ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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全然筆が乗りません……。リハビリがてら別の作品を書いてみようと思っています。


第六話

「カレン……」

 

 私、リアス・グレモリーは兄弟同士で戦う所を為すすべなく見る事しか出来なかった。

 

「ふむ、やはり覇龍か。しかし、カレン・グレモリーめ、通常の禁手化で良くあそこまで戦えるものだな。流石というべきか」

 

 後ろから突然聞こえた声に私たちは振り向く。

 

 そこにいたのはヴァーリ・ルシファーだった。後ろには孫悟空の子孫たる美猴、そして聖剣コールブランド使いが立っていた。

 

「貴方たちどうして」

 

 全員、警戒を強めるが、白龍皇は肩を竦めるだけだった。

 

「探しものをしていてね。けれど、覇龍の力を感じてこちらに出向いた訳だ」

 

 同じ天龍として力を感じ取れるという事なのだろうか。

 

「ほれ、これお前さんたちの所の子だろ」

 

 そう言って美猴が差し出したのは――アーシアだった!

 

「アーシア!」

 

 全員アーシアの元に駆け寄る。

 

 静かに呼吸をしているのを見て全員涙を浮かべる。

 

 聖剣使いが言うには、次元の狭間で漂っていたところを保護したそうだ。もしそのまま次元の狭間に居たら消えてしまっていたという。

 

「白龍皇、感謝するわ」

 

「別に。偶々目に付いただけだ」

 

 本当に興味が無いようで、既に白龍皇の視線はカレンとイッセーの方に向いていた。

 

「兵藤一誠の方は不完全な覇龍化をしたようだな。そのお蔭でカレン・グレモリーは何とか喰いついていけているような感じか。神星剣をもっと使っていればあの程度なら圧倒出来ただろうに」

 

 カレンが神星剣を使わないのは、付けた傷が治りにくい神星剣の特性を考慮するのと、手加減が出来ずにイッセーを殺してしまうのでは無いかと考えているのだ。

 

 あの時見せたカレンの大技は間違いなくイッセーに大きなダメージを残す。最悪、フェニックスの涙を使っても完治は難しいだろう。

 

 だからこそ、カレンも手をこまねいている。おまけに、倒したとして、イッセーが元に戻るとも限らない。

 

「何か方法は無いの?」

 

 本来敵である彼に聞くのは筋違いというものだろう。だけど、もう時間が無い。このままだとイッセーの体が保たない。

 

 白龍皇はふむ、と手を顎に当てる。

 

「そうだな、何か彼の深層心理を刺激するものがあれば良いのだが」

 

「おっぱいを見せれば良いんじゃね?」

 

 そんなふざけたことを言うのは美猴。貴方、どうでも良いと思って適当に答えていないかしら……?

 

「そもそも、見せるにしても今の状態では――おや、勝負を仕掛けたか」

 

「え……? どういう……」

 

 意味? と聞く前に、強大な波動が私の肌を突き刺すように飛んできた。

 

 全員そちらのほうを向くと、イッセーが神殿を吹き飛ばした時の同じ攻撃をしようとしていた!

 

「ロンギヌス・スマッシャー……神をも滅ぼせると言われるほどの最強の力」

 

 ぼそり、とつぶやく白龍皇。

 

 神をも滅ぼせる一撃って、このままだとこの場にいる私たちもまた。

 

 同じ考えに至ったのか、カレンは一瞬こちらに顔を向けてから神星剣を取り出し、濃密なオーラを刀身に纏わせて構えた。

 

 あの時の翡翠との戦いで使った技は使わないようだが、それでもゼノヴィアの使うデュランダルとアスカロンの合体技よりも遥かに強大なオーラを纏わせている。

 

「ふむ、このままだと、ここら一帯が今度こそ吹き飛ぶか。下手をしたら空間に歪みが出来るかもな」

 

 冷静に語るヴァーリ。

 

 冷静に語っているが、かなり不味い状況だ。二人の攻撃がぶつかり合えば、下手をしたらどちらかが危険な状態に――!

