という話です。
後々、寿司屋以外も書こうと思います。
僕はとある寿司屋に通い詰めている。
その店は何というか……居心地が良いんだ。
もちろん寿司は美味いし、値段もそこまで高くない。
店員達はみんな面白い人たちばかりだし、とにかく良い店なんだ。
今日も僕はそのお店に寿司を食べに行こうと思う。
『星屑』
寿司屋の名前は『星屑』
かなりセンスのある名前だと思う。当初は『星屑の十字』だったらしいけど……こっちの方がかっこいい。
僕は少し浮足になりながら店の引き戸を開ける。
『『らっしゃい!』』
「やぁ、また来ちゃったよ」
「何じゃお前さんか。今日も”アレ”を食いにきたのか?」
すぐに僕に話しかけてくれたのは店長のジョセフさん。
アメリカ人だけど、もう50年も寿司を握り続けてるベテランの職人さん。
最近自分の孫に握り場を譲ったけど……まだまだその動きは現役。
話の相手をしてくれる人で、この店で一番話しているかもしれない。
「なんかアレを食べないと気が締まらなくってね。」
「物好きな奴じゃわい。どれ、……承太郎!おい承太郎!スモーキーが来たぞい!」
ジョセフさんが後ろの厨房に向かって声を上げると、しかめっ面をした孫の承太郎さんが出てくる。
「……やかましいぜジジイ。一度で十分だ」
「何を言っとる!お客さんを待たせるわけにはいかんじゃろ!」
「いいっていいって、ジョセフさん。それよりも承太郎、今日も『流星握り』を頼めるかい?」
「あぁ、いいネタが今朝届いた。最高の『流星握り』を出せるぜ」
そういうと承太郎は一度後ろに戻って前掛けを取りに行く。
「おっ、承太郎。前掛けをつけるってことは誰か客が来たんだな?」
「ポルナレフ、スモーキーだ。『流星握り』の刺身を頼む」
「おうよ!俺の包丁さばきを見せてやるぜ……と、その前に」
ポルナレフはそういうとカウンターの方に出てくる。
「よっ、スモーキー。お前今日も来てくれたのか?」
「ポルナレフさん。相変わらず帽子が長いですね!」
「うるせぇ、おれのイカした髪をカバーするにはこの長さの帽子しかないんだよ」
彼の名はジャン・ピエール・ポルナレフさん。
この店では刺身や仕込みを担当している。
彼の仕上げる刺身の盛りはかなりのもので、芸術と言っても過言ではない程だ。
繊細な包丁捌きだからこそできる緻密なツマの盛り方。
そして刺身の並びと切り方。
彼曰く、刺身は食べて味わう前に見て味わうのだとか。
「ポルナレフさん。今日もいいのを頼むよ!」
「任せときな!このポルナレフ、常に一流の品をお出しするぜ!」
ポルナレフさんが厨房に戻って3分経つと、承太郎さんが出てきていつもの位置に立つ。
「ネタは何にする?」
この店の『流星握り』は、5種類の好きなネタと刺身、それとお椀と茶碗蒸しで構成されている。
「つぶ貝と金目にほうぼう、後はオススメのを頼むよ」
「マグロ、イナダで行くぜ」
「いいね」
そういうと彼はシャリを手に取りネタを乗せて握ってく。
身がダメにならない程度の力強さでネタがシャリから滑り落ちないように握る。
シャリとシャリの間には小さな隙間を残し、シャリの味が死なないようにする。
最後にネタの上に生姜とネギを合わせて薬味の量を調整し、乗せる。
そしてお椀と茶碗蒸し、刺身が来ると『流星握り』が完成し、僕の元へ運ばれる。
一口食べただけでわかる新鮮な旨味。
ネタがシャリの旨味を増し、シャリの酸味がネタの良さを上げていく。
美味いんだよなぁ、これ。
全員出すよ。