力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

26 / 81
24話目です!
すいません、学校の行事で更新が遅れてしまいました......
このまま週間投稿になってしまいそうで若干怖いです。
うー、どうにかして1日24時間の壁を突破できないものか......


それではどうぞ!


24話目 妥協も締観もできない

 どうも、ミウにしばかれかけたコウキです。

 あの後ひたすら謝ったらとりあえず厳重注意ということでなんとか命を拾いました。

 ミウの優しさに感謝だねっ!!

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

「はははー、なんでもないよー」

 

 ......はいすいません、ちょっとまだ心の傷が治りきっていないので、これ以上この話題は勘弁してください。ちょっと人格崩壊仕掛けてるレベルなので。

 よし、閑話休題。

 俺たちがサーシャさんたちの家を初めて訪れてから10日ほど過ぎた。

 初日はカナちゃんとは歩み寄ることすらできなかったが、そのぶん他の子から好かれまくった。

 その結果、カナちゃんのこと、他の子からの要望もあり、攻略の空いた時間には子供たちのところに行こうという話になった。

 今は子供たちと一緒に、《はじまりの街》の門から出たすぐの草原のフィールドで遊んでいるところだ。

 この辺りなら懐かしの弱い猪mobしか出てこないし、そもそも街のすぐそばはmobがポップしないので戦闘にもならない。

 しかもこの辺りのmobはこちらから攻撃しない限り相手からは攻撃してこないので、意外と安心して出られる地域だ。

 

「うし! 今度は鬼ごっこでもするか!」

 

 俺がそう言うと、子供たちが声をあげて一斉に俺の元に集まってきた。

 じゃんけんで鬼を二人決めて、逃げる側(俺含め)が一気に散らばっていった。

 もちろん、あまり離れないように範囲は決めて行っている。

 30秒経ち、鬼が動き始めるとそこら中で楽しそうな声が聞こえ始めた。

 

「まさかコウキにガキ大将の才能があるとはね」

 

 俺が子供たちを見ていると、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、ミウと鬼ごっこに参加していない子たちが座り込んでーー花冠だろうか?ーー草や花で遊んでいた。

 ミウの近くにはカナちゃんもいたが、俺が近づいてきたことに気付くとまた怯えたように俺から距離をとってしまった。

 

「あ、ごめん。邪魔したか?」

 

「ううん、大丈夫だよ~」

 

 一瞬花とかを踏んでしまったかと思ったが、ミウの言葉で安心する。

 

「でも才能って......ガキ大将にそんなのあるの?」

 

「じゃあ、気質?」

 

 いや、そんな小首傾げて言われても......

 どうも俺をガキ大将に仕立て上げたいようだ。

 っていうか、ガキ大将っていうのならミウの方が似合ってる気もするんだけど......他の子を引っ張って行く感じでこれ以上の適材は中々いないと思う。

 

「《聖人》さん、ここからどうするんだっけ?」

 

 女の子の一人がミウに聞く。ミウに花冠の作り方を習っているようだ。

 

「えーっとね。ここを織り上げて...そうそう。それで、ここを輪っかに通すんだよ。あとその呼び方はやめてね......」

 

 微妙に苦笑いなミウから作り方を教わると、女の子は理解したようで満足して離れていった。

 ちなみに《聖人》とは、ミウが先日人助けをしまくった結果付いた二つ名だ。

 アルゴ曰く、どんなに小さな困りごとでも、一つも見捨てずに親身になって助けていたミウの様子を見て誰かが言ったのが始まりらしい。

 ミウ本人からしては全く嬉しくないらしく、呼ばれる度にしかめっ面になっている。

 確かに《聖人》は堅苦しすぎるよなぁ...まぁ、初めて言った人もミウを男と勘違いして言ったんだろうけど。

 ミウは花冠の製作をどんどん進めていく。

 

「料理にしろ、ミウってこういうのほんと器用だよな」

 

「そんなことないよー、ただ女の子らしい遊びに憧れてたらできるようになっただけ......できた、はい!」

 

 ミウはそう言うと、自分で作った花冠を持ち上げて、出来映えを確認すると俺の頭に被せてきた。

 ......えーと?

