力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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18話目です!!

すいません、前回から少し空いてしまいました!
せっかくのお盆だったので一気に書いてしまおうと思ったのに、なぜか今さらポケモンにドはまりしてしまいまして....
というか学校始まったら少し更新遅くなるかもしれません、申し訳ない。
そのぶん、内容は頑張ります!!

それではどうぞ!!


18話目 覚悟の成就

 この世界に来て、思い、覚悟、多くのことを決心してきた。

 その結果、確かに俺は幾分は強くなれたかもしれない。

 それでも、その思いや覚悟が現実になったことはまだ一度もない。

 俺はまだ誰も、近くにいる大切な人たちさえ、守れてはいないのだ。

 

 

 

 

 

「くっそ!」

 

 エンドの猛獣のような素早い攻撃を身を捻ることでギリギリかわす。

 そして間髪入れずに2撃目が来てはたまったものではないので、すぐさま後退し深呼吸をする。

 このままじゃダメだ、考えろ! この場にいるのは無力な俺だけじゃない。3人もプレイヤーがいるんだ。

 エンドは確かに強力なボスクラスのmobだが、攻撃そのものは先ほどから見るに直線的で単調だ。

 なら、厄介なのはあのアホみたいに威力の高そうな攻撃と、素早い動きだけだ。

 それを封じる、もしくはそれに対抗できるような何かがあれば......

 いや、そもそも対策を立てるための情報が少なすぎる。それならーー

 俺がその場で考えた作戦をミウにアイコンタクトで伝えると、ミウもそれに対して頷く。

 ミウとの付き合いも、もう2ヶ月近く。このぐらいのことは余裕でできる。

 

「ヨウト!」

 

「りょーかいっ!」

 

 ヨウトとの付き合いはミウ以上だ。この世界に入ってからはあまり会っていなくても、最小限の言葉だけで伝わる。

 そしてすぐにミウがエンドに向かって接近する。だが、その距離は、エンドが持つ大剣がギリギリ届くかどうか、という絶妙な距離。

 ミウが一歩前に出ればエンドの攻撃範囲に完全に入り、エンドは迷いなく剣を振ってくるだろう、逆に一歩引けばエンドの攻撃範囲から外れ、仮に攻撃してきても遠いこともあって、ミウなら間違いなくかわせる。

 つまり、今のミウの距離は揺さぶりの距離なのだ。

 ミウがこうやってエンドを揺さぶってくれるお陰で、エンドの攻撃パターンも少しずつ分かってくるし、隙をついて俺やヨウトが一撃入れられるわけだ。

 ...だが、この距離を保つのは口で言う以上に難しい。

 当たり前なことだが、敵であるエンドも動くのだ。しかも異常なほど速く。そんなやつを相手に、揺さぶりの距離を保ち続けられるミウは、本当に一味も二味も違う。

 そしてミウが、ついに一歩、踏み込む。

 

「があああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瞬間、エンドはミウに必殺の剣を振り下ろした

 それに対してミウは、片手剣をハンドリングで逆手に持ち替え、その状態で自分の剣をエンドの剣に当てることで力の向きを変えて受け流す。

 そしてエンドが体勢を崩した隙にヨウトが斬りかかり、ミウはヨウトと入れ替わるように後退してくる。

 

「きっついなぁ......」

 

 その際にミウの表情が芳しくなかったので、ミウのHPを見ると、すでに一割近くも削れていた。

 その事実に背筋に冷たい感覚が走る。

 ...色眼鏡なしでも、ミウの剣さばきの技術はプレイヤーの中でもトップクラスだ。なにせボス戦でもほとんど誤差を許されないような迎撃方法で、ボスの武器を弾くのを成功させているほどなのだ。

 そんなミウでも、たったの一撃受け流すだけであれほどHPを持っていかれるだなんて......

