今回はいつもと比べて少し短めになりました。
いつも同じぐらいの文章量にしようと心がけているのですが、難しいですね...
今回は新しいキャラが出ますよ! はい、タイトルから丸わかりですよね。
それではどうぞ!
この世界に囚われてなんだかんだ言って半月が過ぎた。
俺も何回か本気で死にそうな場面に出くわしたが、運と偶然とミウのお陰でなんとか生き延びていた。
だが、この世界に囚われた一万人全員がそうというわけではない。
聞いた話では最初の一週間で五百人以上のプレイヤーがゲームオーバーになったらしい。
自分もいつそうなるか分からないことを考えると、ゾッとしない。
本当にもとの世界には帰れるのか、百層突破なんてする以前にこの層すら突破できないのでは?
思うことは多々あるが、今は今日を生き延びていくしかない、と思考を切り替える。
さて。
俺たちは3つ目の街《リート》でただいま食事中な訳なのだが。
「~~」
なんか、ミウのテンションが高かった。
ネペントのクエストを終えた後、《トロイ》に戻っている最中なにか考えていたようなのだが、街に着いたら、よしっ!と言って、それからはたまにミウのテンションが上がるようになった。
鼻歌まで歌ってるし...
「なぁ、なにか良いことあったのか?」
今日はパンとトマトのサラダを食べている(トマト好きなのか?)ミウはこちらを向くが
「ん~、別に~」
と、笑顔で返されてしまった。
前にもミウがこんなふうになったときに何度か聞いてみたことはあったが、毎回今のように返されてしまう。
別に楽しそうならそれでなによりなのだが....気になる。
俺が訳がわからずに唸っていたら、ミウはなにか思い出したように声を上げる。
「そういえばコウキって、戦ってるとき少し雰囲気変わるよね?」
「...戦闘中にいつもと同じ感じで戦ってるやつの方が怖いんだけど」
「もぉ、そういうことじゃなくてさ!」
と、言われても。
実際ミウだって戦闘中は雰囲気が変わる。普段は爽やか系で、戦闘中は男でも惚れ惚れとするようなかっこいい感じだ。
いやこれほんと、ミウの戦っている姿を女子が見たら誰でも惚れるんじゃないだろうか?
「なんか、普段は柔らかい感じなのに、戦ってるときは刺々しい感じになるというか...」
「あー、なるほど」
そのことについてはリアルでも似たようなことを言われたことがある。普段は周りの流れに身を任せて無駄なエネルギーは使わないような感じなのに、一度こうと決めたら周りの流れに全力で逆らっていく、とかなんとか。
それを言った本人はすっごい得意気な顔で、当時はむかついたが、ミウにまで言われるということは事実そうなのかもしれない。
「まぁ、気にしなくていいよ。別に二重人格って訳じゃないし」
「それはそれで面白そうだけどね」
そんなふうに談笑しながら互いに食べ終わり、店から出る。
現在時刻は午後の8時。今日は攻略を早めに切り上げたせいもあり、少々時間が早かった。
今から帰っても時間が余るな...
ミウも同じ考えのようで、隣ではミウがキョロキョロと見回していた。
「...どっか寄ってくか?」
「ふぇっ!? 私何も言ってないよ!?」
「言ってはないけど態度に出すぎだって......」
「えぇと、その......いいの?」
「いいも何も、ミウ一人でうろつかせたら間違いなく俺が探しにいくことになるし」
「...うぅ~」
ミウが面白くなさそうに唸りながら睨んでくる。
いや、そんな唸られても...
しかし、俺に小バカにされたことは悔しいが歩き回ることには賛成のようで、ミウは拗ねながらも道を歩き始めた。
俺もそれに続く。
「そういえばミウってなんでそんなにお菓子好きなの?」
前にも寄ったことのあるお菓子の店を横目に見つつミウに聞く。
「んっと....私自身は昔はあまりお菓子とかは食べなかったんだけど、友達がーーあっ、リアルのね。友達が持ってきてくれたお菓子がすごく美味しくって。それからはお菓子の新しいお店とかできたらその友達と一緒に行くようなってね。それからーーーー」
ミウの話はまだ続く。
俺としてはもう少し軽い意味合いで聞いたのだが...
