私は今日から夏休みです。
夏休みだというのに学校に出て勉強しなくてはいけないというこの理不尽、どうにかならないものか...
さて、私はタイピングが遅いので毎日更新とまではいかないと思いますが、この休みの間にできるだけ多く更新したいと思っています!
では四話目どうぞ!
4話目 旅立ち
「そういえばまだ自己紹介してなかったね」
「あー、まぁ、そうだな」
ミウとパーティーを組むことになったわけだが、そのまま門の前にいても仕方がないということで、今は街の商店通りに向かって歩いている。
街の路地などはプレイヤーたちが何をするわけでもなくただ呆然としている場所も多いが、商店通りはこのゲームの象徴でもある武器が売っているせいなのか、そういった人が少ないので、特に気が滅入ったりはしない。
そしてそんな際のミウの言葉だったのだが...
今さら必要なのか? 自己紹介。
確かにまだ知り合ったばかりの間柄だが、だからといって互いに完全に初見、というわけではない。名前も顔も覚えているのだから。
...とかなんとか思ったが、あえて言わないのが優しさだと思います。
あまり乗り気ではなかったが、とりあえず自分から自己紹介する。
「んじゃ、俺から...コウキです。武器は片手剣、ってこれはもう知ってるか、昨日もさっきも使ったし」
ていうか、この世界の中での自己紹介って、なに言えばいいんだ?
現実みたいに好きな食べ物だとか、気に入ってる曲だとか言っても仕方ないしな。ニックの時も俺名前しか言ってないし。
自己紹介しようにも、ホントに言うべき内容がないな。
ミウも同じことを考えていたようで、苦笑いを返してくる。
「でも、こういうのは初めが肝心だしね......えっと、ミウです。武器は同じく片手剣なんだけど、コウキももう知ってるもんね」
昨夜の記憶を探る...、あぁ、確かにミウも片手剣だった気がする。
となると、やっぱりミウの自己紹介にもこれといって新しい情報はない。
まぁ、元々形式的にやっていただけだし、これでいいといえばいいような気もするけど...
そしてやはり互いに苦笑い。
いかん、ミウも最初が肝心だって言っていたのに。ここは何とかしないと。さすがにパーティー組んでいきなり空気悪いとかはごめんだ。
しかし、場を盛り上げろというのは友達少ない俺にとってはとんでもない難関である。
「えーっと、そうだ。ミウはなんでまだこの街にいたんだ? 昨日街から出る準備してたんだよな?」
「あ、うん。武器とかポーションは昨日揃って街を出たんだけどね。途中まで行ったところで食べ物がないことに気づいて戻ってきたんだ。危うく冒険中に餓死するところだったよ」
あはは、と恥ずかしそうに笑う。
よし、中々良い調子なんじゃないか? 俺にしてはかなりの高得点だ。
この調子でもう少し話を転がせば...
「あぁ、昨日街で会ったときにはもうほとんど買い終わってたのか。そういえば昨日初めて会ったときには《Miu》って女子みたいな名前だとおもったんだよな。何か特別な意味でもあるーー」
のか? と本当は言いたかったのだが言えなかった。
先に行っておくが、俺は話も盛り上がってきたし少し突っ込んだことを聞いてみようと思っただけなのだ。
なのに、いつの間にかミウは少し俯いて震えていた。
どうしたんだ、とも聞こうとしたが、これも聞けなかった。ミウが涙目でキッと睨んできたからだ。
そしてミウはボソボソと何か小さく呟く。
「ーーだもん」
「...へっ?」
「......私、女の子だもん......」
「...はえ?」
意識せずに口から変な声が漏れる。
え、ちょっと待って。なんか思考停止してる。つまりどういうことなんだ?
だって、ミウは男で、男のはずで、でも今女だって...
あ、なんか頭の中で繋がった。
「って、ええええぇぇっぇぇぇぇぇ!?」
ミウが女の子!? 俺の聞き間違いじゃなくて!?
だって、昨日俺を助けてくれた時とかすごいカッコよくて、話し方もなんか爽やか系男子って感じで...
言われてみるとミウって男にしては体つきが細いような...
でも、胸は男と変わらないーー目潰しっ!?
「あぶなっ!? いきなり何すんだよ!!」
「...なんか不埒な視線を感じたから」
いや、確かに見てましたけどね!? いくらなんでもいきなり目潰しはないでしょう? 今のリアルなら間違いなく入ってたぞ!?
なんか久しぶりにテンションが上がったが、今はそれどころではない。
ミウがこちらを睨んだまま自分の胸を俺から隠すように抱いたからだ。
まずい、このままでは俺が女子を胸で判断する変質者だと思われてしまう。それだけは避けなくては!!
