ミウ「あけおめー!!」
コウキ「え? 何、急に」
ミウ「いやー、なんか急に言いたくなっちゃって」
コウキ「今一応夏近くだよ?」
ミウ「細かいことは気にしな~い。コウキ、今年もよろしくねっ」
コウキ「......? うん、よろしく」
ミウ「ふへへ~♪」
コウキ「???」
「ありがとうございましたー」
俺とミウ、ヨウトは依頼主の家から出る。
外を見ると太陽はもうどこにもいない。すっかり陽が落ちてしまっていた。
俺たちがあの森を出たのは大体4時頃。それからこの街に戻ってくるまでがせいぜい2時間かかるかどうかぐらいだから、夏も近いこの時期ならば、本当ならまだ陽は昇っているはずだ。
そこで視界の左端に表示されている時計を見ると、時刻はすでに8時。
......いや、俺もさ。こんな時間になるとは思っていなかったんですよ。
ここまで時間がずれ込んでしまったのには、理由がある。
森からなんとか脱出して、俺たちの帰りを待っていたアルゴと合流したときに、それは起こった。
森から出てきた俺たちの雰囲気を見て、アルゴは何かを察したのだろう。俺たちになにがあったのかを聞いてきた。
それに少々渋りながらも、俺が答えると、アルゴはいつも被っているフードを一度くしゃっと握ったあと、それを取っ払ったのだ。
そして、俺たちに、頭を下げて言ってきた。
「悪かっタ。本当にすまなイ。まさか犯罪者プレイヤーたちが潜んでいたなんテ。おれ......いヤ、
正直、驚いた。
俺にとって......いや、多分ミウやヨウトにとっても、アルゴはほとんど無敵な存在だったから。いつもいつも人の考えていることを見通していて、いつだって俺たちの前を行く存在だったから。
頭を下げたまま微動だにしないアルゴ。いつもならミウとヨウトが盛り上げて、それに俺が追随して、そうやってアルゴには非がないことを伝えているところなのだが、今回はそうもいかなかった。
実際に俺は死にかけた。それがあるせいで、ミウやヨウトが盛り上げるわけにはいかなかったのだろう。
ならば俺が盛り上げればいいんだと思うのだが......残念なことにも、俺はそういう能力が致命的なほどにない。適当な親父ギャグを言った方がマシなぐらいにないのだ。
だから俺は、他の方法でなんとかすることにしたのだ。
「アルゴに非があるとは思ってないけど、じゃあ、貸し一つってことで」
「貸シ......?」
「そうそう。まぁ、具体的には......そうだな。《鼠》の情報一回無料、なんてどうだ?」
俺には、ミウみたいに誰かを救えるようなことはできない。でも、誰かの心の負荷を、ちょっとだけ軽減させることぐらいなら、俺でもきっとできる。
だから、アルゴの罪悪感を、少しだけ軽くさせるように考えた。
情報屋としてのミスは、情報屋としての力で帳消しにしろ。
ここまでの俺の考えが全部伝わったかは正直微妙だけど、アルゴなら多分大丈夫だろう。俺なんかよりも全然人の感情に機敏だし。
アルゴは最後に「すまなイ」と言ったあとには、いつも通りなテンションで、嬉々としてクエストの内容を聞いてきていた。
もちろん、少し無理しているような雰囲気はあったけど、あれならきっともう大丈夫だろう。
いや、最終的にまた俺のことを弄ってたし、あれは絶対に大丈夫だろう。ちくしょう。もう少し落ち込ませておけばよかった。
まぁ、アルゴと話し込んでこんな時間になってしまったわけだ。
......さて、クエストも無事クリアしたし、もういいか。
さすがにそろそろ、我慢の限界だった。
俺は勢いよく振り返って、同じく家から出てきたミウに声をかける。
「ミウ!!」「コウキ!!」
「「......へ?」」
ちょうどミウも俺に声をかけようとしていたのか、ミウと声が重なってしまった。
しかもその後の間抜けな声までも被ってしまったものだから、ミウの隣でヨウトがなにやらニヤニヤしている。微妙にウザイ。
とりあえずそんなヨウトは置いておいて、俺が先に話してもいいのだろうかと悩んでいると、
「あの、コウキ、私が先でもいいかな?」
「ん? 別にいいけど......」
珍しい。ミウが自分から先に動くなんて。
こういう時、ミウは基本的に自分から一歩下がる節がある。変なところで遠慮しいなのだ。
ミウは少し慌てたような動作で、ウィンドウを開き、驚くような速度でタッチしていくと、ポン! と音をたてて俺の前にウィンドウが出現した。
それは、俺が見るのはかなり久しぶりなウィンドウ。パーティーを作成、加入するときに出てくるウィンドウだ。
正しく言えば、ヨウトをたまにパーティーに参加させるときに見たりはするのだが、ウィンドウのメッセージに、俺とミウのプレイヤーネームが表示されているのを見るのは、正真正銘『あの日』以来だ。
そうか、もうそんなにミウと一緒にいるのか......
