ミウ&ヨウト「突然始まる前書きコーナー!! イェイ!!」
コウキ「いきなりテンション高いなおい」
ミウ「えー、このコーナーは、最近ギャグに飢えている作者の突発的な、かつ勝手な思い付きで作られたコーナーです。CMぐらいに考えてくれてOKですっ」
ヨウト「作者も前書き書くの苦労してたらしいな」
コウキ「それなら書かなきゃいいのに......」
ヨウト「それはそれでスペースがあるのに勿体ない、って思ったんだと」
コウキ「なんて貧乏性......」
ミウ「はいっ。最近、中々出番がないヨウトを交えての小話以下の会話でしたー。本編どうぞ~」
ヨウト「最近ミウちゃんドSすぎないっ!?」
SIDE Miu
「......」
夜。どこを見渡してもプレイヤーどころかNPC1人さえ視界に入らない。
それもそのはず。私が宿屋を出るときに時計を見たけど、午前2時だった。真夜中すぎる。
こんな時間でも起きているプレイヤーも確かにいることはいるけど、そういう人たちは大概が攻略組とかで、レベリングのためにフィールドに出ているから、街中はどうしても静かになる。
そして、どうして私がそんな時間に外を歩いているかというと。
......単純な話、ベットで横になっていてもまったく眠れないからだ。
リリちゃんに会ってからずっと悶々としていても無理矢理寝ていたけど、今日は無理だった。
つい、ため息をつきそうになるけど、直前で口を閉じてなんとか堪える。
私は別に、リリちゃんのちゃんのことが嫌いな訳じゃない。いや、むしろ好きだ。大好きレベルだ。
それに私とコウキ、二人に一気に友達ができたんだからため息なんかついたらバチが当たってしまう。
でも、やっぱりリリちゃんのコウキに対する態度や雰囲気を思い出してしまって、結局鼻から息をつく。
頭のなかで色々なことがグルグルグルグル回る。
私の良い部分と、嫌な部分がグルグルグルグルと。
こういうとき、天使と悪魔が反対方向へ自分を引っ張る図がよく使われたりするけど、そんなに簡単な状態じゃない。
私の中には、2人どころか5人も10人もたくさんいて、その天使や悪魔たちが私を色んな方向から引っ張っている。そんな感じ。
なんとなく、コウキのことが好きだって気づけなかった時の感覚に似ているけど、それとも違う。
あの時も悶々とはしていたけど、こんな......自分のことが嫌になる感覚なんてなかった。
今は、自分の嫌な部分が前面に出されていて、すごく嫌だ。
リリちゃん、良い子だなぁ。もっと仲良くなりたいな......そう思っているのに。
コウキと先に出会って、先に好きになって、長く一緒にいるのは私だもん......そう考えている自分がいる。
........................あーっ、もう!!
私.......すごく嫌な人になってる。こんな自分ばっかりで......ホント嫌だ。
こぶしを強く握る。嫌な自分を無理矢理にでも振り払うように。
「......あれ?」
相当考え込んでいたのか、周りを見るといつの間にかずいぶんと遠くまで歩いてきてしまっていた。
あ、まずい。見覚えはあるけどまだ覚えてない道だ。
こういう場所に来てしまった時は99%道に迷う。経験則で分かる(残りの1%は奇跡の生還)
コウキに連絡ーーはさすがに時間的にまずい。早速手詰まりになってしまった。
ま、まぁ、今来た道を戻れば少なくともこれ以上分からない道には出ないはず!
そんなことで迷子を止められるのならこの世に迷子なんて存在しない、そんなツッコミが一瞬浮かんだけど、大丈夫だよ、うん。
そういうことで道を遡り始めて10分。
......うん、これはちょっとピンチかもしれない。
もう心が折れかけていた。
おかしいなぁ、道を遡りながらちゃんと街の地図も見て歩いてるのに、なんで知っている道に出ないんだろう?
