咲夜は、とりあえず小鷹に部員の名前を教えてもらった前提で話を進めます。
「わたくしは、楠 幸村ともうします。いちねんいちくみです」
「僕は弟の咲夜です。同じく1年1組です」
尾行していた僕達は、礼拝堂談話室4と言う隣人部の部室に連れて来られた。
姉さんはあいからわず抑揚のない柔らかい声で名乗っていた。
それから姉さんはごそごそと鞄から取り出して、小鷹先輩に差し出していた。
「?」
「三千円しかはいっていませんが、かんべんしてもらえますか?」
「だからカツアゲじゃねえって言ってるだろ!」
姉さんは小鷹先輩をどのような目で見ているんだ。
後で先輩に誤っておこう。
「……楠 幸村……なんだか戦国武将みたいな名前ね」
星奈先輩が言った。
小鷹先輩がこの部室に来た時、星奈先輩と夜空先輩がすでにいて、小鷹先輩が僕達をを連れてきた時「下級生に男子の制服を着せてくるとは……小高の特殊な性癖には驚くばかりだ……」だの「誰それ?パシリ?」だのさん散々なことを言われていた。
「さようです」
星奈先輩の言葉に姉さんは頷いた。
「真田幸村のごときりっぱなにっぽんだんじになるようにという、父上と母上のねがいがこめられた名前なのです」
姉さんは淡々と言った。
「……日本……男児?」
夜空先輩が眉をひそめた。
「……あまり考えなかったけど……まさかお前、男なのか?」
小鷹先輩がおそるおそる尋ねると、姉さんはいつものようにぽーっとした無表情のまま、
「みてのとおり、わたくしはだんしですが」
姉さんは、普通に女性なのだが昔から「わたしはだんしです」とよく言っていた。
一緒にお風呂に入ったことがあるが男子に付いている物が付いていなかった事は記憶している。
後で先輩方に「姉さんは、女性です」と伝えても良いのだが気づくまでは何も言わない事にした。
理由?面白そうだからに決まっているじゃないですか~。
……まぁ、冗談だが。
それに何日か経てば気づかれると思うのでそっとしておくことにした。
「……いや、見ての通りじゃねぇから……」
「?」
不思議そうに首を少し傾げる姉さんの仕草は可愛かった。
……まあ、女みたいな顔の男だって世の中にはいると思うし、あまり嬉しくはないが僕もその一人だからな。
「ところでお前も男なのか?」
小鷹先輩が僕に尋ね、姉さんと夜空先輩と星奈先輩も注目した。
「はい、僕は男ですよ。兄さんほど可愛くはありませんけど……」
僕は少し笑いながら言うと先輩方が鼻を摘んでいた。
「夜空ティッシュあるか?」
小鷹先輩が鼻を摘みながら夜空先輩に尋ねた。
「この部屋にティッシュはなかったと思うぞ……」
夜空先輩も小鷹先輩と同様に鼻を摘む。
ティッシュくらい用意しましょうよ……。
「肉!」
夜空先輩は星奈先輩に声をかけたが、
「……………」
星奈先輩は、恍惚の表情で鼻血を出していた。ニヤニヤしながら気絶している姿が気持ち悪いのだが……。
容姿は良いのに残念な先輩だなと僕は思った。
とりあえず、止血をして輸血をした事により星奈先輩の蘇生に成功した。
そして先輩方の鼻血がようやく収まったところで姉さんに聞く、
「とりあえず僕の事は置いといて、兄さんはどうして小鷹先輩の後をこそこそつけ回していたのですか?」
僕が尋ね、先輩方は姉さんに注目した。
「じつはわたくし、いじめをうけているのです」
「……えっ!?」
僕は驚いてしまった。
姉さんがいじめられてる事を知らなかった。
そして僕の反応を無視して、
「……いじめ……」
小鷹先輩が意味深に呟く。
小鷹先輩のような外見だと浮いてしまうほど穏やかな校風のミッションスクールでも、
やはりいじめはあるのかな……。
「この学校でもいじめはあるんだな、そういうの……」
「当たり前だろう。いじめがない学校など存在しない」
夜空先輩が現実を突きつけるように断言した。
「僕もそう思います」
肯定はしたくはないけどニュースとかでも話題になっているから夜空先輩の意見にはほぼ同じ意見ではあった。
「なんであるんだろうな、いじめなんて」
小鷹先輩が忌ま忌ましげに言った。
「楽しいからだろう」
夜空先輩はさらりと言い放った。
「……楽しいか?」
「そもそも人間は……自分が傷つかずに他者を攻撃するのが本能的に好きだ。無闇に生き物をを踏み潰したり、裏サイトとか掲示板に気に入らない相手を叩いたり、ブログを炎上させてみたり……色々な方法で気持ちよくいじめられる」
「……さすがリアルいじめっこ」
小鷹先輩が皮肉混じりに言うと、夜空先輩は憎憎しげに小鷹先輩を睨む。
「私をそんな連中と一緒にするな」
体が凍りつくような低い声音。
どうやら本気で起こっているようだ。
「そ、それがどうして小鷹をつけ回すことになるの?」
重い空気が嫌になったのか星奈先輩が姉さんに尋ねた。
星奈先輩が言ったとおり小鷹先輩をつけ回す理由が「いじめられているから」というのは辻褄が合わないと思う。
姉さんが答える。
「どうすれば小鷹せんぱいのようにつよくてかっこいいおとこになれるか、学ぼうと思ったのです」
「つ、強くてかっこいい……!?」
星奈先輩が驚愕したように幸村を見ている。
「……このヘタレヤンキーが?」
星奈先輩が指を指しながら言った。
小鷹先輩何か言いましょうよ。