俺は普段使わない自分を弁護するという回路を必死に動かす。
「だ、大丈夫! 俺は胸で人を判断しないし、別に胸がメチャクチャ小さくても気にすることじゃげぼらぁっ!?」
頑張って弁解したらぶん殴られました、まる。
...おかしいな、どこで間違えたんだろう?
「ふへへ~」
「...はぁ」
ミウとベンチに座りながらため息をつく。
あれから三十分。突如開戦となった第一次パーティー大戦ーーこれから二次、三次があってはたまったものではないがーーはようやく終戦を迎えた。
和平交渉にドーナツを送ったのが効いたようだ。
...さっきまでガチ泣き寸前だったて言うのに、今はなんか満面の笑顔で幸せ一杯、口の中一杯にしてるし。両手にドーナツもって頬を膨らませてなんかハムスターっぽい。
てか、あんなに膨らませて痛くないのか? ほっぺ。
俺がヤバイほど伸びてるミウの摩訶不思議なほっぺと、女子の甘い物好きについての因果関係を考察していると、
「あむ、そういえば、コウキはステータスどうしてるの?」
最後のドーナツを食べ終えたミウが聞いてきた。
...あれ? ミウさん、確か俺ドーナツ四個ぐらい買ってきませんでしたっけ? なんで二分も経ってないのに全部なくなってるんですかね?
本当、ミウは謎で一杯だ。
「攻撃重視で3:2。ミウは?」
「おー、私たちバランスいいね。私は俊敏力重視で3:2だよ」
バランス...いいのだろうか? ぶっちゃけその辺の詳しいことはよく分からない。
俺はあまりゲームのことは詳しくないし、大抵分からないことはヨウトーーもしくはリアルの陽ーーに聞いていたからなぁ。
とりあえずヨウトのことは伏せておいて、俺がゲーム初心者なことはミウに伝える。こういう情報は必要だと思うし。
「まぁ、私もそんなに詳しい方じゃないしね。少しずつ調べていけば良いんじゃないかな?」
「分かった」
うむ、と頷きながらミウが笑って返してくる。
その様子はミウが女だと分かっていても、爽やか系男子の笑顔にしか見えなかった。
こう言ったらまたミウが涙目になりそうだけど...ミウって、女子にモテそうだよなぁ。
「さて!」
スクッと勢いよくミウがベンチから立ち上がる。
「備えしにいこう?」
......備え?
俺が頭に疑問符を浮かばせている間も、ミウはフフン、と得意そうに笑っていた。
そして、ミウの言うところの備えにをするために、俺たちは当初の目的通り商店通りにきた。
商店通りはやはり俺の予想通り、プレイヤーは少なく、その代わりにNPCたちの声で賑やかな雰囲気だった。
ただそれはどこか変化のない賑やかさで、これはこれで少し首を捻ってしまう。
まぁ、今はそんなことはどうでも良い。そんな街の雰囲気なんぞは茅場さんにでも任せよう。俺には、今もっと悩むべきことがある。
「......見失った」
パーティー結成から一時間とちょっと、いきなりパートナーとはぐれていた。
確かに商店通り、と言っても俺たち以外のプレイヤーはほとんどいないので人通りはそこまで多くない。
だが、普通に通行目的のNPCもいれば、商店通りには脇道もある。そんな中から特定の人物を探すのは中々に難しい。
試しに360度周りを見渡してみるが、やはりミウの姿は見つからない。
...くそ、こんなことなら紐でも付けとくんだった。
先ほどまでの俺ならミウ相手にこんな発想は絶対に思い浮かばなかったのだが、今は違った。
「まさか、商店通りについたら、視界に入った食べ物の出店を片っ端から回り始めるとは......」
ははは、とつい乾いた笑みが漏れる。
まず街に入った瞬間に声を上げ、視界に入ったたい焼き屋に直行。次に焼き鳥屋、次にクレープ屋、次が...なんだったっけ?
とにかく、もう思い出せないほど回った。
しかもミウが一つ一つの店で買い物するならともかく、なぜかほとんどの店は見るだけでそのまま次の店に移動してしまうのだ。
そりゃ見失いもする。
なんでこう、俺が仲良くなろうと思う相手は常識、という概念が欠如しているのだろう?
