「最後の《宝珠》の確保、ですか」
「あぁ、明日出発してもらおうかと思っている」
ぴちょん。どこかで水滴が落ちる音が鳴る。
43層の《青樹殿》にて今日も今日とて《ガイア》の下々としたクエスト(お使いや採集系)をこなし終えた俺たち4人は、それを報告するためにナフさんの部屋を訪れていた。
そんな際の会話が今の会話になるのだが……
俺たちは6個の《宝珠》を収集してほしいと以前からナフさんに言われていて、現在集まっているのは5個だ。
この5個の《宝珠》に関してはそれほど問題なくーー合間合間色んな出来事はあったがーー収集できていた。ならば最後の《宝珠》も勢いそのままに集めてしまおう! と俺たちは息巻いていたのだが、そんな俺たちにナフさんが待ったをかけた。
最後の《宝珠》は《森人》がいないと開かない扉の奥にある、とのこと。
ということは《森人》を連れての外への遠征になる。そうなってくるとナフさんは腕っ節に自信はないそうだし、下手をすると俺たちよりも強いんじゃないかと思われるミレーシャさんを連れていくことになる。
しかしミレーシャさんは《ガイア》にとっても貴重な戦力だ。もし以前のソルグのように《ナーザ》の誰かが攻め込んで来た時のことを考えてミレーシャさんは外には出せない、とのことだった。
それが《宝珠》を取りに行けと言われたと言うことは。
「戦力の補給、できたんですか?」
「あぁ、とは言っても、全体の、ということではなく個人の、だがね」
言葉の意味を理解できず首を傾げるとナフさんが「入ってきていいよ」と声をかける。
外に誰かいるのか、と思いドアの方を振り返ったのと同時、そのドアが開かれた。
「失礼します、ナフ様! お呼びに応え参上しました」
爽やかな声と共に、ドアの向こうから部屋に入ってきたのは高身長な男性だ。
その身に纏う黄緑色の鎧は《ガイア》の人間だということを証明しているが、装飾に関しては他の戦士とは比べ物にもならないほどに荘厳だ。
各所に金色のラインが彫られていて両肩には小さな宝石が埋め込まれている。各所関節部分も隙間無くインナーのようなものが仕込まれていて堅牢さを感じるが、それは機能性を殺したものではない。動きを阻害するような装飾はないお陰で相反する荘厳さと機能性が同居しているデザインだ。
男性はナフさんの前まで来ると一礼した後、俺たちにも頭を下げてくる。それに対してつい慌てて頭を下げ返してしまうのは日本人の性か。
「彼はこの《ガイア》最強の騎士、カイムだ。ようやく任務が終わってね、僕たち本体に合流することができたんだ」
「すみませんナフ様、僕の力が足りないばかりに時間を取らせてしまって」
「いやいや、そういうつもりで言ったんじゃないよ。むしろ君でないとできない任務を終わらせてくれたんだ、感謝しかないよ」
「ありがたきお言葉です……それで、僕を呼ばれたのはやはり彼らへの?」
「あぁ、ちょうどいいタイミングだしね、顔合わせをさせておこうかなと思ってね」
ナフさんが言うと男性ーーカイムさんの視線が改めて俺たちに向かう。
そしてこちらに手を差し出しながら。
「初めまして。先ほどナフ様に紹介してもらったが改めて。《ガイア》森人近衛隊隊長のカイムだ、よろしく」
「えっと……冒険者?のコウキです。こっちはミウとヨウト、それにリリです」
「あぁ聞いているよ。僕のいない間に何度も力を貸してくれたと。それもあのソルグと戦闘までしてくれたんだろう? 本当にありがとう。それと、敬語はいらないよ。力を貸してもらった上でそんなことまでされてしまったら僕たちの立つ背がない」
「じゃあ、カイムで。ソルグと戦ってくれたのはそっちのヨウトだけどな」
言ってヨウトの方に視線を向けると自分の会話ターンが来たとばかりにヨウトは笑顔を浮かべる。
「なぁなぁカイム。最強の騎士ってナフさんからは聞いてるんだけど、やっぱり《紅牙》とか呼ばれてるソルグよりも強いのか?」
