力無き少年のソードアート・オンライン   作:Aruki

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55話目 それはひどく脆く曖昧で

「んー......」

 

 いい加減見飽きてーーいや、見慣れてきた鬱蒼とした緑が包む森の中。隣を歩くミウちゃんのため息が聞こえてきた。

 もちろんそれはガイアクエスト攻略がうまく進んでいないことに対する不満と言うわけではないだろう。なにせ攻略自体はこれ以上ないほどに順調に進んでいる。

 時々襲ってくる《エイジス》も俺たち(、、、)ならばほとんど敵にならないし、次の《宝珠》の位置も分かり、そこに向かっている最中なのだ。これで順調と言わずしてなんと言おう?

 そう、だからミウちゃんのため息は不満から来るものではないことが分かるーー俺と二人(、、)での攻略でなければ、だが。

 

「ミウちゃーん。コウキと一緒じゃないからってそんなに不満そうにするなよー」

「不満じゃないよ......というかヨウト。言葉は悲しそうなのにどうしてそんなににやにやしてるの?」

「そんなことないと思うけどなー」

 

 俺の表情を見て珍しくもミウちゃんが若干引いているがこればかりは仕方がない。

 そう、仕方がないのだ。ミウちゃんが不満そうにしている理由ーーコウキとリリちゃんが二人で行動していることを気にしていることーーを考えればどうしたって顔がにやけてしまう。

 人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死ぬ呪いがかけられるらしいが、人の恋路を邪魔しない、介入しない程度に外から見ているぶんには、これほど面白いものはない。

 

 そもそも、俺たちが今回二手に別れて行動しているのには理由がある。

 今回の《宝珠》は少々特殊で、入手する際には二ヶ所にある《宝珠》を同時に入手しなくてはならない。何でもその二つの《宝珠》は月と太陽を司っているらしく、どちらか一方を取ってしまうと二つでとっている力のバランスが崩れてしまうとのこと。

 しかし二つの《宝珠》を同時に取るなんてことは難しい。だから、二つの《宝珠》を守護している守護モンスターを二ヶ所でそれぞれ倒すことができれば入手できるようになるらしい。

 このクエストは一回でクリアしろ、というようなこともなく。まず様子見をし撤退し、何度でも挑戦していいとのことだった。これはありがたい。

 

 じゃあ、二手に分かれるとして。その組み合わせはどうしようという話になったとき、コウキが言った。

 

『今回はもしものために撤退もできる組み合わせを考えないといけないからな。実力よりも技術を重視したい。そうなると......俺とリリ、ミウとヨウトの組み合わせかな』

 

 コウキのその提案に誰もが納得していた。その組み合わせが一番バランスがとれることは全員が理解していたからだ。

 それはミウちゃんもそうだ。けれど実際にコウキたちと分かれて俺と二人になると少しずつと調子が崩れていった。

 最初は少しそわそわとし出し、次にやたらとコウキの話題を振ってくるようになり、そして今はどこか寂しそうにため息をついている。

 今回はポンチョ男たちと出会ってしまったあのクエストの時とは違って別行動をしているだけで、パーティは組んだまま。つまり視界の隅にコウキたちのHPバーは見えている。だからそこまで心配することはないと思うのだが......それでもいじらしく頭のなかがいっぱいになってしまうのが恋愛とかそういうやつなんだろう。

 

「ミウちゃんって結構依存気質なとこあるよな」

「......そんなことないよ?」

 

 そう言うミウちゃんはいかにも思い当たる節がありますとばかりに冷や汗を浮かべながら笑っていた。

 前から思っていたが、本当にころころと表情が変わる子だ。天真爛漫がそのまま当てはまる性格を持っていて、その上大人びた面も持っていて。コウキが惹かれてしまうのも頷けるというものだ。

 と、そこまで考えているとふと頭に浮かぶものがあった。

 そう言えば俺、いや、俺たち。ミウちゃんのことほとんど知らないよな......

