力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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14話目です!

前回言い忘れましたが、ついこの間UA2500を越えました!
少しずつとですが、読んでくれている方も増えているようで嬉しい限りです!
お気に入りも先日25人を越えてくれて、もう天にも昇る気分です!
今度は評価もしてもらえるよう、今後も頑張っていきます!!

それではどうぞ!


14話目 コウミウ戦線異常有り

「ミウや~い」

 

「......」

 

 返事がない。ただの屍のようだ。

 とかボケている場合ではない。どうしよう?

 俺たちは今街からフィールドに移動していた。

 ニックとのデュエルのあと休憩がてらミウと相談した結果、今日もやっぱり少し攻略に出ようということになった。

 そこまではよかったのだが、時間が経つにつれてミウの口数が減っていったのだ。

 ここ最近《ミウ観察》スキル(変態的な意味ではなく)の熟練度が上がってきている俺の目によると、別に怒ってはいないように見える。

 なんというか、照れながら拗ねている、みたいな。

 さっきニックに対しての子供みたいな態度を俺に見られたせいか?

 どうしたものか......と考えているうちにフィールドに出る門の前に来てしまい、気持ちを切り替えるため一時的に思考を放棄せざるをえなかった。

 

 

 

 

 どうも2層はほとんどが森で構成されているらしい、というのがここ数日の攻略でわかった。

 周りどこを見ても、木、木、草、木、草。

 しかも1層のネペントの森と比べると、本当に自然の森、といった感じで、今立っている場所もほとんど獣道のようなものだ。

 正直気が滅入る。が、今はそんなことよりもさらに気が滅入る要因があった。

 

「うわぁ......」

 

 本当、その一言しか出ない。

 この2層は1層とは違い、《リザードマン》と呼ばれる人型のとかげのようなmobがポップする。

 その《リザードマン》にも種類があり、ただの普通の《リザードマン》、曲刀や片手剣を持っている《リザードマン・ソード》、盾を持っている《リザードマン・シールド》と言った具合だ。

 しかもこの《リザードマン》、毎回3匹以上の群れでポップするのだ。1匹のステータスは低くても、こうも纏まってこられては面倒なことこの上ない。

 ......ということに、なっているはずなのだが。

 

「はっ!!」

 

 ミウの攻撃によって本日『30匹目』の《リザードマン》がポリゴンになり、霧散する。

 確かに先程ステータスは低いとは言ったが、そんなポンポン倒せるような相手ではない。むしろ群れになってコンビネーションで攻めてくるので、厄介さとしては今まで戦ってきたmobのなかでもかなり上の部類だろう。

 それをミウはいとも簡単に倒してみせる。

 ちなみに俺たちがフィールドに出てからまだ1時間とちょっとだ。

 

「うーむ」

 

 これは1時間で30匹も連続してポップする《リザードマン》のポップスピードがすごいのか、1時間で30匹も倒してみせるミウがすごいのか......

 

「間違いなく、後者だろうなぁ」

 

 はぁ、少しは追い付いたと思っても、毎回自分とミウの力の差を思い知らされる。

 そうやって俺が落ち込んでいる間にも、ミウはまた1匹倒した。

 ちなみに俺はまだ9匹である。

 

「ナイス、ミウ」

 

 俺は手の甲をミウにつきだす。ミウもそれに合わせるように自分の手の甲を当てた。

 うーん、このハイタッチもどきには応じてくれるんだけどなぁ......

 

「......」

 

 ミウが終始無言なのが怖い。

 しかも、この1時間の間になにか心境に変化があったらしく、表情が拗ねた感じから悩む感じに変わっていた。

 当たり前のこととはいえ、ミウの気持ちが分からないのが少しもどかしい。

 ミウも俺がヨウトのことで悩んでいたとき、こんな気持ちだったのだろうか。

 

「はぁ」

 

 自分は散々ミウに心配かけたというのに、俺がこの程度でため息をついてどうする。

 俺はすぐに気を引き締めるが、どうしても思考の隅にはミウのことが浮かんでくる。

 結局、なんとなくイライラしてきた気持ちをどうにかするべく、ポップした《リザードマン》に八つ当たりを決行する俺だった。

 

