力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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11話目です!!
前回までが少し長めだったので、今回は少し短めのお話です。
それではどうぞ!


11話目 寝起きの無自覚ドラマ

「攻略に行こう!」

 

 1層《はじまりの街》。俺の部屋にて。

 現在時刻午前6時。めっちゃ朝である。

 

「どうしたんだよ......ミウ...こんな時間に...?」

 

「だから攻略に行こう!」

 

 朝からドアをノックされまくって起こされた俺である。

 そんな状態だから、もちろんまともな受け答えは難しい。

 俺は回らない頭を必死に回して、なんとか眠気を払いながらミウと何か約束したかを思い出す。

 うー............はっ......寝かけてた。

 えーと。

 

「まだ...約束の時間じゃないよな......?」

 

「うー、そうなんだけど......」

 

 ミウがもどかしそうな顔になる。

 相手がヨウトなら無視を決め込むか、はっ倒していたところだが、ミウならば無下にもできない。

 このままでは寝てしまいそうだ。右手で左手の甲をつねって眠気を覚まそうとするが、この世界にはほとんど痛覚がなかったことを辛うじて思い出して断念。

 とにかく......何か動いていないと寝てしまいそうだ。

 

「じゃあ...準備するから......朝は寒いし...部屋上がって待っててよ......」

 

「ふぇっ!? へ、部屋に!?」

 

 この世界の気候は外の世界と同じだ。

 12月下旬。朝どころか昼も夜も普通に寒い時期だ。

 こんな寒空の下待たせるだなんて、ヨウトぐらいにしかしない。

 

「ドア...閉めといて......」

 

 ミウがどこか雰囲気が違うような気がしたが、申し訳ないことに眠すぎて何か聞くのも億劫だった。

 俺はノロノロフラフラと歩きながら部屋のなかに戻っていった。

 ミウが入ってくるのでベットで着替えるわけにもいかずに、脱衣場で着替えることにした。

 と、言ってもこの世界での着替えはウィンドウ操作だけなので時間はかからないが。

 ミウの前で着替えないのは......一応の配慮だ。

 

「お、お邪魔します......」

 

 おそるおそるといった感じのミウの声が聞こえてきた。

 早くしないと............。

 

 

 

 

 Side Miu

 

 ここがコウキの部屋か......

 広々してるというより、物が少ない感じかな。

 でも、なんかこの無駄を削った感じがコウキらしくて、なんか落ち着くかも。

 部屋は基本的に、テーブル、椅子、ベッドに小さなタンスが1つしか目に見えるものはない。

 そういった家具一つ一つにコウキらしさや、新しいコウキの一面が見受けられて......なんだろう? ワクワク、でいいのかな?

 一昨日、コウキも私の部屋に来たときこんな気分だったのかな?

 私は落ち着きながらも緊張しているという不思議な状態になりつつ、部屋を見回していたが。

 バタン!

 

「ひゃい!!」

 

 何かが急に倒れたような音がどこかから聞こえてきた。

 き、急に物音がしたから変な声が出ちゃったよ!

 もう一度回りをみまわすが、特に変化はない。

 ってことは、他の部屋かな?

 そう思い、外へと繋がる扉以外の唯一の扉を開けて、他の部屋を覗いてみる。

 

「コ、コウキ~?」

 

 ふと思ったけど、自分の家でもないのにこんなに出歩いてしまって失礼なんじゃないだろうか?

 ............よし、私はなにも考えてない!

 とりあえず今は礼儀とかはどこかにしまっておいて、好奇心を表に出そうと思う。

 そして今度こそ扉の先を覗いてみると、そこは脱衣場だった。奥にはシャワー室も見える。

 先程同様、物は少なかったが、問題がひとつ。

 

「コウキ!?」

 

 脱衣場の床に、コウキが倒れていたのだ。

 

 

 

 

「......これで、いいのかな」

 

 倒れていたコウキに近づくと、ただ眠っているだけなのが分かったので、ベッドに運んだ。

 ここがSAOのなかでよかったよ......