俺は少し感慨深くなりつつも、ミウとパーティーを組むか組まないかと聞いてくるウィンドウのYesボタンを押した。
俺がボタンを押した直後、聞こえてきたのはミウのため息だ。なんだか、溜まっていた何かが一気に放出されているような感じだ。
そしてミウは視線を少し上の、虚空に向けてから数秒固まり、唐突に安心したように笑った。
「うん、やっぱりこっちの方が落ち着くね」
その言葉を聞いて、分かった。
あぁ、そっか。俺から見たら『逆』なのか。
今日、ミウは何度もどこか虚空を見上げていたが、そうか。あれは何か風景を見ていたのではなく、視界の左端に表示されているHPバーを見ていたのだ。
多分、俺の思い上がりでなければ、今日はなかった、俺のHPバーを見ようとしていたのではないだろうか。
そうだとするのなら......やっぱり、かなり嬉しい。
ミウは本当に幸せを噛み締めるように笑っているかと思えば、急に何かを思い出したかのように表情を変えた。
「そうだっ、コウキもなにか言いたいことあったんだよね? なになに?」
「ん? あーいや、俺はもういいよ」
「えー、なにそれ。そこまで言ったのなら最後まで言おーよー」
これも珍しい......というか、最近ミウがするようになった行動の一つだ。
何て言うのか......いい意味で遠慮が無くなってきたのだ。さっきの行動といい、ミウは最近、またなにか変わってきた。
いつからだろう? 確かリリと出会った頃ぐらいからだったような気がする。
ただまぁ、今回の場合は別に俺も何かを隠しているわけではない。本当に言う必要がなくなってしまっただけだ。
「いや、俺も早くミウとパーティー復帰したかったからさ。ミウが先にしてくれたし、もういいってだけ」
「っ、そ、そっか」
アハハハ、とどこか恥ずかしそうに、だが嬉しそうに笑うミウ。
俺も、ミウが俺とパーティーを組んでいた方が落ち着くと言ってくれたのは、素直に嬉しかった。今日は、ミウとパーティーを組んでいないことが、想像以上にストレスになっていたし。
でもミウ、なんで俺に背を向けてガッツポーズしているんですか? 見えてますよ?