これで私が暗いのがダメなか弱い系女の子だったら本当にアウトだったかもしれない。よかったぁ、私、か弱くなくて......言ってて自分で傷付いた。
そんな1人脳内コントが、笑いの神様かなにかの機嫌をよくしたのか、角を曲がると今日コウキと確認した場所に出た。街外れの公園だ。
よかった、ここからなら宿屋まで帰れる!! と両手を上に上げそうになったけど、公園に誰かいるのが見えて咄嗟に止める。
こんな真夜中に両手を上げて街を徘徊する不審者だと思われたくなかったのもあるけど、その『誰か』がよく知っている人物に見えたからだ。
あれって......もしかしなくても、コウキ、だよね?
こんな時間に何を......。そう思って声をかけようとしたけど、かけられなかった。
その答えは、声をかけようと近づいたら分かったから。
「ふっ......はっ!!」
コウキが右手に持った剣を振る。
......なにをしているか、なんて明白だった。それでも、私はつい息を飲んでしまった。
コウキは派手に動き回る、なんてことはせずに、ただ一心不乱に同じ振りを、何度も何度も繰り返し行っていた。もしかしたら、型を決めて振っているのかもしれない。
それから何度か振ったと思ったら、今度はまた違う振りを始める。一つ一つの動作を体に染み込ませるように。
別に、コウキが行っているような自主練習は珍しいわけではない。私もコウキと朝会うよりも早くに部屋を出て、自主練習をしている。他のプレイヤーだってしていることだと思う。
私が驚いたのは、現在時刻。
今の時間は午前の2時。昨日の夜コウキと別れたのが10時だから、そこから4時間半ほど経過している。
もちろん私と別れた直後からすぐにこの自主練習を始めたわけではないと思う(多分......)それでも、コウキの雰囲気から2時間ほどはもう行っているように見えた。
じゃあコウキは、いつ寝ているというのか?
このあとすぐにかえって寝る? あんなに集中しているコウキが今から帰るとは到底思えない。
私と別れてすぐに寝た? それでもたかが2時間程度しか寝ることはできない。
これが今日は私と同じで寝られなかったから、という理由なら分かるけど......コウキの動作からは今日初めて行ったような迷いは一切ない。毎日行っている証拠だ。
私の視線の先では、コウキが剣を止めて、今度はイメージトレーニングをしているのか、何かを避けるように動きながら剣を振るい始めた。
......私は、『この世界』でのコウキのことは、誰よりも知っている自信があった。多分、それは事実ではあるんだと思う。
それでも......私は、まだコウキのことを全然分かっていなかった。
コウキにも覚悟があって、守りたいものがあってこうやって自分を磨いている。本当に、限界ギリギリまで。異常とも言えるラインまで。
それも全ては、覚悟を貫き通すためには力が必要だから。
......本当に、すごいなぁ。コウキは。
改めてそう思った。もう、そうとしか思えない。
私は今のコウキの重みも一緒に背負いたいけど......これは多分、コウキから取ったらダメな重みだ。
コウキが自分の覚悟のために頑張っているのに、私が介入してはいけない。水を差してはいけない。
「私も......こんなことじゃダメだ」
コウキに比べて私はどうだろう? ......全然ダメだ。
コウキは自分の弱点ーー嫌なところを正面から受け止めて、それを改善しようと努力しているのに。私はただ目を背けているだけ。
こんなことじゃ、話にもならない。コウキと釣り合うなんて夢のまた夢だ。
私は、近くにあったベンチに座る。私からはコウキが見えるけど、コウキからは私が見えない位置にある。
今のコウキを見ていれば、色々な想いが固まると思う。だからちょっとだけコウキの力を借りようと思ったんだ。
ーーそれから1時間。私はコウキが頑張る姿を見た。私が帰ろうとしても、コウキはずっと剣を振っていた。
SIDE Kouki
「おおおおお、お、おはよう、ございますっ!!」
「お、おぉ......おはよ」
ただいまの時刻は朝日もまだ低い位置にある午前6時半。俺とリリは互いに不馴れな挨拶を交わしていた。
リリに友達になろうと宣言し、受けてもらったあの後。どうしてもお返しがしたいとリリが言っていたので、当初俺が考えていた通り晩御飯を奢ってもらうことになった。俺もミウも何度も断ったのだが、押しきられてしまった。リリは意外と押しが強いことが判明した瞬間でもあった。