 SAOのなかなら、物を運ぶときもステータスによって運べるかどうか決まる。

 敏捷力に多めに振っている私でも、武器を装備していない人1人ぐらいならば楽々に運べる。

 それにここなら風邪を引くということもないから病気で倒れた、という可能性もなくなる。

 ......でも、それはつまり私が無理に起こしたせいってことだよね。

 よくよく考えれば昨日もボス戦で早起き、その後のボス戦、夜中まで祝勝会とハードスケジュールだったのに......

 

「私はいつも考えなしだなぁ」

 

 独り言が虚しく部屋に響く。

 1人でいると変に考え込んじゃうし、そう思って何か体を動かそうとコウキのところに来て顔見たらまたテンパっちゃうし。

 いつも私ばっかコウキに迷惑かけて......

 

「はぁ」

 

 自分のあまりの不甲斐なさにため息が出る。

 ......そう言えば、あってすぐの頃はコウキよくため息ついてた気がする。

 あれも、私が迷惑かけてたからかなぁ。

 コウキの顔を見ると、眠りが深いのか気持ち良さそうに寝ている。

 ......コウキに悪い、とか考えてるくせに、コウキの顔を見てると落ち着くのはどうなんだろう?

 

「ふぁ~」

 

 つい、あくびが出てしまった。

 まずい、落ち着いたら眠くなってきた。

 昨日もずっと悶々としていたせいであまり眠れなかったし......

 目の前を見れば、気持ち良さそうなベッドが。

 いくらなんでも寝るのが不味いのは私でも分かる。

 だがら、そう、目を瞑るだけ。確か人間っていうのは目を瞑っているだけでも幾らか疲労回復に繋がるって何かで読んだ気がする。

 コウキが起きたときに私が眠そうな顔をしていたら失礼だ。

 これは必要なことなのだ。

 私はコウキが眠っているベッドに寄りかかる形で、少しだけ、と唱えながら目を瞑った。

 

 

 

 

 Side Kouki

 

「ん、ん~?」

 

 意識が少しずつ覚醒していくにつれ、体の節々に感覚が戻ってくる。

 それにあわせて寝転がったまま体のパーツを一つずつ伸ばしたり曲げたりする。

 よく寝たなー。今日も頑張りますか~。

 

「ん?」

 

 体を伸ばしている最中、右腕を伸ばそうとした瞬間に何か違和感があり、その方向を見ると。

 ーーミウがベットを机代わりのようにして眠っていた。

 

「なっ、んぅ!?」

 

 叫びそうになったが、起こしてはまずいと思い、ギリギリ口を抑えることに成功した。

 なんでミウがこんなところに!?

 俺の脳が混乱しそうになるが、なんとか押さえ込む。

 落ち着け、まずは落ち着け。何をおいても落ち着け。

 部屋を確認する。俺の部屋で間違いない。

 ベッドを確認する。俺のベッドで間違いない。

 ミウを確認する。俺のミウでーーって、違うだろおい!!

 

「んぅ~」

 

「......っ!」

 

 ミウが唸り声を出す。

 一瞬起きたかと思って身を固くするが、そのままミウはむにゃむにゃ言って寝ていた。

 安堵のため息をつきつつ考える。

 本当に、なんでミウがここに......

 とりあえずミウと何か約束をしていたか、もしくは寝る前にミウと何かあったかを記憶から検索するが、これといって情報は出てこない。

 ......ん? なんか前にもこんな考えしたような......

 妙な既視感に首を捻りつつミウに布団をかける。

 風邪を引くということもないだろうが、まぁ、気分の問題だ。

 

「..................」

 

 ま、まぁ、寝顔なんて見ても何も分からないけどさ!? こうやって見たら本当に女の子だなぁ、とか微塵たりとも考えてないけどさ!?

 ダメだ。寝起きのせいか頭のネジが緩みきっている。

 さっきから言っているではないか。まずは落ち着かなければ。うん、それが一番だ。

 大きく吸ってー、吐いてー、もう一度大きく吸ってーー

 

「んん、コウキー......」

 

「ぶふぅ!?」

 

 くそっ!? 深呼吸が裏目に出た!!