 これはいよいよ、本当にワンミスもできなくなってきた。

 

「ミウ! あまり無理するなよ!」

 

「分かってる!」

 

 攻撃し終わったヨウトを守るように、エンドの攻撃に合わせてミウが再び前に出る。

 俺が役割を代わる、と言えないのがすごく悔しい。

 だが、今ミウがしているようなこと、俺には間違いなくできない。行えば俺が被弾して戦線が崩れるだろう。

 仮に被弾しなくても、そもそもこの中で一撃の威力が最も高いのは俺だ。火力が足りなくなるのは明らかだろう。

 ここは、ミウに任せるしかないのだ。

 俺は俺の役割を果たす。

 俺の役割、それは『見る』ことだ。

 先ほども言ったように、今俺たちの手元にはエンドに対する情報が無さすぎる。

 勝つために必要な情報を、『見る』。むろん、俺も攻撃には参加するが、それが今俺の最優先すべき役割だ。

 ミウやらニックやらキリトやら。多くのトッププレイヤーの動きを見て、少しでも吸収しようとしてきた俺をなめるなよ。

 弱者なりの戦い方を見せてやる。

 

 

 

 

 

 ミウが捌き、ヨウトが攻め、俺が見る。

 そのローテーションを20回近く行った。

 時々戦線が崩れそうにもなったが、少しずつエンドの行動アルゴリズムも読めてきたこともあり、なんとか堪えていた。

 そのお陰もあってか、エンドのHPバーの2本あるうちの1本を残り2割ほどまで削ることができた。

 このままいけば勝てる......が、さすがにそこまでは甘くなかった。

 ここで遂に、ミウのHPが限界になる。

 

「ミウ、一旦下がれ!!」

 

 スイッチのタイミングで下がってきたミウに言う。

 ミウはあの後もエンドの攻撃を上手く避け続け、受け流したときのダメージも減らすという神掛かっていると言ってもいいほどの動きをしていた。

 なのでミウのHPは未だにギリギリイエローゾーンで留まるほど残っていたが、今の状態でエンドの攻撃がかするだけでもHPが全て吹っ飛ぶだろう。

 それはミウも分かっているはずだが、ミウは引かない。

 

「でも......!」

 

「いいから!! 今は俺とヨウトに任せろ!!」

 

「ミウちゃんはちょっと休んどけって」

 

 ミウの気持ちは痛いほどに分かる。

 今のこの戦線は、ミウなしでは成り立たないのが現状だ。

 いくらヨウトでもミウが行っているような神回避は出来ないだろう。

 確かにここまでミウが粘ってくれたこともあって、エンドの攻撃はある程度読めるようになってきたが、俺ではそれ込みでも2,3撃弾くのが精一杯だ。

 それをミウも分かっているから譲れないのだろう。

 だが、

 

「ミウが復帰するまでなら大丈夫だ! だから早く!!」

 

 ミウがここで死ぬようなことになれば、俺やヨウトも間違いなく死ぬ。

 ミウが俺たちの生命線なのだ。

 そしてなにより、ミウに死ぬ可能性があることがどうしても看過できない。

 そんなことになるぐらいなら、いくらリスクが高かろうが、自分が死ぬ可能性があろうが、俺が前に出た方が百万倍ましだ。

 ミウの返事も聞かずに、俺とヨウトはエンドに向かっていく。

 ヨウトが先行して、エンドに接近する。

 それに対抗するようにエンドは剣を振るう。今度は横振りだ。

 

「俺だってこれぐらいはぁぁぁああ!!」

 

 ヨウトの剣がライトエフェクトに包まれ、単発重攻撃ソードスキル《ドルイン》が発動し、エンドの剣と交錯する。

 《ドルイン》は一度体を回転させ、剣に勢いをつけて斬りつけるスキルだ。

 重攻撃スキルは威力が高いが、スキルの発動が遅いというような特徴がある。

 それを後出しでエンドの攻撃に間に合わせられるのは、さすがは《スピードスター》のヨウトと言ったところだろう。

 

「ぐっ! コウキ!!」

 

 ヨウトが振り絞るように叫ぶ。

 ヨウトが重攻撃スキルなのに対して、エンドはただの通常攻撃。それで弾くのが精一杯だったのだ。

 こんなの、そう何度も上手くいかない。

 だからこそ、ここで一気に攻める!!

 

「はぁぁぁぁあああ!!」

 

 俺は《バーチカル・アーク》を発動しエンドに斬りかかる。

 剣の軌道がVの字を描き、エンドの爬虫類独特な固い腹を抉っていく。

 それにより、通常攻撃とは比べ物にもならない多大なダメージがエンドに入る。これでエンドはダメージディレイで少しの間動けないはずだ。

 そして俺のスキルが終了する。予想通りエンドはすぐには動けない。

 

「......シャァァァァァァアアア!!」

 

「ーーっ!?」

 

 だが、エンドは本当に一瞬だけ硬直した後、すぐにまた動き出した。

 くそっ!! 回復が早すぎる!! まだ1秒ぐらいしか経ってないだろ!?