「おーい、ミウー」
「あ、コウキいたー!」
これは見つけるまでに何時間かかるんだ、と思っていた矢先、人ごみをくぐってミウが正面におどりでてきた。
...案外簡単に見つかったよ。この通りって思ってたよりも小さいのかな。っていやいやそんな訳ない。
この商店通りは確か《始まりの街》を横断するように通っていたはずだ。
「...なぁ、ミウ。色々言いたいことはあるけど、今までどこ行ってたんだ?」
「うん? 出店回ってて気づいたら通りの端っこまで行ってたから逆走してきた」
マジかよ、昨日歩いてみたけど普通に一時間近くかかる距離だぞ?
俺がジト目を送ると、ミウもさすがに自分が軽く暴走したことに自覚があったのか、微妙に視線を逸らした。
いや、別にミウを糾弾したいわけではないのだ。ミウは女の子。きっと俺には分からないこともあるのだろう。
でも、
「まったく、もう離れるなよ?」
一言ぐらい声かけろや。
笑顔で言ったはずなのにミウの顔に一気に冷や汗が浮かんだ気がした。...俺はナニモイッテマセンヨー。
「さ、さあ、早速食料買いにいこっか!」
あ、逃げた。
ま、俺もさすがに延々弄り倒すほど性格悪くないけどさ。
ミウが先に進もうとして振り返ったとき、今までミウが後ろ手に持っていたものがチラッと見えた。
...クレープに、シュークリーム?
ミウが持っていたのは、いわゆるスイーツの類いだった。
ミウって...と、考えていたが途中で思考が中断される。
「...あの、ミウさん?」
「なに?」
「なんか、距離が近くありません?」
俺もミウに付いていこうとしたら、ミウが俺に寄り添っている、と言っていいほどに近づいてきた。
少しでも身じろぎすれば腕がぶつかってしまいそうだ。
「だって、コウキが離れるなって言ったよね?」
なるほど、俺のせいか、ちくしょう。
別に女子に近づかれたら緊張する、とかそういうわけではないが、ここまでパーソナルエリアに侵入されると、どうしても身構えてしまう。
昨日から少し思ってたけど、ミウって他人との距離がすごく近いよな。
俺は出来る限りミウを意識しないようにしながら歩く。
「そういえば、備えって言うのは結局食料のことなんだ。今日会ったときにはもう買ってたのかと思ってた」
「朝会った時はちょっと道に迷っちゃてね。はは...」
多分、また食べ物巡りでもしていたんだろう。
「でも、食べ物って確かフィールドでも手に入るよな?」
前にフィールドに出たときは木の下辺りに木の実とかが落ちていたはずだ。
おそらく今回のミウのようにフィールドで食料不足に陥ったときの非常用に設定されているのだと思う。
だからいちいち戻ってこないでも少し無理をすれば次の街ぐらいまでは行けたと思うのだが...
するとミウは急に真剣なに表情になった。
「...ねぇ、コウキ。お腹が減ったら辛いよね?」
「まぁ、そうだな」
「お腹が減ったら力がでないよね?」
「そうだな」
「つまりそういうことだよ!」
「いやごめん、何も伝わってこないんだけど!?」
「お腹減ったまま冒険なんてなんか間抜けだもん!!」
「思いの外簡単な理由だった!?」
おかしい、確か俺が今いるのはデスゲームと化した世界だったはず。
それで俺らは今その世界を冒険しようと準備をしている。
...なんでこんな漫才をしてるんだろう? 空気感違い過ぎる。
なんかさっきからミウに振り回されっぱなしだ。
俺は一度深呼吸して空気を入れ替える。
「...それで、今適当に歩いてるけど。ミウは食料売り場の場所知ってるの?」
俺がこの二日間使用していた食料売り場は現在地からではほぼ逆方向。今から行っていたのでは少々遠回りだ。
なのでミウが歩く方向に任していたのだが...
さっき、俺に会ったときは道に迷った、とか言ってたしなぁ。
「大丈夫! さすがにもう2回も迷ったから、さすがに迷わないよ!」
「で、迷ったわけだが」
「......ごめんなさい」
いや、謝られても困る。
この際、ミウの極度の方向音痴はいわゆる女の子特有のか弱い部分ということで無理やり片付けておくとしても、まさか俺自身も迷うことになるとは思わなかった。
ウィンドウの中にはその街のマップが入っているのだが、まさか地図を見ても帰りかたが分からないとは。
ただ外に出る準備をしているだけでこんなことになるとは、このゲームを甘く見ていたぜ...
さて、本当にどうしよう?
「なぁ、ミウはいつも迷ったときどうやって元の道にーーて、うぇっ!?」
ミウにも意見を聞こうとミウの方を見ると、本日二度目の涙目になっていた。
もしかして俺が怒ってると思われたのか? 経験が無さすぎていまいちミウが涙目になっている理由が分からない!
