力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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十話目です!!
ついに二桁です!
なんだかすごいめでたい感じがします!
これからも無力な少年の話を頑張って書いていきますので、応援よろしくお願いします!
それではどうぞ!


10話目 後始末と祝勝と疑問

「や......やっったーーーーーーー!!!!!」

 

 プレイヤーの1人が叫ぶ。

 するとそれに続くように部屋のあちらこちらから勝利の歓声が上がり始める。

 周りを見れば泣いている人や、肩を組んでいる人たちもいる。

 勝った......

 

「お疲れさま」

 

 座り込んでいた俺にミウが声をかけてくる。

 さすがにミウの顔にも疲労の色が現れていた。

 それでも笑っているところはさすがだと思う。

 するとミウが右手の甲を突きだしてくる。

 俺もそれに合わせるように左手の甲を突きだし、ミウのそれと当てた。

 いつからかミウとやるようになったものだ。気分的にはハイタッチに近い。

 

「私たちのパーティーの初戦は完勝だね」

 

「あっ......」

 

 そうだ。俺たちにとって初めてのパーティー戦は見事勝利、ということになる。

 あまりにも息があってたからパーティー作りたてだったこと忘れてた。

 

「でも、完勝ってのは言い過ぎだろ?」

 

 本当に危ない場面がいくつもあった。

 このパーティー誰か1人がいなかったとしても、誰か死人が出ていたかもしれない。(そのうちの一人は間違いなく俺だが)

 ヨウトたちを見ると3人とも親指を立てていたり、微笑んでいたりと様々だが、それぞれが自分流で勝利の余韻に浸っていた。

 俺も当分はこうして座って清々しいこの気持ちを味わっていたい。

 

「キリト、このあとはどうするんだ?」

 

 ボスを倒したまま近くで立っていたキリトに聞くと、

 

「このあとはボス部屋の奥の扉......ほら、あの玉座の奥」

 

 キリトが指差した方をよく見ると、ボスが元々座っていた玉座の奥に階段があり、さらに奥には少し大きめの扉があった。

 

「あの扉をくぐると2層に繋がってるんだ」

 

 2層。

 その言葉を聞いた瞬間、一気に実感が沸いてきた。

 本当にボスを倒したということ、そして現実世界に帰るための1歩を踏み出せたということ。

 最初は無理だって思っていたのに、遂に......

 

「多分そろそろディアベルが指示をーーー」

 

「あんたたちだけずるいやんけ!!」

 

 キリトの声が遮られるようにそんな声が聞こえてきた。

 声がした方を見ると、部屋の中央辺りでディアベルとキバオウが何か言い争いをしていた。

 またあいつか...せっかくいい気分に浸ってるっていうのに。

 周りのプレイヤーもなんだなんだと集まっていく。

 

「なんであんたらはあのボスの技知っとたんや!? ワイらには教えんで、何回死にかけたことか!!」

 

 おそらく、キバオウが言っているのはバーサークモードになる前のボスの動きのことだろう。

 ...確かに、キバオウの言っていることは正しい。

 キバオウたちにボスのことを詳しく教えていなかったのはこちらが悪いのかもしれない。

 だがそれは、ディアベルが攻略会議の時に言っていたことがなければ、だが。

 あのとき遅れて会場に来たのはキバオウの方だったし、昨日も言ったがボスの情報はアルゴのガイドブックにある程度載っていた。

 そのことをキバオウの取り巻きたちも分かっているのか、キバオウを止めようとしているが、キバオウは聞く耳持たない。

 

「キバオウさん、それはーーーー」

 

「ワイらのこと見殺しにしようとしとったのと同じやないかい!!」

 

 見殺し。

 その言葉が出てきた瞬間、体中の体温が一気に引き、脳が冴えていくのが分かった。

 ......ふざけるな。

 

「おいーー」

 

「見苦しいわね」

 

 凛とした声が響き、部屋全体がシンとした。

 俺の代わりに声を上げたのはアスナだった。

 そして何かに触れているような感覚が腹部にあり、視線を向けると、いつのまにかヨウトが俺の動きを右腕で制していた。

 ヨウトを見ると無言で首を振ってくる。

 ......はぁ。一旦落ち着こう。

 俺は頭を振り、アスナたちの様子を見ることにする。

 

「な、なんやワレ」

 