 

「ミウ?」

 

「うん、似合ってるよ」

 

 ミウがニコリと笑って言ってくる。

 

「こういうのはミウの方が似合うと思うけど」

 

 なんかさっきから俺似たようなことばっか考えてるな。

 ミウは俺の言葉を聞くと苦笑いする。

 

「ははは......ありがと。でも自分で作って自分で被るってなんか虚しくない?」

 

「そんなことないと思うけど...よっと」

 

 俺はミウが被せてくれた花冠を壊れないように慎重に掴み、今度はミウの頭に被せた。

 うん、やっぱり似合ってる。

 白い花、黄色い花、桃色の花など、明るい色を使って作ったお陰か、ミウの黒髪によく映えている。

 ......こんな風にしてると一気に女の子らしくなるよなぁ、ミウって。

 

「どう......?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ばっちし」

 

 おずおずと聞いてきたミウに笑顔で答える。

 ......ミウもなんだかんだ言って花冠被りたかったのだろうか? すごい嬉しそうだし。

 むぅ、この世界にカメラとかってないのだろうか? 今すごく欲しい。

 

「ねぇ、コウキ」

 

「ん?」

 

「コウキはなんでカナちゃんのこと引き受けてくれたの?」

 

 そう聞いてきたミウの表情は、先程とは一転して少し不安げだ。

 多分、俺の無愛想な態度とか、普段の俺と違っていたけど、それが聞いて良いことか悪いことか分からないからだろう。

 ......そんなこと気にしなくてもいいのに、ってのは俺のわがままか。

 

「......まぁ、カナちゃんが他人な気がしなかったからかな」

 

「え......?」

 

「コウキさーん! ちゃんとやってよー!!」

 

 おっと、ちょっと話しすぎたな。

 

「おう! 悪い、今行く!」

 

 俺は鬼ごっこを再開する前に、ミウの後ろにずっと隠れているカナちゃんに近づく。

 

「カナちゃんも気が向いたら鬼ごっこ、やってみてくれな」

 

「......ぅ」

 

 すると、カナちゃんは顔を背けてしまった。

 うーん、この数日間でゆっくり近づくだけならいくらか大丈夫にはなってきたけど、やっぱりまだ会話は厳しいか......

 でも、ここで焦ってはいけない。こういった心の問題は我慢・努力・根性みたいな昔の校訓みたいなものが必要不可欠なのだ。

 俺はカナちゃんに手を振り、鬼ごっこに戻るべく走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「おおぉ......」

 

 遊びすぎた。

 あの後も鬼ごっこ、ケイドロ、だるまさんが転んだ等々遊びまくった。

 なので今はもう陽は3分の1ほど地平線に隠れてしまっている。本当、どれだけ遊んだんだろう俺たち......

 今は子供たちをサーシャさんの所まで送っている最中だ。

 サーシャさん......悪い人どころか完全にいい人だし、本当に尊敬できる人なんだけど......だからこそ苦手なんだよなぁ。カナちゃんをどうこうよりも、まずは俺自身がもっと頑張らなくては。

 そしてそんな子供たちは、今日の楽しかったことを互いに話し合っている。

 

「子供たちは元気だね」

 

 と、隣で笑いながらミウ。

 さすがのミウも子供の体力にはついていけなかったらしく、声に覇気がない。

 

「俺たちもまだまだ子供って括られるんだけどな」

 

「そういえばそうだね......って、コウキ今何歳なの?」

 

 ミウも普通の日常会話として聞いてきたのだと思うが、その意味に気がつくと顔を曇らせる。

 

「ごめんね!? こっちでリアルのこと聞くのはマナー違反なのに......」

 

「いや、別にいいよ。もう今更だし、それにここもリアルみたいなものだし」

 

 俺は笑っていうが、これは気休めではない。

 誰か大切な人が傷つけば悲しいし、大切な人が喜んでくれたら嬉しい。

 なにより、この世界で死ねば本当に死ぬんだ。

 そんな世界を現実と言わずしてなんと言おう?