心の器が大きいのかそれともただ何も言えないのか……。
「むれることなくさっそうと肩で風切って歩くそのおすがたは、まさしくりそうのにっぽんだんじです」
「群れることなくって……単に友達いないだけじゃない」
「先輩それを言っては駄目です!」
「お前ら少し黙ってろ……」
小鷹先輩は憮然として言った。
「つまらぬ規則にしばられることなくおのれの生きたいように生きるそのすがたは、ごうほうにしてらいらく。よくぼうのおもむくままに金品をうばい、いにそわぬものは力をもってはいじょし、びじょをはべらかせしゅちにくりんのかぎりをつくす。人の世の善悪をもりょうがし、神をもおそれぬそのふるまい、まさしくてんじょうてんげゆいがどくそん」
「姉さん!まずは漢字を覚えて!。すごい読みにくいから!!」
「ちょっと待て!?なんだその三国志の董卓みたいな暴君キャラは!?俺はちゃんと校則は守るしカツアゲもしてないし自分から暴力も振るった事も女も侍らせたこともない!」
僕と小鷹先輩のツッコミが入る。
そして、姉さんは小鷹先輩に向かってやんわりと笑い、
「またまた、ごけんそんを」
「謙遜じゃねえええええ!!」
小鷹先輩が絶叫して、夜空先輩が言う。
「……つまり幸村は、いじめられることがないような強い男になりたいと言う事か?」
「そのとおりです。わたくしもだんしとして生をうけたいじょう、小鷹せんぱいのごとく偉大な人物でありたいものです。わたくしも小鷹せんぱいのようになれるでしょうか」
「姉さんがベタ褒めしてる」
「い、偉大な人物とまで……!」
「教えてあげれば?どうしたらあんたみたいになれるか」
他人事のように気軽に言う星奈先輩。
「教えると言っても……大体、いじめってどんなことされているんだ?」
「はい……」
と姉さんは説明した。
主に仲間はずれにされたり、その理由を男子生徒に尋ねたら顔が美少女だから。
よって、女々しいからこのような仕打ちを受けるなどを話した。
姉さんが、話し終わると、
「なあ、それっていじめじゃなくーーーいてっ!」
小鷹先輩が言いたい事はよく分かる。僕もそう思ったから。
そして夜空先輩が小鷹先輩の頭をはたいた。
「うんうん。たしかに可哀想だ。同情しすぎて涙が出そうだ」
まったく同情した様子がない夜空先輩が淡々と言った。
「楠 幸村。自らの力で困難に立ち向おうという姿勢、見事だ。小鷹のもとでしっかりと男の道を学ぶといい」
「おい!?」
小鷹先輩カワイソス。
「ありがとうございます。しかとまなばせてもらいます」
「うむ。ところで幸村。小鷹これで我が隣人部の部員として忙しい身の上だ。お前が入部すればより身近で小鷹を観察する事ができるぞ」
「そうなのですか。では入部します」
「なら、入部届けに名前を書いてくれ」
「はい。書きます」
さらさらさらーー……。
夜空先輩が手渡しした入部届けに姉さんの名前が書き込まれていく。
ふぅ。どうにか姉さんを入部させる事ができて良かった……僕は!?。
そう思っていたときに小鷹先輩が、
「お前はどうする咲夜」
と尋ねられたので、
「はい。僕も入ります」
と返事をした。
「咲夜ちゃんも入るのね!!。やった!。」
星奈先輩が鼻息を荒くしながら僕の肩を掴みガッツポーズをしている。
今の会話を聞いたのか姉さんは、
「さくやの名前も書いておくね」
「はい。ありがとうございます」
さらさらさらーー……。
入部届けに僕の名前が書き込まれていく。
その時小声で話している夜空先輩と小鷹先輩の会話が聞こえた、
「……どういうつもりだよ夜空。咲夜はともかく幸村をを騙すような真似をして……」
「人聞き悪い事を言うな。幸村も人間関係で悩んでいる同士。これからは同じ部の仲間としてともに協力して歩んでいこうじゃないか」
「……本音は?」
「こんな面白い馬鹿を見逃すのは勿体無いからとりあえず頭数として入れておこう」
「………………」
「あと隣人部にパシリがほしいと常々思っていたのだ。なに使えなければ捨てればいい」
姉さん僕も手伝うからね……。
夜空先輩その外道っぷり、痺れないし憧れない。
「最悪だなお前!」
「いいではないか舎弟ができたと思えば。あそこまでお前を慕っているんだからな」
「なにがいいんだよ!?」
「しゃてい、ですか」
耳ざとく聞きつけた姉さんが反応した。
「いや幸村。夜空の戯言は無視して良いから……」
「うれしいです」
姉さんが心なしかうっとりしたような顔で言った。
「……はっ?」
「小鷹せんぱいのようなすばらしいおとこのおかたのしゃていになれるとはこうえいのきわみです。一生懸命ごほうしさせていただきます」
「いや、あのな?」
「はい」
「う……」
姉さんのキラキラした憧憬の眼差しを受けた小鷹先輩は何もいえなくなったのか
「……まあその、頑張れ……」
と適当に返事をした。
「はい。ときに小鷹せんぱい」
「ん?」
「あにきとおよびしても?」
「あと、さくやも」
「……ふぇ!?」
急に名前を呼ばれたので驚いてしまった。
「え、えっと、お願いします」
「……すきにしてくれ」
小鷹先輩は投げやり気味に頷いた。
返事を聞いた姉さんは可憐に顔をほころばせた。
こうして僕達は、小鷹先輩の舎弟になった。
すみません。
ほとんど文が原作と同じで申し訳ないです。