だが、そこでただ諦める俺とミウではない。
してもらってばかりでは友達として悪い、と思い、俺たちに何かしてほしいことはないかとリリに聞いてみたところ。
『その......じゃ、じゃあ、これからも、会ってもらえませんか......?』
と、妙に畏まって言ってきた。
俺としては、友達って会うものじゃないのかと思って、それとなく言ってみたら、リリは顔を赤くして俯いてしまった。
もしかしたら俺の友達価値観が間違っているのかと内心錯乱状態一歩手前だった。めっちゃ怖かった。
それからリリは顔を俯かせていたが、しばらくすると。
『......あの、だったら、強くなる方法、を、教えてくれませんか?』
確かに、またmobの群れに襲われるようなことがないとも限らない。リリが強くなりたいというのだったら反対するわけもなかった。
......まぁ? 俺も弱いけど? 人のこと言えないぐらいに......はぁ。
そしてその後のいくつかの問答の結果、俺とミウの朝の鍛練にリリも参加、ということになった。
さすがにいきなり圏外に出るというのもリリが厳しいし、それにミウも女友達と少しでも一緒にいられたらいいだろう、と思っての案だ。(リリ相手にも戦えて俺のためになるかも、なんて腹黒いことは考えてませんよー)
だが、この案を俺が言ったときの、ミウの微妙な表情が妙に印象に残っていた。あれは、どういう表情だったのだろう?
まぁ、そんなことが数日前にあって今日の朝。初めてリリが参加することになった朝の鍛練なのだが。
......珍しいな。ミウが朝遅刻するなんて。
《策敵》スキルを探索モードにして、辺りを軽く確認するが、ミウはどこにも見当たらない。
前にもミウが遅れる、ということがあったが、あの時はミウが厄介ごとに巻き込まれていたからだ
さすがのミウもまた厄介ごとに巻き込まれてるなんてことは......ヤバイ。すごくありそうで困る。ミウってなんであんなに厄介ごととの遭遇率が高いんだろう? 主人公気質?
とりあえず、昨日も何度かミウに宿屋からここまでの道を案内したから、また迷ってるということはないはず。
俺が今すぐにでもミウが泊まっている宿屋ーー俺も隣に泊まったがーーまでの道のりを遡ろうかどうかを本気で悩んでいると、リリが声をかけてくる。
「あの......いつも、この時間から特訓しているんですよね......?」
「あぁ、一応8時半まで特訓してるけど......どうかしたのか?」
「あ、いえ......その、珍しいなぁ、って、思って。強い人になればなるほど、攻略にかかりっきり......っていう人の方が、多いじゃないですか」
「そのことか......」
確かに、リリが言っていることはこの世界の常識とも言えることだ。
強ければ強いほど攻略に出てレベリング、探索などを行ってより強くなっていく。それがこの世界のトッププレイヤーたちの流れだ。
現にそうしているからキリトは最高レベルを保ち続け、強いのだろう。
だが、俺とミウの考えは違った。
俺たちはこの世界で生きていくのに最も必要なものはレベルではなく、強力な武器でもない、プレイヤー本人の実力だと考えたのだ。
レベルを上げるためにフィールドに出ても実力がなければ少しの危機で死んでしまうし、強力な武器を入手できても上手く使えなければ宝の持ち腐れだ。
極端な話、mob100体に囲まれるような状況に陥っても、それを圧倒できるほどの判断能力、対応能力、戦闘経験があれば安全に攻略できる。
俺とミウはそんな考えのもとに毎朝特訓しているわけだ。
何度も言うけど、それでも俺はまだ弱い。まだまだ力が足りない。
そのことをリリに伝える。
「そ、それでもっ、私を助けてくれたときはすごくて、その......かっこよかったです......!」
リリは出会ってから一番の声で、興奮ぎみに熱弁してくれた。
俺がそれに対してたどたどしくも、ありがと、と笑って返すと、リリはまた俯いてしまったが。
「......ほ、本当のことですし......」
と、小声で返してきた。
う、うーん......なんかこうも素直に誉められることってあまり無いから、少し照れるというか、反応に困るというか。
こういう場合、どう返すのが正しいのか......