 

「俺は今14才、ミウは?」

 

「私も14才だよっ、同い年だったんだ~」

 

 へぇー、ミウも14かぁ......ってうぇ!?

 

「同い年なの!? 年下だと思ってた!!」

 

 俺の驚きの声に周りの子たちが、なんだなんだと騒ぎ始める。

 しまった、声が大きすぎたか。

 なんでもないぞー、と子供たちに笑いかけると、また子供たちは会話を再開した。

 

「確かに、私って子供っぽいと思うけど......」

 

 ちなみにミウは拗ねてしまって、俺のことを半眼で見てきた。

 

「いや、そういう訳じゃないんだけど、その、ねぇ?」

 

「なにも伝わってこないよ」

 

 やばい、ミウの目から何か冷たいビームでも照射されているのか、すげぇ背筋が冷たい。

 しかも、少しするとミウは完全に顔を背けてしまった。

 さて、どうやって謝ろうかとーーすぐにこの発想が出てくる辺りがすごく情けないとは思うがーー俺が頭を悩ましていると。

 

「..................私は同い年だって分かって嬉しかったのに」

 

 ミウが子供たちの方を見ながら何かを呟いた。

 ......なんか、聞こえなかったのがすげぇ悔しい気がするのは気のせいだろうか?

 そんなことをしているうちに、サーシャさんたちの家が見えてきた。

 それを見て子供たちは声をあげて我先にと走り出すーーーーのを俺は前に先回りすることで止めた。

 子供たちから不満の声が上がるが、今はそれどころではなかったりする。

 

「コウキ」

 

 もちろん、ミウも気づいている。

 家の前にサーシャさんと見覚えのない男が立っていた。

 顔は見えないが、身長からして俺より年上。10代後半だろうか?

 二人の間の雰囲気はあまりいいものではない......どうやらなにか言い争っているらしい。

 

「ミウとお前らはここにいてくれ。俺が様子を見てくるから」

 

 子供たちからは少し不満げにされたが、ミウがなんとか宥めてくれたので、すぐに俺は行動を開始する。

 普通に近づいていってもいいのだが、なにやら不穏な空気だったので念には念をということで隠れながら近づいていく。

 ここが少し道を入ったところだったから隠れる場所があって良かったけど、こんなことなら《隠蔽》スキル取っておくんだったな。

 壁や置物などに隠れながらある程度近づくと、二人の会話が聞こえてきた。

 

「だーかーら、ここの家、俺たちに渡して欲しいわけ、分かる?」

 

「なんと言われようと、ここは子供たちの帰ってくる場所です! 絶対に渡しません!!」

 

 どうやら、家の所有権を巡っての話のようだ。

 

「子供たちぃ? ......あぁ、あのワラワラいるガキんちょどもか。そんなものよりも俺たちの目的の方が大事なんだよ」

 

「目的......って、なんですか?」

 

「あぁ? そりゃ攻略に決まってんだろ。俺たちが攻略してみんなを助けてあげようって、それは素晴らしい目的だよ」

 

「攻略って......あなた確かいつも酒場にいる人じゃないですか。そんな人が攻略に参加できるだなんてとてもじゃないですが思えません」

 

 サーシャさんが少し震えながらもキッパリと答えると、それに対して男は気だるそうにため息をついた。

 

「......はぁ~、あんたも強情だなぁ」

 

 そう言うと、男は腰に携えた剣を抜き、家の前の花瓶などが乗せられていた台に振り下ろした。

 ガァァン! と音を立てて、台や上に乗っていたものが崩れる。それを見てサーシャさんが顔を青くする。

 圏内では基本的に物に対してもダメージは入らないのだが、それはマップ的に配置されているものに限る。

 だからプレイヤーが新しく置いたもの、手を加えたものはダメージが入るのだ。(例えばジュースが入ったビンを落とせば、そのビンはそのまま割れ、ポリゴンになる)

