ミウ「ね、ヨウトは誰か好きな人っていないの?」
ヨウト「? 急になんだ?」
ミウ「うーん、男の子の好きな人への印象ってどういうのなんだろうなーって」
ヨウト「あー、なるほど......でもなー、あんまり参考にならないと思うぞ?」
ミウ「なんで? 誰も好きになったことがないってこと?」
ヨウト「まぁ、そりゃあ俺も一度くらいはあるけど......無茶苦茶な人だったからな。あぁ、最初からあーいう人だって分かっていれば......」
ミウ「???」
「コウキ、いつも通りこっち座ろうよっ、そっちの方が落ち着くよ?」
「あの......たまには気分転換というか、他の場所に座ってみても、その......わ、私の隣に......!」
「......」
珍しく、ミウとリリがーー俺を含め?ーー言い争ってる。
いつも通り朝の特訓を済ませて、現在はレストランのような店に朝食を摂るためきた。
こういった食事処には色々な座り方があり、今回入った店は、まさにレストランといった4人用のボックス席だった。
......というより、この店はチェーン店なのか、どこの層でも見かける上に味もかなり良く、行きつけになってしまったのでほぼ毎回ボックス席に俺たちは座っている。
そしてそんな時、俺は基本的にミウの隣に座る。ミウと2人で行動する時、第三者は基本的に情報屋だったり、提供者だったりする。そんな人たちと会話する時に今回のようなボックス席に座る場合、第三者の隣に座るわけにもいかないので、俺とミウは隣り合って座る。そして、それ以外の時も、誰かいれば隣に座るのが習慣になってしまっているわけ、なのだが......今回の場合、少しだけ話が違った。
この店はウェイトレスがNPCというわけではなく、プレイヤーがしている(前に俺とミウがウェイトレスをしたのも同じチェーン店)。
なので作業にミスはどうしても出てしまう。
そのミスが、今回起こった。具体的には、お冷を運んできた際に転んで、お冷が宙を舞って俺に向かってきてーーギリギリのところで俺は立ってかわした。
おぉ、今のタイミングで完璧にかわすとか俺ちょっと成長してる!? と、俺が喜んでいる間に、ウェイトレスさんはすごい勢いで謝ってきて、これまたすごい勢いで濡れてしまったイスを拭いて、これにて一件落着だったのだが。
そこで動いたのは、リリだった。
「コウキさん、イスが、その......」
「ん? あぁ、まぁ水被っただけだし、拭いてもらったから大丈夫だろ?」
「でも、もしかしたら......まだ汚れているかもしれませんし」
「うーん......別に汚れてないと思うよリリちゃん」
「で、でも......その......」
そのままリリは俯いてしまったが、またすぐさま顔を上げて。
「コウキさんには、やっぱりちゃんとした席に座ってもらいたいです! だから、こっちの席に......!」
「むぅ......」
リリの言葉にミウが小さく唸り......今回の妙な衝突のスタートである。
ミウは終始俺の目をニコニコ笑いながら見てくる。いつも以上の人懐っこさと柔らかさだ。だけどその笑顔に不退転の覚悟を感じるのはなぜだろう?
リリはかなり涙目になりながらも俺のことを目を見てくる。ただ俺が立ってリリが座っているせいで自然とリリは上目遣い(+涙目)になって、しかも普段の小動物さと合間って、保護欲を掻き立てる。
......ねぇ、どう思うよ、この状況。2人から浴びせられる熱視線。字面だけなら両手に花だぜあっはっはー!!......なんだけど。
2人の目を見る。
「......」
......うん、あれは捕食者の目だ。俺はヒエラルキー的に彼女たちの下だ。
知ってる? ハーレムって男が上になってるから成立するのであって、男が下になった瞬間に待ってるのはほとんどリンチなんですよ?
