うーん、まずいですね。最近本当に更新が遅れている......
いや、まぁ、テストとかもあるから仕方がないといえばそうなんですが、それでもやっぱりもう少し早く書きたいと思ってしまうわけで......
(そんな悩みを抱えつつ)では、本編をどうぞ!
「「最初はグー!」」
俺とミウの声が洞窟内に響く。
直近3回の勝負で、ミウが出してきた手は、グー、グー、パーだ。
それなら、今回は裏をかいてチョキか? それともミウの癖通りまたグーか?
かなりの気分屋であるミウだからこそ、手に癖が出やすいはずだ。
それに対して俺は今までグー、チョキ、パーをランダムに出してきたので、読まれることはほぼない。
「「じゃんけん......」」
グーか、それともチョキか......!
俺は出す手を今までの情報、ミウの気分、今の状況、あらゆる可能性を考慮し決める。
「「ぽん!」」
そしてーー
「ふっ......儚く散ったぜ......」
「あのー、コウキ?」
ただいま絶賛落ち込み中のコウキです。
今俺たちは23層迷宮区に潜っている。
どうもこの迷宮区は、他の層の迷宮区よりも迷路性を追求しているらしく、かなり入り組んだ構造になっている。
分岐点では大体新しい道が三つ以上あったり、妙に曲がっている道でプレイヤーの方向感覚を狂わせたり、といった感じだ。
迷宮区のマップは既に行ったことのある場所は見えるので、帰り道で迷うということはないが、ボス部屋を見つけるのはかなり時間がかかりそうだ。
しかも出現するmobは基本的にスライム系なので、正直戦っていてもあまり爽快感や達成感はない。
さらに今はそんな理由以上にイライラしていた。
「くっそ、アイコにもち込んだまではよかったのに......まさかあそこでmobが襲ってきて仕切り直しなんて......」
「おーい」
先ほどのじゃんけんは、道中分かれ道があったときやなにか選択肢があるときなど、俺とミウの意見が違ったときにどちらの意見を採用するか決めるためのものだ。
過去3回全部情報収集に割いてまでの今回だったのに......
ちなみに俺がここまで勝ちに拘っているのは、別に俺が子供っぽいからではない。断じてない。
このじゃんけんルールは2層から俺たちの間に採用されているのだが......俺はまだ、一回も勝てたことがないのだ。
あっ! 今、そんなこといつものことじゃね? とか言った奴いるな!! 出てこい、相手になってやる!!
俺だってじゃんけんごときにそこまで勝ち負けの拘りはないのだが、一回も勝てないのはさすがに気分いいものではない。
なのでこうやって色々と策を弄しているわけだがががががあっががあ。
「ミウー? 俺の耳はミウのほっぺと違って引っ張っても伸びないぞー?」
「だって無視するんだもん......」
分かった、分かりましたから!! だから涙目やめてください!!
......ここ最近、ミウは本当に変わった気がする。
前までも自然体ではあったんだけど、今は本当のミウが出ている感じ、とでも言えばいいのか?
いや、そもそも本当のミウを知らないからなんとも言えないんだけどーーーーっ?
