テレビの取材から数日。遂にやってきたアスタロトとのレーティングゲーム。
ただまあ、余りやる気が無いのは確かだ。
あのディオドラ、確かに終盤で見せたあの力には驚きはしたがそれだけだ。正直、これならソーナともう一度戦ったほうが有意義なのは間違いない。
それに何となくだが、ディオドラが
別にズルを否定するつもりは無いけど、やるなら一人でやっていろという話だ。なのにこんなにも大勢の前でやりやがってからに、バカなのかあいつ? 魔王や他の神々の目迄誤魔化せると思ったのか? もし出来ると思ったんなら本当のバカだな。
本当なら一誠にでも適当に任せて俺はのんびり他の眷属でも軽くボコしていこうとも思ったんだが……。
「いや、ホント何でこうなってんだろ?」
「ほれほれ、年寄りばかりに働かせんでしっかりやらんかい」
「分かってますよ!」
そんな事を言いながら俺は襲い掛かってくる旧魔王派の悪魔を禁手状態で両断し、続けざまに魔力砲を奴らが密集しているところに撃ち込む。
……ホント、どうしてこうなったよ?
ええと確か、ゲームのフィールドに転送されてから一向に開始の合図が出てこないからどうしたものかと思っていた時だ。
俺たちの周りに数えるのもバカらしくなる転送魔方陣が出現したのだ。
しかも、その全てが旧魔王派に傾倒した奴らのものだったのだ。
転送魔方陣から出てきた悪魔たちだが、全員こちらへの敵意を隠そうともせずにこちらを睨みつけている。
まあ、察するに現魔王の血族であるリアスや俺を狙ってのテロ何だろうけど、なんでまた俺たちのゲームの時に来るのやら。
俺たちが出てきた悪魔たちに注意を持っていかれた時だ。
――ディオドラがアーシアを連れ去ったのは。
あの性格下種な彼はどうやら『禍の団』と繋がっていたらしい。じゃなきゃこのタイミングで現れるわけが無い。
アーシアを連れ去って消えていったディオドラ。
直ぐに追いかけたい所だが先にこの旧魔王派の悪魔どもを何とかしないといけない。
取り敢えず片付けようと戦闘を開始しようとした矢先だった。
北欧の神オーディンがこの場に出現したのは。
出現早々朱乃の尻を揉みやがったスケベ爺さんにしか見えないが、オーディンと言えば、北欧の最高神。その能力は馬鹿にできない。
で、何故オーディンがこちらに来たというとまあ、予想通りゲームが旧魔王派によって占拠されたというわけだ。
しかも、このフィールド内は強力な結界で囲まれており、ミーミルの泉に片目を差し出しあらゆる魔術に精通しているオーディンでさえ、入ることがやっとで出ることは不可能に近いという。
北欧の主神が突破できないというのだからどれだけふざけた結界なのか分かってもらえるだろう。
で、ここはオーディンに任せてアーシアが連れ去られた神殿の方に向かおうとしたのだが。
――お主はこっちで儂の手伝いをせい――
そういわれた俺はオーディンの手伝いをしているのだ。
「てか、なんで俺だけ残されたんですか?」
悪魔たちの攻撃を受け流しながら俺はオーディンに聞く。
「何、あの小娘の息子がどんな奴か、少し気になってな。こうして話をしている訳じゃよ」
オーディンは自身の槍グングニルを悪魔めがけて投げつけながら言う。
小娘の息子? ってまさか。
「母様の事知ってるんですかい?」
朝凪日月。俺の母親。
世界のバグなんて呼ばれているけどオーディンとも知り合いとは。
「なあに。人間の癖に儂らの領域に侵入し、挙句の果てに『面白そうな剣があったら欲しいから頂戴?』って言われただけじゃよ」
「何してんのあの人」
剣欲しさに北欧の神々の領域に侵入するとかどんだけだよ!?