「ヨウトさん、その質問は失礼なんじゃ……」
「あはは……ありがたいことにナフ様にはそう言ってもらえるけど、僕自身はまだまだ未熟者さ。ソルグとはおそらく引き分けが精一杯だと思うよ」
ヨウトの質問に素直に答えてくれたのにも驚きだが、あのソルグと引き分けると言うその実力にも驚きだ。
あの時の戦闘は確かにヨウトが勝ったが、俺とヨウトの予想ではソルグは本気を出していなかったように思える。しかもその上でヨウトの連撃を破りかけていたのだから、正直なところもう戦いたくはないのが本音だ。
そんなソルグと同等の実力。なるほど《ガイア》最強の実力というのも頷ける話だ。
「今後は彼が僕たち《森人》がいる本拠地を守ってくれることになる。そうなれば、今のようにミレーシャに残って戦ってもらう必要はなくなる。だから君たちへの依頼である《宝珠》収集にはミレーシャを連れていってもらいたいんだ。実力的にも君達の足手まといにはならないと思うよ」
確かに、と俺は頷く。
ミレーシャさんの剣技は既にこの目で見ている。ソルグと比べてしまうと見劣りはしてしまうかもしれないが、あの強力なレイピアの一撃には目を見張るものがあった。
「足手まとい、なんて言葉が出てくるってことは何か戦闘する場面があるってことですか?」
「さすがコウキくん、耳聡いね。そう、最後の《宝珠》は守護獣が守っている。その守護獣から《宝珠》を奪えるだけの力を示さなければ《宝珠》は手に入れられないんだ」
《宝珠》に守護獣か。
ナフさんから与えられる情報ということもあっていつも以上に懐疑的に聞いていたがそこまでおかしいところは見当たらない。
それに、前回のゴーレムは何事もなければ特に危険なく倒せる程度の強さではあった。少しメタ的な見解にはなってしまうが、最後の《宝珠》ということもあって前回と比べれば多少強くはなっているかもしれないが倒せないほど、という可能性は少ない気がする。
それにこの《ガイアクエスト》をもう何日もこなしてきたが、無理難題を要求するようなクエストはあまりなかった。おそらくプレイヤーレベルに合わせて多少難易度を調整してきているのではないかと俺は睨んでいる。
実際、アルゴにクエストの内容は逐一報告しているが、他のプレイヤーとは別の内容だったり敵の強さもまちまちだと言っていた。
それなら。
「分かりました。引き続き、《宝珠》収集を手伝わせてもらいます」
「ありがとう、コウキくん。ミレーシャにも明日出発できるよう準備を促しておくから。今日はここに泊まっていくといい。手前味噌になってしまうがね、
「はい、じゃあお言葉に甘えて」
正直、43層の《青樹殿》は最寄りの街や村からもそこそこ距離があるため移動が面倒臭いという難点はあったのだ。嬉しい申し出だ。
「存分に英気を養ってください。ここの守りはあなた方に変わって僕がしっかりと努めますので」
最後にカイムがそう締めくくってこの場は解散となった。
俺たち4人は部屋から出る。そうすると今までずっと口をつぐんでいたミウが待っていましたとばかりに目を輝かせる。
「と、言うことは! 今日はお泊まり会だね、やっほい!!」
「やっほーい!!」
ミウに合わせてヨウトも万歳する。イベント大好き1号2号の爆誕である。
それを見て俺とリリが同種の笑みを浮かべる。
「お泊まり会……?」
「そうだよリリちゃん、これはお泊まり会だよ!」
「でも私たち、帰って来れるときはいつもヨウトさんの家に皆で寝泊まりしてますよね?」
「だからこそ! いつもと違う場所で皆で泊まる! これすなわちお泊まり会!」
「そうなの、かな?」
「そう!」
俺の疑問形をハイテンションに肯定されてしまった。
まあ、今回のイベントの名称自体は正直どうでもいい。ここなら武器の整備もしてもらえるしナフさんの言うとおり景色もいいから何も問題はーー
「それにここ、料理がかなりイケるんだよな!」
ーーなぬ?