「ディアベルさんは最初の攻略会議でも言っていたじゃない。ガイドブックに載っていたって」

 

「ぐっ......」

 

「ボスのスキルを知る方法はあった。それに死にかけた、って言っているけれど確かあなたたちは攻略の時は端の方で大人しくしておくっていう条件だったわよね。それをあなたたちは勝手にでしゃばって勝手に危険になっていただけじゃない」

 

 ぐぐっ、とキバオウが押し黙る、

 そう、これが最大の矛盾点だ。

 約束を反故したのはキバオウたちだ。ディアベルが責められる謂れはない。

 

「くそっ!」

 

 アスナに完全に言い負かされたキバオウは吐き捨て、プレイヤーたちを押し退けて奥に引っ込んだ。

 すご恐ろしいな、アスナは......怖い怖い。

 でもアスナに先を越されたせいで、俺は俺で不完全燃焼気味だ。

 などと考えていると、俺たち5人が集まっている一角にディアベルが近づいてきた。

 

「アスナさん、ありがとう」

 

 最初にアスナに礼を言うと、今度は俺たちを見てくる。

 

「それにF隊のみんなも。君たちがいなければ間違いなく、死人が出ていた。攻略組を代表して礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

 ディアベルが言うと同時に、周りから拍手と歓声が巻き起こる。

 多少むず痒いが、まぁ、悪い気はしない。

 ......残念なことにこの拍手喝采はミウやキリトたちに向けられたものなんだろうけど。

 

「いや、ディアベルがいなかったら攻略そのものが失敗していたよ。こっちこそありがとう」

 

 これは俺の本音だ。

 ディアベルほどのカリスマ性、指揮能力があったからこそ攻略が成功したのは間違いない。

 ディアベルは、ははは、と照れたように笑うと、今度は顔を引き締めて言ってきた。

 

「君たち、俺のパーティーに入らないか?」

 

 言った瞬間周りにどよめきが広がる。

 今回の攻略でディアベルの実力はみんな理解したのだろう。

 そしてミウやキリトたちの実力も。

 この組み合わせでパーティーを組めば、間違いなく全プレイヤーの中でトップに躍り出るだろう。

 そんな状態になればほぼディアベルの独壇場だ。良い意味でも、悪い意味でも。

 それを考えればこのどよめきも当然だ。

 ディアベルの目を見る。

 ......これは誤魔化したりできないな。

 

「ごめんね、私たちはもう決まってるから」

 

 するとミウが俺の手を取りながら言ってきた。

 むぅ、さっきから俺が何か言おうとしたら狙ったかのように遮られるな。

 

「もちろんコウキさんも一緒で良いが......」

 

「うーん、大人数はあまり得意じゃないんだ」

 

「そうか......」

 

 ディアベルは渋々といった具合で引き下がる。

 おーい、どうでもいいけど俺の意見は聞かないんですかね?

 まぁ、ミウと同意見だから別にいいんだけどさ。

 でも、ここで引き下がるということはディアベルは本当に自分の地位とか関係なく俺たちを誘っていたみたいだな。

 もしかしたらさっきのラストアタックのことも考えてずる賢い人なのかとも思ったが、勘違いだったらしい。失礼だったな。

 他の3人も全員ソロが良いと言って断っていた。

 

「気が向いたらいつでも声をかけてくれ」

 

 ディアベルはそう言うと、今度は他のプレイヤーたちの方を向く。

 

「じゃあみんな!! 2層に行こう!!」

 

「「「おーーーーーーー!!!!」」」

 

 全員の声の大合唱の後、すぐさま俺たちは奥の扉の前まで来た。

 キリトが2層へと続くと言っていた扉は、このボス部屋に入って来るときに通った巨大な扉となんら違いはなかった。

 いよいよ2層か...