 

「止める方法は無いの!?」

 

「さっきも言ったが、彼の深層心理を刺激するものがあれば良いのだが……。そうだな、ドラゴンを鎮めるのは何時だって歌だった。ただ、二天龍に関する歌は無い」

 

 じゃあ、本当にどうしようも無いの……? このままあの兄弟が戦いあうのを黙って見ていろって事なの?

 

 無力感に苛まれている中だった。

 

「歌なら、あるわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そんな声と一緒に上空から飛んできたのは、天使の羽を背中に生やした紫藤イリナさんだった。

 

 そして、彼女が持ってきたモノは、その、何というか、色々とツッコミを入れてしまうであろうモノであった。

 

 

******

 

「いくぞ一誠!」

 

 何処まで防げるかは分からない。だがここで俺がやらないとこいつが戻ってこれない所まで行ってしまうかもしれない。

 

 なら、

 

「やるしかねえよな!」

 

 神星剣を上段に構えた時だった。

 

 

『おっぱいドラゴン! はっじっまるよー!』

 

 

 …………。

 

 ………………。

 

「………………は?」

 

 思わず、気の抜けた声が出てしまった。

 

 戦闘中にも関わらず、一誠から目を逸らし、音声がした方を向いた。

 

 そこには空中に映像が投影されており、見れば、態々赤龍帝の鎧を身に纏った一誠と小さな子供たちがいた。

 

 なにやら、音楽に合わせて踊りを開始しており、それだけ見ると何やら歌のお兄さん的な何かを想像するが。

 

『おっぱい!』

 

 この単語だけでもう何なのかは分かった。

 

 そして、これを作った元凶が誰かは容易に想像出来た。

 

 ――あのおっさん何してんだ!?

 

 混乱している中、歌が始まる。

 

 内容は予想通りというか、おっぱいに関する歌だ。もうそれしか無い。

 

 何これ。何を聞いているんだ俺は?

 

「……うう、おっぱい」

 

「はい?」

 

 信じられないことに一誠が反応した。

 

 いや、別に信じられないことでは無いか。何せこいつはおっぱいに命を懸けられる男だ。というか、それしかほぼ興味が無い。

 

 ……けどさ? けどよ、俺が必死こいてお前を元に戻そうとしているのに何だお前は。おっぱいで戻るのか?

 

「…………ふざけろおおおおおぉぉぉおおおお!!」

 

 キレた。兎に角俺はキレた。

 

 怒りのまま一誠を殴り飛ばす。

 

「ぐおぉ!?」

 

「おいこらおいこら。ヒトが命張って助けてやろうとしているのによお、お前はよりにもよって胸で意識を戻そうっていうのか? 俺の今までの苦労は何だっていうんだよおおおぉぉぉ!」

 

 何なのこいつよぉ! 人様が覚悟決めて助けてやろうとしてんのに、おっぱいの歌で助かるってか!? ふざけんじゃねえ!

 

「覚悟しろコラ。神星剣は勘弁しておいてやるよ。その代り……」

 

 手の骨をボキ、と鳴らす。

 

「ボコボコにしてやんよ」

 

 

******

 

「う……」

 

 うめき声と共に一誠は目を開けた。

 

「気が付いたか」

 

 俺が声を掛けると、一瞬彷徨うに視線を動かして、俺を捉えると目を見開く。

 

「兄貴……?」

 

「そう、お前の兄貴のカレンだ。頭働いているか? 思いっきりぶん殴ったんだが」

 

「ああ……て、ぶん殴った?」

 

「気にするな」

 

「いやいや、気にするだろ!?」

 

 うるさいやつだな。ヒトが折角助けてやったというのに。

 

「で、どこまで覚えている?」

 

「覚えているって……」

 

 思い出すように、頭を捻る一誠。

 

「確か、アーシアを助けて、その後……!」

 

 目を大きく見開いた後、瞳に涙を貯める一誠。

 

「そうだ……アーシアは、アーシアはもう」

 

「……悲しんでいるところあれだが、後ろを見ろ。後ろを」

 

「え……」

 

