力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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17話目です!
ついに来ました! やっと戦闘回に入れます!
テンション上がりすぎて連日投稿です!
ここから少しシリアス回になる予定なので、それではどうぞ!


17話目 地獄級の厄介事

「はぁっ!!」

 

 ギィィィィン!

 剣と『拳』がぶつかり合う、独特な音が響き渡る。

 

「っとっと」

 

 俺の攻撃を正面から防御したミウが俺の攻撃の勢いを殺しきれず、体勢を崩してよろける。

 が、その勢いをそのまま利用するようにその場で回転すると、勢いをつけて反撃してくる。

 右斜め下からの切り上げだ。

 俺はそれに対して、スキルはを発動させた『拳』を叩きつけ剣を弾く。

 

「ふっ!」

 

 つもりだったのだが、『拳』がミウの剣に当たる寸前、ミウは右手に持っていた自分の剣をわざと『手放した』。

 ミウの剣はそのまま重力に従い、手放した位置から落下していく。その結果俺の『拳』は目測を誤り、空を切る。

 そしてミウは体をさらに回転させて、落下中の剣を左手で掴みなおした。

 

「なっ!?」

 

「私の勝ちー」

 

 ミウはにっこりと笑うと、そのまま剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 

「くっそー! なんだよあれ、かわせるわけないじゃん!」

 

「ははっ、でもコウキの《体術》スキルもすごく上達してきてると思うよ?」

 

 俺は今、2層の街の人気がない場所で、先日会得した《体術》スキルをミウに相手してもらいながら特訓していた。

 最近は早朝や攻略の空いた時間はミウに相手してもらいながら、夜中は一人でこの《体術》スキルの特訓に勤しんでいる。

 確かに、ミウの言う通り形にはなってきた。会得したその日なんか話にならないほどダメダメだったし。でも......

 

「なんというか、極端だなこのスキル」

 

「あはは......」

 

 ハイリスク・ハイリターン。もしくはローリスク・ローリターンなのだ、このスキルは。

 当たり前のように聞こえるかもしれないが、密着状態で剣を手放さないと使えない、そんなスキルも存在するのだ。いくらなんでも使いどころが難しすぎる。

 まぁ、そのぶん破壊力も抜群だが。

 どれほどリスクとリターンのバランスがすごいかと言うと、先ほどのようにミウがフォローしきれないほどだ。

 今は《体術》スキル単体でならある程度戦えるが、剣と組み合わせるとなると慣れるのに相当かかりそうだ。

 等と考えていると、電子音と共に視界の右上にメールアイコンが点滅する。

 誰かからメッセージが来たサインだ。

 

「どうしたの?」

 

 ミウは俺が急にウィンドウを構い始めたので怪訝に思ったのだろう。

 

「メッセージ。誰からかはまだ分からないけど」

 

 俺はミウに答えつつそのままウィンドウを操作する。

 アルゴがまた何か情報の交渉にでも来たのか?

 でも、アルゴならミウにもメッセージを送るはずだし......

 考えていても仕方がないのでとりあえずメールを開く。

 

「......ヨウト?」

 

 そこには普段は全く連絡をよこさない悪友の名前が記されていた。

 

 

 

 

 

 メッセージの用件は至って簡単なものだった。

 

『これから転移門の前に来てくれ』

 

 ......せめて理由ぐらい書けよ。果たし状か。

 しかもこのメール、何層とも書いてないし。いくらなんでも情報無さすぎだろ。

 普通ならこのメールを見た瞬間に文句の一つや二つを言いたくなるが、今回はそうはならない。

 ヨウトがこういった報せをしてくるときは2パターンある。

 1つ目は悪戯紛いの暇潰しである時。迷惑なことこの上ない。

 2つ目は本当に何かあった時だ。

 後者は......あまり考えたくないが、この中なら本当にあり得る。

 この世界では何があるかは誰にも予想できない。

 前者ならどうしてくれようか。

 ミウにもこのことを言うと、

 

「行こうよ! 何かあったのなら心配だよ!」

 

 まぁ、ミウならこう言うよな。

 俺もメールそのものは気になったので、予想通り行くことに決定した。

 

「なんだかんだ言ってコウキってヨウトのこと大切にしてるよね」

 

「えっ......なにそれ?」

 

 いくらミウが言ったことでも気持ち悪すぎて吐きそうなんだけど......

 すると不自然に暖かみのある笑みを浮かべながらミウは言う。

 

「だってヨウトのメールが来てから体うずうずしてるもん」

 

 これはさっきから妙に体が痒いだけで......