なんか、寒気がしてきた。どれぐらいと聞かれれば、一人脳内で誰かに話しかけてしまうほどにだ。
これは、仮にどちらを選んでも今後の雰囲気が悪くなってしまうような気がする。雰囲気が悪いことは良くない。うん、良くない。
......どうにかできないものだろうか。なにか、流れを変える何かが起こってくれればーーーー
「おー! コウキ、こんなとこにいたのか! 探したぞー!!」
「ヨウト!?」
「あっ、ヨウトだ」
「うっ......」
俺、ミウ、リリの順にヨウトの登場に反応を見せる。リリはやはりまだヨウトのことが苦手なのか、ヨウトが来た瞬間に顔を逸らしていた。正直、俺も逸らしたくなった。
神様、違うんです。確かに流れは変わるかもしれないけど、これは何かが違うんです。俺は沸騰中のお湯を冷やす水が欲しかったのであって、更なる加熱はいらないんです。
この場から全力で逃げたくなったが、そうすると間違いなくこの場がカオスになってしまうので堪える。
そして、ヨウトもリリに気づいてしまった。
「お、おぉ、リリちゃん......」
「......おはようございます、ヨウトさん......今日も、嫌な顔してますね......」
「あはは......」
拒絶しまくった表情でヨウトを見ながら言うリリに対し、苦笑いしか返すことができないヨウト。
この2人の関係は、俺とミウの頑張りのお陰か、ほんのちょーっとだけ改善された。
最初の頃、リリは顔を会わせるのも嫌だと言わんばかりに、ヨウトの前だと刺々しかった。しかもリリは震えてすらいたから、訳を知らない人が見れば悪いのはヨウト、という印象だろう。
そこから俺たちは頑張って、今のヨウトとリリの、挨拶はこなせる関係までいけた。
......うん、これ進んだって言わない気がする。でもそうでも思わないと俺もミウもやってられないのだ。
でも、ここまで来ると、もうこれは本人たちの問題な気がする。俺たちが無理に近づけようとしても余計にややこしくなっちゃうというか。
ヨウトはそう悪い奴じゃないから、本質的には仲良くなれそうなのに......
そんなそこそこ良い奴のヨウトは苦笑いしながらリリと向き合うこと数秒。
「......そ、そうだ! 俺今日はコウキに用があったんだった! と、いうことで、コウキ借りていくねー!!」
「「えっ!?」」
コ、コウキーー!? というミウの声を聞きながら、俺はヨウトに連れ去られてしまった。
偶然にも、カオス空間から脱出できたことには、ちょっとヨウトに感謝である。
SIDE Miu
「......」
えっと......なに、今の?
いつもみたいに急にヨウトが来て、リリちゃんと挨拶したかと思えば、これまた急にコウキを連れていって......
それから少し待ってみたけど、すぐに帰ってくる様子はない。まぁ、コウキまだなにも注文してなかったから、問題ないと言えば、問題ないんだけど......
コウキたちが出ていった店の出入り口から、正面で、私と同じように唖然としているリリちゃんに視線を向ける。するとリリちゃんも私に視線を向けてきた。
「......」
「......」
か、会話が続かないどころか、始まらない......
そういえば、私とリリちゃんの一対一の状態って、今までなかった気がする。大体コウキが真ん中にいて話してたような。
しかもさっきまで張り合ってたし、それも手伝って、何を話したらいいのか全然分からない。
リリちゃんを見ても、リリちゃんもなんの話題を振ればいいか迷っているみたいだ。
何か話題、話題......
「あ、リリちゃんヨウトのことーー」
「......」
「ーーやっぱり、嫌い、かな......?」
すごい、ヨウトの名前だした瞬間にリリちゃんの雰囲気が一気に負に変わった。
うぅ......私、頑張ったよ。それでも諦めずに負けずに、ちゃんと聞くことできたよコウキぃ......
このことコウキに言ったら誉めたりしてくれないかな? と軽く現実逃避しつつも、私はリリちゃんの返答を予想していた。
というより、予想がついてしまった。
リリちゃんは、
「ごめんなさい.......その、ミウさんたちが色々、気を使ってくれていることは、分かっているんですけど。でも、やっぱり苦手というか.......」
「そっか......うん、でも、まぁ、それはそれで仕方ないよねっ。ていうか、ごめんね、私たちちょっと鬱陶しかったね」
「あ、いえ! そんなことはないです、全然、はい......ただ、多分私......ヨウトさんのことが嫌い、というより、人種として苦手なのかも......しれないです」
「人種として?」
コクり、とリリちゃんが頷く。
「ヨウトさんが、チャラチャラしたタイプの人じゃないっていうのは、あの、分かってきました。でも......」
「......うん、なんとなく分かったかも」
やっぱり、前に私が言ってた仮定がかなり近かったってこと、なのかな?