「あとヨウトはいい加減ニヤニヤするのやめれ」
「えー、いやー、だって良いもの見せてもらってますもん」
「......ヨウトの顔に、桐かアイスピックでも刺さればいいのに」
「急に怖いこと言わないでくれません!? そんなに嫌ですか!?」
「ヨウトがその表情止めるのなら、転移門近くで全裸になってもいいと思えるぐらいには嫌だ」
「想像以上に嫌だった!!」
「ただし脱ぐのはヨウト」
「それ被害被ってるの俺だけじゃん!!」
ヨウトがシャウトしているところを見て、ようやくいつも通りな日常に戻ってきたような気がする。
あと、さっきから静かなミウは、俺の全裸発言辺りで何故か目を爛々とさせていたような......気のせいか。
とりあえず、このまま家の前で話していても家の人に迷惑がかかるということで、近くの食堂に移動することになった。
「でもこの街って、そんなにレストランとかなかったよね?」
「あ......そうだった」
そうなのだ。各層、各街には、大体がなにかのテーマにしたがって作られている。
例えば水辺がテーマだったり、森がテーマだったり。少し珍しいものでいけば料理がテーマだったりもする。
そんな中、俺たちが今いる層のテーマは森。これだけならばそれほど問題はないのだが、この街のテーマは田舎っぽいのだ。
つまり、店のようなものが極端に少ない。
......これはこれで田舎に対しての制作者側の偏見のような気がする。田舎にだって美味しいものはたくさんあるだろうに。
仕方ない、他の層に移動するか、と俺とヨウトが決めかけていると、
「だったらまたコウキの部屋に集まらない? どうせ他の層に移動するのなら私が作るよ」
「うぇっ!? ミウちゃんが作ってくれる......の?」
ミウの手作り宣言にヨウトが食らいつくが、途中から失速していく。多分、前に食べたミウの料理を思い出したのだろう。
あれは中々に強烈だったからな。仕方がない。
まぁ、俺は大丈夫だが、確かにあれは慣れていない人は辛いだろう。助け船を出すか。
「でもミウ。前にヨウトに食べてもらってから、少しトラウマになってたんじゃないっけ? 友達に食べてもらうの」
「うん、そうなんだけどね。やっぱりいろんな人の意見も聞きたいし」
「確かに、俺の意見だけじゃ味付けとかはどうしても片寄り出るしな」
「......それはそれでも、まぁ、いいんだけど......」
「へ?」
「ううん、なんでもない! それに、リリちゃんとかアルゴも私の料理食べてみたいって言ってくれるから、ヨウトで練習しておけば大丈夫かなって」
「俺は実験台かなにかですか!?」
「あはは、ごめんね」
ミウは笑いながらも本当に申し訳なさそうにヨウトに謝る。
冗談めかして言っているが、かなりミウも本気なのだろう。そしてヨウトもそれは分かったようで、仕方ないなぁ、と言って頭をかいていた。
ヨウトはなんでこう、自分から貧乏くじを引きに行くかなぁ。ヨウトの性分故か、はたまた......あーもう。
「ミウはああ言ってるけどさ。多分大丈夫だと思うぞ? 最近のミウの料理、5回に1回ミスがあるかないかぐらいだし。ミウももう少し自信もっていいって」
「え、そ、そう?」
「ほー、じゃあ全然大丈夫そうじゃん。ま、コウキに自信持てとか言われてもお前が言うなって感じだけどな」
「ふふっ、確かに」
う、うるさいな......仕方ないでしょーが。持てないんだから。
俺は何故か生暖かい視線を向けてくる2人に背を向けて、もうフォローなんかするもんかと心の中で愚痴った。
ミウが食材を買うということで、食材屋にきた。
テーマが田舎、ということだけあって、レストラン的なものはなくとも、食材を売っている場所だけは多いので、ちょうどよかった。
今はミウが買い物中、俺とヨウトはそれを待っているところだ。
「そういえばコウキ、クエストの報酬はアルゴに伝えなくていいのか?」
「もうとっくに伝えたよ。そこまでがアルゴの頼みだったわけだしな」
あのクエストの別ルートのクリア方法は、結局いまいち分からなかった。
ただ、あの石の台に彫られていた『さらなる冒険』というのは、転移後での戦闘を意味していたのか、あのポンチョたちが撤退したあとにクエストクリアの条件を達成したというアイコンが出た。どうやらプレイヤーとの戦闘でもいいらしい。
しかしこれはあの石の台で転移したプレイヤーにしか適用されない。つまり俺しか別ルートでのクリアにはならなかった。
そして先ほど、依頼主からもらった報酬。ミウとヨウトは宝石のついた指輪だったが、俺は緑色の手甲を貰えた。
しかもこれが中々に性能が良さそうだったりする。少なくとも市販のものよりは断然いい。
それに形状が手首の動きを制限しないようにできているので、《体術》スキルとも相性が良さそうだ。
「......」
そこまで考えて、思い出すのは、やはり先ほどまでの戦闘。
あえて考えないようにしていた......というわけではない。ミウやヨウトと別れた後に考えようとはしていた。
ただ今考えてしまえば......
