ミウ「ミウでーすっ!」
リリ「リ、リリリリッ、リリです......!!」
ミウ・リリ「二人はヒロインズ!!」
ミウ「......」
リリ「......」
ミウ「......なんだろうね、この台本......」
リリ「......(恥ずかしすぎて口が動かない)」
ミウ「あー、うん。リリちゃんにはちょっとハードルが高かったね。あははは......」
リリ「......だ、だいじょうびゅでふ......私はこの通り元気MAXです......」
ミウ「うん、大丈夫じゃないね。なんか懐かしのキャラみたいな台詞になってるよ?」
リリ「あう......」
ミウ「これは私が頑張るしないか、よし! というわけで、今回は私たちの二人の前書きです! なんだか前回に引き続き、ただリリちゃんを恥ずかしがらせるためだけにやってるような作者の陰謀を感じるけど、気にしないでいくよ!」
リリ「お、おー!」
ミウ「リリちゃん、その調子その調子!」
リリ「え、えへへ......最近、コウキさんやミウさんに誉めてもらえて、いいこと尽くしです......」
ミウ「リリちゃん、それどういうこと!?」
リリ「ふぇ?」
ミウ「最近コウキ、あんまり構ってくれないし。そもそも私絡みが少ない気がするし、リリちゃんだけずるいよー!!」
リリ「え、えっと......」
ミウ「リリちゃーん!」
リリ「その、本編どうぞ~......きゃ、あの、ミウさん急に抱きつかないでくださいよぉ......」
お店の中でのその後は、もう思い出したくないので割愛する。
強いて上げるとすれば、ミウさんが珍しく涙目になって謝ってくれたことと、試着室のカーテンは完全には開かれてはおらず、運良くコウキさんには私の『あの』格好は見られずにすんだことだ。
もしもあんな格好をコウキさんに見られでもしていたら.............................................................さて、とりあえず過去を振り返ることは10年ぐらい後にしようと決心した私と、コウキさん、ミウさんは少し遅めになってしまった晩ごはんを食べるため、食事処に移動していた。
ミウさんは《料理》スキルを取っているらしいので、晩ごはんも作れば安上がりなんじゃ? と聞いてみたところ、ミウさんは目を逸らして苦笑いしながら。
「う~ん......まぁ、そうなんだけどね? ただ前に友達に食べてもらったのがまた失敗作で......それが地味にトラウマになっちゃってるんだよね~」
それに私よりも上手な人たくさんいるし......などと呟くと何を考えたのか、そのまま落ち込んでしまった。
なんで落ち込んでしまったのかは分からないけど、ミウさんは他人ーーというより友人?ーーに自分の手料理を振る舞うことに苦手意識を持っていることは伝わってきた。
そこで気付いた。別に私はミウさんの料理にありつこう、ということは考えていなかったけれど、結果的にそういう聞き方になってしまっていたことに。
私はもう、本当に嫌だ......もっと言葉を的確に使えればいいのに......
と、また一人落ち込んでいたけど、それもすぐにコウキさんの言葉で引き戻されることになる。
「あー、そういえばあのときの肉じゃがは強烈だったな......でも、最近は美味しいと思うぞ?」
「あははー、ありがと......でもまだまだフィナさんとかには勝てないよ......」
「え......あの、コウキさん。ミウさんにご飯作ってもらってるんですか?」
「ん? そうだけど......」
なにもおかしいことはないとばかりに言ってくるコウキさん。その自然な態度に愕然とする。
まさか、そこまで2人の仲が深いものだったなんて......
......いや、よく考えてみたら、というより2人の距離感を見れば当然のことかもしれない。
前を歩く2人を見る。
なんというか、コウキさんとミウさんが2人で立っている姿は、すごく自然なんだ。
私はいつも2人のーー実際はコウキさんのーー歩くスピードをかなり気にして合わせている。
理由は......置いておくとして。
とにかく、私は努力しないとコウキさんの歩くスピードに合わせられない。他の人も誰かに何かを合わせる時、そういうことはあると思う。
なのに、なのにミウさんは、あんなに落ち込んで他のことを考えていてでも、コウキさんと一緒に歩くことができている。
もう自然と、コウキさんと歩く速さがシンクロしているんだ。
......いいなぁ。
「あれ? ヨウト?」
「おー、ミウちゃんにコウキか。うっす」
お店が小さくとだが見えてきた時、近くのお店から出てきた男の人にミウさんが声をかける。
その男の人は片手を上げて挨拶すると、そのまま近づいてくる。どうやら2人の知り合いみたい。
その人は私たちの目の前まで来たとき、ようやく私の存在に気がついたのか私に視線を向けてくる。
一瞬の視線の衝突。
この人......それに、この感じ......