 俺が指さした方を見ると、そこにはリアスたちがいた。

 

 そして、ゼノヴィアが抱えているのは気を失っているアーシアだった。

 

「アーシア!」

 

 一誠がアーシアの方に駆け寄る。

 

「やれやれ……」

 

「お疲れ様」

 

 ため息を付くと、リアスが微笑みを浮かべながら近寄ってきた。

 

「全くだ。もうこんな事はしたくないよ。つか、あん時流れてきた歌って、アザゼル先生が関わっているだろ?」

 

「ええと、まあ、ね。それと、お兄様とセラフォルー様も作曲と振り付けを……」

 

 ……何してんだ魔王は! あれか、実は暇なんじゃねえの!?

 

 ゼクス兄さんって昔からあんな歌を作っていったけ? 昔すぎて流石に覚えていないけど。

 

「もういいや。帰って休みたいけど……なんでお前がここに居るのさヴァーリ?」

 

 じろりとヴァーリ一行を見る。

 

 ヴァーリは不敵に笑みを返し、美猴はヘラヘラと笑いながら手を振って来て、聖剣使いの男は会釈をしてきた。――その瞳には隠し切れない興味が滲み出ていたが。

 

「アーシアを助けてくれたらしいけど、まさかそれだけの為に次元の狭間を彷徨っていた訳じゃ無いだろ?」

 

「ああ、探しているものがあってな。――丁度良い。出てくるようだ」

 

 出て来る? 一体何が?

 

 疑問に思うのも束の間、空がバチバチと音を立てて割れた。

 

 俺たちが驚ている中、割れた空間の裂け目から出てきたのは龍だった。

 

 但し、デカい。百メートルは優に超えている、タンニーンよりも遥かにデカい深紅の龍だ。

 

 ヴァーリが言うには、あれこそが黙示録に登場する赤き龍。ドラゴンオブドラゴン、グレートレッドだそうだ。

 

 ……あれが黙示録の赤い龍。半端ないな。ヴァーリが言うには世界で最強何だろ? ぶっちゃけ神様が相手でも問題ないという。どれだけ強いのさ。

 

 ヴァーリが言うには、あのグレートレッドを倒して真なる白龍皇になるのが、ヴァーリの夢らしい。

 

 随分と変な夢を持っているな。いや、強さを追い求めるヴァーリならではの夢と言う所か。

 

「グレートレッド。久しい」

 

 突然、新しい声が聞こえてきた。

 

 今度は何だよ……。声がした方を向いてみると、そこには少女が一人立っていた。

 

 黒い髪にゴスロリな服を身に纏った、『黒』という風な感じだ。

 

「誰だ?」

 

 一誠も同じ疑問を感じたのか、首を傾げている。

 

 ヴァーリは苦笑しながら答える。

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスだ。禍の団のトップでもある」

 

 つまりはテロリストの親玉と! こんな少女がか!?

 

「我は必ず静寂を手に入れる」

 

 指をピストルの形にして、その指先をグレートレッドに向けるオーフィス。

 

 静寂? 何を言ってるんだこいつ?

 

 思わず首を傾げてまう。

 

 そんな俺に何とオーフィスが視線を向けてきた。

 

 黒い瞳が俺を射抜く様に見つめて来る。

 

「…………」

 

「……何だよ?」

 

 無言で俺を見詰めて来るオーフィス。人形めいているからか、何だか不気味である。

 

「お前、日月の子供?」

 

「!?」

 

 ちょっと待て、何でこいつ、母様の名前を!?

 

「お前、母様を知ってるのか?」

 

「少し前、我に喧嘩を売ってきた」

 

 最強の龍の一角に何してんだあの人は!? 馬鹿なんじゃねえのか!?

 

「というか、良く分かったな。俺って親父似だと思うが」

 

「よく似ている」

 

 いや、だから親父似だと思うのだが……まあ良いや。

 

「お前も我に喧嘩売る?」

 

「売らないよ!?」

 

 誰が世界最強の存在に喧嘩を売るか!

 

 ええい、あの人本当に何してんだ!

 

 

 

 

 

 


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