 

「こっちも何日も話し合いさせられてイライラしてんだわ。さっさと家渡せや」

 

 ......なるほど、大体の事情は分かった。

 それにしても、確かにあの恐喝方法は中々に効果的だと思う。

 この世界では異性のプレイヤーに不適切な接触をされると《ハラスメント防止コード》というものが発生する(設定次第ではパーティメンバーを除く)

 これは接触した側には不快な感覚が体中を駆け巡り、接触された側にはウィンドウが出現し、そこに出ているYESのボタンを押すと、接触してきたプレイヤーを監獄エリアの《黒鉄宮》に送れるというものだ。

 しかし、この接触は当然のように武器での接触は含まれない。

 確かに圏内では武器での攻撃は届かないが、それでも恐怖心を煽るには十分効果があるだろう。

 それに武器で物を破壊するというのもさらに恐怖心を煽り、効果的だ。

 中々に下衆な奴だということが分かる。

 まぁ、

 

 

 

 今、俺も後ろからこのクソ野郎の背中に剣を突きつけているので、人のことは言えないが。

 

 

 

「今帰りました、サーシャさん」

 

「コ、コウキさん......?」

 

 サーシャさんは、まるであり得ないものを見る顔になる。

 俺が人助けをするのはそんなに珍しいだろうか? ちょっと傷つく......確かにあんまりしないけどさ。

 

「な、なんだよお前、こんなことして......」

 

 クズ野郎が何か言っているような気がするが、多分聞くほどのものではないだろう......あれ? ゴミ野郎だっけ?

 

「サーシャさん、そこに子供たちとミウがいますから、そっちに行ってあげてください」

 

「え、あっ、はい......でも!?」

 

 どうしーーあぁ、『これ』か。

 

「大丈夫ですよー。これは気にしなくていいですから、行ってください」

 

「無視すんなやこらーーひぃっ!?」

 

 ゴミが勝手に動こうとしたので、今度は前に回り込んで相手の喉元に剣を突きつける。

 剣が見えるようになったぶん視角情報からの恐怖が何倍にも増したのだろう。体をガッチガチに固まらせた。

 よかった、一応人間に近い知性は持ち合わせているようだ。これでもまだ動くようなら今度は当てなくてはいけないところだった......それはそれで楽しそうではあるが。

 ......ここまで冷静に相手に対処できるのは初めてかもしれない。

 それ以上に、ここまで体の芯が冷えているのも初めてな気がする。

 

「あの、ありがとうございます!」

 

 サーシャさんはいつものように頭を下げると、子供たちの方へと駆けていった。うーん、相変わらずいい人すぎて、苦手意識持っていることが少し罪悪感。

 さてと。

 俺はここで初めてゴミの顔を見る。

 先程は10代後半と言ったが、どうやら20代前半のようだ。全く、大人にもなってこんなことをする奴がいるのか。

 俺は隠すようにもせずため息をつく。

 

「......で、あんたはまだこの家が欲しいとか言うのか? 一応ここで引くのなら手打ちにしてもいいと思ってるんだけど」

 

「はっ、盗み聞きかよ......大体俺は何も間違ったようなことは言ってねぇよ。実際俺たちが攻略に参加すれば、攻略もいくらか早く進む、人も助かる、いいこと尽くしじゃねぇか」

 

「いいこと尽くし、ねぇ。それはここの子供たちの大切な場所を奪ってまで得たいものか?」

 

「当たり前だろ、あんなくだらないガキどもに比べれば、よっぽど崇高なことだろぉが」

 

「......ふーん」

 

交渉決裂、だな。

これ以上の話し合いはしても仕方ないし、これ以上こいつの下衆な言葉を聞いていたら、冗談抜きで発狂してしまいそうだ。

俺は剣を相手の喉元に完全に当てる。それと同時にゴミが嫌な悲鳴を上げるが、剣先は紫のエフェクトを出すだけで、相手に一切の傷はない。

 