ヨウトの印象は確かに誤解されやすいかもしれない。どこか自分から道化を演じているような感じあるし。
でも、リリちゃんはそんなヨウトの本質もちゃんと見た上で苦手って言ってる。それなら仕方がない。
本当に最悪なのは、相手のことをうわべだけ見て毛嫌いしてしまうことだから。
それに、リリちゃんはヨウトのことを『嫌い』じゃなくて、『苦手』って言ってる。それならきっと大丈夫......だと、思う。
......さて、そうなってくると、また出てくる問題がある。
「......」
「......」
く、空気が重い......
しまった、また会話を切ってしまった。今のは私が話題転換できたのに......
私って、ここまでコミュ症だったっけ? と首を傾げるけど、それはすぐに否定する。
いや、分かってる。基本的に、私は嘘が苦手なタイプというか、なにか裏で考えたままで表も取り繕ったりはできない。
リリちゃんとの会話で、妙にぎこちなくなってしまうのは、そのためだ。
よし! じゃあ考えていることを言おう! ......とは、さすがに上手くいかない。いくら私も、そこまで単純にはできていない。
と、とにかく!! いきなり聞くのは色々な理由で無理だから、まずは少しずつ場の雰囲気をそっちに持っていって......あれ? 場の雰囲気って、どうやって動かせばいいの?
さっきも言ったように表を取り繕えないような今の状況で? そんなの、私の最大の苦手分野だ......
えっと、こういうのはコウキが上手だっ......けど、コウキはいつもどうやって場の雰囲気を変えてたっけ!?
えーとえーとえーとえーっと!!?
かなり混乱したまま、とにかく状況を確認しようと再びリリちゃんを見るとーーどこか居心地が悪そうに、体を揺らしていた。
わ、私がなんとか、しないと!!
「あ、あの、リリちゃん!!」
「はいっ!?」
「リリちゃんは、コウキのこと好......!!」
途中まで大きな声で言ったけど、途中で失速してしまった。
というか、失速できてよかった。
うぅぅぅぅぅぅうわぁぁぁぁぁぁああ!!!??
私なに言ってるの!? いくらテンパったからって、こんなこと大声で聞くことじゃないよ!? ていうか私もいい加減ここぞっていうときにテンパっちゃうのなんとかしようよー!! それに結局いきなり聞いてるし!!
うぅ......しかも、こんなときでもコウキのこと、好き......って言えないし!! もう、本当に私は......
ぶつぶつぶつぶつと1人自虐モードに入っていると、リリちゃんも顔をすごく赤くして「あの......えっと.......わ、私は、しょの......」と呟いている。
訂正しようかとも思ったけど、さっきの言葉は私が聞きたかったことであるのは確かだ。
「ミ、ミウさん......は、やっぱり......?」
「......うん、私はコウキのこと......好き......です」
......言った。言ってしまった。
今までも言うだけなら、アルゴにも言ったことがあるから、初めてではないけど。
でも、自分から自発的に言う、というのは、初めてだ。
うん、なんというか、すごく恥ずかしいけど......なんだかすごく落ち着く。
やっと、自分の気持ちを全部飲み込めた、みたいな。不思議な感覚だ。
「わ、私も......」
リリちゃんはそこまでしか言わずに、そのまま黙りこんでしまった。
どうしたんだろう? とリリちゃんの表情を伺おうとするけど、俯いているせいもあってちゃんと見ることができない。
「......でも、私なんかが、本当にコウキさんのことを、好きで、いてもいいのかって......」
「リリちゃんが?」
「はい......だって、私は、ミウさんみたいに......可愛くもないし、綺麗でもないし......輝いてもいないし。だから」
「......」
リリちゃんはすごく可愛いよ! 私より全然!
リリちゃん、黒髪すごく綺麗で、日本人形みたいな綺麗さあるよ!
リリちゃんすごく女の子っぽいし、輝いてるよ!!
......こんな感じのことが、色々と脳裏をよぎった。お世辞じゃなくて、本心として。
でも、私が気になったのはそこじゃなかった。
コウキのことを好きでいていいのか?