 

 

 

 

 さらに1時間ほど経つと、日も暮れてきたので今日の攻略は終わりとなった。

 今は街に戻っている最中だ。

 ...はぁ、よかった。

 先ほどミウに今日は終わりの旨を伝えたところ、

 

「......お疲れさま」

 

 と、一言だが小さく微笑みながら返してくれたのだ。どうやら《リザードマン》たちを倒しまくっていくらかストレス解消できたらしい。

 なぜあんな状態になったのかは今も謎だが、少なくとも嫌われた、という最悪の事態には至っていないらしい。

 でも、いつもとのギャップがありすぎて辛いな......いつもならミウが盛り上げてくれるから沈黙とか全然できないし。

 なんとかならないかな? 甘いものあげるとか。

 

「おー、二人ともこんなところで会うとはナ」

 

 失礼とわかりつつも、俺が完全にペットかなにかに対しての思考を繰り広げていると、背後から声がかかった。

 この特徴的なしゃべり方は......

 俺とミウが振り返ると、そこには予想通りの人物が予想通りのにやけ顔で立っていた。

 

「お二人さン、元気そうで何よりダ」

 

 

 

 

 

 その後、二言三言話し、アルゴも街に戻るところだったので俺たちは道を共にしていた。

 アルゴとは初めて会ったときからもちょくちょく会っている。というか、向こうから会いに来る。

 こちらも貴重な情報を買わせてもらったりしているので無下にはできないのだが、あまりにも頻繁に会いに来るので、そんなに会いに来て楽しいか?と聞いたところ、

 

「いいんダヨ。実益と趣味を兼ねてるカラ」

 

 とのこと。実益というのは今言ったように俺たちが買っている情報のことだろう。

 趣味は...俺を弄ることだろうなぁ。間違いなく。

 会うたびにアルゴに弄り倒されているので、俺はアルゴのことが少し苦手だったりする。

 そしてアルゴが楽しむことと言えばもう一つ心当たりがある。

 

「ミーちゃン、最近なにか面白いことあったカ?」

 

「うーん、最近かぁ......そういえば! 昨日コウキがねーーーー」

 

 それはミウとの会話だ。

 ミウとアルゴはすごいフィーリングがあったらしく、互いに親友です、と言っているほどだ。

 楽しそうなことは何よりなのだが......ミウの機嫌がいつの間にか元通りになっているのが気になる。

 いや、アルゴのお陰でよくなったと感謝したいんだけど、自分じゃ何も出来なかったのが少し悔しい。

 そんな悔しがっている俺は、ポップしてくる《リザードマン》が二人の会話を邪魔しないように護衛している。男女格差ナウ。

 

「そうダ、コー坊、あのニックとデュエルしたらしいナ」

 

「えっ、もう情報出回ってるの?」

 

「いや......コウキ、あんな人目につく広場でデュエルしてれば情報なんてすぐに回るんじゃ......」

 

 うぐっ、確かに......今思えばせめて場所ぐらいは変えるべきだったかも。

 集中していて気づかなかったが、もしかすれば意外と観客もいたのかもしれない......うーわ、恥ずかしすぎる。

 ミウの説明に唸っていたが、ふと気になったことがあった。

 

「アルゴ、『あのニック』ってどういうことだ?」

 

「アリ? コー坊たち知らないでニックなんかとデュエルしたのか?」

 

 俺は頷き、ニックのことならば知っていて損はないと思い、アルゴにニックとの出会いを話した。

 するとアルゴは納得したように声をあげる。

 

「アー、なるほド。キー坊が二人と組んだって言ってたからもう知ってるのかと思ってたヨ」

 

「キー坊って......もしかしてキリト?」

 

「そうそウ」

 

 ミウの質問にアルゴが答える。

 ......この人、本当に顔広いな。

 いや、でも確かにボス攻略時点で最高レベルだったキリトが、アルゴと接点がない方がおかしいか。

 しかも二人とも(アルゴの方は推測だが)元βテスター。互いのことを知っていても何もおかしくはない。

 プレイヤー1万人って言っても、意外と狭いんだなぁ......じゃなくて。

 