それに、今はなんとか平静を保って(?)いるが、体と内心は結構ピンチだったりする。体はガッチガチに固まっててヤバい。内心も緊張感やらでもう倒れそう。
本当にどうしよう、と考えていると、偶然にも同じタイミングでまだ探索モードにしていた俺の《策敵》スキルの範囲内に誰かプレイヤーが入ってきた。
「ミウ?」
俺たちが今いるのは、ミウと昨日確認した街外れの公園なので、他の誰かが来るというのは考えにくい。
すると案の定、ミウが建物の角を曲がって公園に入ってきた。
「おはよー、ごめんね。朝寝坊しちゃったよ」
「おはよ、本当に珍しいな。ミウ朝強いのに。夜眠らなかったりしたのか?」
「......うーん、まぁ、ちょっとね。リリちゃんもおはよー」
「おはよう、ございます」
ペコリ、とリリが頭を下げる。
ミウはともかく、アルゴやフィナさんみたいな、ぶっとんだ同年代の女子しか知らなかったためか、リリのこういった律儀なところはすごく新鮮だ。
......あれ? 同年代なのか? あの2人ーーっ!? なんか急に寒気が......! しかも同時に2つメッセが来た......っ!?
このメッセたちを開けるのは怖すぎたので、今は放置。後で開けるとしよう。具体的には1週間後ぐらい。
なんか調子が崩されてしまったので、一度咳払いする。と、とにかく......
「じゃ、じゃあ、ミウも来たことだし、そろそろ始めるか」
ーー強い。
模擬戦闘を始めて最初にリリに抱いた感想はそれだった。
レベル、経験等など色々な要因があるので、さすがに俺も負けるようなことはなかったが、センスや実力だけで言えば、確かにソロでフィールドに出ていてもおかしくはない程のものだ。というか、ぶっちゃけ俺なんかよりも全然センスあると思う。
リリとは先程まで俺が戦っていたのだが、その際でも何度かヒヤッとする場面があった。
今は俺が休憩でミウとリリが戦っている。
「はっ!」
リリの右手にある短剣が鋭い突きで襲いかかり、ミウはそれを剣を振るって弾く。
さらにそこからリリの追撃が入るーーかと思いきや、リリはそれ以上の攻撃はすることなく、あっさりと後退して体勢を整える。
リリの戦闘スタイルは基本的にヒットアンドアウェイのようだが、これがまた厄介だ。
一度でもリリの攻撃に捕まると、終始リリのペースに乗せられて戦闘が行われてしまうからだ。
しかも今のように後退するタイミングが独特で、これもまた流れを持っていかれる要因になる。
俺はその攻撃に対して、リリの攻撃の癖を調べるために最初はとにかく守りに徹して、パターンが掴めたらカウンターを狙っていったけど......さて、ミウはどう対処するのか。あわよくばその対処法も参考にさせて頂きます。
リリが再びミウに攻撃を仕掛ける。それを難なく的確に弾くミウ。
ミウのあまりに正確な守りにリリも攻めあぐねているようだが、そこで攻め焦らずに変則的なヒットアンドアウェイを続けられるところは素直にすごいと思う。
あれ、意外と精神力使う戦法だからなぁ。
そして今まで通りミウから距離を取ろうと後退するリリ。
「っ、ここ!」
ミウはそこで攻撃に転じた。
離れていくリリに追随するように接近していったのだ。
確かに、相手が離れていくのなら自分から近づいていけばいい。至極簡単な反撃方法だ。
だが、その方法は良策とは言いにくい。
もしもその反撃が失敗すると、先程も言ったように戦闘の流れを完全にリリに持っていかれてしまうからだ。
それにミウが取った行動は、ヒットアンドアウェイに対する正攻法ともいえる方法。だから逆に言えば、リリほどの実力者ならその対処法も何度も経験済みだろう。故に、対策も万全なはずだ。
ミウに追われるリリは、無駄のない動作で体勢をすぐに立て直し、近づいてくるミウに対してソードスキルで反撃しようとする。
ミウは今、リリを追うためにもう動いてしまっている。つまり、リリからすればミウの動きは簡単に予測できてしまう。