「コウキ、さっきの戦闘のことでも考えてる?」
「......やっぱ、お前が気づくよなぁ」
こうなってしまう。
俺は小さくため息をつく。
こうなってしまえば、ヨウトは俺が話さないと気が済まなくなってしまうだろう。なんだかんだ言って、こいつは過保護すぎると思う。
......いや、まぁ、俺のせいではあるんだけど。
仕方ない。
「ヨウトは、あのヤマトってやつのこと、どう思った?」
「どうって......まぁ、なんか不思議な雰囲気な奴だなぁって。悪い奴とは思わなかったぞ?」
「だよな。俺もそう思う......けど」
「けど?」
「なんか......好きになりきれない奴だった」
言いながら、俺はヤマトの人なりを思い出す。
戦闘中も思ったことだが、あいつは多分、いい奴だ。誰かのために自分をかけることができるような、ミウたちと同じタイプ。
そんな奴が、悪い奴な訳がない。それに雰囲気も確かに変わった奴ではあったけど、それ自体は不快になるようなものではなかった。
ただ、それでも、好きになりきれないというか......あー、なんだろこれ、モヤモヤするな。
俺が言いあぐねているとヨウトが苦笑いする。
「あー、まぁ、それはあのヤマトって奴が自分のこと全然省みてなかったからじゃないか? 聞いた話だと、自分の危険とか気にしてなかったんだろ?」
「そう......だな」
確かに、それもある。
あの戦いで作戦を提示したのは俺。そして失敗したのも俺だ。それなら、俺を責めても当然のはずだ。
だがヤマトが俺に行ったのは、礼を言うこと、それだけ。自分のことを気にすることもなく。
それが気になった、というのはあった。
でも、それだけじゃない......気がする。
この感じは、もっとこう、惨めな感じというか......どちらかと言うと......
「嫉妬......か」
「嫉妬? コウキ、なにかに嫉妬してるの?」
ヨウトと話していると、いつの間にか買い物を終わらせていたのか、ミウが俺の隣に来て話しかけてきた。
正直、ミウにこういう話は聞かせたくはない。ミウを一人省いているとか、そういうことではなく。
俺にも......こう、見せたくない面というのはあるわけでして。
ミウが小首を傾げて俺のことを見てきていたが、ここはヨウトが助け船を出してくれた。
「あのヤマトって奴、イケメンでいいなーってコウキがな」
でも、そのフォローの仕方は正直どうかと思う。わがままは言わないけどさ。
「ミウちゃんはヤマトのことどう思った?」
「ヤマトくん? うーん......なんだか、仲良くなれそうだなぁって思ったかな? いい人オーラみたいなものすごく出てたし」
「ほうほう、つまりミウちゃんの好みどストライクだったと」
「うぇっ!? い、いや、そういうことじゃなくって! 私の好みはまた別って言うか、好きな人はちゃんと他に、その.......あーもう! ヨウトの意地悪! セクハラ! リリちゃんに嫌われてる!!」
「最後の関係なくないですか!?」
......大変そうだなぁ。いや、他人事じゃないんだけどさ。
なのに、なぜか微笑ましく状況を見られる不思議。ヨウト、ありがとうございます。
ヨウトはいつも通りツッコんだ後、でも、と付け足す。
「やっぱコウキが誰かのために動いてくれたっていうのは嬉しかったな」
「だね、私の『コウキの友達を作ろう作戦!』の賜物だね!」
えっへん! と胸を張る(直後、何を思ったのか悲しげな表情に移行する)ミウにヨウトが新しいワードに食らいつく。
あぁ......なるほど、これってどうやっても俺が弄られる流れか......