 ミウにそう言ってもニコニコと笑ってみてくるだけだった。

 

 

 

 

 

 10数分後、俺たちは2層転移門の前に到着した。

 ヨウトが何かあったというなら、やはり前線である2層の転移門前だと思ってこちらにきた。

 2層が開放されてもうだいぶ経つが、まだかなり人がいる。ヨウトを探せないほどではないが......

 周りの人を少し鬱陶しく思いつつ辺りを見回す。

 

「......いないじゃん」

 

 が、見落としがなければヨウトの姿はどこにもなかった。

 実は1層の方だったか? とも思ったが、もしもそうだとしてもそれは書いていないヨウトが悪い。

 手分けして探していたミウとも合流して聞いてみるが、首を振るだけ。

 あいつ......呼び出しておいて自分が遅れるか、普通。

 ......なんか前にもこんなことがあったような。

 

「悪い悪い、遅れたわ」

 

 俺が謎の既視感に襲われていると、ヨウトが遠くから手を振ってやってきた。

 この感じ......あっ、そうか。

 

「ん? 誰だお前?」

 

「少し遅れただけでひどくね!? あれ、なんかデジャヴュ......」

 

 お前もその感覚に苦しむといい。俺別に苦しんでないけど。

 ヨウトが悩み苦しむ姿を見て少しスッキリした。

 

「はいはい、二人ともそこまで」

 

 ミウが呆れたように笑いながら俺たちの間に入ってくる。

 だが、それでは俺の気分がまだ改善されない。

 

「止めるなミウ。こいつにはもっと制裁を与えてやらなきゃならないんだ。具体的には装備を全部捨てさせるとか」

 

「俺に死ねと!?」

 

「いや? むしろお前の姿をしたmobを切り刻みたいかな?」

 

「あれ!? 俺って敵認定されてるの!?」

 

「もー、コウキも。で、ヨウト、何かあったの?」

 

 むぅ。ヨウトめ、ミウに助けられたな。次何かあればその時は......ふっふっふ。

 まぁ、それは置いておこう。

 ミウに話を振られたヨウトは一度瞬きする。

 

「......あ、そうだった。実はなーー」

 

「おいちょっと待てお前。今完全に忘れてただろ」

 

 こいつは本当に......

 俺は呆れと蔑みを込めてヨウトを見ていたが、次のヨウトの言葉で一気に意識を戻される。

 

「昨日、フィールドボスを見つけたんだ」

 

「「なっ!?」」

 

 俺とミウの叫びが重なる。

 フィールドボスというのは、倒すと迷宮区が開いたり、その層のボス情報が聞けるようになったりと、何か特典が付いてくる中ボスのようなものだ。

 特に、ボスの情報が聞けるというのは俺たち攻略組にとっては最高の価値がある。

 なにせその情報ひとつで、冗談抜きで自分達の生き死にが左右されるのだから。

 なのでプレイヤーたちは躍起になって探すのだが、2層開放から1ヶ月近く、迷宮区どころかフィールドボスも見つかっていないのが現状だった。

 そんな折に先ほどのヨウトの台詞だ。驚くのも無理はないだろう。

 だが、1つわからない。

 

「なんでそれを私たちに言うの?」

 

 フィールドボスの居場所が分かったのなら、情報屋に言うなり、自分で公表するなりすればいい。

 俺たちを呼ぶ意味がわからない。

 ヨウトはそんな俺とミウの思考を読み取ってか、続けて言う。

 

「あぁ、今回お前らを呼んだ理由はそこだよ」

 

「?」

 

 俺とミウが首を傾げるのに対して、ヨウトはいつも通り嫌な予感を感じさせるようにニヤリと笑う。

 

「俺たち『だけ』で倒さないか? フィールドボスを」

 

「「はぁっ!?」」

 

 

 

 

 

《スピードスター》

 ヨウトについている二つ名だ。こういうMMORPGの世界では、何か目立つ要素があるプレイヤーには大体二つ名がどこかの誰かに勝手に付けられるものらしい。

 前にアルゴに聞いた話によると、ヨウトの速さ一番の戦闘スタイルと、いつも先走って厄介事に飛び込んでいき、他人を巻き込むことからそういう名前がついたらしい。

 今回の話を聞いて、この二つ名は本当にぴったりだ、そう確信した俺だった。

 

「おまっ、バカだろ!? 1層のフィールドボス戦、お前も参加してなくても知ってるだろ!? とてもじゃないけどレイドなしには無理だ!!」

 

 ボスの名前を有していることだけのことはあり、そこら辺のmobに比べれば、フィールドボスは遥かに強い。

 1層のフィールドボス戦も、甘く見たプレイヤーの何人かが死にかけた。

 ミウもさすがにヨウトの無茶振りに眉間に皺を寄せていた。

 

「待った待った! せめて最後まで話を聞いてくれよ!」

 

 ヨウトが両手を前で振って俺を制してくる。

 どうやらまだ話の続きがあるらしい。

 ここから納得できる説明があるとはとても思えないが......