「へ、へへへ。圏内じゃプレイヤーは傷つくことはねぇんだから、こんなことをしても意味ないぜ......お前だってガキどもが傷つくのは嫌だろう?」

 

 ゴミが苦笑いと思われる表情になる。

 思われる、というのは、極力こんな奴の顔は見たくないからだ。

 それにしても、やはり人間に近いだけで同等の知性は持ち合わせていないのだろうか?

 それだけならこいつがただのゴミということを再認識するだけなのでいいが、後半の言葉はさすがに看過できない。

 先程の言葉は、こいつはことと場合によっては圏内で子供たちへの恐喝、もしくは圏外での子供たちへの危害を加えることを視界に入れているということだ。

 ......ふざけるな。

 忠告もしたし、もういいだろう。

 ゴミに当てている俺の剣が、淡いライトエフェクトを纏った、次の瞬間。

 

「ぐぎゃぁっ!?」

 

 ビィィィィィィン!! というノックバック音の後に、そんなゴミの汚い音が聞こえた。

 さらに遅れてゴミが道に転がる。

 

「圏内だろうとノックバックは発生するんだよ。常識だろ?」

 

「て、てめぇ......」

 

 こいつが悔しそうな顔をする度に胸がスカッとする。

 どうやら俺はこいつのことが本当に嫌いらしい。

 といっても、今転がしたスカッとしたぶんを差し引いてもまだ全体の9割以上イライラしているから、あと20回以上はこいつを転がさないとだけど。

 するとゴミは立ち上がると、俺に対して剣を構えてきた。

 こいつ......まだやる気なのかよ。

 確かに俺はミウやキリトたちに比べれば、なんの取り柄もない弱すぎるプレイヤーではあるが、だからといって、こんなゴミに負ける気は正直全くしない。

 自惚れだとか慢心だとかそういうものではなく、事実としてだ。

 武器の構えかた、雰囲気など、強いプレイヤーというのはそういったものが洗練されているが、今目の前に立つこいつは、それらが稚拙すぎる。

 

「あんたさぁ、もう邪魔だからどっか行けよ。俺たちも暇じゃないからさ」

 

 俺が一方的に攻撃し続けるのならまだしも、こんなやつと戦闘するなんて真っ平ごめんだ。

 だが相手は俺の忠告(一応)なんかには聞く耳持たないらしく、

 

「ふざけんなやコラァ!!」

 

 俺に向かって突進してくると、そのまま剣を大上段から振り下ろしてきた。

 だがそれは、スキルでもなければ、身の毛がよだつようなパワーもスピードもない、なんてこともないただの一撃。

 ......こんな奴が。

 俺はその一閃を体を右に一歩ずらすことでかわし、躊躇なく相手の喉元に《スラント》を叩きつけた。

 再びノックバック音が鳴る。

 それと同時にゴミが再び道に転がる。今回は宙での一回転のおまけ付きだ。

 ゴミがそのまま転がっていき道の壁にぶつかったところで漸く止まる。

 俺はそれに近づき、ゴミの眼前に剣を突きつけた。

 

「ひっ、ひぃ!?」

 

 うるさい。

 こんな奴の声なんて耳に入るだけで不快だ。

 だが、これだけは言っておかないといけない。

 

「お前さっき、サーシャさんに子供たちのことを『そんなもの』とか言ってたけど」

 

 剣を持っている右手に自然と力がこもる。

 

「その『そんなもの』で、いったいどれだけの子供たちが笑顔になっているのか分かってんのか?」

 

 こんな、1人の勝手な願望のためだけに1万人もの人が絶望に包まれてしまった世界で、他人のために全てをかけられる。それがいったいどれだけすごいことか。

 こんなにも笑顔で包まれている暖かい場所を、俺は他に知らない。

 それをこいつは、自分達の欲望なんかで踏みにじろうとした。

 