 この扉の荘厳さからは入るときは恐怖しか感じなかったが、期待のせいか今は栄光の扉のように感じる

 周りも心なしか期待と緊張が入り交じったような雰囲気が広がっていた。

 そして、ディアベルが1歩前に出て、扉を押し開く。

 それに反応してゆっくりと開いていく2層への扉。

 

「......うわぁ!」

 

 ミウが声をあげる。

 扉の向こうには花畑が広がっていた。

 他のプレイヤーたちもテンションが最高潮に達したのか、声をあげてはしゃいでいる。

 ......っていうか、ミウが一番はしゃいでるし。

 そんな俺も自然と笑みを溢していた。

 

 

 

 

 それから約2時間後の午前11時。

 俺とミウは2層の街《ウルバス》を歩いていた。

 この街は《はじまりの街》と同じ石造りではあるが、《はじまりの街》は上から見ればドーナツ状だったのに対し、《ウルバス》は一直線だ。

 商店通りがそのまま巨大化した感じ、と言ったら分かりやすいか。

 しかも新しい層ということもあってか、《はじまりの街》よりも活気に溢れている感じがする。

 

「おっ、あったあった」

 

 俺は探していた店ーーーー鍛冶屋を見つけ、他の店を見ながらふらふらしていたミウを捕まえてその店に入った。

 

「これのメンテナンスお願いします」

 

 そう言って俺が店のNPCに出したのはネペントのクエストで手に入れて以来使用していた《アニールブレード》だ。

 武器は使えば使うほど磨耗していく。その結果、切れ味や攻撃力が下がったり、酷いときには剣が折れ、消滅してしまうこともある。それを防ぐために定期的に鍛冶屋にメンテナンスに来るのだ。

 ボス戦じゃあ使いまくってたしなぁ......

 ミウも俺に続き自分の剣を出す。

 

「ほほう......今まで数えきれないほど剣を見てきたが、ここまで使い込まれたものを見るのは初めてじゃよ。大変な旅をしてるねぇ」

 

 鍛冶屋のお爺さんが笑って言ってくる。

 

「ははは、この子たちのことお願いします」

 

 ミウが苦笑いしつつお爺さんに頼むと、うむ、と力強い返事が返ってきた。

 そしてお爺さんは店の裏に剣を研磨するため引っ込んでいく。

 ...うーむ、さっきのお爺さんの台詞、気になるなぁ。

 ミウもしてたけど、俺に至ってはコボルトロードのスキルと真正面から衝突してたからなぁ。損耗が激しいのは当たり前って言えば当たり前なんだけど......。あー、戦闘中に折れなくて良かった。

 ふとミウを見てみると、店の入り口側に寄って、店の外、というか他の店を見たりお爺さんが引っ込んでいった扉を見たりと忙しなかった。

 ーーーー10分後。

 お爺さんは俺とミウの剣を持って戻ってきた。

 

「ほい、これで元通りじゃろ」

 

「わぁ、お爺さんありがとう!」

 

 剣の出来上がり具合が嬉しかったのだろう、ミウはお爺さんに握手までしてお礼を言った。

 ......確かにこれはいいな。1層の鍛冶屋よりも出来が良い気がする。

 

「ほっほっほ、またいらっしゃい」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 俺も礼を言って店を出る。

 ミウは店を出るギリギリまで手を振っていた。ミウって実はお爺ちゃん子なのか?

 そしてミウは出てくると、今度は俺に笑顔を向けてきた。

 

「さぁ、コウキ、約束だよ」

 

「......やっぱりさっきからキョロキョロしてたのは」

 

「うん、パフェ探してた」

 

 ガックリと項垂れる俺。

 やっぱりか......でも、さっきから俺もミウほどじゃないけど探していた。でもそれらしい店はなかったんだよなぁ。

 この街はさっきも言ったけど一直線だから、ある程度動き回ればほとんどの店が見て回れる。

 なので今から新しい発見があるとはちょっと思えない。

 ってことは...

 

「でも、パフェ見つからなかったからその辺見て回っても良いかな?」

 

 それもやっぱり。

 1層にもいくつか街があったが、新しい街に行くたびにミウは甘いもの探しに観光をするのだ。

 俺も甘いものは嫌いじゃないが、さすがに甘いものオンリーで1時間以上もいるのは辛い。

 毎回流したり、断ればミウも引き下がると思うのだが、それはそれで忍びない。

 お菓子を前にしたミウは本当に嬉しそうに笑うからなぁ。

 

「あ......やっぱり迷惑だったかな?」

 

 今回も頑張るか、と腹を括っていると、ミウが申し訳なさそうに俯いた。

 ミウは基本的に思い立ったら即実行しているが、少しでも他人に迷惑がかかると思ったらすぐに意見を下げてしまうことがある。

 それにミウが俺にこういったお願いをしてくるのは意外と珍しい。

 あと真面目な話をするのなら、ミウのお菓子巡りの旅、実は結構役に立っていたりする。

 街中をあちらこちら歩き回るので、隠し通路や良い店を見つけられるのだ。

 俺の実益も兼ねているのだ。

 なのでミウが遠慮する理由はどこにもない。

 なによりーー

 