 ミウちゃんの見た目の良さ、性格の良さ等々。見ていて分かることはいくつか俺も知っている。

 けれど、『中身』についてはなにも知らない。

 コウキから聞いた話。そして俺自身が見たものも含め、ミウちゃんは誰かを助けることに異常に固執している。

 それは困っている人がいてその人を助けその人が笑ってくれたら嬉しい、という考えのもとらしいのだが......本当に、それだけなのだろうか?

 本当にそれだけで、人は自分の命を投げ出す覚悟で人を助けたりできるのだろうか?

 ミウちゃんの過去についてはコウキもまだ聞いていないと言っていたからその背景もわからない。

 ......ミウちゃんには、俺もこれでもかという程に借りがあるし、個人的に好意も抱いている。

 ミウちゃんが抱えているものがあるのなら、それを取り除いてあげたい。そう考える。考えるが、それはコウキがすべきことだろう。俺がむやみに突っ込んでいい話ではない。

 

「でもなー、リリちゃんって結構攻めるタイプだからなー。もしかしたら今ごろ......」

「だ、大丈夫だもん。大丈夫に決まってるもん......」

 

 今どんなことがミウちゃんの脳内で再生されているのか、それが一目で分かり俺はさらににやにやとした生暖かい笑みを深くする。

 それからもミウちゃんは何度か唸るが、少しすると小さく息をつき、ぽつりと呟くように返してきた。

 

「でも、その......本当に嫉妬とかそういうのじゃないんだ。そりゃ少しはそういうのもあるんだけど、そればっかりじゃなくて......」

「......前から少し思ってたんだけどさ。ミウちゃんはリリちゃんと戦うようなことになったらどうするの?」

 

 これも気になっていたことだ。ミウちゃんはその性格とは反対に、周りの目を気にしすぎている節もある。もっと言えば仲のいい相手の心情ばかりを気にしている。

 まるで自分の行いなんて受け入れてもらえるわけがない。また迷惑をかけてしまう、そんな考えが見え隠れするときがある。

 だからそんな子が、仲のいい友達と争うようなことになったとき、どういう選択をするのか、選択できるのか、それが気になっていた。

 しかし意外にもそんな俺の心配を晴らすようにミウちゃんは小さく笑った。

 

「大丈夫だよ。私、コウキやリリちゃんからは逃げたくない。正面から向き合っていたいから」

「......そっか、それなら俺が心配するのはお節介だな、悪い」

「ううん、そんなことないよ。ヨウトが私たちのこと色々心配してくれてるのは知ってるしね」

 

 ミウちゃんは笑いながら俺のことを誉めてくれるが、それに対して俺は目を逸らすことしかできない。

 なるほど、コウキからミウちゃんは気づいたらするりと自分の心のなかにいるような感覚になるとか聞いたけど......これがそんな感じか。

 見栄や建前も全て飛び越えてくるから、なんというか......はずい。

 そんな俺の内心など知らずにミウちゃんはにこにこと光りや日光を彷彿とさせるような笑顔のまま続ける。

 

「それにヨウトと二人きりになったことってほとんどないから知らなかったけど、ヨウトって本当は落ち着いた感じの性格してるんだね」

「いやいや、そういうキャラ殺しな発言はやめような? それこそそんなことないってば」

「でもコウキも言ってたしなー。ヨウトの奴は自分からキャラ作ってるところあるって」

 

 あいつはまた余計なことを......とコウキを呪ったのもつかの間、すぐに俺はミウちゃんが言うところの『にやにや顔』になる。

 コウキは言うまでもなく、恐ろしいまでに天の邪鬼だ。それはミウちゃんに対しても変わらないし、だからたまにミウちゃん本人に言えない本心ーーのろけとも言う。本人は断固否定するがーーを聞くことがある。

 きっと俺に対してもコウキは言っていないことがある。多分直接言うのが恥ずかしいとかそういう方向のことをだ。そんなもの......聞きたくて仕方がない!! これほどコウキをからかえる内容はないじゃないか!!