曲がり角を曲がった瞬間、視界にあるものが映りこんできた
「コウキ?」
「しっ」
俺はすぐさま道を戻りつつミウを道の脇にあった岩に隠れるように押し付けて、ミウの口の目の前に人差し指をを立てる。
普段のミウならこういうときかなり慌て出すのだが、こちらが真剣なときはすぐにそれを察知して気を引き締めてくれる。本当に俺にはもったいなさすぎるパートナーだとつくづく思う。
「どうしたのコウキ?」
「そこの角、曲がってちょっと行ったところにプレイヤーがいる、3人」
俺がそう言うと、ミウは目を閉じた。おそらく耳を澄ませているのだろう。
数秒してミウが目を開けた。
「......確かに人の声とか剣の音っぽいのは微かに聞こえてくるけど......ただ攻略中じゃないの?」
確かに、声、音。それだけの情報ならミウの言う通りだ。
攻略中のパーティーを見つけた。ただそれだけ。
だが、俺がレベル20になったときに取った《索敵》スキル。このスキルのお陰で壁や扉の向こう......はさすがに無理だが、今のところ岩のようなただの障害物からなら向こう側にいるmobやプレイヤーのカーソルぐらいは見える。
そして、それによればーー
「プレイヤーのカーソルしか見えない。mobのカーソルが見えないんだ」
俺の言葉を聞いて、言葉の意味を理解したミウは一瞬目を見開いたが、さらに一瞬後にはいつもの剣士の顔になっていた。
「......狩り場のいざこざ?」
「だったらどれだけよかったかな......」
俺はミウから少し離れて、ついてくるよう目で促す。
俺とミウはそのまま物音をたてないよう岩から少し顔を出す。
そこには。
「......オレンジプレイヤー」
ミウがどこか悲しそうに、感情を抑えるように、ポツリと呟いた。
見た先にはやはり3人のプレイヤーがいた。そのうちの2人の男性プレイヤーが1人の男性プレイヤーを攻撃している。
1人は片手剣で、もう片方は短剣で。
その2人のプレイヤーの頭の上にあるカーソルがオレンジになっていた。
ーーオレンジプレイヤー。
mobのカーソルに種類があるように、プレイヤーのカーソルにもいくつか種類がある。
大きく分けると2種類だ。
カーソルの色がグリーンのプレイヤーと、オレンジのプレイヤー。
俺やミウ、ヨウトのような一般のプレイヤーは普通はグリーン。
それ以外の、オレンジカーソルのプレイヤーは、犯罪者プレイヤーと呼ばれている。
盗み、傷害、殺人のような、これらの『犯罪』を行うと、グリーンのカーソルがオレンジに変わる。
そして人間にとっての最大であり、最悪のタブー、殺人を好きこのんで行うプレイヤーを、恐怖の意を込めてレッドと言う。
オレンジカーソルは、専用のクエストをクリアすれば色がグリーンに戻るが、彼らのカーソルは今もオレンジなので、デュエル中などという希望的観測は一切できない。
それに襲っている側の2人。こんなときなのに......笑っている。かなりの確率で前にも似たようなことをしていると思う。
見ているだけでも頭の中が少しぐちゃぐちゃになりそうになるが、なんとか堪える。
どういう経緯で今の状況があるのかは分からないが、このままでは襲われているプレイヤーは確実に殺されるだろう。
完全に怯えきって、構えている剣が震えている。
そして相手は2人。
小さく眉をひそめる。
......これは、無理だな。
俺が今の状況にそう結論付けるにまでおそらく1秒前後しかかかっていなかったが、それと同時にミウが動き出そうとした。
その手を掴んでミウの行動を止めると、俺に責めるような視線を向けてきた。
「ミウ、なにするつもりだ?」
「なにって......助けるに決まってるでしょ?」
やっぱり......
なにを当たり前なことを聞いてくるんだ、というようなミウの声には怒気こそこもってないものの、あからさまな焦燥感がある。
その雰囲気に少し当てられるが、飲まれないよう耐える。
「ミウ無理だ。相手は二人、しかも襲われている人もHPがほとんど赤だ」
「......だから?」
「っ、だから、助けられる可能性は低いし、何よりあの人を庇いながら一対一はキツい。相手はたぶんレッドだ」
殺人方法は多々あるが犯罪者、特にレッドというのは基本的にある程度強くないとやっていけない。
単純な話、反撃されては元も子もないからだ。
もちろん、そうされないように相手も色々工夫していたり策略を練っていたりもするのだろうが、そもそもこの最前線で殺しをやろうとするぐらいなのだから、レベルは俺たちと同じぐらいである可能性が高い。