 思考は異常事態に混乱するが、それはどこか現実味を帯びていなくて、まるでテレビの中の映像に驚いているようだった。

 いや、理由は分かっている。

 ......やっぱ、信頼できるやつがいるだけで安定感が全然違う。

 

「コウキ!!」

 

 ヨウトがスキルディレイで動けない俺を、後ろから手で『押し退けながら』スキルモーションに入る。

 スキルディレイなどのディレイは自分で体を動かせなくなるだけで、何も体がその座標に固定されてしまうわけではない。

 なので強引ではあるが、こういった回避方法もある。

 

「はぁっ!!」

 

 ヨウトはそのままお得意の突進系ソードスキル《ブレイヴチャージ》を発動させ、俺が抉ったエンドの腹を貫いた。

 

「グシャァァァ!?」

 

 そして今度こそエンドはダメージディレイに囚われる。

 よし、ここからだ!

 

「コウキ、スイッチ!!」

 

「あぁ!!」

 

 ヨウトが後退し、それと入れ替わるように俺が前に出る。

 こうやって交互にスイッチを繰り返していれば延々攻撃できる。この世界の戦闘の初歩の初歩だが、確実な方法ではある。

 勿論、デメリットもある。

 1つ目はスキルディレイだ。

 最後までスキルを発動してしまうと、強制的にディレイが始まる。なので俺たちはディレイが始まる寸前に、無理矢理後方に下がってエンドと距離を取っているのだ。

 だがこの方法だと、ペナルティーによってスキル後の硬直時間が延長されてしまう。

 なのでどうしてもいつかは限界が来る。

 2つ目はカウンターだ。

 当然のことだが、エンドのダメージディレイが何らかの理由で切れると、その時点でディレイに囚われている者はほぼ確実に死ぬ。

 それは俺かもしれないし、ヨウトかもしれない。

 そんなことにしないためにも、最低ミウが動けるようになるまではこの状態を保たなければならないのだ。

 

「っあああぁぁぁぁ!!」

 

 咆哮し、俺はもう一度《バーチカル・アーク》を発動する。

 俺の攻撃がエンドの体に傷をつける度に、徐々にだがエンドのHPバーが減っていく。

 まだだ! こんなのじゃ全然足りない!!

 

「ヨウト、もう一度だ!!」

 

 スキルが終わる直前に剣を引き、後退する。

 その瞬間。

 

「グワアアァァァァァッァッ!!」

 

 エンドが夥しい咆哮をあげた。

 しまっ......!?

 今、エンドのHPバーは残りの1本を残すのみになった。

 つまり、ボスモンスター特有のバーサークモードになる条件を得たのだ。

 そして、バーサークモードになると一度デバフなどのマイナス効果が全てリセットされるのだ。

 勿論、ダメージディレイも。

 エンドがその手に持つ大剣を大きく引き絞る。

 くそっ! 何かないか!?

 このまま下がってもまだエンドの攻撃射程圏内。防御行動を取ろうにもディレイ中で全く動けない。どうすーー!

 

「コウキ! そのまま下がれ!!」

 

 飛んできたヨウトの指示に咄嗟に従う。

 すると入れ替わるようにヨウトが前に出てきた。

 スイッチの予定通りに。今にも攻撃せんとするエンドの目の前に。

 

「なっ!? バカやろーー」

 

 一閃。エンドの凄まじい一撃がヨウトに直撃し、ヨウトごと後ろにいた俺も吹き飛ばされる。

 

「はっ......がうっ......!!」

 

 そのまま広間の端までバウンドし、壁に当たることでようやく止まる。

 くそっ! やられた!!

 ダメージディレイのせいか体がすぐには動かないが、感覚は残っているので部位破壊などは起こっていないようだ。

 だがそんなことは重要ではない。

 ヨウトのHP......!!

 首は動かないので、視界をフルに使ってヨウトを探す......いた。

 ヨウトは俺から少し離れたところで倒れていた。

 俺はヨウトのお陰で直撃はせずにすんだが、それなのにHPが2割近く削れていた。

 ならヨウトは?