なんとか戻ることができた日常は、それはそれで俺の味方にはなってくれないらしい。
SIDE ???
「ククッ......今日は中々に楽しめたな」
コウキたちが戦った森から東に移動したところにある森。そこにはポンチョを着た男と、他数名のメンバーが集まっている。
数は......全員で8人。ま、何人でもいいけれど、情報通り、ということかしら。
「リーダー、あそこで引かなくても、数で押せばいけたんじゃないっすかね?」
メンバーの一人がポンチョを着たリーダー各に言う。
しかし、それに真っ先に反応したのはポンチョの男ではなく、周りにいる他のメンバーだ。そのメンバーたちは発言した一人を必死に抑える。
「バカ野郎! 俺たちはリーダーが命令したことにはそのまま動けばいいんだよ!!」
「お前知らないのか!? 前にリーダーに逆らった奴が、どうなったのか......!!」
メンバーたちは小声で言う。
前に逆らった奴......どうせあおのリーダーに惨たらしく殺されたか何かしたんでしょうね。殺人ギルドにも縦社会と言うのはあるらしい。ご愁傷さま。
それに対して、ポンチョの男は「ククッ」と笑う。
「No problem......別に、取って食ったりはしねぇよ。何せ今日は気分がいい」
そう言う割りには、ポンチョの男は質問されたことには答えなかった。自分が分かっていればそれでいい、ということなのだろう。
周りのメンバーは命をなんとか拾った、というように安心しているけれど......『私』は、それじゃあ納得できないのよねぇ。
さて、そろそろいい加減いいでしょう。ポンチョももう気づいているようだし、ね。
『私』は、右手に握っていた片手剣を構え、次の瞬間に《ブレイヴチャージ》発動。ポンチョの男に突っ込んでいった。
「っ!? なんだ、てめぇは!?」
『私』が突如草むらから現れ、周りのメンバーたちが何やら騒ぎだしたが、もう遅い。『私』の剣がポンチョの男の体に吸い込まれていきーー
ーーキィィイン!! という音を上げて、『私』の攻撃はポンチョの男によって弾かれた。
......ふん、まぁ、そう簡単にはいかないわよね。
けれど『私だって』ただでは弾かれたりはしない。ポンチョの男に傷はつけてやれなかったが、代わりにポンチョの男の武器である短剣を右に大きく弾いてやった。
これで形勢は五分五分。
『私』はスキルディレイから解放され次第、続けて攻撃をしかける。相手が防御しにくい左からの剣での一閃ーーと、みせかけて本命は右足での足払いだ。
ポンチョの男は小さく舌打ちすると、大きく後退して『私』から距離をとった。
ーー逃がさない。
『私』はさらに追い詰めてやろうとポンチョの男を追撃しようと足払いに使った右足を踏み込む。が、ポンチョの男は後退しながらも、私が前に出した右足目掛けて短剣を投擲した。
ちっ、これはかわせないか。
短剣は『私』の右足に突き刺さり、一瞬動きを妨害してくるが、知ったことではない。『私』はそこからさらに踏み込もうとする。しかし、それも『私』の背後から斬りかかってきたメンバーの一人に妨害されてしまう。
『私』は踏み出した足を軸に体を反転させ、振り向き様に斬りつけてやった。
そこで、一瞬空気が切れた。
ポンチョの男はどこかカリスマ性を感じさせる笑みを向けてくる。
「Abruptな登場だな......『ニック』。もう少し会話を楽しまねぇか?」
「あら? ごめんなさい。あなたにも紳士淑女の嗜みがあったのね......『Poh』」
「ククッ......今日は本当に良い日だな。まさか、お前にも会えるとは」
ポンチョの男ーーPohは本当に嬉しそうに私を見る。
相変わらず、掴み所のない男......