「約束だしな、どう回る?」

 

「......いいの?」

 

「もちろん、って言っても6時からはヨウトたちと祝勝会する予定だから、いつまでもっていう訳にはいかないけど」

 

「ううん! ありがと!!」

 

 ミウが満面の笑顔を向けてくる。

 ーーなにより、俺自身がミウの見ているこちらまで嬉しくなるこの笑顔が好きなのだ。

 

 

 

 

「おー! コウキ今日はお疲れ様......ってどうした?」

 

「いや、ちょっと胸焼けが」

 

 午後6時。予定通りヨウトの部屋に行くと、部屋主が出迎えてくれた。

 そして疲れきっている俺と、幸せ状態のミウを交互に見て不思議そうな顔をしていた。

 まぁ、これだけじゃ何があったのか分からないよな。

 

「キリトとアスナは?」

 

「もう二人とも来てるよ。お前らが最後」

 

 ありゃりゃ。そりゃ悪いことしたかな。

 ヨウトの部屋は俺たち他のメンバーの部屋よりも少し広かったのでここで祝勝会しようという話になったのだが......

 しまったな、そりゃキリトやアスナも来るんだからもっと早く来れば良かった。

 

「んじゃ、お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす」

 

 ミウと共にヨウトの部屋のなかに入っていく。

 中は話に聞いていた通り、俺やミウの部屋よりは大きそうで、広々としている。

 というかこれは、部屋というより家と言った方が近いかもしれない。中に入ってもまだいくつか部屋があるみたいだし。

 最初の部屋はランダムで決まるから仕方ないが...これは優遇が違いすぎやしないだろうか?

 

「二人とも、お疲れ様」

 

 ヨウトに案内されるように部屋に入ると、椅子に座って本を読んでいるアスナに出迎えられた。

 アスナは淡い黄色のゆったりとした長袖の服に、下は膝丈ほどのジーンズだ。

 ......こういう姿になると、アスナが美人だってのが本当に分かるな。

 

「コウキ、ちょっとこっち向いて」

 

「ん?」

 

 ミウの言う通りにすると、ミウはおもむろに俺の頭に手を伸ばした。

 

「はい、もういいよ」

 

「どうしたんだ?」

 

「髪にゴミがね」

 

 はい、とミウが見せてくる。

 

「あぁ、ほんとだ。ありがと」

 

 いえいえ、とミウが手を振ってくる。

 それにしてもこのゲーム、こういうところ本当に細かいな。普通、ゴミまで再現するか?

 

「......今の、無自覚そうだから怖いわね」

 

「ん?」

 

 等と考えていると、いつの間にかアスナが俺とミウのことをどこか呆れたように見ていた。

 はて、ヨウトじゃあるまいしそんな呆れられるようなことはしていないはずなんだが...

 ヨウト、あ、そっか。

 

「ヨウト、ちゃんと掃除ぐらいしておけよ!」

 

「悪い悪い。でもお前も掃除なんてあまりしてないだろ?」

 

「してるよ。部屋売るときに汚れてると売値落ちるらしいし」

 

「マジで!?」

 

「ねぇ、キリトは? 確かもう来てるって話だったけど」

 

 ヨウトと軽口を叩いている間に、ミウがアスナに聞く。

 

「そうだ。ヨウトなんかと話してる場合じゃなかった」

 

「ひどくねっ!?」

 

 ミウの言う通り、先程からキリトの姿が見えない。

 ヨウトもさすがにまだ記憶力が落ちるには早すぎると思うのだが......