「ここは、お前みたいな奴が壊していい場所じゃないんだよ。お前みたいな奴が犯していい場所じゃないんだよ」

 

 弱く、剣をゴミの頭に当てる。

 ブゥン......と小さくノックバック音が鳴る。

 その度にゴミが声をあげるのが少し面白い。

 俺が小さく笑みを浮かべると、ゴミはもうほとんど泣いているような表情になったが......知ったことではない。

 

「......今度この場所に手を出してみろ、その時はーー」

 

 今度は強く剣を当てる。それに応じてまた音が鳴る。

 

 

 

「ーー『外』で相手してやる。分かったら消えろよ。このクソ野郎が」

 

 

 

 俺がそう言うと、ゴミはまた奇声を上げて街の奥へと走り去っていった。

 それを見て、俺も頭に上がっていた血が下りてきて、冷えきっていた思考もいつも通りにの温度に戻っていく。

 ミウたちもこちらのことが終わったのが分かったようで、俺の方に近づいてきた。

 ......ふぅ、さてと。

 

 

 

「すいまっせんでしたーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 俺はサーシャさんたちがいる方向に向けて思いっきり土下座した。

 やっちゃったーー!! かんっぜんに子供の情操教育に悪い感じだったよさっきの俺!!

 いやでも、なんか話聞いててすっごい頭に来て、気づいたらどうやってさっきの奴を痛めつけられるかとか考えてたし、無意識だったから俺はそこまで悪くはないーー訳ないだろうが。むしろそっちの方がダメじゃん!!

 ていうか、だったら話し合いでよかったじゃん!? 何で俺手ぇ出してんの!? キレやすい最近の若者かっ!!

 ......これはもう、子供たちにも嫌われたかな。

 そう思ったのだが。

 

「かっこいいーーーー!!」

 

 ......へ?

 

「コウキさんすごい!!」

 

「あれどうやったの!?」

 

「ばか、お前見えなかったのか? こうやったんだよ!」

 

「ちがうよ、こうだよ!!」

 

 あれ? なんか予想と違うんですけど......

 呆けながら土下座している俺の回りを興奮した子供たちが囲んでいるという謎の図に俺が混乱していると、サーシャさんがこちらに来た。

 

「あの、コウキさん。本当にありがとうございました!!」

 

「えっと......あの、俺お礼言われるようなこと言いましたっけ?」

 

 サーシャさんに答えながらゆっくりと立ち上がる。

 正直、『もう近寄らないでください!!』っていう反応をもらうようなことしかしてない気がする。

 するとサーシャさんは顔を少し顔を伏せる。

 

「さっきの人......前からあんなことがありまして」

 

「あんなことって、脅迫ですか?」

 

 と、サーシャさんの隣まで来たミウ。

 その言葉にサーシャさんが頷く。その後のサーシャさんの話によると、2ヶ月ほど前からさっきの奴は来ていたそうだ。

 あいつの話では、ここを攻略の拠点にするだの、力無き者は力ある者に協力すべきだの、ここの子供たちよりプレイヤー全体の方を優先すべきだの、その他色々言われたそうだ。

 話の感じからするに他にも仲間がいるっぽいし、もっと痛め付けた方が良かったか......?

 

「ちょっ、コウキ!? 落ち着いて落ち着いて!! 目が危ないよ!!」

 

 なんか話の途中でミウが慌てていた気がするが、気のせいだろう。

 最近になっては、先程のようにゴミからの恐喝も増えてきたらしい。

 そして今日、俺が全部ぶち壊したと、そんな感じだ。

 さっきのゴミ(悪者)のことは子供たちも知っていたから、それを倒した俺はヒーローということか。

 

「......俺、やっぱり余計なことしたんじゃ」

 

 さっきの奴にそんなことをされてもサーシャさんたちが今まで我慢してきたのはきっと報復を恐れてだろう。

 子供たちもいるから相手の報復方法なんていくらでもある。

 あー、くっそ......なんでそこまで考えが至らなかったんだよ。昔からキレたら後先考えなさすぎだろう俺.....