 

「......終わったあとでダメ出しさせてもらうからな」

 

「どうぞご自由に」

 

 ヨウトは肩を竦めながら言うと、話を再開した。

 

「さっき場所が分かったって言ったけど、正しくは出てくるクエストが分かったんだ」

 

「クエスト?」

 

 ミウが聞き返す。

 

「内容は?」

 

「あぁ、ーーーーーーーー」

 

 ヨウトが俺たちにクエストの内容を話す。

 ーーなるほど、今回のフィールドボスはただフィールドにいる訳じゃなくて、クエストで誘発的に出現するわけか。

 そりゃ、フィールド中探してもいないわけだ。

 でも、クエストか......なんとなくヨウトの言いたいことが分かってきた。

 

「クエストってことは、やろうと思えばレイドを組まなくてもパーティーでもクリアすることができるはず、ってことか?」

 

「そうそう」

 

「うーん、理屈はわかったけど......でもメンバーはどうするの? パーティー上限の6人で挑戦するのがセオリーだとは思うけど」

 

「1層ボス戦の時のメンバーでいいじゃないか? あの二人も誘ってさ」

 

 他の人とだと、コンビネーションだとかを完全に一から考えなくてはならないが、あのメンバーならある程度連携も取れるしちょうどいい。

 それにもう知り合っている相手、というのは気遣いもなくて済むしな。

 そう思ったのだが、

 

「俺もそう思ったんだけどな。あの二人、連絡とれねぇんだよ」

 

「連絡が取れない?」

 

「あぁ、お前らに送ったメッセ、あの二人にも送ったんだよ」

 

 でもメッセが返ってくる訳でも、ここに来るわけでもない、か。どうしてだろう? 二人とも音沙汰なしってことは二人で一緒に行動してて、連絡が取れないってことだろうか?

 あの二人なら大抵のことには対処できるだろうけど、少し心配ではある。

 するとヨウトが言う。

 

「まぁ、いいんじゃね? 何も絶対クリアが条件って訳じゃないし」

 

「最初は様子見ってことかな?」

 

「あぁ、いければ撃破、無理なら逃亡、みたいにさ」

 

 ヨウトの言い分を聞いて、ミウが少し気に食わなさそうな表情になる。

 まぁ、そうだろうな。負けず嫌いな性格のミウからして、そしてクエストの内容からして。

 実際、俺も少し気に食わない。

 だが、ヨウトの言い分は最もでもある。うーん、ジレンマだな。

 

「俺たちだけじゃ厳しそうか?」

 

「うーん、俺にミウ、コウキがいればいれば出来ないことはないと思うけど」

 

 このメンバーに俺の力を考慮してほしくないんだけど......前にも言ったが明らかに実力不足だ。

 でも、俺たちだけでもいけそうなのか......

 可能性があるのならそれだけでも動ける。

 

「だってさミウ、俺たちだけでもいけそうだってさ」

 

 俺はミウの頭に手を乗せながら言う。

 最悪、本当に危ないようだったらヨウトの言う通り逃げればいい。

 そしてミウは嬉しそうに笑って頷いた。

 ......つい、頭に手を乗っけてしまったが、嫌がられなくて良かった。なんかミウって猫っぽいところあるから頭とか構いたくなるんだよなぁ。

 

「......なるほど、アスナの言う通りだな。これはある意味すごい」

 

「ん、ヨウトなんか言ったか?」

 

「いんや、なんでも」

 

 ヨウトは首を振って言った。その顔にはどこか呆れの色が浮かんでいる気がする。

 はて、なんか呟いてた気がしたんだけどな。そもそもなぜに呆れらなければならん。

 まぁ、いいけど。

 

「じゃあ、行くか」

 

 

 

 

 

 

 俺たちは一時間ほど移動してこの層の南側にある村《クラル》に来た。

 《クラル》はログハウスが大量に建っていて、足場はそのまま砂地と、自然味溢れる村だった。

 1層の《トロイ》と比べると、活気もさらになくて本当に物静かな村という感じだ。

 とうかこれは......不自然に静かな気もする。

 

「ここだ、ここ」

 

 ヨウトに案内してもらい、クエストを出す村人の家に来た。

 ............