「あ、そうか、前はコウキとリリはなんかトラバサミ作ってたもんな。あの時俺とミウちゃんで見て回ったんだけどかなーりうまい料理でいっぱいなんだよここ」
「料理……」
「そうそう、それにお風呂もちょっと覗かせてもらったんだけど川の水を吸い上げて温めてるとかで水質的にお肌に良いらしいよ!」
「お肌……」
2人の説明に俺とリリ、2人してごくりと唾を飲み込んでしまった。
いやいや、美味しい料理なんて言ってもここは仮想世界だ。外の世界と比べてしまえば数段レベルは落ちる、それに美肌効果? それこそ仮想のこの体に美肌効果なんて意味はあるんでしょうか?
という俺とリリの無言の視線のやり取りをすること0.2秒、その結果。
「「お、お泊まり会、いぇーい……」」
「「いぇーい!!」」
満場一致でお泊まり会となった。
SIDE Miu
「さて、特別ゲストの方々のご登場でーす!!」
「こ、こんばんわ」
「どうもー」
私の掛け声に合わせて特別ゲストの2名ーー《森人》のミレーシャとメイド業務が終わったらしいレイアさんだ。
コウキとヨウトは今お風呂に行っているので私とリリちゃんは手持ち無沙汰になってしまった。と言うことでせっかくなのでお呼びしたんだ。
本当はミレーシャを探しに行ったんだけど、ちょうどレイアさんもいたからお誘いしたら喜んで来てくれた。
一応NPC扱いである2人をこんなことに呼んだりできるんだろうかという不安は少しあったんだけど、心配の必要なんて全然なく連れてこれた。
前にコウキが《ガイア》のNPCはどこか普通のNPCとは違うって言っていたけどその辺りが関連しているのかもしれない。
と、こんな考察をしてる暇なんてない。貴重な時間は僅かしかないのだ。
「今日はお誘い受けてくれてありがとね2人とも。ミレーシャもだけどレイアさんなんて特に前回あまり話せなかったから、いつかちゃんとお話ししたかったんだー」
「いえいえ、こちらこそありがとうございますー。私たちの都合で《宝珠》集めなんてことをしてもらえている上にこんな素敵な集まりに呼んでもらえるなんて、私感激ですよ!」
「ふふ、そう言ってもらえると私も嬉しい! ミレーシャも迷惑じゃなかった?」
「えぇ、迷惑なんてことは一切なくて、むしろ嬉しいくらいなのですが……」
どこか歯切れ悪そうにそこまで言いながらも視線が私とレイアさんを行ったり来たりしている。
これは、どういうことだろう? もしかして2人は仲が悪いとか? でも2人で話していた時も普通に仲は悪くなさそうだったけど……
「ミウ様、ミレーシャ様は私とミウ様方との接し方の違いをどうしようか迷っておられるのです。立場の違い、というものがありますから」
「あぁ、なるほど」
「そうですよね、メイドに対しての話し方と私たちへの対応の仕方を同時にやれと言われたら少し難しいかもしれません」
私とリリちゃんが合わせて納得したように頷く。
でもこういう場でそういう気の遣い方は少し違うようにも感じる。でも、《ガイア》には国の習わしもあるだろうし勝手なことも言えない。
うーむ、とどうしたものか考えていると慌てたようにミレーシャが口を開く。
「ま、まぁそんな感じです。ですが私のせいでせっかくの空気を壊してもいけません。今日はお……レイア、にもミウたちと同じように接するようにします」
私の悩み具合が表情に出ていたのかな? ミレーシャは悩みの原因そのものを消してくれた。でも、ところどころ噛みそうになってるのはなんでだろう?