私は自分の違和感に気付き、すぐさま視線を逸らす。
それに対して、コウキさんの首に腕を回す男の人。
「おい、コウキ! なんだよあの子!! お前ついにミウちゃんだけじゃ満足できなくなったのか!?」
「なっ!? お前なにトチ狂ったこと言ってんだよ!?」
「ちくしょうっ!! しかもまた美人だし、今度は年下清楚系か!! 俺も出会いが欲しいっつーのっつーのー!!」
「ヨウト!? ちょっとストップストップ!! コウキの首閉まってるから......ってどうやってコードの壁越えてるの!?」
「うぐぐぐぐぐっ......お前、ホントいい加減にーー」
呻きながら腕を引き絞るコウキさん。おそらく首を絞めている人に反撃しようとしているのだろう。
しかし、コウキさんが反撃するよりも一瞬早く、場が動く。
「へ?」
「きゃ!?」
「うわ!?」
一瞬の静止の感覚の後、ぐしゃあ! と音を立てて男の人と一緒に
首を絞められていたコウキさんではなく、私が。
その理由は単純で、私が男の人の足を引っかけただけだ。本当なら押したかったけど、この世界では異性の他プレイヤーに故意に無理矢理接触すると、特例でもない限りハラスメントコードが発生してしまうので、相手からの偶然の接触、つまり事故の形にした。
男の人に腕を回されていたせいでコウキさんも倒れそうになるけど、それは私が背中を支えることで防ぐーーつもりが、男の人が思いの外タフで、体勢を中途半端に回復してしまう。男の人が無我夢中で手を伸ばした先に私がいて、結果、私も巻き込んで倒れてしまった。
「......リリちゃん?」
コウキさんからは見えなかったみたいだけど、ミウさんからの角度では私が何をしたか見えたみたい。
普段の私からは想像もできない行動だったからか、それとも私の突然の行動に心配してくれたのか、少し驚いている。
コウキさんは......よかった、私のせいで倒れる、なんてことにはなっていないようで、さっきまで同様しっかりと立っていた。
そこまで確認して立ち上がろうとするけど、妙に体が重く感じた。
不思議に思って最後に上を見ると......
....................................っっ。
私はミウさんが心配してくれていた本当の意味を理解すると同時、重く感じた体を無理矢理に起こして立ち上がる。そして
そして震えそうになる口をなんとか抑えて息を吸って、はっきりと言い放つ。
「ーーち、近づかないでくださいっ! 変人さん!!」
何を言うのが正解かは分からなかったので、とりあえず上から覆い被られたことと、胸を鷲掴みにされたことに対する負の感情を込めて、男の人にぶつけておいた。
移動して今は目的のお店の中。
最初に例の
すると私の隣にミウさん、私の対面にコウキさんという形になった。
......本当なら、カウンター席で反対側に座りたかったんだけどな......
でもこのお店にはカウンター席がなかったので仕方がない。今から別のお店に行くなんて、コウキさんとミウさんに迷惑をかけすぎてしまう。
今日だけでも2人にはこれ以上ないぐらいに迷惑をかけてしまっているのだから、私の意見なんて二の次三の次にしないと。
全員が席に座ったことを確認すると、私以外の3人が何か話そうとしていたけど、全員何を言えばいいのか分からない、といった風に、結局何も言わずに口を閉じてしまった。
「......? あの、どう、したんですか、皆さん? 何か頼みませんか......?」
「うん、いや、そうなんだけどさ......」
苦笑、というよりは自分がどんな表情をすればいいか分からない、といった風なコウキさんは、なにかを伝えるようにミウさん、コウキさんを順番に見る。
それに応えたのはヨウトさんだった。
「そうだっ! さっき話の途中だったけど、君名前はなんてーー」
「あの、コウキさん......私、このお店初めてなので、おすすめとか教えてくれると、その......嬉しいです」
「あっれ!? まさかの初対面でスルー!?」
ヨウトさんがなにか騒いでいるみたいだけど、何を騒いでいるのか分からないし、あまり関わりたくないので反応はしない。
私は立て掛けてあったメニュー表を取って、コウキさんが見やすいように広げて渡す。
それに対して、コウキさんは苦笑いで返してくる。
「えっと、リリ。確かにその反応はヨウトに対しては正しいと思うけど、とりあえず理由を聞かせてもらえないと俺たちも反応に困るというか......」
「理由......私がおすすめを聞いたこと、ですか? ......っ!! ご、ごめんなさい!! ご迷惑でしたよね!?」
しまった。コウキさんからすれば私は別に仲のいい友人でもないのに......