 俺が自己嫌悪とこれからどうすべきかと考えていると、サーシャさんがニコリと笑う。

 

「いえ、いい切っ掛けになりました。このままいけば結局この家を渡さないといけなくなっていたでしょうし......」

 

 言いながら、サーシャさんは家を仰ぎ見る。

 その顔に浮かんでいるのはやはり笑顔だが、俺にはとても強い笑顔に見えた。

 ......やっぱり、この人もミウと同じ、優しくてとても強い人だ。俺なんか、足元にも及ばない。

 

「でも、あいつらのことはちょっと気になるよね」

 

 確かに、このままにしておくと間違いなく『何か』は起こるだろう。しかもそれはサーシャさんや子供たちにとって悪いことだ。

 ミウとサーシャさんを見ても、いい案は浮かんでいないように見える。

 ............。

 

「......アルゴに頼んでみるか」

 

「アルゴに? 何を頼むの?」

 

「アルゴは情報屋だ。ってことは情報の『入手』だけじゃなくて『発信』も頼めばできないことはない......はず」

 

 正直ちょっと自信がないが、最悪俺が1周間ほど弄られるのと、ミウとのお話会ーーという名の情報漏れの場ーーを提供すればイケると思う。

 

「でも、どういった情報を流すのでしょうか?」

 

「......例えば、さっきの奴をぶっ飛ばしたプレイヤー(俺)と《聖人》サーシャさんの仲がよくてここを拠点にしている、なんてどうでしょう?」

 

 これなら半分本当だから嘘だとバレにくいし、バレた時には本当に俺たちが来ればいい。

 重要なのは向こう側がサーシャさんたちを一気に潰しに来るようなことがないようにすることだ。

 そうなると俺たちが駆けつける前に何かが起こってしまうし。

 あとは、さっきの奴に与えた恐怖感と、ミウの《聖人》としての名前がどれだけストッパーとして役立つか、だけど。

 

「あの、でも......ここまでしてもらってよろしいのでしょうか?」

 

「いや、まぁ......今回は俺にも非があるしなぁ」

 

「それに困ったときはお互い様、ですよサーシャさん! 私たちもここが大好きですし」

 

 俺は少し目線を逸らして、ミウは笑顔でサーシャさんに返す。

 先ほども言ったように、俺はこんなに暖かい場所を他に知らない。

 この家を脅かすものがいるのなら、誰だろうと叩き潰す。

 可能な限り負の可能性は叩き潰すのだ。

 そのためには俺はなんだってする......というのは少々カッコつけすぎか。

 それでも、俺の心意気はそのぐらいあるのは確かだ。

 とりあえず、アルゴにメッセ送っておくか......

 

「あの......」

 

「ん?」

 

 下の方から声が聞こえたので顔を向けると、ミウとサーシャさんに挟まれる形でカナちゃんがいた。

 顔はまだ俯いているが、体はこちらを向いている。

 カナちゃんを怖がらせないよう、目線を合わせるためにしゃがむ。

 

「どうしたの、カナちゃん」

 

 彼我の距離は約1メートル。この数日間でここまでこれた。

 カナちゃんが何を伝えようとしているのかは分からないが、その必死に何かを伝えようとする姿を見ていると、必然とこう思う。

 ーー頑張れ。

 そして、カナちゃんがついに口を開き、辿々しくも言う。

 

 

 

「あの............ありが、とう」

 

 

 

 ......っ。

 ヤバイ、ウルッときた。

 なんか今、ミウがかわいい物好きなのが分かった気がする。

 まずいまずい、ここで下手な行動を取ったら、またカナちゃんが背の高い人に恐怖心を持ってしまうかもしれない。

 抑えろ、抑えろ~......