 

「なぁなぁミウちゃん。コウキ他には俺のことなにか言ってなかったか?」

「うん、よく言ってるよ。例えばーー」

 

 ミウちゃんもコウキのことを話せて楽しいのか、コウキが言っていたことを事細かに話してくれた。いっそコウキのプライバシー問題とかが悲しくなるほどに。

 しかし俺も楽しいので止めたりはしない。

 これはまた新しい遊びを発見した、と俺がほくほくとしていると、ついさっきまで顔を輝かせていたミウちゃんはその感情の波を逆転させたかのように俺をじとっと見ていた。

 

「え、あれ? ミウちゃん?」

「......話してて思ったんだけど、コウキって本当にヨウトのことばっかり話してるなぁって。私の本当のライバルはヨウト......?」

「いやいやいや!? やめてよ俺をコウキ争奪レースに入れたりしないでよ! 俺もコウキも好きなのは女の子、BL路線はないから!」

 

 確かに現実世界でも俺と光輝の仲の良さを見て一部女子どもがキャーキャー言っていたこともあったが、そんな事実は全くない。事実無根清廉潔白だ。

 ミウちゃんにまでそんな勘違いをされたら終わる。具体的には女子二人からのプレッシャーで!

 だが、俺にはまだ切り札がある。

 

「ヨウト×コウキなんて事実はないけど、仮に俺がミウちゃんの本当のライバルだとしても、ミウちゃんは俺と仲良くしておいた方がいいと思うぞ?」

「どういうこと?」

「コウキがそれだけ俺のことを知っている......ということは? 俺もコウキのことを詳しく知ってることにならないか? 知りたくないかなー、コウキのあんな話やこんな話。はたまたそんな話を」

「私ヨウトを師事するよ!! 師匠! これからよろしくお願いします!!」

「女の手のひら返しってこえー......まぁ、とにかくコウキレッスン1。コウキは結構むっつりスケベだからーー」

 

 上手くいったはずなのに何故か俺の方が女性の怖さを思い知らされていた。

 女って、裏表分かんなくて怖い。

 そんな考えはとりあえずどこかに投げ捨てながら、俺はミウちゃんにコウキ情報をリークしまくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 Side Kouki

 

「んー.......」

 

 俺はいい加減鬱陶しくなってーーいや、見慣れてきた鬱蒼とした緑が包む森の中。俺は軽く剣を振りながら小さく唸る。

 もちろんそれはガイアクエスト攻略がうまく進んでいないことに対する不満ではない。むしろ攻略自体はかなり順調に進んでいる。

 俺が気にしているのは別のことーー俺の戦闘スタイルについてだ。

 前々から課題にしていた戦闘スタイルの構成。それが今朝の特訓ではだいぶん形になってきていた。

 先日のミウとシーヴェルスのデュエルを見てから、俺のなかで何かがピタリとはまったのだ。

 今まで積み重ねてきたものが一気に組上がっていく。山登りをしていて気付いたときには驚くほど高い場所にいたことに気づくような感覚。

 あと少し。もう一歩。その『何か』が分かれば全て掴める気がする。その『何か』を解明するためにもとにかく剣を振っているーーというのは体。なんとか今のこの空気を感じ取らないようとにかく動いているだけだ。

 

 しかし俺はついにこの空気の重さに耐えられなくなり、ちらりと隣を歩くリリに視線を向ける。

 

「......」

 

 俺が剣を振っているのもリリの「どうしたんですか?」という言葉を待ってのことだったりするのだが、リリはただ暗い顔で俯いているだけで、俯いているから俺の方も見ていない。

 かと思えばリリはすごい勢いで顔をあげ、珍しく声を張ってくる。

 

「あ、あの! やっぱり二手に分かれるんじゃなくて......その、皆で行動した方が......その方が安全も確保できますし......!」

 