ダメだ。さっきの服屋にしても、最近の私は少し調子に乗っている節がある。
こんなことじゃ、コウキさんにも不快な思いをさせてしまう。
私がもうずっと黙っていようと決心しようとしていると、コウキさんが、いやいや、と否定してくる。
「おすすめとか聞いてくるのは全然いいんだけどな? その......」
「なんでさっきヨウトの足引っかけたの?」
コウキさんの言葉を引き継ぐようにしてミウさんが言う。
言葉は少し固いものになっているような気もしたけど、表情には純粋に疑問しか浮かんでいない。
と、とにかくよかった、よく分からないけど私が失言をしたとか、そういう話ではないみたい。
それで、どうして私が足を引っかけたか、という話だけど.....
少し考えて、いくつか理由は頭に浮かんできたけど、どれもしっくりはこなかった。
「えと......なんか、条件反射で......」
「......あー、いや、うん。そっか。条件反射なら仕方ないよな。大丈夫、こいつそういう扱いには慣れてるし。なっ、ヨウト?」
「いいたいことはいくつかあるけど、とりあえず自分に言い聞かせるみたいに言うのはやめれ」
「コウキー、現実逃避しないの」
はい。と他の2人に封殺されるコウキさん。
私の答え方がよくなかったのかな。でも、他に言いようがないし......
なんでヨウトさんの足を引っかけたのか。元の元まで行けば、私がヨウトさんに......敵対感? 違う。なにかこう、負の感情を感じたからだ。
でも、結局それがなんだったのかと問われると......
私が視線を下に下げて考えていると、気まずさからか私とずっと目を合わせてこなかったーー私も合わせていなかったけどーーヨウトさんが真っ直ぐ見てくる。
「あーっと、その、ごめんな? 事故とはいえ、上から被さるみたいなことになっちまって。俺の不注意だった。本当にごめん」
そう言うと、ヨウトさんは座りながらではあるけど、深々と頭を下げてきた。
会話の軽い態度から誤解していたけど、本当は根はすごく真面目な人みたいだ。
......そもそも、さっきの事故は私から起こしたようなもの。確かに事故で、その、胸とかも触られてはしまったけど、それも私が悪いし、ここで私が怒るのは理不尽だと思う。
「いえっ、わ、私の方こそ、すいませんでした......条件反射だなんて、その、よく分からない理由で転ばせてしまって。本当に、すいませんでした」
ヨウトさんに返すように頭を下げる私。
結局、私がヨウトさんを転ばせてしまった理由は分からずじまいだったけど、一応はこれで一段落......なのかな?
数秒お互いに頭を下げあって、私もヨウトさんも頭を上げるけど、いつまで経っても場の妙な緊張感は抜けなかった。
あれ......?
私が不思議に思っていると、そこでついに我慢しきれなくなったかのようにミウさんが口を開く。
「文面的に見ればすごく友好的で、すごくまともだと思うんだけど......なんでリリちゃん、ずっと眉間にしわ寄せてるの?」
「ふぇっ?」
言われて自分の顔を触る。
......わっ、言われて初めて気がついた。私ずっとすごい顔してたんだ......
でも、今ヨウトさんに謝ってもらえたし、嫌がるところじゃなくて、むしろ好感を持つところだと思うんだけど......
ーーーーっ!
そこで、脳裏にある閃きが走った。
そっか......
「あの......ヨウトさん」
「なに?」
ようやく分かった。なんで私があんな行動に出たのか。
分かってしまえば一つ一つの疑問が理解できる。
なんでいきなりヨウトさんの足を引っかけてしまったのか。
なんでずっとヨウトさんに固い態度を取ってしまうのか。
そして、今度は私からヨウトさんを見る(真っ直ぐは無理だけど)
そういえば、私はこうやって話す相手を見ることは今まであまりなかったかもしれない。
それでも、今回だけはそうしようと思った。
「私......さっき、あなたに初めて会ったときから......」
ゴクリ、と誰かが息を飲む音が聞こえた気がした。
そして......私は自分の想いをはっきりと告げる。
「ーーあの時から、あなたのことが、大嫌いでしたっっ!!」
「......へ?」
私の言葉に一瞬、顔を赤くしたような気がするヨウトさんだったけど、時間が経つにつれてその顔からは力が抜けていった。
コウキさんたちもどこか気の抜けたような顔をしている。
......私、またおかしなこと言ったかな?