止めようとも思ったが、話しているミウの顔があまりにも嬉々としていたので、止めるのも気が引けた。
だが、お菓子の話はよく分からなかったが、一つだけ関心を持てる内容があった。
「その友達、仲いいんだな」
話しているだけで嬉しくなってしまうような友達。そんな存在がすごく羨ましくなってしまった。
俺の場合は...ヨウトか。
だが、俺はそんなやつすらも裏切ってしまった。
羨望と少しの嫉妬。そんな思いを込めた、ただ自己完結の軽い言葉だった。
だが、
「......あ」
そんな俺の軽い言葉は、ミウの中の『何か』に触れてしまったらしかった。
俺の言葉を聞いた瞬間、今まで本当に楽しそうに話していたミウはその笑顔を潜め顔を俯かせる。
少しの間互いに無言のまま歩いていたが、ミウが次に顔を上げたときには再び笑顔に戻っていた。
ただしそれはミウのいつもの色々なものを吹き飛ばしてくれるような快活な笑顔ではなく、どこか物事に達観したような笑顔、つまり俺がよくしている俺がもっとも嫌いな表情だった。
ミウにそんな顔は、似合わなさすぎる。
「なぁ、ミウ」
「ん、なに?」
ミウの質問に答えようと口を開けるが、俺の口からは何も音がでなかった。
...一体、俺は何を言うんだ?
おそらく今の出来事は、掘り下げていけばミウの根幹にも関わるような話だ。
それをわかっていて、その上で俺が何を言うと?
俺は、まだミウのことを知らなさすぎる。そんな俺がこれ以上深く関わろうだなんて不躾にもほどがある。
「ミウ、あっちの道行ってみようぜ。まだ行ったことなかったしさ」
「あ...うん!」
だったらここは、引くべきだ。
これは、気軽に踏み込んで良いことではない。いや、そもそも俺なんかが関わってもいい話でさえないかもしれない。
俺は空気を入れ替えるためにも、ミウに努めて明るい声で言う。するとミウも同じように明るい声で返してくれた。
....今は、『今』を必死に生きていればいいと思う。
それから30分ほど街を歩き回り、だいたい時間も潰せたところで今日は宿に戻ろうという算段になった。
あとはもうどこにもよらず真っ直ぐ宿屋も戻る。
...はずだったのだが。
二人並んで歩いていると、後ろからドン! と、俺の背中に誰かがぶつかってきた。
「いったたタ...」
「おっと、大丈夫か?」
俺とミウは二人してぶつかってきたプレイヤーに手を出して起き上がらせる。
そのプレイヤーはミウよりも身長が低いようだが、灰色のローブを被っているせいで全体像がよく分からない。
すると道の向こう側からドタドタと誰かが走ってくるような音が聞こえてきた。
「待てー!! 鼠ぃ!!」
「しつこいナ」
鼠(?)さんの後方から数人のプレイヤーが各々手に武器を持ちながら走ってきた。
...うわぁ、なんか厄介ごと臭いなぁ。
鼠さんは小さく舌打ちしつつ、苦々しくプレイヤーたちを見たあと、再びこちらを見る。
...ん?
「助けてくレ! あいつらが急に襲ってきたんダ!」
「えっ!?」
声をあげたミウとすぐさまアイコンタクトを取る。
俺としては、腑に落ちないところもあるし様子見を貫き通したいのだが...