 

「よかった......」

 

 残り1割を切っていたが、ギリギリ残っていた。どうやらエンドの攻撃が直撃する寸前、剣で防御できたようだ。

 だが、ヨウトのHPは元々8割以上残っていた。それがあそこまで削れるとなると、防御できても場合によっては全損するということだ。

 とにかく、今はヨウトとミウの回復をしつつエンドの攻撃を何とかしないと!

 何かいい手はないかと俺が迷っていると、

 

「コウキはヨウトの回復を!! エンドは私が食い止める!!」

 

「なっ!? ミウ!!」

 

 ミウがエンドに向かって飛び出した。

 この世界の回復アイテムーーポーションは使った瞬間HPが回復するものではない。

 アイテムごとに決められた時間ーー10秒などーー経つ度にHPが一定量回復する、というものだ。

 ミウがポーションを飲んでからまだ2分も経っていない。なのでミウのHPはまだ7割ほどまでしか回復していないのだ。

 ミウとのヨウトを交互に見る。早く何かしなければ。何とかしなければという焦燥感から肌がどんどん泡立っていくのを思考の隅で感じる。

 ミウの力を信じていないわけではないが、今すぐミウに加勢に行かなければミウにが危ない。

 かといってヨウトを放っておくのもダメだ。確かにHPはまだ残っていてエンドからも離れているが、それでも辛うじてなのだ。

 万が一エンドの攻撃の余波がいったら間違いなくやられる。

 どうする!? どうすればーー

 

「行け!! コウキ!!!」

 

 ヨウトが叫ぶ。

 

「お前が行かなくてどうするんだ!? また昔みたいになりたいのか!?」

 

「ーーっ!」

 

「俺のことはいい、さっさと行けぇえ!!」

 

 ヨウト......!

 何となくとだが、始まりの日と一緒だと思った。

 このデスゲームが始まったあの日と。

 どちらかを選らばなければならない、2択。

 どちらを選んでも先に待っているのは地獄。

 今ヨウトの言う通りに動けば、始まりの日と同じになってしまうかもしれない。

 それに......『あの日』とも。

 ......それでも、いや、だからこそ!

 

「......分かった、絶対に死ぬんじゃねーぞ、ヨウト!!」

 

 それでも、もう絶対に諦めない、逃げないって決めたんだ。

 2人とも助けてみせる!!

 だから今度は、ヨウトを見捨てるためではなく、ヨウトを助けるために手を取らずヨウトに背を向ける。

 

「へっ! 誰に言ってんだバーカ!!」

 

 ヨウトの言葉を背に、エンドを1人で相手して戦っているミウに向かって駆け出す。

 ミウは天才だ。

 相手の動きを読み取るスピード、その情報の正確さや、状況判断スピード、そして各種基礎能力はこの世界にいるプレイヤーの中でも絶対に5本の指に入るだろう。

 そのミウが時間を稼ぐために全力で受けに回り、逃げ回れば、エンド相手でもかなりの時間を稼げるだろう。

 ただしそれは、さっきまでのエンド相手ならの話だ。

 俺たちは戦闘が始まって最初の数分、エンドの行動アルゴリズムを調べるために完全に受けに回った。

 そのお陰で、俺だけではなく、ミウもエンドの攻撃を見ることができ、ギリギリ攻撃を捌き続けることができたのだ。

 だが、今のエンドはバーサークモードだ。

 バーサークモードになったボスモンスターは、行動アルゴリズムにランダム性が入り、これまではやってこなかった攻撃もしてくるようになる。

 つまり、今まで使っていた行動アルゴリズムからの行動の先読みは、完全に裏目に出るようになり、一撃もらう可能性が非常に高くなる。

 しかも今のミウは、俺たちにエンドが寄ってこないように終始接近状態で戦っている。そんなことをすれば......

 そして、その俺の嫌な予感は早くも的中した。

 ミウはエンドの攻撃を危なくもなんとか全ていなしていたが、遂にバーサークモードによる新しい攻撃がミウを襲い、ミウがこの戦闘で初めて正面から攻撃を受け止める。

 

「ぐっ!!」

 

「ミウっ!!」

 

 しかし、ミウの筋力値ではエンドの攻撃を受け止めきれず、そのまま地面に叩きつけられた。

 そしてすぐさまエンドは、ミウに止めの一撃を降り下ろそうとする。

 させるかっ!

 俺はミウの方を向いているエンドに接近し、背後から全力で斬りつけた。

 

「アアアアッ!!」

 

 エンドはうめき声を上げ、こちらを振り向くと間髪入れずに剣を下から振り上げてきた。

 っ! 速い!!