首を傾げる私と乾いた笑みを返すミレーシャで睨めっこ状態になっているとレイアさんが間に入るように言う。
「そうですね。私のせいでミレーシャ様に気をつかわせてしまっているのは事実。ですのお詫びとして、この女子会なるものの最初の話題を私から提供させていただきましょう」
むふー!と鼻息を荒くしながらドヤ顔気味に宣言する。
前回も思ったけど、レイアさんってちょっと面白い子だ。
「話題、ですか?」
「えぇ、ズバリ、女の子が皆大好きな色恋話です!」
どどーんってどこからともなく効果音が聞こえてきそうだ。
そんなレイアさんを前にして、ついチラリとリリちゃんの方を見てしまった。あ、目が合った。しかも互いに目を逸らしてしまった。なんか今、考えていることがシンクロしていた気がする。
しかし、そんなことをしているうちにも話はどんどん転がっていく。
「え、恋愛関係のお話ですか? もしかして《ガイア》で新しい恋仲ができたりしたんですか?」
目を輝かせながら同じくテンションが上がってきたらしいミレーシャ。《ガイア》のことをあれだけ深く考え、愛している彼女のことだ。新しい親密なつながりというのは彼女にとってまさに我がことのように嬉しいのかもしれない。
「誰ですか誰ですか? 焦らさないで教えてくださいよぉ」
あ、違う。これはあれだ。ただの出歯亀根性だ。輝くどころか目がルンルンしている。隙あらばどこまでも弄り回そうとする女子の目だ。具体的にはアルゴとかフィナさんがよくする目。
「ふっふっふー、まぁまぁ落ち着いてください。というかミレーシャ様も知っている人ですよ」
「え、ナフ様、カイムくん、騎士団の方々……うう、人数が多すぎて絞りきれないです……」
「では正解を…それはミレーシャ様、貴女です!」
「……へ?」
と、ミレーシャが間抜けな声を出して首を傾げたところで私もようやく理解が追いついた。
「レイアさん、それってもしかして《ナーザ》のソルグさんのことですか?」
「そうですそうです!」
「ソルグって確か、私がいなかった時に《ガイア》に攻め込んできた騎士さんでしたっけ? 《紅牙》って呼ばれているとかなんとか」
「そう、そのソルグ様です!」
「って違います違います! 私とソルグ様は一切、全く、そういう関係では……」
段々と盛り上がってきたこの場のボルテージをなんとか止めようとミレーシャが割って入る。
でも、その止め方はレイアさんの情報を裏付ける反応だ。
慌てるミレーシャが可愛くてついつい私もいじわるしたくなってきちゃう。
「えーでも、この前一緒にいた時とかなんだかお互いがお互いのことよく知ってますみたいな空気感出してたような?」
「ミウ! 別にそんなことはないです。ただ彼とは生まれが近い幼馴染みたいな感じというか」
「「幼馴染!?」」
新ワードに場の空気がさらに温まっていく。
幼馴染!? そんなの恋愛偏差値的にめちゃくちゃ高くない? リアルでのあるアニメじゃ幼馴染=絶対付き合うみたいな流れがあるくらいだ。
「い、いや、幼馴染って言っても本当に、歳が近いってだけで、深い関わりなんてなかったっですし、せいぜい両国の交流の際、いつも話していたくらいで」
「他には何かないんですか?」
「リリ様まで……他には、食事に誘われたりですか?」
「ミレーシャ様の話、どう思われますかミウ様、リリ様」
「限りなく黒に近いグレーかと」
「実際に話しているところを見ていない私でもそう思っちゃいますね」
「だから、違うんですー……」
弄りすぎたのかミレーシャは顔を真っ赤にして顔を覆ってしまった。しまった、調子に乗りすぎたかとリリちゃんと一緒に苦笑いしてしまう。
そこで気を抜いたのがよくなかったんだろう。
「それで、ミウ様とリリ様はコウキ様とはどうなんですか?」
「「うぇぇ!?」」
え、こっちに飛び火するの!?
思わぬ裏切りにリリちゃんと一緒に跳ね上がってしまう。
体の反応に比例して体温まで上昇しそうになる、が、堪える。
い、いやまだだ。ここでテンパっていちゃいつまで経っても成長できない。
息を大きく吸って心を整える。そうだ、ニックさんにボコられながら心を整える方法を学んだのはこういう時のためだ、多分!
周りの空気と一つになったと体が誤認するくらいに集中力を上げる、そうだ、私は落ち着いているーー!