「ですよねー」
意志疎通の結果、ミウは迷わず剣を抜き《ホリゾンタル》を放った。
咄嗟のことに反応しきれなかった相手のプレイヤーたちは呆気なく吹っ飛ばされていく。
...なんか、利用されてる気がするけど、ミウもうやっちゃったし、仕方ないか。
「くそっ、なんだこいつ!」
ミウの攻撃をギリギリかわしていたプレイヤーは二人。そのうちの1人が即座に反撃しようと攻撃の体勢に入る。
だが、一手遅い。攻撃の体勢に入ったプレイヤーの位置に先回りしていた俺は、そのプレイヤーを《スラント》で切りつける。
さすがに二撃目はかわしきれなかったらしく、他のプレイヤー同様吹っ飛ばされていった。
残るはあと一人。
「さてお兄さん、まだやる?」
ミウが最後の一人に向かって言うと、そいつは悔しそうに唇を噛み締める。
本当なら意地でも戦いたいが、今の戦闘を見せられて理性の部分がストップをかけている、という感じだ。
「くっそ!」
結局、男は何もせずに逃走した。それに続くように吹っ飛ばされていたやつらも走り去っていく。
...なんか、《はじまりの街》を思い出すな。
「おー、ありがとナ。お前たち強いナ」
今まで後方に下がっていた鼠さんが近づきながら行ってくる。
今まで自分が狙われていたはずだというのに、その態度はどこか軽かった。
この態度からして、やっぱりか。
「で、なんで俺たちを利用したの?」
「へっ、利用?」
うん、なんとなく分かってたけど、ミウは気づいてなかったか。
「にゃはははハ、ばれてたカ」
言葉のわりには特に悪気とかは見えてこない。
そして笑いながら鼠さんはローブのフードを取った。
フードの中から出てきたのは、金褐色の髪、つり目気味の目に、なぜか鼠の髭のように線が入っている頬。
独特な話し方だが、どうやら女性プレイヤーのようだ。
鼠さんはもう一度ニヒッと笑う。
「オレッちはアルゴ。少し話を聞いてもらえるカ?」
近場の店に入って、アルゴから聞いた話によると、彼女は攻略、日常問わず有力な情報を集めて、それをコルと引き換えに提供する情報屋をやっているらしい。
かなり情報の信頼性も高くーーーーアルゴの自称だがーーーー多くのプレイヤーから重宝されているが、今回の場合はアルゴの名前を騙った偽物が偽りの情報を流したので、その皺寄せが本物のアルゴにきた、ということらしい。
ちなみに『鼠』とはアルゴの二つ名だそうだ。
一通り話を聞き終えたが、ミウが心配そうにアルゴに聞く。
「でも、大丈夫なの? その偽物を何とかしないと、さっきみたいなことがこれからもあるんじゃ...」
「それは大丈夫ダ。偽物は頼りになる剣士さんに成敗してもらったからナ」
「へ~、いい人もいるんだね」
剣士さん...、誰なんだろ?
「でモ、さっきは本当に助かったゼ。お礼にこれやるヨ」
アルゴはウィンドウ操作して、手元に本のようなものを出した。
それを俺たちに手渡してくるので受けとる。
タイトルは...《アルゴのガイドブック》?
俺とミウが首を傾げていると、アルゴが俺たちの疑問に答えるように言ってくる。
「それはオレッちが明日から無料配布するガイドブックサ」
パラパラと本を捲ってみるとmobの説明、出現場所、攻撃方法、貴重なアイテムの入手方法及び場所など、本当にこの本さえあれば大丈夫と言えそうな情報が数多く書かれていた。
ミウにも渡すと、すぐさまお店のページを見始めた。相変わらずお菓子への執念が凄まじい。
「でもこれ、本当にすごいな...タダでもらっていいのか?」
「お礼にって言ったロ? それにこれぐらいは誰にでも調べられることサ、情報屋としては痛くも痒くもナイ」
「アルゴ、ありがとっ!!」
「うニャァ! ミーちゃん眩しイ!」
シニカルな笑みで決めていたアルゴだったが、ミウの笑顔によってすぐにそれも崩れる。
アルゴ、気持ちはよくわかるぞ。
ミウはお礼言ったり楽しいときなんかは本当に全快の笑顔を向けてくるので、眩しい、という表現がものすごくマッチする。
ちなみにミーちゃんというのはミウのことだ。俺はコー坊と呼ばれている。
「なァ、いくつか聞いていいカ?」
「いいよ、なに?」
「二人は恋人なのカ?」
「「へ....?」」
俺とミウの声が被る。
俺たちは互いに目を瞬かせ、その後互いの顔を見る。
無言の数秒。
そしてどちらともなく笑い出した。
「ははっ、ないない」
「だよねぇ、ないない」
俺たちは手を振って否定する。
俺とミウが? それはいくらなんでもありえない。
「まぁ、確かに好きだけどね。LoveとかじゃなくてLikeだし。どっちかっていうと家族に近いかも」
確かに。会って半月程度だが俺も好きではある。だがそれは彼氏彼女とかそういうものじゃあない。
ミウに共感するのと同時に、ミウに『家族』と言われてすごく嬉しかった。
家族か....うん。いいかも。
「なんダ、ネタになると思ったんだけどナ」
「ごめんね、アルゴ」
ミウがアルゴと話を進める。
なるほど、なんだかんだ言って俺たちから使える(弄れる)ネタを引き出そうとしているわけか。
そんなネタは元々存在しないと思うが...ここは気を付けなくては。
二人の会話はさらに進んでいく。
「じゃア、二人の出会いハ?」
「うん、それは私がアイテムを買いすぎて...あ、そうそう。アルゴ聞いてよ! コウキ最初私のこと男だとーーーー」
しまっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!