そんなもの。
「良いに、決まってるよ」
「え......?」
「リリちゃんがコウキのことを好きで、良いに決まってるよ!」
私は声を張ってもう一度言った。お店の中だから他の人やリリちゃんにも迷惑かもしれないけど、今はちゃんと言わないといけない時だと思った。
私としての言葉、そして、コウキがこの場にいたら、絶対に同じことを言うはずだから。
「リリちゃんの気持ちも、私の気持ちも、コウキに受け入れてもらえるかは分からないよ? でも、私が今コウキに抱いてるこの気持ちは、私の物だもの。リリちゃんのその気持ちも、リリちゃんの物だもん。それが他の誰かのせいで左右されるなんて、そんなのは絶対に違う!」
正直なところ、リリちゃんが何を思ってコウキのことを好きでいていいのか? っていう悩みにぶつかってしまったのかは分からない。
でも、相手に自分のことを好きになってもらえるか、で悩むんじゃなくて、自分は相手のことを好きでいていいのか、だなんて、そんなの悲しすぎる。
すると、リリちゃんは唖然としたような顔で私のことを見てきていた。
......あれ?
「うぇっ、あ、っと、その。そうじゃなくて! そんな偉そうなことが言いたかったんじゃなくて、その......あれー?」
「......ぷっ、あははっ」
私が一人また混乱していると、リリちゃんが急に吹き出して笑い始めた。
あわわっ、私そんなにおかしかったかな!? リリちゃんがこんなに笑うほど!?
このまま慌てていたんじゃさっきの二の舞になってしまう! 一度深呼吸して落ち着こう。
......よし。
「えっとね。その、すごく勝手な話なんだけどさ。私は、互いの立ち位置を確認したかったの」
「立ち位置、ですか?」
「うん、立ち位置。ちゃんと想いとか、考えとかを話し合って、ちゃんとお互いを知って、それでリリちゃんと付き合っていきたいなって」
「.......あの、ミウさん」
「ん?」
「不器用って、よく言われませんか?」
「......非常によく言われます」
あはは、と私が乾いた笑みを浮かべるのに対して、リリちゃんはまた楽しそうに小さく笑っている。
うぅ、私だって分かってるよ。自分がかなりの不器用だってことぐらい。
それでも、私にはこういう真っ直ぐなやり方しかできないから。
「......ありがとうございます。私も、ミウさんとどういう感じで仲良くなっていけばいいのか、分からなかったので」
それに、とリリちゃんは付け加える。
「やっぱり、ミウさんはすごいです。私じゃあ、あんなに真っ直ぐ聞くなんて、絶対にできません」
「えっと......うん」
言う人がリリちゃんじゃなければすごい皮肉に聞こえたかもしれない。
「だから、私も、ミウさんとも仲良くしたいです」
もちろん、コ、コウキさんともです。そう言ったリリちゃんは、にこりと笑った。
......ほら、リリちゃんはやっぱり可愛い。
その笑顔は私を羨んだりなんかしなくてもいいぐらいにすごく可愛くて、輝いていた。
SIDE Kouki
「ただいま......」
「あ、コウキ。おかえり。リリちゃんがコウキによろしくだって」
「相変わらずリリは律儀だなぁ」
何もそこまで畏まらなくてもいいのに、と思うこともしばしばある。でも、きっとそこはリリの良いところなのだろう。
俺がヨウトに解放されたのは、連れ去られてから1時間後のことだった。
もちろん、そんなに時間が経ってしまえばミウたちも食事を終えてしまっていたから、俺とミウは《転移門》で移動できる最前線の街で待ち合わせをしていた。
リリは最後まで俺のことを待とうとしてくれていたらしいが、どうもクエストを入れていたらしく、渋々と帰っていったらしい。本当に律儀だ。
あとミウの様子がいつもの3割増しぐらいで明るい。にこにこオーラみたいなものが滲み出ている。もしかしたらリリとの間でなにか良いことがあったのかもしれない。
あとで聞いてみるかな、と思いつつフィールドに出るためミウと街の門に向かう。
「そういえば、ヨウトの用はなんだったの?」
「ん? あぁ......ナンデモナイデスヨ」
「なんでいきなり片言?」
「いやぁ......うん、まぁ」
誤魔化したらそれはそれで面倒なことになりそうだ。