 ていうか寝言かよ!? 焦った......

 ミウ......このタイミングでその寝言って少し悪どすぎません? 実は起きてるとかないよな......

 人の寝言で自分の名前が出てきたことに対して微妙にむず痒くなっていると、

 

「......あれ? ......コウキ?」

 

 全身の血がサァーっと冷えていくのが分かった。

 あれ? おかしいな。俺何も悪いことしてないはずなんだけどな...

 

「コウキ? ......コウキ ......コウキ!?」

 

 ミウの顔がみるみるうちに赤くなっていく。

 そしてめちゃくちゃ慌てた表情で、バッ!!と自分にかかっている布団、その下の自分の服、俺の部屋を見る。

 しかも相当テンパっているのか、一度見たはずの場所を何度も見たり、とにかく視線と頭が常に動き続けている。

 さっきミウの服を見たとき、普通の攻略に出るための軽装だったし、乱れてもいなかったので......その、そういった行為に及んだということはないようだが(そもそもこの世界のなかでできるのだろうか?)、この部屋にいるということは俺が招き入れたのは事実だ。

 

「あ、あのさ、ミウ。信じてもらえないかもしれないけど、俺、何も覚えてなーー」

 

「わわわ、ご、ごめんなさーーーーーーーーーーい!!!」

 

 なんとか弁明しようとしたのだが、それよりも早くミウが俺の部屋から出ていってしまった。

 ......本当に、どういうこと?

 

 

 

 

「なんだ、そういうことだったのか......」

 

「うぅ、ごめんなさい」

 

「いや、こっちこそごめん。それにありがと、ベットに移してくれて」

 

 あのあと、ミウが自分の部屋に籠城したので、2時間ほどミウの部屋の前で説得したのだ。

 その甲斐あって、無事無血開城となった。

 そして今は店の外のベンチで遅めの朝ご飯を食べながら事情を聞いているところだった。

 まぁ、ことの顛末は分かったのだが......

 

「それで、なに悩んでたんだ?」

 

「え、えーと、それは......」

 

 聞いた瞬間再びしどろもどろな感じになるミウ。

 頭のなかが大変なことになっているのか、慌てようが半端ない。

 ......昨日は大したことないなんて結論付けたが、そんなことはなかった。

 大概のことは笑顔でいるミウが、ここまで慌てて、錯乱しているのだ。大したことがない訳がない。

 ミウはこんな俺も助けてくれた。俺だってミウの力になりたい。

 ......だからこそ。

 

「ま、話したくなったら話してよ」

 

 一度は距離を置く。

 

「え......?」

 

 ミウは驚いたような、少し安心したような顔をしている。

 

「ミウもさ、俺が悩んでたときすぐには聞かずに俺に考える時間くれたじゃん? それと同じ。ミウが言いたいときに俺はなんでも聞くし、相談に乗るよ」

 

 一昨日、ミウには本当に助けられたのだ。だから俺もミウの力になりたい。だからこそ今は踏み込まない。

 前のときのように、俺では無理だ、というマイナス方向の考えではない。

 中途半端ではなく、100パーセントミウの力になりたいから、今は踏み込まない。

 ミウがまだ言える状態でないのなら、その時が来たらミウのように全部受け止めればいい。

 それが、俺のミウに対する誠意、そして、ミウ風に言うところの『家族』の証だと思うから。

 ミウはしばらく呆けていたが、すぐに微笑む。

 

「......うん! 私も、コウキに言えるようになったら話す。ありがとう!」

 

 ミウの声が、僅かだが震えていたのはご愛嬌だろう。

 




さて、前回の終わりから引き続き、ミウさんの混乱などにスポットライトを当てた話でした。
少しずつとですが、ミウさんの心境にも変化が現れてきましたね。
それと同時に、コウキくんの心境の変化も書いてみました。
あのミウさんに抱き締められるというなんともうらやまけしからーーーーもとい、ちょっと感動のシーンから、コウキくんはミウさんをどのように認識して、前とどう変わったのか、というのが分かっていただければ幸いです。


次回からはまさかの急展開....だと思います。
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