「で、ニックのことは?」

 

「っト、悪い悪イ。ニックがβテスターってのはもう知ってるんだったよナ?」

 

「あぁ」

 

「ニックはβテストのとき、キー坊と並んでテスターのなかでもトップだったんダ」

 

「「なっ!?」」

 

「というカ、純粋な戦闘力じゃ俺の方が弱いってキー坊から聞いたしナ」

 

 キリトよりも強いって......

 キリトだって異常な強さを誇っていたし、それはミウに動きについていけない時があると言わせるほどだ。俺の目線から言わせてもらうなら、もう完全に雲の上レベルの人物だったのだが。

 確かにさっきの戦闘でも強いとは思ったけど、まさかそんなに上にいたなんて......

 改めて、先ほどの戦闘がどれだけ危険だったのかを実感し、身震いする。

 

「さテ、こっちは話したから今度はそっちの番ダ」

 

 ......なるほど、さっきから妙に羽振りよく情報をくれると思ったら、そういう魂胆だったか。

 商品だけ先に届けて後払いさせるとは、良いところついてくるなぁ......

 

「......なんなりとどうぞ」

 

 俺の言葉に気をよくしたのか、アルゴがニヤーっと笑う。ドSにもほどがある。

 

「コー坊とニックのデュエルはどんな感じだったんダ?」

 

 そうきたか、というか普通負けたやつにそんなこと聞くか? まだ出来立てホヤホヤの傷を抉る気満々ですか?

 まぁ、あの戦いは俺も勝とうと思って戦っていた訳じゃないから良いけど......(半分負け惜しみなことは自覚してる)

 もしかしたらアルゴもその辺をなんとなく察して遠慮なしに聞いてきているのかもしれない。

 本当、アルゴには心理戦で一生勝てない気がする。

 

「でも、俺から言ってもただの主観にしかなんないぞ? なんたって負けた本人なんだし」

 

「まァ、それでもいいんだけどナ......なら、ミーちゃんも見てたんだよナ? どうだっタ?」

 

 げっ............

 アルゴがミウに話を振ったのでミウを見ると......やっぱり。

 

「どうもこうも、コウキ頑張ってたよ」

 

 そこにはまたつまらなさそうな顔をしたミウがいた。

 うーん、やっぱりニックに反応して不機嫌になってる感じだよな......

 

「そんなにニックのこと嫌いなのか?」

 

 先ほどから気になっていたことを聞いてみる。

 確かにニックとは初対面なのにこれでもか、というほどに嫌悪感を露にしていたミウだが、そんな胸ーーげふんげふん。体の一部で誰かを嫌いになるほどミウはひねくれた人じゃないと思うんだけどな。

 するとミウは少し視線を逸らしつつ言う。

 

「だってあの人、私がずっとしたくてもできなかったことを、あんなに簡単にやり通しちゃうし......」

 

「したかったことって?」

 

「秘密」

 

 うおい、バッサリですかい。

 いつものミウらしくない言葉に驚いたが、ミウの次の言葉にさらに驚かされる。

 

「それに、コウキもなんかあの人になついてるし」

 

「へ、いや! なついてるとかじゃなくてですね! なんかこう、そう! 尊敬みたいな!!」

 

 必死に弁解するが、ミウは聞く耳持たずにそのままそっぽを向いてしまった。

 うわぁ、なんかヤバイ。今まで会話が成立してたぶん、さっきの沈黙空間よりもダメージでかいぞ。

 俺が女々しく軽く涙目になりかけていると、

 

「はーイ、二人ともそこまでデー」

 

 俺たちの間にアルゴが入ってくる。

 

「とりあえずコー坊、街についたけどもうちょい話し聞きたいカラ、なにか食べ物買ってきてくれないカ?」

 

「へっ......あ」

 