 声を張るリリはどこか思い詰めているというか、必死さが感じられた。

 ここ最近のリリは少し様子がおかしいところがあったが、今日は特におかしかった。

 さっきのように俯いているのもそうだが、他にもミウたちと別れた後から、何か忘れ物はないか?とか、もっといい組み合わせがあるんじゃないか?とか。どうにも今回のクエストに対しては乗り気ではない。

 いや、違うか。正確に言うのであれば、俺と一緒であることが好ましくない、そんな雰囲気が伝わってくる。

 出会った頃よりはリリとも距離が近づいた気がしていたのだが......そんな相手と二人きりになった途端に『一緒にいたくないオーラ』向けられるとか精神的にかなり来る。

 

「俺もそれはちょっと考えたんだけど......撤退もOK、mobもほとんど敵にならない。いざとなれば転移結晶も使用可......ここまで条件ゆるゆるだと皆で動くのはただ効率が落ちるだけなんだよ」

 

 安全第一。どこかの建築業者の社訓のようだが、この世界でもそれは同じだ。

 可能な限りの安全策を取れ。油断ひとつで死ぬぞ。そんな経験は何度だってある。

 だが完璧な安全策を取りたいのなら《圏外》に出なければいい。安全以上に重要なことがあるから俺たちは《圏外(ここ)》にいる。

 

 俺の答えを聞くとリリは再び暗い表情で俯いてしまう。

 俺が言ったことは言わなくてもリリだって分かっていることだろう。それでも口にしたということは......

 

「......なぁ、リリ。俺と一緒が嫌なのに、この組み合わせにして悪かったな。今日だけの辛抱だからーー」

「違います!!」

 

 リリの声が森に響く。

 少しでもリリの気分を軽くしようと言った言葉は、リリの鋭い剣幕で中断される。

 今度のリリの表情は、先程までと同じ必死な顔。だが今は決して譲れないものを守るかのような、そんな雰囲気。

 

「わた、しは、コウキさんと一緒にいることができて、嬉しいんです、楽しいんです......だから、でも、私は......私は......」

「リリ......?」

 

 しかし響いたのは最初の否定だけ。

 リリの言葉はどんどん勢いを失っていき、最後の方は掠れる息づかいのようなものしか聞こえなくなってしまった。

 リリの気遣いでないのなら、俺はリリに嫌われていない。それなら何をそんなに思い詰めているのかーー

 そこまで考えて、ふと思った。

 そう言えば俺、いや俺たちは、リリのことをあまり知らないんじゃないか......?

 リリが何でもかんでも俺のことを尊敬してくれて、持ち上げてくれるから俺から聞く機会がなかった。俺はリリの何を知っているんだ? それこそ、なんで最近のリリがこんなにも追い詰められているのか、それを俺は知らなくちゃいけない気がする。

 義務感ではない。仲間として、少しでもリリのことを知りたいと思った。

 

「なぁ、リリーーーー」

 

 しかし、俺の言葉は再び遮られてしまう。

 今度遮ったのはリリではなく、モンスター。いつの間にか《宝珠》の守護区域に入っていたのか、守護モンスターがポップしたのだ。

 守護モンスターの名前は《ザ・フルムーン・ゴーレム》。その名の通り体はごつごつとした岩で構成され、森の中だからか至るところに苔を生やしている機械人形(ゴーレム)

 体長はおよそ2メートルと少し。ボスモンスター以外のモンスターならば最大クラスのサイズだ。

 このゴーレムはおそらく『月の力』を司っているのだろう。名前からもそれはわかるが、その巨体の胸の部分に月の紋章が刻まれている。

 ゴーレムは鈍く首を横に動かし俺たちを発見すれば、地響きを上げながら俺たちに向かって動き出す。

 通常のゴーレムよりは動きが速く、俺たちとそこまで変わらないほどだが......問題ない。この程度のスピードならば二人いればどうとでもなる。

 