それだけならまだしも、一番の理由がある。
それは、レッドプレイヤーが対人戦闘に特化しているということだ。
俺たち一般プレイヤーはmobと戦うことを前提にいつも戦っているが、レッドプレイヤーは人を殺すことに力を注いでいるぶん、戦ったときには相手にアドバンテージがある。
ここまで相手に有利な条件になってしまえば、いくら俺たちの方が相手よりもレベルが高くてもキツい。それはミウも同じだ。
そのことはミウも分かっているはずなのだが、それでもミウは引かなかった。
「『だから』助けるんでしょ!!?」
「ーーっ」
「あの人だってこんなことで死にたくないって思ってるよ!」
ミウが捲し立てるように言ってくる。
一瞬向こうにいるプレイヤーたちに声が聞こえていないかと心配になったが、それ以上に俺は動揺していた。
初めてミウから俺に向けられた敵意を感じたからだ。
それと同時に、なんとなく理解した。
俺とミウは、そもそも前提条件が違うんだ。俺は守りたいと思った人を守る。それが俺の決意であり、覚悟だ。
だがそれは言い換えれば、俺は守りたいと思った人以外はどうでもいい、ということになる。そしてそれはあながち間違っていない。
申し訳ないが、あの襲われている人は俺が守りたい人ではない。
それでも、確かに俺は困っている人を見つければ、どうやって助けようかと考えるし、行動もする。が、それで俺ーーというより、俺の守りたい人、大切な人に何かしらの被害が出るのなら話は別だ。
俺はやはり、守りたい人を守れればそれでいいのだ。......ある意味最悪な思考の持ち主だと自分でも思う。
それに対してミウは、おそらくだが困っている人がいれば全員助ける。それぐらいの考えを持っているんだ。
ミウはすごい、改めてそう思った。
俺にはできないような行動や考えを躊躇なしにまっすぐとやり通していく。
そしてミウのそんな考えに、俺も何度も助けられているし、そもそもミウのその考えは限りなく正しいと思う。人を助けることはほぼ間違いなく『善』の行動なのだから。
だから俺はそんなミウの考えや行動を、否定する気はない。
でも......肯定する気にはもっとなれない。
ミウが傷つく可能性を肯定なんてできるわけがない。
大丈夫かもしれない、そんな考えで誰かを失うなんて『二度』としたくない。
だから俺は反論する......だが。
「でもーー」
「コウキはあの人を『見殺し』にしたいの!?」
なっ......!?
そう言ってミウは俺の手を振り払い、岩の影から飛び出していった。
ミウが走っていった先では、今まさにレッドの一人が止めをさそうとしているところだった。
レッドの片手剣が降り下ろされる。
「はぁっ!」
瞬間、走っていては間に合わないと判断したのか、ミウは腰の鞘から抜いていた剣を、レッドが降り下ろそうとしてる剣に向けて投げつけた。
カァァァァン、という甲高い音をあげて、ミウの剣が当たったレッドの剣は軌道を僅かに逸らし、襲われていたプレイヤーの顔すれすれの位置を通過した。
そしてミウの剣もまた跳ね返って少し離れた場所に転がる。
「いっつ......なんだぁ!? おまえはぁ!!」
「死ねやぁ!!」
さすがはレッド、と言うべきか、ミウが急に場に現れてからの判断は早く、短剣を持った方のプレイヤーがミウに切りかかった。
「させるかぁ!!」
それをミウを追って接近していた俺は《ブレイヴチャージ》を発動させて弾く。
くそっ! こうなったらさっさと逃げてもらうしか......!
そう考え、襲われていたプレイヤーを見るが......ダメか。
そちらにはやはり、片手剣の男がついていた。
「ちっ、見てる奴いたのかよ。こんなことなら《索敵》取っとくんだったぜ」
「まぁ、いいだろ。殺す奴が増えるだけだし、よっ!!」
言うと、短剣の男が俺に突進してきた。
片手剣の男は、俺たち相手には邪魔だと判断したのか、そのまま襲われているプレイヤーを殺そうとしていた。
ヤバイ。こいつらかなりやる。一つ一つの状況判断が早い。
正直今すぐミウの手を引いて逃げ出したいが、そういうわけにもいかない。
だが戦うにしてもミウはさっき剣を投げつけて、今手元に武器がない。
ここでミウがストレージから武器を出そうとしたら、その瞬間間違いなくミウが二人に狙い撃ちされる。
あー、くそっ! キツい!!
