 

 だが、奴らが俺の大事なもん取るなら情け容赦しない。

 

 ――つまり、今回の力を求める理由は契約理由に反していないと?――

 

 ああ、そうだよ。その通りだ! だから力をくれ頼む!

 

 ………………。

 

 俺の思いが伝わったかどうかは分からないが、俺の目の前に一人の少女が現れた。

 

 暗闇で何も見えないはずなのに、確かに見える。

 

 年齢は翠と同じが少し上だ。

 

 赤を基調とした赤いドレスと赤い髪。そして赤い瞳をこちらに見せてくる。

 

「お前は……」

 

「識別名称、テルティウム。火星の崩剣(マーズ・ソード)の管理人格です」

 

 以後お見知りおきを。そういって少女――テルティウムはスカートの裾をちょん、と摘まむと軽く挨拶をしてきた。

 

「管理人格?」

 

「はい。我ら神星剣を管理する為に聖書に記されし主が付与されました」

 

 主。つまり聖書の神か、亡くなった。その神がこんな人格を付けたと。神様ってのはなんでもありなのかね。

 

 思わず俺はまじまじとテルティウムの顔を見る。

 

 顔立ちは非常に整っているが、寧ろ整い過ぎている。まるで人形のようだ。

 

「完璧すぎる美は美では無いってか……」

 

「?」

 

「あーいや、何でもない」

 

 今は関係ない話だったな。本題は別だ。

 

「で、俺に技はくれるのか?」

 

 俺の質問にテルティウムがこくりと頷く。

 

「助かる。……にしても、翠はなんだって今日手に入れたばかりなのに技が使えているんだ?」

 

「解答します。恐らく、他の神星剣を使い、無理やり力を引き出しています」

 

「無理やりか……」

 

 四死剣の連中は全員神星剣を持っているだろうから、可能なんだろうな。

 

 ……翠を止めないと。

 

「テルティウム。技をくれ」

 

「受諾します」

 

 そう言うと、テルティウムの体から赤い粒子が俺を包む。

 

 力が流れ込んでくるのが分かる。

 

 神星剣を使っているときと同じ力の波動を感じるが、それよりもずっと力強い。

 

「解答します。今、貴方の頭の中に入った名が技の名です」

 

 これ、か。

 

 俺は神星剣を逆手に持ち、地面に突く。

 

火星の獄炎(マルス・ヘルフレイム)

 

 火星の崩剣から火が、獄炎が放たれる。

 

******

 

「なん、ですかこれ……」

 

 チリチリと自分の頬を焦がすような熱さを感じながら翠は呆然と呟く。

 

 途中までは完全に上手くいっていたはずだ。

 

 神星剣の技を使い、カレンの五感を奪ってやった。そこからは嬲るように彼の体を斬ってやった。

 

 途中であの女――五感の内、耳以外は奪ってやったはずだが――邪魔してきたが、特に問題は無かった。

 

 そして、いざ止めをと思った矢先だ。

 

 カレンが火星の崩剣を地面に突き刺した途端、剣から炎が溢れてきたのだ。

 

 その炎は辺りは一帯を燃やし尽くすように広がっていた。

 

 翠は咄嗟に自身の神星剣を使ってガードしたが、辺りは焼け野原に等しく成っていた。

 

「――ああ、見えたやっと」

 

 ビクッと体が震えてしまう。

 

「よお、翠。よくまあ、色々とやってくれたな。お仕置きの時間だ」

 

 恐る恐る前を向くと、カレンが不敵な笑みを浮かべてこっちを見ていた。

 




後最低でも二話程で終わらせようと思います。
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