一瞬不安になって自分の発言を見直すけど、やっぱりおかしな所はない。うん、大丈夫。
私がヨウトさんの足を引っかけた理由。それは私がヨウトさんのことを嫌いだからだ。
私が嫌いなヨウトさんが、私のす......尊敬しているコウキさんに仲良さそうに腕を回していたから腹が立った。普通の考え......だと思う。
一目惚れ、という言葉があるんだから、一目で嫌いになることもあると思うし......
気づいてみれば、すごく簡単な話だ。
「えっと......なんで俺、初対面の子にここまでディスられてんの?」
「まぁ、いつも通りといえばいつも通りだけどな」
「ここはフォローするところじゃね!?」
「え~......」
「めんどぐさがるな!!」
「あはは......リリちゃん、こんな感じで悪い人じゃないから、もうちょっと心許してあげられないかな? そんなイスの端っこギリギリに座ってヨウトから距離取ろうとしないでね?」
言われて自分が座っている位置を確認すると、お尻が半分イスから落ちそうにながら座っていた。
......まさか無意識に体が遠ざかろうとするほどヨウトさんのことが嫌いだなんて......自分でもびっくり。
でも、さすがにこのままじゃ座りづらい。ミウさんの言う通り座り直す......あれ? 体が動かない。
「ねぇ、確かに俺弄られ慣れてるけどさ。さすがに涙出てきそうなんだけど」
「大丈夫だ、そこからさらに自分を追い込むのが真のマゾヒスト道! ......とか、普段ならボケるけど、これはさすがに同情するわ」
コウキさんはもうどうにもならない、といった風にヨウトさんに笑いかける。
うぅ、ごめんなさい。私自身こんなに人を嫌いになったことがないからどうしていいか分からないんです。コウキさんに気を使わせてしまって本当にごめんなさいさい......
だけど、ミウさんはまだ諦めずに私に言ってくる。
「じゃあ、リリちゃん。ヨウトのどこが嫌いなの?」
「えと......ミウさん、幽霊って、嫌いですか......?」
「え? まぁ、好きか嫌いかで言えば嫌いだけど......」
「じゃあ、なんで嫌いなんですか......?」
私の質問に、返答を窮するミウさん。
それこそ、私が求めていた答えだ。
「その、私がヨウトさんが嫌いなのも、同じなんです......よく分からないけど、とにかく嫌い、なんです......」
何度聞かれても私はこうとしか答えられない。なにせ本当にこれしか分からないのだから。
というより、世の中、他人が嫌い、というのはほとんどが私と同じ感じだと思う。
ここがこうでこうだからこの人が嫌い、だなんて、明確に答えられる人の方が少数派だろう。
それに私とヨウトさんはさっき初めて会ったばかりなんだから、さらにそうだと思う。
それにしても、私が何か言う度にヨウトさんが悶絶してるけど......少し気持ち悪い。
さらに何か言おうとしたミウさんだったけど、ついにミウさんも諦めたように項垂れた。
「......あの、もしかして俺って存在そのものが嫌われてるのかな? このままだと人としての最低限のプライドすらも折られそうなんだけど」
ほとんどグロッキー状態のヨウトさんがフラフラしながらコウキさんに聞いている。
私に直接聞かないと言うのは、精神的に私に聞くのが辛いのか、それとも......自分を嫌っている私への気遣いなのか。
前者ならともかく、後者なら頂けない。
ヨウトさんに気を遣われるなんて嫌すぎる。
「だ、大丈夫です......ヨウトさんのことは、その......人未満としか見てませんからっ」
「ぐふぁっ!!」
......嫌すぎたので、とりあえずそんな気遣いは無用という思いを込めてヨウトさんに止めをさしておいた。
それからもさらに一悶着、二悶着あったけど、大体が今までと同じ流れだったから特に取り上げることはないと思う。
結局この日は、服屋事件に始まり、ヨウトさんに出会ってしまうという散々な1日だったけど、夜はこの世界に来てから一番ぐっすりと眠れる日だった。
はい、ファーストコンタクトって大事だよね?回でした。
前回リリのキャラが固まりきってないとか言っていたのに、今回になってみればなにか恐ろしいことに......
別にリリは腹黒というわけではないのですが、ヨウトのファーストコンタクトが悪すぎましたね。
ラノベとかだとありがちな展開ですが、リアルにあんな出会い方をしようものなら好感度大変なことになりますよね。もうBadend直行ですよね。
連続投稿なので今回は次回予告っぽいものはなしで。
......それにしても、話が短いと思ったら前書きが長くなった......そのうち前書きに本編が食われそうで怖い。