そしてライトエフェクトを帯びたリリの剣が、ミウを再び襲う。
短剣単発スキル《アーク・ドロウ》。ただ横振りのソードスキルだが、それだけに発動までの時間と、攻撃速度はかなり速い部類だ。
ミウの感覚からすれば、自分からソードスキルに向かって突進しているのだから、剣の動きはもう尋常じゃないぐらいに速く感じているだろう。
......だというのに。
「えっ!?」
響いたのは、
......さすがミウ。あのタイミングのソードスキルを咄嗟に跳んで、かすらせもせずに完璧にかわす、か。
剣の出を見てからでは間に合わないだろうに。それを実行して成功してしまう辺りが、ミウのおかしいところだと思う。
そしてそのままリリも跳び越えて、リリの背後に着地するミウ。
リリもすぐさま単発スキル特有の短いスキルディレイから抜け出して、背後に向かって短剣で斬りつけるが、それは悪手だ。
背後に向かっての攻撃は横振りでしか行えない。ミウもそれが分かっているから膝を落として簡単にかわしてしまった。
......これは、さすがに決まったかな。ここから逆転を狙うには無理がある。
後はそのまま俺の予想通り、ミウのソードスキル《スラント》がリリの体に吸い込まれるようにして叩き込まれた。
「リリちゃん、大丈夫?」
「あ......はい。圏内のノックバックって......意外と強いんですね」
「確かに、慣れてないと大変かもな」
所変わって街中の食事処。俺たちは先程までの訓練の話を交えながら、朝食を摂っていた。
これも俺とミウの毎朝の恒例行事で、その日の訓練で見つけたお互いの直すべき点や注意点を言い合って、次に生かそうというのが狙いだ。
今はミウとリリがお互いに気になったことを言っていて、(主にミウだけが言っているような気もするけど)時々俺が口を挟む感じだ。
「リリちゃん、なんだか鍔迫り合い避けてるイメージがあったんだけど......もしかして接近戦怖い?」
「そう......ですね。相手が人ならまだいいんですけど......フィールドだと......」
「あー、確かにmobだと見た目がちょっとアレなのも多いもんね。私も最初の頃はそういう感覚あったかも」
「今は、ないんですか......?」
「ないねー。人間意外と慣れるの早いよ?」
......そうだろうか? ミウって最初会った頃からどんなmobでも正面切って戦ってた気がするんだけど。俺が見た目的に引いてたmob相手でも迷いもせずに。
そんな思いを水を飲むことで無理矢理抑え込みながら、俺は別のことを思い出していた。先程までの模擬戦闘のことだ。
ミウとリリの戦闘が終わったあと、次は俺とミウが戦ったのだ。
結果はいつものごとく俺の惨敗......いや、それはいつも通りだから別にいい(いや、よくねぇけど)。俺が気になったのは別のところだ。
今日のミウとの模擬戦闘。妙にミウは余裕がなかった気がした。
ミウは攻撃を寸止めような手心を加えるタイプではないけど......今日の攻撃はそれに輪をかけてかけて容赦がなかったような。
もちろん俺からすればよりレベルの高い相手と戦えるわけだから文句なんてあるはずもないが......
「......?」
ミウが俺の方を見て首を傾げてくる。しまった、表情に出てたかも。
俺はミウから表情を隠すためにも自分の目の前にあるハンバーグにかぶり付く。おっ、これ旨い。お気に入り登録決定だな。
......そうだ、気になっていることといえばもう一つ。
俺の目の前には、先ほど注文したハンバーグ定食が。ミウとリリの目の前には同じく注文したピザとサンドイッチがある。
ミウはまたトマト目的でピザを注文したんだろうけど......リリはあれで足りるかな? サンドイッチ二切れしかないし。
こういうことは聞いてみてもいいのなんだろうか? でも、あまり詮索するのも悪い気がするし......