「ミウ!!」
俺は少し後方に立っているミウに向けて自分の剣を放りつつ、短剣の突きを屈むことでかわす。
「こいつのこと抑えておいてくれ!! 片手剣の奴は俺が相手する!」
屈んだ体勢から、相手に向かって飛び出し突進系体術スキル《肩撃》で自分の体を短剣の男に思いっきりぶつける。
これは《閃打》の突進バージョンで、相手の硬直時間も少し延びている。
まぁ、相変わらず威力は悲しいが。
ちなみにオレンジカーソルのプレイヤーを攻撃しても、グリーンカーソルの色は変わらない。おそらく正当防衛ということだろう。
短剣の奴が硬直している間に俺は片手剣の男に向かっていく。
「りょ、了解」
俺の剣を受け取りながらいつもよりも少し遅れてミウが返事をし、硬直している短剣の男に接近していく。
ミウは自分が装備している剣ではなく俺の剣を使うことになるのでソードスキルは使えないが、それでもミウなら俺なんかよりよっぽど戦えるだろう。
そしてそんなミウなんかよりも全然弱く、武器を持っていない俺は、
「はっ! 武器も持たずにバカじゃねぇの? お前」
当然のように相手に馬鹿にされるわけだ。
片手剣の男は俺を罵ると体を襲われているプレイヤーから俺に向けて、切りかかってきた。左からの横なぎだ。
普段なら剣で受けとめつつ、そのまま滑らせて相手に接近するか、弾くのだが、今は何も持っていないので一歩後ろに引いてかわすしかない。
さすがに手ぶらはキツい。かといって今ウィンドウを操作しても狙いの的になるだけだし、ミウが投げた剣もここからでは少し遠い。
そもそも距離を取りすぎれば襲われている人が殺されてしまう。
正直、俺はそれでも問題ないのだが、関係してしまった以上殺されてしまっては寝覚めが悪いし、何よりもミウが悲しむところは絶対に見たくない。
「そこのあんた! 転移結晶は持っていないのか!?」
転移結晶とは、移動アイテムの一つで使用時に宣言した場所にテレポートできる。
「そ、そいつらに騙し取られて......」
期待はしていなかったけど、やっぱりか。
せめてあの人の近くまで行って俺が持っている転移結晶を渡すことができれば......
「オラァ!! いくぞぉ!!」
片手剣の男が再び切りかかってくる。
くそっ! どうする!?
SIDE Miu
コウキに酷いことを言ってしまった。
コウキにまた我が儘を言ってしまった。
頭では分かっていた。コウキの言っていることは正しいって。
それでも、あそこで引いてしまったら、私は私自身で自分の決意を否定してしまうことになる。
なにより、困っている人を見殺しになんかできっこなかった。
自分が頑張れば、もしかしたらなんとかなる可能性を潰したくなかった。
でも、その結果こうやって私はコウキに迷惑をかけている。
私はコウキの剣で戦い、コウキはそのせいで今素手で戦っているのだから。
「オラァ!!」
短剣を持った人の右からの切り下ろし、突きの2連撃を初撃は体を捻り、2撃目は剣の腹で受け止める。
短剣独特の間合いと攻撃のテンポのせいで、どうしても反応が一歩遅れて後手に回ってしまう。
とにかく、考えるのはあとだ。私は早くコウキのところに行かないと!