 

「あぁ......」

 

「どうしたコウキ?」

 

「いや、ちょっとトラウマが」

 

「は?」

 

「あはは......」

 

 事情を知っているミウは苦笑いで返してくる。

 ......またマッチョなおじさんが出てくる訳じゃないだろうな。

 もう二度と岩割りは嫌だ。マッチョちょー怖い。

 気のせいでなければ体が不自然に振動を始めた気がする。

 

「? よく分からないけどもう行くぞ?」

 

 ヨウトはそう言うと家の扉をノックする。

 その直後、

 

「だ、誰ですか!?」

 

 扉の向こうからは物腰柔らかそうな声が聞こえてきた。

 だが、その声質とは裏腹に、声にこもっている雰囲気は切羽詰まっている感じだった。

 この村の雰囲気といい、やっぱなんかあるわけか。

 

「何かお困りですか? 相談に乗りますよー」

 

 ヨウトが言うと、家の扉が開く。

 

「本当ですか!?」

 

 中から出てきたのは、30代半ばぐらいの男性だった。

 声と同じように、見るからに優しそうな人だ。だが、顔は蒼白として穏やかではない。

 

「私の息子が洞窟に行ったまま帰ってこないんです! 今あの洞窟には凶悪なモンスターが出るのに......!!」

 

 そう、今男性が言ったのがこのクエストの前提だ。この手のクエストはミウがーー一応俺もーーNPCを最も心配するものだ。

 だから先ほどヨウトがクリアしなくても大丈夫、というようなことを言ったとき少し不機嫌になったのだろう。

 子供を見捨てるのと同義だから。

 父親が言ったあとにお馴染みのクエストマークが。

 なるほど、『今あの洞窟』って言ってたし、このクエストは時限制か何かだろう。

 こりゃ、プレイヤーたちも見つけられないわけだ。

 なにせ探し終えたあとにクエストが発生したのだから。

 

「大丈夫です、私たちに任せてください!」

 

 ミウは父親を安心させるように、あえて大声で言う。

 それと同時にクエスト受注の電子音が鳴る。

 さて、俺も頑張りますか。

 

 

 

 

 

 洞窟は村から歩いて20分程度の場所にある。

 俺たちは今洞窟の中を歩いていた。

 この洞窟は真っ暗闇のダンジョン、というよりは、昔懐かしい坑道のような作りになっていて、洞窟内もそこそこ明るい。

 

「ここ、前に来たときは《ゴブリン》系のmobいなかったっけ?」

 

「うん、そうだったと思う......けど」

 

 ミウも覚えてるってことは俺の記憶違いとかじゃないか。

 でも、さっきから出てくるのは......

 

「あ、また」

 

 ミウが指差した先には2匹の《リザードマン》が。

 そう、今回この洞窟に入ってからは《リザードマン》しかポップしていないのだ。

 この南に位置する洞窟を中心に、南側は《ゴブリン》の縄張り。北側は《リザードマン》の縄張り、というのが元々のこの層の勢力図だったはずだ。

 だが、今はこの洞窟にも《リザードマン》がポップしているということは......

 

「ほら、さっきNPCが言ってたじゃん。今は凶悪なモンスターが出るって。それが《リザードマン》なんじゃね?」

 

「あ、なるほど。《リザードマン》が《ゴブリン》の住みかを取っちゃった、ってことだね」

 

 まぁ、そうだろうな。だからたぶん、フィールドボスも《リザードマン》系って考えるべきか。

 その凶悪なフィールドボスが《ゴブリン》たちに対して侵略? したってところか。

 

「っ! 来るよ!!」

 

 等と考えていると、先ほどポップした《リザードマン》たちがこちらに気づいて襲いかかってきた。

 片方はミウの方へ、もう片方はヨウトの方へだ。

 

「ふっ!」

 

 ミウはリザードマンの上からの切りつけを横に小さく体を捻ることでかわし、がら空きになった相手の顔目掛けて《スラント》を叩き込んだ。

 そしてヨウトは、相手の方が先に攻撃を仕掛けたはずなのに、あとから攻撃したヨウトの方が先に攻撃を当てていた。

 その後はミウはカウンターを決め、ヨウトは高速のラッシュで押しきってしまった。

 実力者が一人増えるだけで戦闘の安定感がここまで上がるものなのか。

 ていうか俺、本格的に要らないんじゃ......

