今日は土曜日
本来寿司という物は比較的値段の高い品物で、主に大人が食べる物である。
従って平日はあまり客が来ない。
だが今日は土曜日だ。
大人は平日の仕事の疲れから解放されるために、美味しい寿司を食べに来る。
時刻は午後4時
ランチタイムも終わり、昼と夜の客が来入れ替わる時間。
承太郎達板前は、それぞれ前掛けを締め直したり帽子の位置を直したりして士気を高める。
早い人ならもうこの時間には来店する事もある。
……と言ってるうちに早速、本日の夕方からのお客様第1号が来たようだ。
「「「らっしゃい!」ませ」だぜ…」
「またまた来させていただきましタァン!」
「主人、今日も元気だな」
常連のジョセフとシーザーが本日の最初の客だ。
このジョセフという客はどことなく大将のジョセフと似ていてそのうえ名前まで同じだが、紛れもなく別人である。
だが気は合うようだ。
「おぉっ、お主達か!よく来たのう。」
「やっぱ爺さん元気そうだな!まだまだ孫に負けてないんと違う?」
「本当にな。お前そっくりだもんな」
「ちょ、シーザーちゃん!俺ってこんな老けてる?」
「馬鹿言っちゃいかん!わしはそんなに老けとらんぞ!」
「はっ、どの口が?」
ジョセフ達は慣れた会話をしながらカウンター席に着く。
「……それで?今日は何にするんじゃ?」
「俺、『流星握り』ねぇん!」
「俺は『熱燗』と『トマトスライス』、それと『近海の幸』を」
「あっ、狡いぜシーザー!大将!俺も『麒麟』お願い!」
「はいよ。『流星握り』は何にする?」
「マグロ、サーモン、鰹、イカ、海老!」
「王道五種か。分かった、すぐ作るわい。承太郎、頼んだぞ!」
「任せなジジイ」
「シーザーさん、どうぞ『熱燗』と『トマトスライス』です。トマトスライスの方、冷やしておきましたので」
「ありがとう、花京院」
「なぁなぁ、俺の『麒麟』は?」
「すぐお持ちしますよ」
「どれ、先に少しだけ……」
「一人で先に始めんなよ!ちょっと待って!すぐ来るから!」
「はい、お待たせしましたジョセフさん。『麒麟』ビールになります」
「おおっ!これを待ってたのよ!」
「それじゃあ早速……」
「あぁ……そうだな」
『乾杯!』
猪口とグラスがぶつかる気持ちのいい音が店内に響き渡る。
シーザーとジョセフはそれぞれ、頼んだ酒を一気に飲み干す。
「……プハッ!美味い!流石は『麒麟』!この辛さがなんとも言えないねぇ!」
「くぅぅ………!こっちのもなかなかに良い……!旨さが全身に染み渡るぜ!」
「はっはっは!お前さん達、毎度の事ながらうまそうに飲むのう。わしも飲みたくなってきたわい」
「ジョセフさんは仕事中ですよ。まだダメですからね?」
「冗談じゃよ。全く……お堅いやつじゃのう」
承太郎が二つの皿を持って奥から出てくる。
「できたぜ……『流星握り』と『近海の幸』だ」
「良いタイミングだぜ!ナイスよナイス!ヴェエエリィイイナイス!承太郎!」
「早い、流石は若店主!まだ3分もっていないのに2人分を作るなんて!」
「うちの孫の良いところは握れる事ぐらいじゃからのう」
「レジ打ちもできませんからね」
「………仕込みを」
「もう終わりましたよね?承太郎」
「掃除を」
「オイオイ、まだ店開けたばっかりだろ?なーに掃除なんて言ってんだよ、承太郎」
「そこらへんにしとけ。承太郎もう目が死んでるぜ」
一同は承太郎を弄って楽しんでいた。
生きていた世界とか時代とかは考えるな。
楽しければ良いんだよ。作者が。