私は機嫌の悪さを隠すこともなく、Pohに顔を向ける。
「あなた、今日プレイヤーを一人襲ったでしょう?」
「さぁな。そんなこと日常茶飯事だからな」
「そう。けれど、襲っている最中に誰かが乱入してきたのは、キリト以外には初めてだったんじゃない?」
「......だとしたら?」
ちっ、回りくどい話はやはり好きではないわ。
さっさと言うことを言って、去るとしましょうか。
「コウキは私のものよ。私のものに、『二度』と手を出さないでもらえるかしら?」
私の言葉を聞くと、Pohは一瞬何か驚いたかのようになにも言わなかったが、少しすると再び笑い出した。
「ククッ、そうか。あれはお前のfavoriteだったか。『二度と』じゃなく、『三度』じゃないのか?」
「うるさい、今度余計なこと言えば斬るわよ......今後あなたがコウキに近づくようなことがあれば、その時は殺す」
「おぉ......怖い怖い。OK。俺からは手を出さない。約束しよう」
「......また随分と引きが早いわね」
「まぁな。お前に目をつけられちまったら、俺なんてどうしようもない」
どの口が言うのか.......
私は思わず右手に持った剣を振り上げそうになったが、何とか堪える。
ダメだ。今はまだ準備が整っていない。堪えろ。
私は小さくため息をつき、Pohに背を向けた。
「まぁ、私の敷地に入ってこないのなら、それでいいわ..........お互い、まだやりあいたくはないでしょう?」
「That's right ......今は『まだ』な」
そう言って、Pohは再び笑う。
Pohが笑う声を聞き、私は歯を食い縛る。
本当に掴み所がなく、不気味で......殺したいほどに憎い男だ。できることなら、いますぐここで八つ裂きにしてしまいたい。
そんな思いを、私はなんとか堪え、歩き出す。
私の後ろにもPohの仲間がいたけれど、それはいくらか殺気を向けてやること自然と退いていった......情けない。ろくな奴がいないわね。
そしてPohの射程圏外に出たところで、私は顔だけ再びPohに向けた。
「忘れていないでしょうね。あなたがしたことを」
「あぁ、あれは最高だったからなぁ」
Pohが笑いながら言ったのを聞いて、私は今度こそ本当に歩き出した。
今行ったことは、ただの確認だ。Pohに対して、そして、私の憎しみに対して。
私はあの男を、絶対に許さない。絶対に斬る。絶対に倒す。ぜったいに......殺してやる。
私は右手に持った剣の柄を握りつぶすほどの力で剣を持ちながら、その場を離れていった。
もう何度目になったかも分からない、あの男への憎しみを、確認しながら。
はい、交差後コウキの場合でした。
ちくしょぉぉぉぉぉぉぉおおお!! 持っていかれたぁぁぁぁぁぁぁああ!!
......ではなく。
ごめんなさい。急に錬金術ネタを挟んでしまいました。ですが、それぐらい悔しかったです。
なにが悔しかったかと言えば、投稿時間ですね。
ちょっとだけ、新年に間に合いませんでしたのことよ。
あー......新年早々になにをやっているんだ......
沈んでいても仕方がないので、とりあえず通常運転に戻ります。
今回で、交差編みたいなものは終わりですが、そこそこ物語が動き始めました。
ここからどんどん動いていく(予定)なので、楽しみにしてもらえると、嬉しいです。
今年も1年間、更新が遅れたりとなど色々あると思いますが、どうかよろしくお願いします。
次回は......プチ女子会?