「リリちゃんそれだけしか食べないの? お腹空かない?」
「私、朝はあまり食べないので......」
とか俺が迷っている間にミウが聞いてました。うーん、友達との距離感って難しい......
そんな俺を見て、小さくため息をついているミウがいたが、それについて聞くタイミングは食事中には回ってこなかった。
その後は特に何をするでもなく、たどたどしくもなんとかリリとの会話をこなし、朝食を食べ終わったらリリと別れた。
その際には「明日も、よろしくお願いします.......っ!」と、律儀にも頭まで下げて言ってきた。本当に真面目な子だと思う。
しかも俺が軽く返事をしただけーーといっても、つっかえながらだったがーーですごく嬉しそうにするし......なんというか、とにかく俺には勿体ない友達、だと思う。
これは俺ももっと正しい距離感を掴むために努力しなければ、そう心に誓いながら俺はミウとフィールドを歩く。現在はミウと前線攻略中である。
現在の最前線、27層の《フェイン平原》。
この草原は第1層の草原を彷彿とさせる作りになっているが、さすがは最前線。出てくるmobのレベルは中々に高い。
だが、最もポップするのは虎のような姿のmobなのだが、あまり群れでは行動しないらしく常に二対一で戦うことができるのでそこまで怖くはない。
ポップすれば、小回りのきくミウがタゲを取り、隙を見て俺が一撃入れて倒す。今まで通りの戦法ではあるのだが、この戦法がここまで上手くハマる相手も中々いない。
そして今回もそのパターン通り、通算10体目のmobを倒したところで、ミウが大きく伸びをする。
「天気は良いし、草原は穏やかだしで眠くなってくるね」
「そんなこと言ってんなよー。mobがそこまで強くはないっていっても、最前線なんだから何が起きるか分からないだろ?」
そーなんだけどねー。限界まで伸びをした後、一気に腕を下ろすミウ。何あれ気持ち良さそう。
でも確かに、この風景は眠くなってくるかもしれない。
辺りどこを見渡しても、緑、緑、緑。全て草原だ。
緑色は目に良いわ、変化のない風景だわで、ここがmobの出ない場所なら俺も眠くなっていたかもしれない。
北海道の牧場ってこんな感じなんだろうか? こう、口笛がなんで遠くまで聞こえるのか、みたいな。草原に寝転がってゴロゴロ転がれる、みたいな。
「......コウキは最近眠れてる?」
ここでゴロゴロしたら一気に襲われそうだけどなー。そう自分にツッコんでいると、ミウからそんな質問が飛んできた。
なぜか妙にジロジロ見られている気がする。
「眠れてるけど......なんで? もしかしてミウは眠れてないのか?」
「ううん、そういう訳じゃないけど......」
言いながらもミウはまだ俺を、というより、俺の顔を観察してくる。ジーーーーー。
実は俺の顔に何か付いていて、それを言外に伝えようとしてくれているのかと思って顔に触れるが、特に何も付いていなかった。
そのままミウとの謎のにらめっこのようなものを続けること数秒。先に視線を逸らしたのはミウだった。
「......本当、いつ寝てるんだろう......?