「ミウ様なんてこの前《宝珠》のために戦ってくれた時、コウキ様に肩かしてもらってる間ずっと幸せそうに顔蕩けてましたし」
「にゃ、にゃんのことかな!?!?!?!?」
無理でした。ニックさん、この心を整える技法使えません。
心の中のニックさんに「そんなふうに使えなんて教えたことは一度もないわよ。貴女がチョロいだけでしょ」という冷静なツッコミを受けた気がするがそんなものはゴミ箱に捨てておく。
「あと、リリ様も2つの《宝珠》を届けてくれた頃からコウキ様のことをぼんやりと眺めている姿をよくお見かけするようになった気がします」
「ひゃう!?」
そしてリリちゃんに向かってもミサイルがぶっ放されていた。
いや、まぁ、リリちゃんの件に関しては私も事情を知っているし理由も分からなくはないんだけど、フォローができるわけでもない。
私、リリちゃん、ミレーシャが倒れ伏して死屍累々としている中、1人だけレイアさんだけがホクホクと肌艶良さそうに笑っていた。
SIDE Kouki
43層に鬱蒼と茂る森を抜けた先にあるのは、苔の生えた巨大な古代遺跡だ。名前を《ローグ遺跡》。
石の剣と盾を構えた大きな騎士の石像が入り口の両横に佇んでいる。その姿はこの遺跡を守るようで、同時に探索者を試すような雰囲気があった。
この奥には何かとてつもない冒険が待ち構えている。そんな想像を掻き立てられる門構えだ。
ただでさえ遺跡のような薄暗いマップでは不意打ちやトラップといった不確定要素が多数存在する。気の緩みがパーティの生死に直結するといってもいい。気を引き締めていかないとーーなのだが。
「ミレーシャー、今度昨日食べさせてくれたデザートの作り方教えてよー。あれミレーシャが作ってるんだよね?」
「ええ、いいですよ。少し特別な材料を使うだけで作り方自体はとても簡単ですから。私の自慢の一品です」
「ソルグさんに褒められたデザート、だもんね」
「そ、そういう意味じゃないですミウ!」
「ふふ、ミレーシャさん、顔真っ赤ですよ?」
「リリさんまで!」
なんか、女性陣がめちゃくちゃ盛り上がっていた。
昨日、俺とヨウトが温泉から戻ってくるとレイアさん1人がスタンドアップ(しているように見える)していてミウ、リリ、ミレーシャさんの3人が這いつくばっている(ように見える)状態だった。それからは俺たちも混ざって皆でワイワイ夜中騒いだのだが、女性陣はそこでかなり打ち解け合えたらしく、朝出発直前までも話し合っていて、それが今までに至る。
油断に繋がるからここまで軽い空気は良くない、と思うのだが出てくるmobはポップとほぼ同時にミウが反応し倒しきってしまう。
以前なら43層はほぼ最前線だったため多少敵も強く感じたが、俺たちが《ガイアクエスト》に集中している間に他のプレイヤーたちの努力の甲斐あって攻略も進んでいき、今では46層が最前線だ。その分俺たちもレベリングをこなしているため43層の一般mob程度にはそこまで苦戦もしない。
だからまぁ、多少しゃべり倒していても問題はないと言えばない。
「でも、良いのかなぁこれ」
「緊張しすぎてるよりは良いんじゃないか? その分俺たちが警戒すればバランス取れるだろ」
「そういうもんかなぁ」
「そういうもの。パーティなんだから役割分担が大事なんだよ」
一理は、ある。
というかこの状態でもミウが1番に反応している以上、ミウの警戒状態は緩んでいないということだ。
俺の気にしすぎか、と軽く息をついて俺もミレーシャさんに話しかける。
「ミレーシャさん、ここの遺跡に来たことはあるの?」
「はい、一度だけですが。とは言っても内部には一度も入ったことがないので案内はできないのですが……」
「大丈夫! そこは私たちが頑張るところだから。ミレーシャは後ろの方で眺めててよ」
「そうですね、ミレーシャさんには付いてきてもらえているだけでもすごくありがたいんですから」
「そう言ってもらえると助かります……とは言ってもミウ、私だって戦えるのですから、貴女方の足手まといになるつもりはありませんよ」
スッ、と自らのレイピアを胸の前で構え鋭い音を立て剣を振るうミレーシャさん。そのキレのある動きだけでも彼女の技術の高さが窺える。
全員の士気は高く、隊列も柔軟性があり、全員が実力的にも高い。ここまでの要素が揃えば盤石と言っても言い過ぎではない。
だが、一応このパーティリーダーを務めさせてもらっている身だ。万全にさらなる万全を期すべきだろう。
「みんな、ここからは未踏破のダンジョンだ。気を引き締めていくぞ!」
「「おー!!」」
俺の声かけに全員気持ちのいい返事をしてくれた。
その空気を壊さないうちにもと、俺は一歩踏み出しイベントクエストダンジョン《ローグ遺跡》に入っていった。
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