 

「あの人なら私との勝負に負けて買い出しに行っているわよ」

 

「勝負って?」

 

「ポーカー」

 

 うわぁ、確かにアスナはそういう心理戦やら戦略系のゲームは滅茶苦茶強そうだ。

 ポーカーフェイスも上手いしな。

 そしてこういう遊びに目がない人物がこの場には二人ほどいる。

 

「ポーカー? 私もやりたい!!」

 

「おぉ、俺も俺も!!」

 

 さすが、ミウもヨウトも反応が早い。

 二人は今にもアスナに飛びかからん勢いでポーカーしようしようと食いついてる。

 こうなればこの二人はまず間違いなく引かないだろう。

 

「はぁ...じゃあキリトが帰ってくるまでみんなでやるか」

 

 人数は俺含めて4人。ちょうどいいだろう。

 そして俺の提案に反対する人はいなかった。

 

 

 

 

「戻ったぞ~......みんなどうしたんだ?」

 

「くそっ! もう一回だ! 今度は大富豪!!」

 

「いいよー、やろうやろう!」

 

「あー......ちょっとあってな」

 

「この人たちとは二度とやらないわ......」

 

 あのあと、ポーカー→ババ抜き→七並べとやっていったのだが、どれもミウが完勝したのだ。

 俺、ロイヤルストレートフラッシュなんて初めて見たし。

 完勝しまくるミウにヨウトの負けず嫌いが発動し、今に至る。

 

「はは......なんと言うか、お疲れ様」

 

「その言葉が今は一番嬉しいわ」

 

「右に同じく」

 

 アスナは一度大きくため息をつくと、いまだにトランプを続けようとしている二人に近づく。

 そしてパンパン、と手を叩いて締めにかかる。

 

「はいはい、二人ともそこまで」

 

「「え~~~」」

 

 だが二人は不満たらたらと言うように声をあげる。

 おーい二人とも。アスナの目を見た方がいいぞー。

 アスナはもう一度大きくため息をつく。

 

「い・い・わ・ね?」

 

「「はい」」

 

 アスナは笑っていた怖いぐらいに......顔は。

 目は......いや、あえて止めておこう。

 とりあえず二人は注意されたあとスキル発動中なんじゃないかと思うほどの速さでトランプを片付けたことだけ言っておく。

 

 

 

 

「では、1層クリアを祝して、乾杯!!」

 

「「かんぱーい!」」

 

 ヨウトの音頭に合わせてカチン、とコップがぶつかり合う小気味良い音が響く。

 そこから始まるのはなんの気遣いもない、無礼講の祝勝会。

 

「いやー、でもあの時のミウちゃんのパリィには本当に驚いたよ」

 

「そんなこと言ったらヨウトの《ソニックリープ》、よく間に合ったねぇ」

 

「まぁ、スピードならお任せ、を信条にしていますから」

 

 ははは! とミウとヨウトは既にテンションマックスだ。

 あの2人、本当に気が合うよな。というか、思考が近いのか。

 ジュースを飲みながらそんなことを考えていると、思い出したことがあった。

 

「そういえばアスナ。あの時はすごかったな。ボス部屋全体が静かになったし」

 

 あの時とはもちろん、ディアベルとキバオウの言い争いの時のことだ。

 

「へっ? ......あぁ、あの時の」

 

 1人落ち着いてお菓子ーーミウが買い溜めていたものーーを食べていたアスナは少し顔を赤らめながら言った。

 あの時のこと今更恥ずかしくなってるのか?

 するとミウも俺の話題に食いついてきた。

 

「そうそう! あの時のアスナすごかったよ! 私少し感動しちゃったし!」

 

 言うとミウはアスナに抱きつく。

 

「ちょっ、ミウさん!? 分かったから離して!!」

 

 アスナはミウを引き剥がそうとしているが、どうも筋力値はミウの方が高いらしく中々離れない。

 俺も始めの頃は少し戸惑ったのだが、ミウは他人との距離がかなり近い。

 なのでこういうときはお構い無し、全力で抱きつくのだ。

 ついにアスナはキリトにまで助けを求めている。

 大変だなぁ、と他人事のように眺めていると、ヨウトが小声で話しかけてくる。

 

「なぁ、コウキ」

 

「なんだ?」

 

「女の子同士が抱きついてるって、なんか良いよな!」

 

「お前の意見は一切受け付けん。変態は巣に帰れ」

 

「ここ! 俺が帰るのここ!」

 

 ちっ、そうだった。

 

「でも、否定はしないんだ?」

 

 ヨウトがにひひと、笑いながら言ってくる。

 それに対して俺は無言で返す。が、もちろん放っておくつもりは毛頭ない。

 

「ミウ、アスナ。ヨウトが試しにソードスキル受けてみたいって。それも連続で」

 

「ちょっ! それ洒落になんないから!!」

 