「結局、名剣や魔剣を数本持っていきおったわい」
「母がマジですみませんでした」
これはちゃんと謝罪しないと。てか、あの人そんな事をしていたのか。普段はお淑やかな印象が強かったけど、そんな一面があったとは知らなかった。
……もしかしなくとも屋敷の保管庫にあるあの数えるのも馬鹿らしくなる母様のコレクションって色んな勢力からパクった奴じゃあ……。
…………。
……………。
…………………考えないでおこう。
「余所見などしておって!」
激昂する悪魔数人が強力な魔力の弾を俺めがけて打ち込んでくる。
上級悪魔に相応しい凄まじい攻撃だ。だが。
「俺にそういう攻撃はいけないだろうに」
俺は躱すわけでもなくそのまま攻撃を受ける。
『Absorb!!』
鎧に当たった瞬間、そのまま魔力の弾は鎧に吸収されていった。
『っ!』
それを見た悪魔は愕然としている。
「それ、返すぞ」
剣の切っ先を悪魔たちに向ける。
『Liberation!!』
先ほど吸収した魔力に俺の魔力を少し乗せてそのまま撃ち出す。
魔力砲となった魔力の塊は悪魔たちをそのまま飲み込み消滅させる。
しっかし、無駄に数が多いなおい。どれだけ現政権に不満を抱いているのやら。
「今回の件、どこまで話を聞いています?」
「ふむ? そなたはどこまで感づている?」
質問に質問を返されるのはあまり好きじゃないがまあ、神様相手だし仕方ないか。
「そうですね……今回のテロは旧魔王派が主役なのは間違いないでしょう。ディオドラに接触したのも悪魔だけだろうし」
ただ、
「もう一つくらい別の派閥が関係しているかと」
「ほう、何故そう思う?」
オーディンの興味を宿した視線が俺を貫く。
「主神たるオーディン様さえ出ることが出来ない結界ですよ? 言っちゃなんだけど、あの旧魔王派が作れるとは思えない。阿呆みたいな復讐心しか持っていない奴らですよ? 実力も何も無い。ただ、烏合の衆だ」
そう、旧魔王派など特に怖くは無い。連中は数だけは馬鹿みたいに多いだけの連中だ。実力はそりゃまあ上級悪魔以上の力を持っている連中もいるけど、所謂特異的な能力を持っている連中はいない。ならば油断さえしなければ負けない相手じゃない。
問題はこの結界だ。神を閉じ込めることが出来る結界なんて、一体全体どうやって作っているのやら。
「恐らく、神滅具じゃろうな」
「神滅具?」
俺の考えを聞いたオーディンがそう答える。
「これほどの強力な結界を張れるのは一つしかない。
何それ怖い。直接的な攻撃力は無くとも、恐ろしい力を持っているものだ。まさしく神滅具と呼ぶに相応しいものだろうな。
「てか、俺そろそろ行っていいですかい? いい加減あいつらの事が気になるんで」
見ればもう殆ど悪魔たちはいなくなっており、残っている連中も俺たちの強さに恐れをなしたのか、怯えた目でこちらを見るだけで襲ってこようとはしてこない。
「そうじゃのう。まあ、見たいものも確認できたし、良しとしようかのう」
……見たいもの? 俺の実力ってやつか。まあ聞いている時間も無いしさっさと行こう。
「それでは失礼します」
それだけ言って俺はリアスたちが向かった神殿に飛んでいく。
******
「……行ったか」
神殿に飛んでいくカレンを見て、オーディンは静かにため息を付く。
「どうやら、危惧していたよりかはマシか……いや、見せていないだけで本性は分からないか」
別段、ここに残るのは自分だけでも十分であった。幾ら上級悪魔や最上級悪魔がいたとしても北欧の主神たるオーディンを傷つけることは早々に出来る事では無い。
ならば、何故ここにカレンを残したのか?