「オラオラァ!! かかってこいやぁ!!」
「んっ、く......」
私が受け止めた短剣を、相手は無理やり手首を捻ることで剣と剣の接触面を滑らせ、そのまま私の肩を狙ってきた。
それを体を回転させてかわし、相手と至近距離になってしまったので相手の体を押して、後ろに跳ぶ。
今の私はソードスキルが使えない。
だから相手にソードスキルを使われると相殺すらできないからかなり厳しい。
それに今戦っている相手は、特定のアルゴリズムで行動するmobじゃなくて、変幻自在に思考と行動を変える人間だ。
だからこそ、その思考や行動にはなんらかの癖は出てくるのかもしれないけど、それを見つけるのには少し時間が足りない。
「ふっ!」
私はジグザグに直線的な動きで相手を翻弄しつつヒット&アウェイで攻撃を繰り返す。
でも相手もそれにきっちりと対応してきて、あわよくばカウンターまで入れてこようとしてくる。
......対人戦だとここまで厳しいんだ。
対人戦は今までコウキとの訓練ぐらいでしかやったことがないから、やはり戸惑ってしまう。
細かなフェイント、それをもとに互いの駆け引き、様々な攻撃パターン......相手の行動に合わせてこちらも行動していたら間に合わない。
短剣の人を警戒しながら一瞬コウキの方を見ると、片手剣の人の攻撃を上手く距離をとることでギリギリいなしている。
でも、あのままじゃそんなに長くもたないのは明らかだ。
......やっぱり、速攻で決めないと。
私は一度唾を飲み込んで緊張をほぐし、息を整える。
......よし。
私は覚悟を決めると、一気に短剣の人に向かって走り出す。
そして相手が射程圏内に入った瞬間に、右に引いていた剣を全力で叩きつける。
もちろん、そんななんの工夫もないただの一撃は簡単に避けられてしまった。でも、私の狙いは攻撃じゃない。
走って近づいた勢いをそのまま止めずに、足に力を込める。
そして私の攻撃をかわして少し体勢が崩れている短剣の人を飛び越えるように高く跳躍した。
「はんっ! 相方のフォローに行こうってか?」
ニヤリと笑った短剣の人の剣がライトエフェクトを纏う。
「そんな手が、通じるわけないだろうがぁぁぁああ!!」
そして私に向かって地対空単発スキル《ストライクライン》を放った。
《ストライクライン》は空中に向けてしか撃てないが、その代わり発動スピード、攻撃のスピードが尋常じゃないぐらいに速い。
すごい勢いで短剣の人が接近してくる。短剣は私の胸を貫く軌道だ。
私は今コウキの剣を使っているから、武器装備時の能力アップはない。だから短剣の人よりもかなり攻撃力は低い。
このまま剣で受け止めても弾かれるだけだし、ソードスキル相手では受け流すのも無理だと思う。
でもーー
ーーかかった!!
《ストライクライン》はその万能性故に空中にいる相手には絶対というほどに使われる。
だからこそ、先読みできる。
高速の剣。圧倒的な攻撃力。
......そんなもの、ボス戦でいくらでも見てきた。
それに比べれば、このぐらい!!
私は宙で体を無理やり捻って、体勢をベストな位置にもってくる。
「くっ......はあぁぁああ!!」
私は剣を振るう。
狙うのは......短剣を持つ相手の右手首。
......ごめんね。
ザシュッ!!
短く響いた音とともに、短剣の人の右手首から先が宙に舞った。
ーー《武器取落》(アームファンブル)
最近、私とコウキが練習しているシステム外スキルーー元からシステム的に用意されているものではなく、システム上の仕様などを利用したテクニックの総称ーーだ。
《武器取落》の元ネタは、1層ボス戦で私がボスに対して行った半強制ファンブルだ。
本当は、あの時のように剣の柄や鍔、刃の根元なんかを狙って相手の武器を弾くんだけど、今回はストレージから他の武器を出されたら困るので右手首から先を切らせてもらった。
短剣の人は、あまりの驚きに、状況についてこれていないようだ。
でも、これでコウキのところに行くことができる!!
着地後、すぐにでもコウキのところに行こうと、コウキの方を見ると。
えっーー
SIDE Kouki
くそっ!!
首を横に倒して上段から顔を狙ってきた斬撃をなんとかかわす。
こいつ、かなり速い!!
ミウやヨウトほどじゃないにしろ、攻撃速度が速い。
今のところは相手から付かず離れずで均衡を保っているが、早く剣を持たないとこの攻撃をかわし続けるのは無理だ。
「くっ......」
2連撃の切りかかりを後ろに跳んでかわして、一旦距離をとる。
ミウはーーまだ無理そうか。
こいつの片手剣の連撃を止めようにも、剣無しには受け止められない。
ミウからの援護は望めないし、俺の剣を返してもらうのも無理。
ミウの剣も遠くにある。
あとは......相手の懐に飛び込んで《体術》スキルぐらいか。まぁ、100%反撃されるだろうが。俺にはミウのような超人的な反射神経はないし。
これはちょっとまずいな......