 気づくといつの間にかフィールドから街まで移動していた。どうやら話しに夢中になりすぎて気づかなかったようだ。

 ミウのことも気になるけど......今はアルゴに任せておいた方が良さそうだ。おそらく今俺がなにを言っても逆効果だろうから。

 女子の悩みは女子の方が分かるに決まっている。

 

「分かった。でも、二人はどこにいるんだ?」

 

「オレっちたちはコー坊の部屋でのんびりしとくヨ」

 

 この前の朝のことからミウは覚えていないようだが、それぞれの家や部屋は鍵がかかっていても許可なしに入ることのできるプレイヤーの設定ができる。

 初期設定では、持ち主しか自由に開けられないが、設定を変えることでパーティーメンバーなら自由に開けることができるようになるのだ。

 この前開けられるようにしておいた方がなにかと便利と言っていたのはミウなんだけど......そういえばなんで俺、ミウのノックで起こされなきゃいけなかったんだろう?

 まぁ、この前の様子ーー覚えていないがーーじゃあ、仕方ないか。

 それとアルゴを部屋にあげることは少し不安が残るが......ミウが一緒なら大丈夫だろう。

 

「了解。んじゃあとでまた」

 

「いっぱい買ってこいヨー!」

 

 俺はアルゴの声を聞きつつ、どのあたりに甘いものが売っていたかを全力で思い出しながら街を歩くのだった。

 

 

 

 

 

 SIDE Argo

 

「さテ」

 

 オレっちとミーちゃんは、コー坊の部屋の中央に向かい合うように座っている。

 コー坊と別れたあと、ミーちゃんに案内してもらったのだ。

 ......なるほど、ここがコー坊の部屋か、情報として売れる......わけないか。ミーちゃんぐらいしか売る相手が思い付かない。

 

「ねぇ、アルゴ。何か用があるんじゃないの?」

 

 おっとっと、職業病か思考が少しずれちまった、お姉さんうっかり☆。

 

「あァ、そうダ。ミーちゃんがちょっと大変そうだったからナ」

 

 ......それにしても、コー坊から聞いてはいたが本当に勘がいいな。普段のミーちゃんは少し天然なところもあるから想像がつかなかった。

 まぁ、それはいい。また新しいことが一つ分かったということでよしとしよう。

 

「デ、何があったんダ? コー坊は男だからなかなか言えないこともあるだろうが、お姉さんなら大丈夫だろウ? 何でも話してミロ」

 

 オレっちの言葉にミーちゃんが少し逡巡する。

 ここですぐに言ってこないということは相当根深そうだな。そうでなければそもそもすぐにコー坊に相談しているか。

 そしてミーちゃんはゆっくりと口を開く。

 

「......なんか、最近色々分からなくてイライラする」

 

 ミーちゃんは眉間にシワを寄せていった。

 

「さっきコウキに言ったこともそうだけど......」

 

「コー坊に秘密って言っていたことカ?」

 

 ミーちゃんが頷く。

 

「......私は、コウキの力になりたいと思ってた」

 

 本人が聞いたら遠慮しまくりつつ内心で泣いて喜びそうだな。

 そんな考えを抑え込み、目でミーちゃんに先を促す。

 

「それなのにニックさんは、強引な方法だったけど、いとも簡単にコウキの力になってみせたんだ」

 

「それが悔しかったのカ?」

 

 ミーちゃんが再び頷く。

 

「それに、羨ましかった。私には弱み......みたいなもの全然見せてくれないのに、ニックさんには簡単に見せるんだもん」

 

 オレっちはつい苦笑いしてしまった。

 コー坊の話を聞く限り、確かニックにボロボロにされたって言っていたけど......ボロボロにされたことを『簡単』で済ませるのはどうかと思うぞ?