 

「おつかれー」

 

 ミウが俺の元に駆け寄ってきて、いつも通り手の甲を当て合う。

 

「俺なんもしてないけどな」

 

「サボってんなよー、コウキ」

 

「うっせ」

 

 けど、しっかりはしないとな。こんなことじゃ全然ダメだ。

 こんなことじゃ俺の目標なんて夢のまた夢だし、なによりヨウトに負けているのだけは嫌だ。

 そんあ軽口を互いに叩きながら、さらに奥に進んでいくと、少し開いた空間に出た。

 

「誰か助けてぇ!!」

 

 それとほぼ同時、洞窟の奥から悲鳴が響いてきた。

 それに遅れて声の方向から走ってくる少年が現れる。どうやらあの少年の悲鳴のようだ。

 その少年の服装は、依頼主の父親に教えられたものと同じ、おそらくあの少年が息子さんなのだろう。

 

「君、大丈夫!?」

 

 ミウがすぐさま少年に駆け寄り、それに俺とヨウトが続く。

 近くまで来ると、その少年は所々怪我をしているようで、赤いライトエフェクトが目立った。

 

「あぁ、剣士様! 助けてください! 後ろから凶悪なモンスターが!!」

 

 少年が泣き叫ぶように俺に言ってくる。

 だから気づけなかった。

 だから話に入っていないヨウトは気づけた。

 

 

 

 ーー洞窟の奥から迫ってきた、致死性の攻撃に。

 

 

 

「ーーっ!? 伏せろ!!」

 

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 視界が傾いてから、ヨウトが俺たち3人を自分の体ごと体当たりの要領で壁に向かって突き飛ばしたことが分かった。

 それとほぼ同時。

 俺たちが元々いた場所を大剣が通過した。

 ドゴォォォォォォン!!! 直後、すさまじい音と共に地面が割れる。

 なっ!? いったいどこから......!?

 俺たちが唖然としているうちに、少年は泣き叫んでどこかに逃げていってしまった。

 それと同時に俺たちがいる大きな空間に、薄い膜のようなものが張られる。おそらく、脱出不可ということだろう。

 そして俺たちのすぐ近くでなる地鳴りとも思える足音。

 その絶望的要素のお陰か、逆に思考が回り始める。

 

「下がれっ!!」

 

 俺は咄嗟に叫んでいた。

 直後、再び大剣が俺たちのすぐ近くを通りすぎる。

 だが、今回もギリギリそれをかわすことができた。

 

「二人とも、大丈夫か!?」

 

「うん!」

 

「こっちも大丈夫だ!」

 

 二人の確認がとれ、そこで初めて俺は大剣の持ち主を見る。

 姿そのものは普通の《リザードマン》と同じだが、サイズが明らかに違った。

 普通は人間サイズだったのが、今目の前にいる《リザードマン》は明らかに3メートルは越えている。

 HPバーは2本。

 名前は《ザ・リザードマン・エンド》

 その辺りはまだいい。問題はカーソルだ。

 

「カーソルが......赤紫」

 

 mobのカーソルにはいくつか種類がある。

 レベルが低く、かなり弱い部類のものがペールピンク。

 レベルが自分と同じぐらいだとレッド。

 自分よりもレベルが高いと濃いレッド。

 そして、自分よりも遥かにレベルが高く、強いものが赤紫、つまりクリムゾンレッドになる。

 アルゴのガイドブックには、カーソルがクリムゾンレッドの敵と遭遇した場合の対処法が、一つだけ書いてある。

 

 

『迷わず、ただひたすら全力を尽くして逃げろ』

 

 

 ......俺は、しっかりと依頼主やその周辺の人物の話を聞いていたつもりだった。

 ヨウトの認識に万が一なにか勘違いがあって、このクエストはとても3人じゃ不可能、というようなことにならないように。

 それでも俺は、今のこの状況に、こう言う他なかった。

 

「おいおい、バカヨウト。何が3人でも勝てるだよ......」

 

 ーーこれは、ちょっとまずいぞ。

 




はい、戦闘回(導入編)でした。
おかしいな...私的にはもっとバトルするはずでしたが、なぜか最後のところだけになってしまった...
まぁ、一話では収まりきらないほどの戦闘、ということで楽しみにしてくだされば幸いです!
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