「おらおら!! そんなに離れていていいのかよぉ!?」
片手剣の男が再びプレイヤーを攻撃しようとする。
そう、これだ。この脅迫紛いのせいで、俺はほぼ強制的に自分から近づかなくてはいけなくなる。
作戦を考えようにも、ミウを待つために時間を稼ごうにも、相手から離れられないのだ。
......やっぱり、俺はいつでもどこでも命を懸けないと勝負すら成り立たないか。
......うし。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
俺は叫びながら片手剣の男に突進していく。
それを見て相手はニヤリと笑い、また俺には切りかかってくる。
俺は相手が剣を振り上げた瞬間に横に跳ぶことで剣をかわし、そのまま相手の脇をすり抜けるように走り抜けたーーつもりが。
「おおっと、あぶねぇあぶねぇ。そう簡単に人質は渡せねぇなぁ」
俺が抜く寸前で片手剣の男はサイドステップで俺の正面に移動し、進行を阻んできた。
ここまでは予想通り、これならどうだ!!
「はぁぁぁっぁああ!!」
俺は進行を阻んできた相手の体に《鎧透破》を叩き込む。
「ちっ、珍しいスキルを持っていやがるな」
「ぐっ!」
やっぱ、これも防いでくるか。
相手は横なぎで俺をぶったたき、吹き飛ばすことで俺の攻撃をかわした。
剣の刃ではなく、腹で俺を攻撃してきたのは、相討ち覚悟で俺が自分の攻撃を当てることを嫌ったからだろう。剣の刃だと上手くすれば踏ん張れるから。
本当ならここで俺はスキル失敗によるディレイに囚われるが、《体術》スキルは基本的にスキルディレイが極僅かなので反撃されることはなかった。
俺はすぐに体勢を整える。
......くそ、せめて《鎧透破》が相手の剣に当たってくれれば武器が破壊できる可能性があったのに。
《体術》スキルはおそらく当たらない。そもそもモーションが独特すぎて警戒されるのだ。
それでもーー
「はぁぁぁぁああ!!」
俺は再び相手に突進する。
しかし、また剣で吹き飛ばされる。
「はっ! 何度やっても同じだよ!!」
「くっそ!!」
3度目の突進。
それもまた防がれる。
剣の腹で攻撃されているからダメージは少ないが、こうも積み重なると無視できないダメージになってくる。
「おいおいどうしたぁ? もしかしてお仲間が助けに来るまでの時間稼ぎかぁ?」
片手剣の男がケラケラと笑う。
だが、そんなことは気にしていられない。
「おぉぉぉぉおおお!!」
4度目の突進。
相手もいい加減鬱陶しそうに顔をしかめて剣を振りかぶるが、俺はまた横に跳ぶ。が、今度は先ほどとは違った。
「ははっ! 遂に諦めたかぁ!?」
俺は相手の脇を通るようなコースではなく、そのまま真横に走っていったのだ。
諦めた? そんなわけがない。
俺の進行方向の先、そこには。
「......? なに!? まさか!!」
どうやら相手も気づいたようだ。
俺の進行方向の先にはミウの投げた剣がある。
今まで無意味に繰り返しているように見えた突進は、相手の意識から完全にミウの剣を除外し、その上でミウの剣に近づくためだ。
別にミウの剣が手に入ってもソードスキルは使えないので、それだけでは一発逆転にはならないが、それでも相手の剣を弾いたりはできるし、その結果《体術》スキルが入りやすくなるかもしれない。
「ちっ! させるかぁ!!」
無駄だよ、今から動いてももう遅い。
人質に攻撃を加えても、俺が剣を手に入れてしまっては相手としても意味はないだろうし、この距離ならば相手がプレイヤーを攻撃している間に、相手の元に戻って《体術》スキルを叩き込めばいい。
そして相手が選んだのは......どうやら俺を追うことのようだ。それでも俺の方が早い。
俺はミウの剣を掴むために手を伸ばす。
その瞬間だった。
カァァァァン!! 甲高い音をあげてミウの剣が遠くに弾き飛ばされた。
弾き飛ばしたのは......石!?
「っ!」
俺はある可能性に気づき、後ろを振り返る。
そこには何かを投げた後のような格好になっている片手剣の男が。
《投剣》スキルか......!