一つは世界が生んだバグとまで呼ばれた朝凪日月の息子を見るため。もう一つはアザゼルに個人的に頼まれた事だ。
『爺さん、アンタから見てカレンがどんな感じなのか、確かめて欲しいんだ』
カレンの『業』を一部だが聞いたオーディンとしても見定める必要があると感じ、こうしてカレンだけを残したのだが……。
「流石にこれだけでは分からないか。しかし、神星剣を使ってくるとかとも思ったが、いやはや、神器だけでもとんでもない強さじゃのう」
歴代最強と言われる白龍皇に引けを取らないのではないだろうか。
だからこそ、道を踏み外した時の事をアザゼルやサーゼクスは心配しているのだろう。
「難儀な事じゃな」
ほんの少し哀れに思えてしまう。家族を殺され、その敵がまるで示し合わせたかのように現れたことに。
願わくば、彼が闇に落ちないことを願うしかない。
******
「くそ、全然追いつけないな」
神殿内を飛びながら俺は思わず毒づく。
かなりの速度で飛んではいるのだが、未だに追いつけないでいる。
あいつらかなり進んでいるみたいだな。おまけに戦闘の方をやっているみたいだし。
ここに来るまでの間、何人か倒れており、顔を見ると、皆ディオドラの眷属だと分かった。恐らくリアスたちが倒したのだろう。
……どうでも良いが、何故こう待ち構えるように何人かで分かれているんだ? こちら馬鹿なんじゃね? 自分たちの実力を考えないでさ。
途中で細切れになった肉片も見つかったが、あれは多分祐斗の仕業だろう。ゼノヴィアにはあんな細かい攻撃は出来ないだろうし。
てか、本当に追いつけないんだが、え、何もうあいつらディオドラの所まで達しているの? 早いなおい。いや、ディオドラの眷属が弱すぎたのかそれともリアスたちが強すぎたのかのどちらかだろうな。
そんな事を考えている時だった。
奥から一際大きな音が響いてきた。
それと同時に感じた波動は一誠のものだった。
一誠が戦っているということはディオドラとか。もし仮にドーピング――おそらくオーフィスの『蛇』だろうな――使っているとしたらちっとは強いだろうな。
ただまあ、アーシアの為ならあいつは何だって出来るだろう。
結構感情を乗せて戦うってのは馬鹿にできないからな。だからこそ、ヴァーリと戦った時だってあいつはあんなに戦えたんだろうし。
その証拠に、
「二度とアーシアに近づくんじゃねえ!!!」
ほら、この通り。
鎧を身にまとった一誠と、デュランダルを突きつけたゼノヴィアがディオドラに啖呵を切っていた。
やれやれ、相も変わらず二人はアーシアの事が好きだね。
見ろ、ディオドラなんて首を残像が生み出せそうな勢いで振ってやがる。自業自得とはいえ、可哀想とは思うけどね。
さて、どんな状況やら。
「もう終わったのか?」
「カレン!」
俺が近くに降りると皆がこちらを向く。
「たく、面倒な事を終わらせてこっちに来てみたらみんな終わっているんだもんな。早いもんだ」
「そうかしら、貴方が遅かったんじゃなくて?」
どうだろうか。別段、苦戦していたわけでは無いが、まあ確かに数は多かったな。
「そんで、この後どうするわけ?」
「決まってるでしょ、アーシアを助けるの」
「あ?」
見れば、アーシアが何やら変な装置につながれて拘束されていた。既に一誠がアーシアの枷を外そうとしていた。
しかし、
「あれ、外れねえ!?」
おいおい、鎧を纏った一誠でもビクともしないってか?そいつはまた頑丈だな。
今度は試しに祐斗が聖魔剣で攻撃するもこれまた弾かれてしまった。
リアスや朱乃も一誠の『譲渡』で力を上げて攻撃してみたがこれでも駄目だった。
おいおい、どんだけ固いんだこれ。
「兄貴! 兄貴の神星剣なら壊せるんじゃねえのか?」
一誠の問いに俺は難しい顔を隠さずに答える。
「……出来なくも無いが、装置とアーシアが密接すぎる。これだとアーシア諸共斬りかねん」
神星剣に斬れないものは早々に無いけど、問題は威力の微調整が難しすぎるだ。刀身に纏うオーラだけでもアーシアを傷つけかねん。
「そんな……」
「……無駄だよそれは破壊できない」
俺たちが困り果てているところにディオドラが告げる。
奴が言うには、こいつは
問題はこの装置の効果だ。アーシアの神器の能力を『反転』させることが出来るという。
つまり、アーシアの強力な回復能力が一気の逆の命を奪う能力になるというのだ。
発動はもう間もなく。それまでに何とかしないといけない。
「こいつは……本格的にちとやばいかもな」
アーシアの能力が『反転』したとなれば、下手したらトップ陣の神々でさえもやられる可能性だってある。
旧魔王派も数だけの烏合の衆かと思いきやまともな作戦を考えてくるじゃねえの。
「どうしたもんか」
久しぶりに冷や汗を感じながら俺は頭を悩ますのであった。