 腰を落とすことでギリギリかわすが、返しの振り下ろしの剣はかわしきれず、正面から剣で受け止める。

 ぐぐぅ......いくらなんでも重すぎる......っ!!

 一瞬でも気を緩めたら、一気に持っていかれる!!

 

「ミ、ミウぅぅぅうう!!」

 

 ミウに指示を飛ばす。

 だがミウはそれよりも早く、先に動いていた。

 ミウは俺とエンドの間に割り込むと、2連撃ソードスキル《クロス・シーザー》を発動させた。

 ミウの剣が右から左へと一閃される。

 さらにミウはその勢いのまま体を左に倒し、振った直後の剣を切り上げるように振るう。

 その結果、エンドの胸に刻まれる十字の傷。

 このスキルは高いタンブル効果を持っている。

 上手くすればエンドが硬直してくれると思ったのだが。

 

「ガアアァァアアァ!!」

 

 さすがはバーサークモード。エンドはミウの攻撃を耐えきると、すぐさまミウに反撃してきた。

 だが、それは俺が許さない。

 

「やらせるかぁぁぁああ!!」

 

 エンドの攻撃を正面から受け止めたことで悲鳴を上げている自分の体にむち打ち、エンドに突っ込む。

 発動させるスキルは《ブレイヴチャージ》

 これで......どうだ!!

 俺の剣はエンドの左脇腹を貫き、俺の体ごとエンドの脇を通りすぎる。

 

「ぐ、ぐるう!?」

 

 さすがにこれは効いたらしく、遂にエンドが膝をついた。

 同じ方向から攻撃を受け続け起こった、ダメージディレイとタンブルだ。

 

「ミウ!!」

 

「うん!!」

 

 このチャンスを逃すまいと二人で総攻撃をかける。

 斬る、斬る、斬る、斬る。とにかく斬り続ける。

 俺とミウの総攻撃により、みるみるうちにエンドのHPが減っていき、遂に最後の1本も半分を切ったところで。

 

「グルァァァァァアア!!」

 

 エンドが体を起こし、一気に後ろに跳躍した。

 ......もう少し削りたかったが、今はこれでいい。深追いしすぎず、少しずつ攻めればいいんだ。

 相手のHPももう4分の1。本当に小さいが、やっと光が見えてきた。

 そう思った瞬間だった。

 

「ガアァァァ!!」

 

 後ろに跳んだエンドが壁に『着地』し、そのまま壁を『蹴った』のだ。

 

「なっ!?」

 

 後ろに下がったはずのエンドが、一気に近づいてくる。

 俺もミウも、咄嗟のことで反応できなかった。

 それでも体を動かそうとする。

 せめてミウだけでも......!!

 が、またも予想は裏切られる。

 

「くらえぇぇぇええ!!」

 

 エンドよりもさらに上空からヨウトが現れ、宙で一回転するとエンドに踵落としを決めた。

 《エアーサルト》

 《軽業》スキルで習得できるソードスキルだ。

 スキルディレイも長く、ダメージそのものは少ないが、空中にいる敵を100%地上に落とすことができる。

 普通は空を飛んでいるmobの足を止めるために使うのだが、こんな使い方もあるなんて...

 

「へへっ! どうだ!!」

 

 見事着地したヨウトがしてやったりとこちらを見る。

 全くこいつは......また無茶をして......

 

「でも、ナイス!!」

 

 俺とミウが再びエンドに接近する。

 ミウもヨウトもまだHPを回復しきっていないし、俺ももうレッドゾーン間近な状態だ。

 ここで決められず反撃を受けたなら、おそらくこの中から死人が出る。

 そんなことには、絶対にさせない!!

 これが最後のチャンスだ!!

 

「う、おぉぉおぉ!!」

 

 俺の《ブレイヴチャージ》がエンドの腹に深々と突き刺さる。

 間髪入れずに、ミウの《クロス・シーザー》も決まり、ぐんぐんとエンドのHPが減っていく。

 さらにここで《クロス・シーザー》のタンブル効果が発動。エンドは硬直を強いられる。

 いける!!