「あー! あー! あっちになんか見たこともないアイテムが!!」
「なんダ!? ミーちゃん詳しく聞かせてくレ!!」
「マイガッ!!」
畜生! 全然話が逸らせねぇ!!
っていうかミウも正直すぎるって! もう少し俺のことも気遣ってください!!
そのまま純粋すぎるミウは、国家レベルの機密情報(俺認定)をアルゴに流しまくった。
「疲れた...」
「いヤー、いい時間だったナ」
三十分後、ようやく解放されて疲弊しきっている俺に対して、アルゴは心なし肌の艶がよくなっている気がする。
ミウは終始なんのことか分からなかったのか、ずっと不思議そうな顔をしていた。
とりあえず、今日から己の行動をもっと省みようと思いましたよ、えぇ。
そうだよ、もとはと言えば俺がもっと注意深く行動していれば今みたいな疲れもなかったはず...はぁ。
「...じゃあ、俺たちここだから」
宿の前まで辿り着いたのでアルゴと別れようと思ったのだが、
「ミーちゃン、ちょっと待っタ」
Side Miu
コウキと帰ろうとしたときアルゴに呼び止められた。
なんだろう? まだ聞きたいことがあったのかな?
アルゴが自分の方に来るよう手招きするので近づく。
それにしても、アルゴ可愛いなぁ。
私は可愛いものと甘いものに目がないのだ。あのアルゴの髭なんか見た瞬間に一目惚れだった。
等と考えていると、
「ミーちゃン、これはお姉さんからのアドバイスだけド」
アルゴが真剣に話してくるのでこちらも真剣になる。
「ちゃんと自分の気持ちを理解しとかないト、後々後悔することもできないで苦しいゾ」
ーーーーえっ?
一瞬、思考に空白が生じた。
隠していたことがバレた、とか、図星を付かれた、というわけではない。
単純に、本当に言葉の意味が分からなかった。
それに...
「それって、どういうこーー」
「コー坊! ミーちゃんが気分悪くなったってヨー!」
「な、大丈夫かミウ!?」
えっ!? ちょっとアルゴ、私別に気分悪くないよ!?
詳しく聞こうと思ったが、寸前でアルゴに遮られてしまった。
「じゃあお二人さン、またナー!!」
気づいたときにはもうアルゴはかなり離れた場所まで移動していた。
アルゴはそのまま手を振って街の雑踏のなかに消えていった。
「大丈夫か、ミウ?」
「うん、大丈夫。ありがとね」
私のそばまで駆け寄ってきたコウキに返す。
アルゴが言ってたこと、どういう意味だったんだろう...?
私は、先程ののアルゴの言葉と、微妙にスッキリしない感覚が妙に気にかかっていた。
ついに出せました、アルゴです!
実は私、SAOのキャラではアルゴがかなり好きです! 間違いなくトップ5には入ります!
しかもキャラ的にも絡めやすい! なんと私に優しいキャラでしょう!?
ただ...アルゴの口調って掴み所がないというか、すっごい書き手殺しなしゃべり方ですよね~
某イッツショウタイムさんもそうですけど、SAOは口調が難しいキャラが多い気がします。
川原先生はよく使い分けられるな...
さて、今回はヒロインであるミウさんにスポットライトが当たるような話になりましたね。
完全にサブタイトル詐欺ですね、はい。
ミウさんの事情が少し垣間見えましたが、そこは我らがヘタレなコウキくん。見事先送りにしましたね。
...なんか最近コウキくんの主人公属性が本当に低いことに気がつきました(いまさら)