《投剣》スキルは、名前の通り剣を投げるためのスキルだ。(投げること自体はスキルがなくても筋力値次第でできるが、ダメージを与える、ということならスキルが必要)
正直、中距離からの攻撃ぐらいで汎用性も少ないので、取っているプレイヤーはいても、実際に使う場面というのはあまりない。
だが数少ない利点の一つで、《投剣》スキルは小さいものなら、ほとんど投げるのに条件がない。
例えば、今のようにその辺に転がっている石でもいいのだ。
今のも《投剣》スキルのソードスキルだろう。
もちろん石とかの場合、専用のピックなどよりは威力は下がるが、落ちている剣を弾くぐらいは造作もないはずだ。
そしてもう一つの利点。
威力の低いソードスキルは、総じてスキルディレイが短い。
......まずい。
今の俺は相手に背を向けているような状態だ。くそ、あの男がピックか何かを装備していたら《投剣》スキルのことも分かったのに。
「そんな体勢じゃかわせねぇだろ!!」
片手剣の男が何かのスキルモーションに入る。この距離だ、おそらく突進系のスキルだろう。
片手剣の男がニヤァッと下卑た顔になる。
「死んじまえやぁぁぁ!!」
そう叫び、相手が発動しようとしたのはやはり突進系のスキル《ブレイヴチャージ》。
一瞬後には俺を貫かんと剣が高速で接近してくるだろう。
くっ、こうなったら一か八か《体術》スキルの何かで相殺を狙うしか......!
そう考え、拳に力を込めようとした瞬間。
「コウキーーーーーーーーー!!」
っ! ミウ!!
その声が聞こえてくると同時、スキルを発動しようとしている相手の上空から剣が飛んできた。軌道から察するに、ミウが高い位置から投げてくれたのだと思う。
俺は飛んできた剣の柄を握ると同時、すぐさまスキルモーションに入り、剣が淡いライトエフェクトを纏う。そして片手剣の男のスキルも遂に発動し、一気に俺に接近してくる。
《ブレイヴチャージ》なら何度も見てきた。見なくても軌道は分かる!
「はぁぁぁぁぁああ!!」
俺の腕はシステムに導かれ、背後に向かって高速で進んでいきそれにつられて体も後ろを向く。
そして剣はそのまま水平に動いていき、接近してきていた相手の右肩へと吸い込まれていった。
「ぐっ.......がぁぁぁぁぁぁぁああぁ!?」
肩を切断とまではいかなかったが、俺の剣は相手の右肩を深々と切り裂いた。
《ディメンションズ・ネイル》。このスキルは少し変わっていて、後ろに向かって切りつける、というものだ。
一撃だし、威力そのものは低いのだが、発動は早いし、カウンターも取りやすいので気に入っているスキルの一つだ。
敵からの攻撃によるスキルファンブルで、相手は数瞬動きを封じられる。
この間にさっさと逃げないと!!
「あんた、これを使え!!」
俺はそう言って襲われていたプレイヤーに転移結晶を投げる。
そのプレイヤーは怯えきった表情で俺の転移結晶を受けとると、すぐさま転移先を宣言して転移していった。
よかった、ここであのプレイヤーが錯乱とかしていれば、逃げるのが間に合わなかったかもしれない。
俺はミウもすでに転移結晶を手にしていることを確認して、今度は自分の転移結晶を手に取る。もちろん、ミウの剣を拾うことも忘れない。
「「転移、《シールス》!!」」
俺とミウは、同時に宣言して戦線を離脱した。
はい、久々の戦闘回+レッドプレイヤー初登場回でした!
いや、ASとか本編でも将来オレンジ、レッドプレイヤーぽいのはそこそこ出ているのですが、本編でちゃんと出てきたのは初めてだったので......
さて、今回はいつも仲良し家族以上恋人未満(この表現、自分でもおかしいと思う)の二人の間に少し対立がありましたね。
個人的な意見としては、どちらの考えも間違ってはいないと思うのですが、やはり正義の味方が強い世の中としてはミウさんの意見が正しい感じになってしまいがちです。(まぁ、コウキくんの方はミウ大事! という感じが強すぎると思いますが)
コウキくんの考えも、間違っていないと思って頂くことができれば、嬉しいです。
次回は後日談です......が、更新遅れそうです。