 それにしても、なんか極端だな。

 最初会ったときはコー坊はもちろん、ミーちゃんですら必要以上は踏み込まないようにしていたのに、今のミーちゃんは可能な限り全力で踏み込もうとしている。

 そういうところはオレっちやコー坊にはない、ミーちゃんのいいところだ。

 

「あと、コウキに子供っぽいところ見られたし! しかもそのあと慰められたし!!」

 

 ......なんか段々愚痴になってきたな。

 でも、結局それが答えなんだろう。

 要はストレスのはけ口みたいなものがなかったのだ。

 普段ならコー坊に相談するところが、その本人が悩みの原因だから相談できるわけもなく。

 ミーちゃんはコー坊とは違う意味で不器用だよな、何事にも全力過ぎるというか......

 ......仕方ない。少し手助けしてやるか。

 

「じゃア、仮の話しとしてダ。ミーちゃんがなんか困り事があったらコー坊に相談するダロ?」

 

「うん」

 

 ミーちゃんは迷わず頷く。

 ......そんなにすぐに頷けるのなら、いっそのこと今回のことも相談すればいいのに。

 まぁ、それは置いておいて。

 

「相談したらコー坊はどうすると思ウ?」

 

「うーん......心配して一緒に考えてくれそうかな?」

 

 コー坊ならそうするだろうな。

 だが、ここで問題になってくるのはコー坊はミーちゃんとは違って、アホみたいに自分の優先度が低いということだ。

 

「そこだと思うゾ?」

 

「へっ?」

 

「コー坊も自分の悩みをミーちゃんに相談しタラ、ミーちゃんが心配すると思って相談しなかったんだと思うゾ」

 

 いかにもコー坊が考えそうなことだ。自分で言っておいてなんだが、すごい納得できる。

 こんなことでミウに心配かけられない!! って感じか。

 さらに付け加えるとするなら、コー坊は一人でいることを望むタイプだ。相談する、という他人と明確な繋がりを表す行動をしたくなかったのかもしれない。

 本当にコー坊は面倒な性格をしてる。

 オレっちの言葉にミーちゃんは納得できないというように不満顔になる。

 

「でも、そんなことーー」

 

「コー坊にとっては『そんなこと』じゃなかったんダロ」

 

 ミーちゃんはハッとしたあと、そのまま俯いて黙り込んだ。

 コー坊にそれらしい心当たりがあったのか、それとも自分にも同じようなことがあったのか。それはわからないが、何か思うところがあったのだろう。

 それから少しすると、ミーちゃんは自分の膝を両腕で抱え込みながら言った。

 

「......私、また押し付けちゃったなぁ」

 

「女の子は少しぐらいわがままを言っても許される生き物だゾ?」

 

「ははっ、アルゴが言うと説得力あるね」

 

 そう言うと、ミーちゃんは抱えた膝に顔を埋め込み、

 

「......そっか」

 

 小さくそう言った。

 自分の中で何か区切りがついたのなら何よりだ。

 コー坊もさすがに可哀そうだったしな。

 ......さて。

 

「ミーちゃン、オレっちが前に言ったこと覚えているカ?」

 

 少ししんみりとした空気を入れ換えるように、あえて明るい声質で聞く。

 というか、オレっちとしてはこちらの方が本題だ。

 

「うん、勿論。あれどういう意味なの?」

 

 ミーちゃんは膝から顔を出して聞いてくる。

 前聞いたことというのは、自分の気持ちを理解しておかないと~というやつだ。

 やっぱりまだ答えまでは行ってなかったか。でも普段の感じからまったく分からないって訳じゃなさそうだ。

 うーん、もうミーちゃんも自覚し始めてるみたいだし教えてもいいんだけど。

 お姉さん的にはもうちょっとこのままの方が面白いし、保留だな。

 

「そうダナ、ヒントならやるゾ」

 

「なになに!?」

 

 すごい食いつき。本当に気になっていたんだな。

 オレっちは人差し指を立てて宙で回すような仕草をしつつ言う。

 

「ヒント1。ミーちゃんがコー坊の力になりたい理由を考えてみるコト」

 

「私が......?」

 

「ミーちゃん、最近イライラするって言っていたケド、最初はモヤモヤだったロ?」

 

「えっ!? なんで分かるの!?」

 

「ニャハハハ、お姉さんはなんでも分かるんダ」

 

 あァ、ミーちゃんも弄り甲斐があるな。

 