「行くぞ、リリ!」

「っ......はい!」

 

 俺たちは同時に剣を引き抜き、ゴーレムに対して駆け出したーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオォオオオオッッッ!!」

 

 俺の胴体ほどの太さがありそうなゴーレムの腕。それが俺めがけて振り下ろされるが俺は慌てることなく後ろにステップしかわす。

 その間にもリリはゴーレムの懐に潜り込みソードスキルを叩き込む。

 これは特別なことは何もしていない。ただパーティとして当然の前後衛の住み分けをしているだけだ。

 それだけで、このゴーレムは俺たちに追い詰められ、もうHPもほとんど残っていない。

 このゴーレムの厄介なところは単純。それはステータスの高さだ。

 攻撃力も防御力も、現段階の層としてはかなり高い。ステータス差だけを見るのであれば俺とリリだけの二人で挑むのは無謀と言えるほどだ。

 しかし、ゴーレムのAIはそこまで優れているわけではない。今のように単純なコンビネーションでほとんど完封できてしまう。

 このクエスト、というかこの守護モンスターは、おそらく二人以上でチャレンジすることを前提として構成されているのだろう。

 そしてミウたちが行っている『太陽』の方もおそらくそういった内容のはず。だからこのクエストは四人以上のパーティでなければクリアが難しいということだ。

 ......こう言ってはあれだが、本当にヨウトとリリとパーティを組んでいてよかった。

 このゴーレムを一人で倒せなんてのは俺では無理だ。

 でも、二人ならばこのゴーレムは敵ではない!

 

 今度は俺がゴーレムの足に《バーチカル・アーク》を叩き込む。

 俺の剣が振るわれるごとにゴーレムはそのHPを減らしていきーー残りは本当に僅か。あと一撃ソードスキルを叩き込むことができればその体をポリゴンにすることができるだろう。

 

「リリ! あと一撃だ、油断するなよ!!」

「はい......」

 

 だが、どれだけ勝利が近づいても、どれだけ倒すのが簡単でも、油断は絶対にしない。

 一瞬の油断が命取り。そんなことがこの世界に来てからは何度もあった。

 もう自分の油断で後悔するのは嫌だから。仲間を傷つけられるのは嫌だから。

 

 俺に向かってすさまじい勢いでつき出されるゴーレムの拳を、身を捻ることでかわす。さらに伸ばされた状態にある腕を横から叩きつけることでゴーレムの体勢を崩し、その反動のまま俺は後退する。

 

「スイッチ!!」

「っ!」

 

 もう何度も行ったリリとのスイッチ。返事は無かったがリリが地を蹴る足音はいつもと全く変わらない、完璧なタイミング。

 俺は決して油断しないよう集中力をさらに高める。もしかしたらここで追い詰められたゴーレムが今までのアルゴリズムと全く別の行動を取る可能性もあるし、もしかしたらリリの攻撃を耐えきるかもしれないし、もしかしたらここで他のゴーレムがポップするなんてこともこの世界なら有りうる。

 俺は考えうる限りの可能性を頭のなかでシュミレートする。一瞬たりともゴーレムから視線を外さず、集中も途切らさない。

 そして、ドスッッ(、、、、)と。

 リリのソードスキルは何の邪魔もなく吸い込まれた。

 俺は本当に微塵も油断なんかしていない。だからこそ(、、、、、)、ゴーレムは俺たちのスイッチに翻弄され動きが止まり、リリの攻撃をかわす術は存在しない、そう断言できた。

 自分でも、過去最高の集中力と言い切れるほどの集中力だ。

 

 ーーだからこそ(、、、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーリリの短剣が、俺の腹(、、、)から飛び出して(、、、、、)いることが、全く理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーえ?」

 

 そのままドサリと音を上げながら、俺は森の地面に倒れたーー

 

 

 

 

 

 

 

 

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