 ......でも、よかった。これならカナちゃんの症状は段々良くなっていくと思う。

 俺は今できる最大の笑顔を浮かべる。

 

「どういたしまして!」

 

 カナちゃんは大丈夫だ。

 俺の笑顔に、弱々しくも笑顔を返してくれたカナちゃんを見て、そう確信できた。

 

 




はい、コウキくんぶちギレ回でした。

キリトがキレて感情的、というか爆発タイプなので、コウキくんの性格やキリトの反対をとる感じで一気に冷たくなるタイプにしました。
コウキくんってもともと自分が守りたいものだけを守るということから、それ以外、もしくは敵に対してはとことん冷たいタイプだと思うんですよね。
なのでこんな感じになりましたが......うーん、やっぱり描写が拙くてダメダメですよね。難しい。


今回はちょっと展開上本編には載せられなかった小話を少々。
時間的には子供たちとフィールドで遊んでいるところです。


「ふぅ」

子供たちから少し離れて、軽く息をつく。
さすがは子供、元気の塊というのは伊達ではなく、一緒に遊んでいると体力が足りないこと足りないこと。
先ほどもケイドロをしていたが、後半は逃げても普通に捕まってたしな俺。
そんなこんなで少し休憩を入れさせてもらっているわけだ。
うーむ、俺も一応、まだ14才なんだけどな......若いもんには勝てんというやつか。

「はい。コウキ」

「ん?」

子供たちが離れすぎないように遠くから見守っていると不意に後ろから声をかけられたので振り返ると、案の定ミウがいた。
右手にはジュースが入った小瓶があり、俺につき出してきていた。
俺はそれを受け取りつつミウに言う。

「ミウ、さっきもそうだったけど、後ろから声かけてくるの最近はまってるの?」

「うーん、そういう訳じゃないけど、嫌だった?」

「特には。まぁ、ミウ相手なら背後取られても損はないし」

「いや、私相手にはって......」

「だって、ヨウトやアルゴ辺りなら間違いなくちょっかいかけられるし」

「あー......」

ミウは何か言おうとしたが、そのまま視線を逸らして笑ってしまった。
どうやらフォロー失敗したらしい。まぁ、そもそもあの二人にフォローとかいらんだろうけど。
そしてミウと並んで子供たちの様子を見守る。その間これといってミウとの会話はなかったが、ミウとだと沈黙もそこまで行き詰まる空間ではなくなってきている今日この頃。
これはミウの言う『家族』に近づいてきているということだろうか? それなら嬉しい。
でも、こう子供たちをミウと見守っていると......
そのまま数分ほど二人して黙っていると、ミウが唐突に話しかけてきた。

「ね、ねぇ、コウキ」

「ん?」

「なんかさ、こうしてるとさ......」

「......あぁ、確かにそうだな」

ミウが若干早口で言ってきたが、言いたいことは何となく分かった。
そうか、ミウも同じこと考えていたのか。
俺が答えるとミウは俺の方に顔を向けて顔を赤くした。

「そ、そうだよね! こうしてるとーー」

「あぁ、こうしてるとーー」



「小学校みたいだよな」「夫婦みたいだよね」



「......へ?」

ミウが呆けた声を出す。

「いや、こうやって大勢の子供たちを見てると、小学校みたいだよなだよなって......あれ? ミウさっき何て言ったんだ? ちょっと声被ってたから分かんなかった」

「~~~~っ なんでもないよっ!」

ミウは顔を一気に赤くすると、そのままズンズンと子供たちの方へと歩いて行ってしまった。
俺は慌ててミウに声をかけるが、「知らないっ!」と返されてしまった。
......あれー?



はい、以上です。ミウさん本当に糖分高めです。自分で書いててなんですが、可愛いですちくしょう。コウキにはザ○ですね。

さて次回は......ヨウトくん出てくるかな?


少し本編を改稿しました。それで話の内容が変わるというわけでもないですが、指摘もあり、私自身も少し気になったので......

ちょっと絵をあげてみました。下手ですが見てくれると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。