「私...歩く才能ないのかな?」
歩くの才能って...
上目遣いで聞いてくるミウに初めて少し可愛いと感じたが、俺はミウの斜め上過ぎる発言に苦笑いを隠せなかった。
「ま、まぁ、誰にだってミスはあるさ。今回はたまたま3回続いただけだって」
「これで7回目なのに...?」
なんと、本当はさっき言っていた倍以上迷ってたのか。
ていうかミウ、サバ読みすぎ。
俺があまりのことにフォローの言葉を失っていると、
「...ぐすっ」
まずい、本当に限界のようだ。
あわわわっ! こんなときはどうすれば!? いくらなんでもパーティー組んで初日にガチ泣きだなんて互いに完全に黒歴史になってしまう!!
はっ! 女子は頭を撫でられると気分が落ち着くってなんかの本で読んだ気がする!!
とりあえずミウの頭を撫でてみた。
「...うぅ~」
よし! まだ泣き止んだ訳じゃないけど少し落ち着いてくれたみたいだ。あとは何かを一声かけて上げれば...
「大丈夫だって。その年でできないのは珍しいけど、道を覚えるぐらい誰でもできるんだから、ミウだってそのうちできるって!」
ブチィ! そんな音が聞こえた気がした。
次の瞬間にはこちらも本日二度目の凄まじい音を立ててプレイヤーが一人宙を舞ったてさ。
「もう! コウキにはまずデリカシーから教えないといけない気がする!」
「...面目ない」
まさか終戦からすぐにまた開戦するとは...
今ミウの手にあるのはクレープ(ミウが持っていたのとは別の味)だ。和平交渉として要求されたものだった。
幸せそうに食べているせいか、先ほどの声にも既に怒気はない。やはりお菓子の力は絶大だった。(ちなみに出店を探し回ってるうちに知っている道に出られました)
...しかし、さっきは何がダメだったんだろう? 一回目もそうだが、二回目も怒られた理由が分からない。
もしかして俺に触られるのが嫌だったのだろうか? だったら完全に俺が悪いな。女子には男に触れられたくないっていう人も多いらしいし、ミウもきっとそうなのだろう。これからは気を付けなくては。
「...なんかまた勘違いされてる気がする」
「なにが?」
「いやぁ、もうなんでも良いや」
ミウの乾いた笑いが響いた。
なんだかミウの目にえらく光彩が浮かんでいないのが印象的だった。
そして、ミウがクレープを食べ終わる。
「じゃあ、食料も買ったし、行こっか!」
「...うん」
俺もミウと一緒に立ち上がる。
心なし今までよりも少し硬いミウの声に俺も気を引き締めた。
いよいよ、か。
そして、俺たちは門の目の前に来た。
辺りを見回すと、そこは相も変わらず閑散としていた。
最後に門の向こう側を見る。
...もう何度も見たのに、いざ、外に出ようって心持ちひとつでこんなに広く感じるのか。
そりゃそうか。今までは街の近くまでしか出ないっていう前提の元で出ていたからな。
あと一歩でも前に足を出せば、フィールドに出る。
中途半端にではなく、今度は完全に。
......。
「? 何してるの? 早く行こうよ!」
俺が感慨に耽っていると、ミウが笑顔で俺の手を取り、そのまま俺を門の外まで連れ出してしまった。
ええぇ......。
いや、確かに旗から見ればただ門の前でボーッとしてるように見えたかもしれないけどさ...
もうちょっと俺の覚悟とか葛藤とか色々尊重してほしかったなぁ。
俺がその事をそれとなく伝えると、
「あはは、ごめんね。誰かと一緒にフィールドに出られると思うと嬉しくて我慢できなくて」
ミウが申し訳なさそうに笑う。
その言い方は卑怯だと思う。そんな頼られるような言い方をされては怒るに怒れない。
まぁ、俺も尊敬してるーーーー本人には恥ずかしくて言えないがーーーーミウと外に出られるのは嬉しいので反論しないが。
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
「おー!」
さて、前回後書きに書いたアッと驚く展開でした!
.....ほとんどの人が分かっていましたよね~
こういう、実は性別逆でした! っていうパターンは描写が難しすぎますね。
描写を増やしてしまうと見た目だけでも女の子だって分かってしまいますし、逆に減らしてしまえば見た目が上手く伝わらなくなってしまう...ジレンマ~
それにしても、ようやく街から出られましたよ。こいつらどんだけ漫才してるんだよって話ですよね。
次回からはどんどん外の話をしますよー!