 そこからは怒濤の連撃。

 途中からはヨウトも加わり、エンドのHPは残りわずかになる。

 だが、ここでもエンドは俺たちの上をいく。

 エンドは体を起こした瞬間、ノータイムでソードスキルを発動してきたのだ。

 エンドが大剣を頭上に掲げ、嵐のように縦横無尽にと振り回す。

 両手剣に属する、5連撃全体ソードスキル《ギール・テンペスト》だ。

 1撃目は無理矢理体を捻ってかわすが、すぐに2撃目が襲ってくる。

 まずいっ! かわせない!!

 2撃目が俺の体を両断する軌道で近づいてくる。

 

「コウキ!!」

 

 いち早く俺の危機に気づいてくれたヨウトが、俺を体当たりで自分ごとエンドの攻撃射程圏内から無理矢理脱出する。

 地面に叩きつけられて一瞬呼吸が止まるが、俺はすぐに起き上がってミウを見る。

 どうやらミウはほとんどの攻撃を完全にかわして、最後の一撃だけはヨウトのように体を地面に投げ出すことでかわしきったようだ。

 だが、まだなにも終わらない。

 俺たちが体勢を整えようと起き上がる時間、僅か2秒の間に。

 

「シャアアアァァァア!!」

 

 エンドはスキルディレイから回復し、もっとも自分の近くにいるミウに近づくと、再びスキルを発動しようとモーションに入った。

 

「なっ!? いくらなんでもステータス狂いすぎだろっ!?」

 

 隣でヨウトがエンドの異常さに喚く。

 だが、俺の頭にはそんな考えは全くなかった。

 あったのは、ミウが殺されるかもしれないという理不尽への怒り。そして、ミウが殺されることへの恐怖。

 瞬間、思考が弾けた。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」

 

 俺は考える前にミウのもとに走り出していた。

 彼我の距離、およそ8メートル。

 走るのにはただ邪魔だったので剣は手放した。

 もう、嫌なんだ。もう、大事なものが目の前で失われることなんて、嫌なんだ。

 もう、大切な人を失うなんて......!!

 届け......届け......っ!!

 エンドがスキルを発動させた。なんのスキルかなんてどうでもいい。

 俺は強く足を前に踏み出す。

 

 

 

 バキィィ!!

 

 

 

 聞こえてきたのは、俺の単発体術スキル《閃打》がエンドの腹にヒットした音だった。

 ......間に、合った......!!

 後ろを見ることはできないが、確かに、ミウはまだいる......生きている。

 よかった......ミウを......守れた......

 そのことをやっと実感できたのと同時、エンドがディレイしていることを確認する。

 このスキルはダメージは少ないが、100%敵を一瞬だが怯ませることができる。先ほどヨウトが使った《エアーサルト》によく似ているスキルだ。

 そして、この一瞬があれば、あのバカが来てくれる!!

 

「はぁぁぁあ!!」

 

 背後からヨウトの《スラント》がエンドに直撃する。

 そのお陰で、もう一瞬エンドがダメージディレイで動きが止まる。

 エンドのHPは残り、バーの1割を切っている。

 《閃打》はその低威力ゆえにスキルディレイが1秒もない。

 ......これだけの条件が揃えば充分だ!!

 俺はエンドの体に両手で触れ、単発重攻撃スキル《鎧透破》を発動させた。

 このスキルは相手の防具、もしくは武器に両手で触れ、それを破壊しつつ装備者にもダメージを与える、というのが本来の用途だ。

 エンドは防具を着けていないが、それでも防具を貫通してまで通る威力。防具に当てなくともダメージはかなりのものだろう。

 武器を持たずに超至近距離でないと使えないスキルだが、今のこの状況では問題ない。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

 俺の両手から凄まじい衝撃がエンドに伝わり、エンドのHPが減っていく。

 そして遂に全て黒ーーーー全損した。

 

「グ......ギャアアアアァァァアァアア!!」

 

 その直後、エンドの長い断末魔が洞窟内を鳴り響いた。

 

 

 




はい、戦闘回(本編)でした。

この回は結構勢いよく書けたので、その場の臨場感とかはそこそこ出ていると思うのですが...伝わったでしょうか?

それにしてもやっぱり戦闘回は書くのは少し辛いところはありますが、書いていてすごく楽しいですね。問題なのはそのかっこよさがしっかりと皆さんに伝えられているかどうかですが...

今回、ミウさんの異常さがちょっと飛び出しすぎてましたね。中ボスとはいえ、ボスクラスを一人で足止めとかそれどこのキリトさんだよ...

次回は後日談...かな?
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