「じゃア、それがヒント2。なんでコー坊のことを考えるとモヤモヤするのカ」

 

 すると、ミーちゃんは虚をつかれたように表情を変える。

 

「ちょっと待って! コウキのこと考えるとなんて、私一言も言ってないよ!?」

 

「あレ? 間違ってたカ?」

 

「......間違ってない」

 

 そりゃそうだろうな。

 むしろ間違っていた方が困る。それはそれで面白そうではあるけど。

 ミーちゃんはオレっちを恨めしそうな目で見てくる。それが面白くてつい笑ってしまった。

 

「まァ、こんなところダナ。あとはしっかりと悩めばいいサ」

 

「うー」

 

 ミーちゃんが今度は頬を膨らませて唸った。

 でもこればかりは自分で気づいてもらわないとな。

 

「分かったらメッセージでもいいシ、口答でもいいからお姉さんに報告ナ。当たってたらいいこと教えてやるヨ」

 

「ホント!? よし、頑張るぞー!!」

 

 キー坊たちの方もだが、この二人も見ていて飽きないな。

 ミーちゃんも色々すっきりしたらしく、その後はコー坊が帰ってくるまでガールズトークを楽しんだ。

 

 

 

 

 

「ふゥ」

 

 今日は久しぶりに楽しめたな。

 特にミーちゃんの変わりように驚きまくってたコー坊の反応は面白かった。

 ミーちゃんはミーちゃんでコー坊に自分の態度を謝ろうと土下座までしかけようとするし、それをコー坊が必死になって止めようとするし......

 ダメだ、今も思い出し笑いが......

 オレっちは今、コー坊たちと別れて街の裏道を歩いている。

 昼間は裏道でもいくらか光が差し込むからまだマシだが、夜になれば光はほとんどなく、ホラーがダメな人なら一発アウトな感じに出来上がっている。

 お姉さんは夜も結構忙しいのだ。職業柄、どうしても夜の方が仕事増えるし。

 

「それにしてモ」

 

 本当にあの二人は似た者同士だな。

 互いに甘え下手というか、無駄に辛抱強いというか。

 もう少し楽に生きてもいいと思う。

 まぁ、コー坊の場合、他の要因もありそうだが。

 でも、二人とも少しずつ進んでいるようで何よりだ。

 特にミーちゃん。ミーちゃんは誤解されそうだが、何も男女の機微や恋愛を知らないわけじゃあない。

 人並みにはそういうことも知っている。

 ただ、自分が気に入った人との距離が近すぎて分からなくなっているだけだ。

 何か切っ掛けがあれば、明日にでも自分の気持ちに気付くだろう。

 ......まぁ、実は初めて会ったときはまだ、ミーちゃんがコー坊のこと好きになるとは分からなかったんだけどな。

 何か思ってることはあるんだろう、ということしか分かっていなかったけど、まさか本当に好きになるとは......

 まぁ、それは面白いのでそれでいい。

 となると、問題はやはりコー坊の方だが......

 

「頑張れミーちゃん」

 

 オレっちから言えることはこれぐらいだろう。

 

「すまない、《鼠》のアルゴだろうか?」

 

 背後から声をかけられーー気づいていたがーー振り返る。

 さーテ、お仕事開始といくか。

 

 




はい、主人公がほぼ省かれ回でした。
2話連続してコウキくんの出番がない+少ないだなんて、別にコウキくんに恨みがあるわけではないのですが...コウキくんファンの方、すみません(いるかな? いてくれたら嬉しいな

今回はコウキくんでもミウさんでもない、第3者から見た二人、という感じで書いてみました(なのにコウキくんがいない、何故だろう?
作中でアルゴは楽しんでいましたが、実際この二人の関係って他人から見たら少し歪ではあると思うんです。
すごく仲がいいのに、恋愛の色は見られない、友達という感じも少し違う、なのに距離は近いという非常に微妙な関係。
そりゃあ、アルゴじゃなくても突っつきたくなりますよね。

次回からはちゃんとコウキくんも出ます。
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