皆さんも気をつけてください。
今回は小鷹視点です。
放課後。
俺が部室に行くと、咲夜と星奈がいた。
咲夜は部室の掃除をしていて、一生懸命にやっている姿を見ていると微笑ましいと思えてしまうのである。
星奈は部室のテレビでプレステのギャルゲーをやっていた。
テレビ画面の中には水着姿の女の子が満面の笑顔で【今日はいぱい遊ぼうねっ!】と言っている。背景はたぶん海水浴場だろう。
星奈は画面を見てニヤニヤしている。
「おす」
とりあえず俺が声をかけると、肩がびくっと震わせてこちらを見た。
それから露骨にホッとした顔をして、
「……なんだ小鷹だけか。あの性悪雌狐は?」
「夜空なら今日はほしい本の発売日だとかで帰ったぞ」
「ふうん。だったら今日は落ち着いてゲームができるわね」
「そもそも部室でやる必要性がないと思うのは僕だけでしょうか……」
いつのまにか掃除を終えた咲夜が顔を引きつらせながら言った。
咲夜……、お前の意見に俺は激しく同意するぞ。
そう思いながら俺もなんとなくテレビ画面を見る。
主人公と女の子が海水浴場で遊ぶシーン。
水をかけあったり、ビーチボールで遊んだり、泳ぎの競争をしたり。
【星奈君って泳ぐの早いんだね~!わたしけっこう自信あったんだけどな~】
競争で勝利した主人公を、女の子が褒め称える。
そこでふと、メッセージを読み進める星奈の手が止まった。
「……?」
怪訝に思う俺に、星奈は画面を見たまま声をかけてきた。
「……ねえ。小鷹と咲夜ちゃんってさあ……」
「おう」
「はい」
「………その……お、泳げる?」
心なしか小声で星奈が言った。
「嗜む程度には……」
「……?。まぁ、そこそこは。遠泳の授業もあった学校に通ったこともあるしな」
「ほんとうに?だったらさあ」
「!」
星奈が振り返って、顔をぐいっと近づけてきた。
やたら端正な顔が間近にきて、俺は少し動揺する。
星奈は少し顔を赤らめて、
「……あたしに、泳ぎ方教えてくんない?」
恥ずかしそうに小声で言った。
「……お前泳げないのか?」
たしかスポーツ万能だと聞いていたので、少し以外だった。
星奈は憮然として、
「う、うるさいわね。小学校からずっと水泳の授業なんてなかったのよ」
「あー、なるほど」
そういえばこの学校にはプールがなかった気がする。
「まぁ、教えるのはいいけど。なんで急に?」
「そんなこともわかんないの?夏美と友達になって一緒にプールとか海に行くことになったとき、泳げなかったら困るじゃないの。そもそも夏見は自分と同じくらい水泳が得意人にしか振り向かないのよ」
「二次元と三次元の区別もつかなくなりましたか星奈先輩」
咲夜は哀れみの視線を送っている。
夏美とはテレビ画面の中にいる水着姿の少女のことである。
どう考えても夏美と友達になることは物理的に不可能なのだが、まあ泳げることに越したことはないので俺は何も言わなかった。
「それじゃ今週の日曜日竜宮ランドね」
「わかった」
「了解です」
竜宮ランドというのは市営のスポーツセンターで、屋外プールの他にもさまざま施設があるらしい。
俺がこの街から引っ越したあとに完成したので一度も行ったことがなく、機会があれば行ってみたいと思っていた。
「あと二人共」
「ん?」
「?」
「……夜空の馬鹿には、あたしが泳げないってこと絶対に秘密ね」
「わかった」
「わかりました」
本当に夜空のことが苦手なんだなと思いつつ、俺は頷いた。
頭痛い……