 真面目に慌てるヨウトを見て、ははは、と笑いが起こった。

 

 

 

 

「キリト、楽しめてる?」

 

 その後さらに盛り上がっているなか、一人だけ隅の方で静かにしていたキリトに近づいて聞いた。

 するとキリトは柔らかく笑う。

 

「あぁ、すごく楽しい。悪いな、こういうことあまりなかったからちょっと着いていけてないだけだ」

 

「そう、なら良かった」

 

「それだけを聞きに来たのか?」

 

「いんや、俺もちょっと小休憩」

 

 キリトが座っている隣の椅子に座る。

 3人がいる方を見ると、相当気に入られたのか、アスナはミウにずっと弄られている。可哀想に。

 ヨウトはヨウトでそんな状態を盛り上げてもっとやれ~、とか言ってるし......おっさんか。

 さすがに俺はそんな空気のなかにずっといられるような精神はしてないです。

 

「なぁ、コウキ。ボス戦最後の君の動きだけど」

 

「あ、あー、あれ」

 

 《ソニックリープ》で上空に上がり、《バーチカル》で叩くというあれだ。

 

「正直、なんであんなことが出来たのか分からないんだよな」

 

 断言しても良い。今ここでもう一度やれ、と言われても間違いなくできない。

 ......なんで俺は残念な方向に断言しているんだろう?

 

「やっぱり......」

 

「やっぱり?」

 

 え、やっぱりお前にはそんなことできないだろう的なことですか?

 確かに事実だけど少しショックです。

 ......まずい、俺もなんか場の雰囲気に当てられてるのか、考えが明後日の方向に飛びやすくなってる。

 

「コウキ」

 

 キリトは俺に向き直って言う。

 俺もこのままではまずいと頭を振る。

 

「君は多分、何かの拍子にスイッチが入る《クラッチャー》なんだと思う」

 

「《クラッチャー》?」

 

「うん。今回のあの攻撃方法、普段はできないはずなのにあの時は出来たんだろう? そんなふうに突然人が変わったように実力を発揮する人とかをそう呼ぶらしいんだ」

 

「それは......極端に言うとすんごい集中状態、ってことか?」

 

「確かに、スポーツで言えばゾーンだとか言われる部類の一つだと思うよ」

 

 今回のスイッチは長時間に渡る集中状態というのがキリトの見解だそうだ。

 自分が少し特別っぽくて嬉しい反面、こんな言い方をされると微妙に不安になってくる。

 

「えっと......それってもしかしてなんかヤバイの?」

 

「いや、特には」

 

「......へ?」

 

「ゲームにしろ、スポーツにしろ、そういう人は結構いるらしいしね」

 

 うーん、安心した反面、自分に実は隠れた才能が! とかっていう展開ならなくてちょっと残念......って、さっきと言ってること逆になってるし。

 

「でも、君の場合それが顕著すぎるんだ。君も言ったけど、自分でも驚くほどの実力の振れ幅っていうのは逆に言えば自分の力を扱いきれてない、ってことだから。気を付けた方がいい」

 

 なるほど、つまり力が強すぎるから気を付けろと。違うか。

 って、そんなわけないよな。そもそも集中力がちょっとすごいってだけっぽいし、俺がその《クラッチャー》ってやつだったとしても、ボス戦の時もスイッチが入ってやっとミウやキリトに着いていけるってレベルだったしな。

 

「まぁ、一応気を付けるけど......でもそんなほいほいできるもんじゃないんだからあまり心配ないんじゃないか?」

 

「うん、まぁね。どっちかっていうと念のためかな」

 

 結論。僕にはやっぱり特別なものは一切ありませんでした、まる。

 まぁ、分かってたけどね、はぁ。

 

「おーい、ボス戦の立役者がなに隅っこにいるんだ?」

 

「コウキもキリトもこっち来て一緒に遊ぼうよ!」

 

「お願い!! 私一人じゃどうにもならないのよ!!」

 

 ヨウト、ミウ、アスナの順で声をかけてくる。

 アスナのやつ大丈夫か? 本気で疲れきってるし......