「は?」
「なんでもないでーす......じゃあ、話は変わるけど、リリちゃんとはどう?」
「本当に話一気に変わったな......」
答えつつ、俺は先ほどまでのリリとの会話や、最近のリリとの関わり方を思い出す。
......確かにまだ緊張が取れるようなことはないが。
「もっと友達として頑張ろう、って思うぐらいには大丈夫だと思う」
それが今の俺の本心だ。まだ苦手意識が抜けきった訳ではないが、このままではダメなことは俺も分かっている。
俺のリハビリ......という考えがないとは言わないが、それを抜きにしてもリリとはちゃんとした友達になりたいと考えている。
ミウは俺の答えに、そっか、と返してくる。
「よかった。私が無理に進めた手前、2人には上手くいってほしいしね」
たはは。と少し困ったように笑うミウ。
その表情には、確かに自分が無理に話を進めたことに対する罪悪感もあると思うのだが、それプラス他にも何か懸念があるような感じが含まれていた。
やはり、今日のミウはおかしい。
「ミウ、何か悩みがあるのなら言えよ?」
ミウにそんな顔をされれば、一も二もなく大丈夫かと聞くのが俺流だ。いや、そうなった、が正しいのか。
ミウだって俺に聞いてほしくてわざとそんな表情をしているわけではないのは分かる。もしかしたら踏み込んでほしくないことかもしれない。
だが、ミウとは正面からぶつかっていく。それだけはもう二度と、絶対に破ってはならないのだ。
そんな思いを込めた俺の問いにミウは。
「......ははは。そんなに真っ直ぐに私に聞けるのなら、リリちゃんにも聞けばよかったのに」
返ってきたのは、再びミウの苦笑いだった。
今度は呆れ100%だが。
「えっ、あれ? なんか俺変なこと聞いた? ていうかなんでリリ?」
「ううん。変じゃないんだけどね。あとリリちゃんのことはアレだよ。さっきコウキが何か聞こうと思って聞かなかったやつ」
さっきと言うと......あー、ご飯食べてる時のことか。
確かにそんなこともあったけど......
「友達だって同じだと思うよ? ぶつからなきゃ相手のことなんて分からないんだから。リリちゃんにも聞いてみればいいんだよっ」
「あっ、そっか......」
そうだ。相手の顔色ばかり窺っていたらダメなのは、なにもミウ相手に限ったことじゃない。
いや、それどころか知り合ったばかりで分からない相手だからこそ、それはより顕著になるはずだ。
少し考えれば分かるはずなのに、そんな簡単なことも分からなくなってしまっていた。
......俺、こういうことに関しては本当にダメなんだな。
自覚していたつもりだったが、まだまだ足りなかったらしい。
「そうだな、うん。ミウありがとな」
「いえいえ、これも作戦の一環ですよ」
あの『コウキの友達を作ろう!』作戦、本気だったんだ......
キラーンとなにか擬音のようなものが聞こえてきそうなミウの笑み。
だが、それにもすぐに陰が差してしまう。
「悩み......うん。確かにこれは悩みかもだね」
俺に話す、というよりはどちらかというと自分に対して語りかけ、それに答えている感じだ。
それからミウはうんうんと何度か唸ったり頷いたりすると、にぱーっといつもの笑顔に戻った。
「でも、コウキには教えてあげなーい」
「えぇ!? ここまで来て!?」
「というより、教えちゃったら悩みが悪化しそうだからね」
悪化って......俺ってそんなに頼りないのか......?
確かに頼り甲斐があるかないかと聞かれれば断然ノーだと自分でも思うのだが、それでもミウに言われるとさすがにショックだ。たたでさえない自信が限界突破してさらに減ってしまいそうだ。
ミウの反応からしてそんなに深刻そうじゃないけど......
でも、どうなんだろう? ミウって変なところで我慢強いというか、頑固者っていうか、とにかく溜め込みやすいからなぁ。
無理してなければいいけど......
「よく分からないけど、辛くなったら言えよ? 力になれるかは別にして、いつでも相談に乗るから」
「うん! ありがとっ!!」
ミウの十八番である、全力の笑顔が返ってくる。
俺は、ミウと正面からぶつかると決めた。ケンカをしてでも互いの意見をちゃんとぶつけようと。
だが、それはミウに無理強いをしたい、ということではない。
ゆっくりでも良いから、ミウのことを知っていきたいのだ。
ミウと初めて会った頃のような問題の先送りではなく、少しずつでも分かっていく。それが俺が新しく取った道だ。
これもれっきとした、ミウとのぶつかり方の一つだと思うから。
「......いつかきっと言うから。待っててね、コウキ」
はい、掘り下げ&ミウさん悩み回でした。
......タイトルの安直さ(今さら)といい、前書きの内容といい、最近私の頭がおかしな方向に走り出している気がして怖いです。
でも、後悔はしてない。
いやー、でも個人的にはこういう人間臭さがでているミウさんはすごく好きですね。恋愛も出来ていますし(出来てるよね?
次回は......まだ恋愛スポットで。