仕方ない、心の準備をして言おう。
「なんか、ヨウトがめちゃくちゃ良い覗きスポット見つけた!! とか言ってさ」
「......へー」
「あ、痛い! ミウ、視線が痛いです!!」
心の準備とかなんの意味もなかった。やっぱりミウの冷たい視線は破壊力が強すぎる。ちょっと泣きたくなってきた。
なおもれ○とうビームを目から放ち続けるミウに、まだ続きがあるから、と言葉をいれる。
「止めても無理だったから連れていかれたんだけど、このゲーム、そもそも女子の絶対数が少ないからさ。誰も通らなかった。それで1時間」
「それは、なんというか......」
ミウは今度はなにか安心したような、でも可哀想なものを見るような目で俺のことを見てくる。これはこれでちょっと辛い。
それで俺へのーーそもそも悪い点はなかった気がするけどーー怒りは収まったらしく、ヨウトはまったくもー、といつものように笑いながら言っている。
それには全くの同意見......なんだが、少しだけ、喉に引っ掛かるものがあった。
「......ヨウトがさ。なんか、変だったんだよ」
「変?」
「うん。さっき言った覗きスポットっていうのも、いつものバカな行動って言えば、そうなんだけど。なんか、どっか上の空だったというか。考えてる感じだったというか」
「......そっか、ヨウトが」
「ミウ、なんか知ってる?」
ミウの様子がどこか沈んだ気がして、なにか知っているのか聞いてみる。
するとミウは、すぐには何も言わずに返答に窮するように小さく唸る。
こういうとき、ミウがすぐに返答しない場合は2つパターンがある。
1つ目は単純に言いたくない時。ただこのパターンの時はミウはもう少し上手く取り繕う(といっても結構分かりやすいけど)
だから今回は2つ目の方。誰か他の人の秘密や考えが関係している時だ。
ミウは悩んだ末、ゆっくりと口を開いた。
「あのね。前に私、ヨウトにコウキのことをになると過保護って言ったことがあって。言った後、ヨウト、なにかショック受けてたみたいだから、もしかしたらそのことかも......」
「......そっか」
「ねぇ、コウキ」
「ん?」
ミウは間髪いれずに言おうとする。が、ミウは口を開くだけで、実際には何も声として発さなかった。
いつの間にか、俺たちは立ち止まっていた。
ミウの視線は、俺の顔に固定されている。多分、ミウが何も言えなかったのは、それが原因なのだろう。
......俺は今、どういう表情をしているんだろう?
笑っているのだろうか? 苦笑いしているのだろうか? 悲しんでいるのだろうか? 嘆いているのだろうか?
少なくとも、ミウがあまり喜びそうにはない表情なんだと思う。
ミウは何も言わない。だから俺はーー先を急ぐためにも足を動かし始めた。ミウも続くようについてくる。
俺とミウの間には、しこりが残ったような、満足いかないような、居心地が悪い空気が流れる。
多分、もう潮時なのかもな。というより、俺もミウに隠し続けることに、もう疲れてきた。
問題はないのだから、ミウに言ってしまいたい。ミウならきっと、聞いても真正面から受け止めてくれると思うから。
......本当に? と、疑惑の声がどこかから聞こえた気がする。
それでも、俺は。
「ミウ」
「なあに?」
「......もう少し、あと少ししたら、全部言うから。あとは俺の覚悟の問題だから。だから、もう少しだけ......待ってくれないか?」
ミウは、俺の言葉を聞くと、静かに目を見開いたが、すぐに暖かく微笑む。
「......大丈夫だよ。私は、いつまでも待つから。笑い話のついでに話すみたいに、いつか気楽に話してよ。私は、どんなことでも一緒に背負うから」
「......ありがとうな」
不意に、景色が一瞬ぼやけた気がしたが、それも居心地がよくなった空気に流されていった。
プチ女子会(唐突)回でした。
なんか久しぶりに日常回かなーと思ったら、気づけばまた少しだけシリアス回になっていました。どうしてこうなった......
それと今回は少しだけ文章の雰囲気を変えてみたんですけど......いやー、難しい。本当にどうしたら他の作品のような素晴らしい文章が書けるのでしょう。謎です。
次回は戦闘ですね。さすが激動編。バシバシいきます。