 俺は苦笑いする。

 

「分かった、今行く!」

 

 3人にそう言って腰を浮かす。

 あ、そうだ。

 同じように3人に苦笑いを向けているキリトの方を向く。

 

「ノリに任せてれば勝手に楽しくなってくると思うよ」

 

 言って俺は3人の方へ歩いていった。

 すぐに振り返ってしまったから分からなかったが、なんとなくキリトが微笑んだ気がした。

 

 

 

 

 それからはキリトも交えてはしゃぎまくった。

 ヨウト主催の大暴露大会(俺とアスナで全力で潰させてもらった)や、ミウ主催のゲーム大会(こちらも俺とアスナで全力で潰させてもらった)やミウ&ヨウト主催の模擬戦大会(俺とアスナで以下略)等々。

 とにかくはしゃぎ?まくった。

 

「今日は楽しかったね」

 

 そしてその祝勝会の帰り、今日もまたミウを送っていた。

 他のメンバーとの別れは。互いにまた会おう、と言って別れた。

 その時まで忘れていたが、このパーティはボス攻略に限り、だ。

 ボス攻略が終われば解散となる。

 ボス戦終わったあとも思ったけど、このパーティって作ったばっかなんだよなぁ...すごい違和感。

 

「普段の攻略もみんなでいられたら良かったんだけどな」

 

 そうすれば毎日が今日のようにばか騒ぎ、攻略も余裕が出てくる。楽しそうだし効率的、まさに夢のようだ。

 ま、あくまでも仮の話だけど。

 そう思っていたのだが、

 

「へっ......? あ、うん。そうだね」

 

 なぜかミウは少し戸惑ったような反応だった。

 

「ミウまさか、その手があったか! みたいなこと考えてないよな......?」

 

 俺は冗談のつもりでみんなと、って言ったんだけど......

 確かにミウさっきすごい勢いで楽しんでたから考えててもおかしくはないけど......

 だが、俺が思っている以上にミウは慌てていた。

 

「い、いや、そうじゃなくて!」

 

「? ミウ、どうしたんだ?」

 

 慌てるにしても少し慌てかたがおかしい。

 何かあったのかとミウに声をかけようと思うが、そうこうしているうちにミウの部屋の前まで着いた。

 

「あ、送ってくれてありがと! おやすみー!」

 

「え、ちょっ、ミウ!?」

 

 俺の声など聞かずに、ミウはそのまま自分の部屋に入ってしまった。

 なんだったんだろう?

 まぁ、大変、ていう感じの雰囲気じゃなかったし、大丈夫......なんだろうか?

 微妙に思考に引っ掛かっていたが、俺は自分の部屋に帰った。

 

 

 

 

 Side Miu

 

 ボフッ。部屋のベッドに頭からダイブする。

 妙に体、というより頭が重い。

 ......私、どうしたんだろう?

 今日の祝勝会は本当に楽しかった。この世界に来てから初めて本当の意味で楽しめた気がする。

 ボス戦も大変だったし...疲れが出たのかもしれない。

 ゴロンと寝返りをうち、今度は天井を見る。

 落ち着かない。

 何かはしたいのに、何かに縛り付けられてしまったかのように体が思うように動かない。

 なのでとりあえず何かを考えるのだが......

 何度も何度もリピートされるのは先程のコウキとの帰り際の会話。

 

『普通の攻略もみんなでいられたら良かったんだけどな』

 

 コウキがそう言ったとき、確かにその通りだと思った。

 大人数はあまり好きじゃないけど、あのメンバーならそれもありかなと思った。

 絶対に楽しい毎日になると。

 思ったのに......

 一瞬、嫌だと思った。

 今のままの方がいいと思った。

 なんで誰かを入れようとするの? って子供じみたことをコウキに言いそうになった。

 なんで? いいと思ったはずなのに。実際今日の朝までは一時的に組んでいたはずなのに...

 

「はぁ......」

 

 どうしたんだろう? 私。

 

 




1層攻略後日談でした。
まぁ、後日、といっても日付的には変わってないんですけどねw
さぁて、本編で明に変な特殊能力でもつくのか? と思ったら特にそんなこともなく。
結局なにも変化はなかったですね。
ちなみにあの《クラッチャー》というのはキリトさんにも少し当てはまるものです。
まぁ、要は主人公属性みたいなものですね。
でも実際にリアルでも急にスイッチが入って人が変わったようにすごいことしだす人いますよね?
私の場合スポーツの部活でそんな人がいました。

さて、ここからどう物語が進んでいくのか! お楽しみに~(さぁ、早く考えねば...)
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